珠麟 -しゅりん-「目に見える音であって欲しい」“真っ白。”に込めた想い
INTERVIEW

珠麟 -しゅりん-

「目に見える音であって欲しい」“真っ白。”に込めた想い


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年11月20日

読了時間:約7分

 珠麟 -しゅりん-が11月18日、ミニアルバム『真っ白。』をリリース。珠麟 -しゅりん-は2013年、音楽活動での名義を「珠麟 -しゅりん-」として開始。マルチアーティスト、ボーカル、作詞、作曲、編曲、楽器演奏、マスタリング、クリエイティブデザインまで様々なことを自身で担当し、和モダンをモチーフにした絢爛豪華な花魁世界を発信し続けている。2019年には園子温監督のNetflixオリジナルドラマ『愛なき森で叫べ』エンディングテーマ「さよならミッドナイト.」を歌唱し、同曲を含む全6曲が本作に収録されている。本作の話題を中心に珠麟 -しゅりん-に迫る。【取材=平吉賢治】

約3年ぶりとなる本作に込められた想い

――本作が完成した心境はいかがでしょうか。

 CDとして音を届けられるのは約3年ぶりですのでやっと動き出せるという喜びと不安が入り混じった中におります長かったですね。でも、4〜5年前の自分の曲をこうして今の自分が再構築する事によって気づく事もありましたしあの頃黙々と制作していた自分を救い出してあげる事も出来たのかなと思います。新しい環境での制作だった事もあり今はライブが出来ず直接感想を聞くことは出来ませんが久しぶりに皆様からの感想を早く聞きたいなと思ってる自分もいます。

――作詞、作曲、編曲、楽器演奏、エンジニアリングなど、制作において全ておこなう珠麟 -しゅりん-さんが楽曲を制作する際の着想は?

制作は主にDTMです。生活する中で突然閃く瞬間がありますそうしたら作業部屋にこもりっぱなしになりますね。入浴中や外出中など立て込んでる時に何か浮かんだ時はボイスメモに急いで記録します。浮かぶ時によって、全体像のアレンジから浮かぶ時もあれば、ベースラインやホーンセクションだったりメロディが浮かんだりと毎度バラバラなので、頭からだったりサビからだったり、落ちサビからだったりと作り始める箇所も様々です。

 基本的に自分はリアルを歌う事は無いので確信的な言葉もあまり使わないですし
不思議な夢を見て面白いなと思ったら書いたりとか生き物や物を眺めて、そこに浮かんだ言葉から作ったりとかしますけど、そのうちちゃんと時代や現実とリンクしている曲も作ってみたいなと思ったりしてます。

――本作『真っ白。』のタイトルに込められた想いは?

 真っ白と言うと、白紙に返すとかリセットのような意味合いを想像される方が多いと思いますが、これは私にとってとても大切な生活の一部でもある、一冊のノートから浮かんでつけたタイトルです。そのノートにはその日あった良い事、悪い事やらなければならない事やりたい事や目標などを毎日書き込みます。それは私にとって自分を知る為の大切な時間となっています。

 寝る前に新しいページを開いて綴る時にふと、“今から今日の私を書き綴るのか“と思ったりして。今日も自分をしっかり生きたなと、真っ白な新しいページを見た瞬間に不思議と前向きな気持ちになれた事でこのタイトルになりました。自分も、皆様も、今からでも何にだってなれるんだというおもいです。

――各楽曲の歌詞を書かれる際は、どのようなことを意識して書かれるのでしょうか。

 基本的に今までは歌詞よりも音の響き方を大切にしている部分があって、言葉の置き方やニュアンスなどの面では想像が出来る歌詞に仕上げたいと思って書いています。たとえミュージックビデオなどを観なくとも頭の中で色や情景などが浮かび見えていてもらえたら嬉しいなと思っていますね。

――本作において歌唱面で特に意識した点はありますか。

 私は普段から歌詞や、音のキメに対して強弱の付け方には気をつけて歌っていますが今回のアルバムの曲達は特にストーリーがあったりとそれがとても重要だったのでそこには結構気を使いました。

 あとは、コーラスを3パートぐらい重ねる曲も今回は多いので、そことのバランスも凄く考えましたね。

――サウンド面で本作はソリッドな迫力、特にギターやドラムのサウンドが印象的と感じました。全体的にこういったテイストにしようという構想があったのでしょうか。

 元々『猫背。』以外は4、5年前に作っていた曲でした。ライブなどでは披露していましたがずっと音源化されないままでいたので先程お答えしたタイトル『 真っ白。』にも通ずるのですが、過去に作った曲達をこのアルバムで出し切り、真っ白な状態から新しく製作をスタートさせるというような形になりました。構想というか、音色には強いこだわりがあるので、全体的にこの様な音になったのかと思います。

――「さよならミッドナイト.」は、ドラマ『愛なき森で叫べ』の内容に寄せた部分もあるのでしょうか。

 『さよならミッドナイト.』はドラマよりもずっと前にあった曲でドラマの監督さんがライブに遊びに来て下さりこの曲を気に入ってくださった事でこの曲がエンディングに決まりました。

――「ガラクタゴシップ」のストレートなアプローチからどんどん世界観が広がっていく雰囲気が好きです。どのような想いが込められた楽曲でしょうか。

 実はこの曲には裏設定があるんです、、ざっくりと説明するととある(芸能関係の)女性とその女性を追い続けているゴシップ記者のお話で女性はある日ゴシップ記者に接近し、自分の全て(提供)を差し出すかわりに作り話(嘘)ばかりではなく本当の自分(真実)を書いて欲しいという条件を出しゴシップ記者と恋人となる。そこから2人の駆け引きが始まり………という感じなのですがその女性にとって敵であるはずの人物と接触するという大胆さとクレイジーさを表現したくて様々な面で悩みました。

 歌詞も“女っぽさ”が垣間見える様にしたかったので遠回しに探ったり思い通りにならず刺のある言葉を放ったりいつのまにか本気になったり彼の内心を知りつつも、知らないフリをし密かに軌道修正しようとしたりと、メンタル的な部分での波や彼女の内面を散りばめています。

 音に関しても、危なっかしさや女性が独走状態にある感じを表現したくてこの様な形になりました、メインボーカルで彼女の意志の固さサビではコーラスをいくつも重ね強調し、強がる部分とスキャンダラスな空気感を醸し出す演出が出来たらと思って制作してまいりました。

――「猫背。」はどのような想いを込めた楽曲でしょうか。

 珠麟-しゅりん-の曲の中では珍しい歌詞だなと自分でも思うのですが、これは力を抜いてスッと書けた記憶があります。コロナ禍の真っ只中に書き上げた歌詞だった事もあるのかもしれませんが、1番このアルバムのタイトルとリンクしている気がしています。

 後は珠麟-しゅりん-の楽曲としてと言うよりもアイゴンさんと作るならば、、こんな感じに仕上げたいな。といういつもと違う感覚もありました

――本作「さよならミッドナイト.」や「猫背。」のように、前作までの楽曲にもピリオドや句点がタイトルについている楽曲がありますが、ここにはどういった想いが込められているのでしょうか。

 曲によってですが、そのまま終止符の意味を込めたくてつけてるものもあります。後は文字の全体バランスで入れてることも。

――レコーディングの過程、こだわりのポイントなどは?

 今回の曲達はスタジオで録りました。今まで自分の家でレコーディングしていたので、人に録ってもらう事に戸惑いがありなかなか落ち着かなかったですね。

 他には基本的に座ってレコーディングしたいタイプなので、全曲座って録りました。何日かに分けて録ったのですが、四曲目を録るぐらいの日にはブースに入ったらもう椅子とその高さに合わせたマイクが用意されていて思わず笑ってしまった出来事もありました。ありがたかったです。

音楽に救われる機会が多かった

――珠麟 -しゅりん-さんが音楽作品を発信するにあたり、最重要視している点は?

 今までの活動を振り返ってもやはりライブが基本なので、ライブで歌ってる時のこと、お客さんのノリ方とか反応はいつも自然と考えています。それもあってかお客さんと一緒に音を鳴らして楽しめるようにとクラップが入ってる曲がとても多いです。

 ライブ以外のでは先程お答えしたものと被るのですが、1番は想像が出来ること。
曲によっては自分の中で見えた映像を絵コンテにしてから曲を作ったりしたものもありました。音を鳴らして見えた色や風景でメロディをつけたりアレンジを進めたりもします。
目に見える音であって欲しいですね。

 私は元々人と上手くコミュニケーションを取ったり、お話しする事が得意では無かった為、音楽に救われる機会がとても多かったんですよ、生活になくてはならないものだったし、私の気持ちや状況を表すものも音でした。そんな私の音と出会ってくれた人達の生活の中の“何か”になれたら、嬉しいです。

――コロナ禍という特殊な時期に入り想ったこと、ステイホーム期間中での心境の変化などはありますか。

 正直買い出し以外での外出は殆どしない程家に居るタイプだったのでプライベートでは何も影響ありませんでした。ただ仕事ではやはり厳しいですねライブが出来ないので。
特に3年ぶりにこうしてミニアルバムを出せるのでこのタイミングでライブが出来ない事は更に心への追い討ちが強かったですね。早く皆様にお逢いしたいです。

――今後の活動に対しての心境は?

 このアルバムの制作や活動再開を機に課題も沢山見つかりましたし、色々と挑戦したい気持ちも高まりました。自分自身もこれからの制作や変化をもっと楽しみたいなと思っています。

(おわり)

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