福山雅治が2020年12月31日の『第71回NHK紅白歌合戦』で、自身初の白組トリを務めた。披露したのは「家族になろうよ」の紅白スペシャルアレンジ。豪華編成で、各楽器の様々な音色ひとつひとつが家族のように重なり合い、音楽で紡がれる絆を深めた。

30周年イヤー福山のハートウォーミングな選曲

 福山は、2019年以前は別会場からの紅白生中継出演が多かった中、この日はNHKホールでの生披露。ステージ上でマーティンD-45のアコースティックギターを構える福山からは、この日のパフォーマンスに対する気合を感じられた。

 数々のヒット曲、代表曲がある中、2020年紅白の演目としてセレクトされたのは「家族になろうよ」だった。なお、2019年以前に福山が紅白で披露した演目を5年ほど遡ると以下の通り。

・2015年:「デビュー25周年スペシャルメドレー」
・2016年:「2016スペシャルメドレー」
・2017年:「トモエ学園」
・2018年:「2018スペシャルメドレー」
・2019年:「デビュー30周年直前SPメドレー」

 メドレーで紅白のステージを賑わせることの多い中、福山がデビュー30周年を迎えた2020年という節目にメドレーではなく楽曲「家族になろうよ」を選んだことからは、深いメッセージ性を感じさせる。

 2011年リリースのこの楽曲は、同年の第62回紅白歌合戦でも披露された。この年は日本中が一つになって力を合わせることの大切さ、人と人との絆の尊さを改めて感じさせる時でもあった。

 そして2020年、新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の有事となってしまった中、一人一人にとって大切なことは、 “みんなの心をひとつに”ということなのかもしれない。そしてそれは、福山が紅白で披露した「家族になろうよ」の歌唱に込められている気がしてならない。

日本中に広がる福山の想い

 ステージ上で紳士的に凛と、そして温かく優しく歌い上げる福山の姿は輝いていた。<どんなことも越えてゆける 家族になろうよ>という歌詞の一節が心に入り込み、ハートウォーミングな気持ちにさせてくれた。その部分を歌唱した直後の福山の表情は、大切な家族からの優しい微笑みのように感じさせてくれた。

 この日に歌唱する福山の心情は、この楽曲を制作した時の気持ちを歌っているのか、リリースから年月を重ねての現在、困難な現状へ向けてのメッセージを含めてのものなのか、真意は本人のみぞ知る領域だが、主観的には、日本中に向けての“家族のようになって、今を乗り越えよう”というような想いが言葉、歌、サウンドとして放たれていたように感じずにはいられなかった。

 白組司会の大泉洋からも、SNSからも、この日の福山のパフォーマンスに対し、「染みた」という反響があがった。

 弦楽四重奏とバンドセット、グランドピアノにホーン隊、そしてアコースティックギターを構える福山という紅白スペシャル編成で披露された「家族になろうよ」は、2020年のこの日に、特別な光を放っていた。

 <どんなことも越えてゆける>という福山からの頼もしくも奮い立つメッセージ、<家族になろうよ>という温かい歌詞、そして、ラストの<あなたとなら生きてゆける しあわせになろうよ>と歌う福山のストレートな歌声とハートウォーミングな表情、そして最後の微笑み。福山からの愛のメッセージが優しくにじみ出るように映えていた。紅白の歌唱を通して、“家族になろうよ”という想いのもと、日本中の心をひとつにしてくれた瞬間だったのではないだろうか。【平吉賢治】

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)