yonawo「音楽は境をなくしてくれるもの」気鋭の福岡発新世代バンドに迫る
INTERVIEW

yonawo

「音楽は境をなくしてくれるもの」気鋭の福岡発新世代バンドに迫る


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年11月17日

読了時間:約10分

 福岡発新世代ネオソウルバンドyonawoが11日、1stフルアルバム『明日は当然来ないでしょ』をリリース。荒谷翔大(Vo)、斉藤雄哉(Gt)、田中慧(Ba)、野元喬文(Dr)の4人からなるyonawoは、2018年に自主制作した2枚のEP『ijo』、『SHRIMP』はCDパッケージ入荷即完売。謎の新アーティストとして話題に。2019年11月メジャーデビュー。配信限定シングル「ミルクチョコ」「Mademoiselle」を2カ月連続リリース。今年4月15日に初の全国流通盤ミニアルバム『LOBSTER』をリリース。4月24日に配信限定シングル「good job」、5月1日に配信限定デモアルバム『desk』、6月12日Paraviオリジナルドラマ『love distance』主題歌OP曲「トキメキ」を配信限定リリース。8月14日、史上初となる福岡FM3局で同時パワープレイを獲得した「天神」が配信スタート。そして本作リリースと精力的な活動を見せている。本作の話題を中心にyonawoに迫った。【取材=平吉賢治】
(※ドラマ『love distance』の「love」の後には矢印が重なった記号が入るのが正式名称)

4人の音楽的バックボーンには芯のある共通項も

『明日は当然来ないでしょ』ジャケ写

――バンド名の由来は?

斉藤雄哉 僕の幼馴染の友達がヨナオ君というんです。サッカーチームがヨナオ君と荒ちゃんと一緒で仲良くなったんです。それでヨナオ君とも一緒に音楽をやろうと言っていたけど、結局受験などで練習できなくて。それでも仲がいいからバンド名にヨナオ君の名前だけ拝借しています。

荒谷翔大 仮のバンド名だったんですけど「ヨナオ君を借りとこうか」ということでそのまま(笑)。

――かつての仲間のお名前が由来だったのですね。結成のいきさつは?

荒谷翔大 中学生で雄哉君とヨナオ君と3人一緒になって、みんな音楽が好きだったんです。それで「バンドやりたいね」と話して楽器は触りつつも中学三年間は終わったんです。高校生になったらヨナオ君は勉強に専念して楽器は触らなくなったけど、僕と雄哉はそれから主にギターなどの楽器を弾くようになって、ちょこちょこ曲を書いては雄哉に聴かせたりしていました。

 そして、雄哉が行った高校で慧とのもっちゃんに会って仲良くなったんです。音楽の話も合うけど空気感が他の人と全然違い、居心地がよかったんです。それでずっと「いいな」と思っていたけど、バンドはまだやらず高校を卒業して、僕がバンクーバーに1年留学したんです。それで雄哉もその年からレコーディングの勉強で専門学校に2年間通って、僕が帰ってきた年に「そろそろやろうか」という感じでこの4人で本格的にスタジオに入ったりしました。

――するとみなさんが初めて組んだバンドがyonawo?

荒谷翔大 オリジナルバンドとしてはそうです。慧とのもっちゃんは文化祭でやってたよね?

田中慧 コピーバンドはやっていたんです。

――みなさんの音楽的バックボーンは?

田中慧 高校生の頃にコピーバンドでやっていたのはガレージロックなどです。今の音楽性とは違うんですけど、UKロックなどが好きでした。レディオヘッド(英・バンド)やニルヴァーナ(米・ロックバンド)など、90年代から2000年代のロックバンドが凄く好きでして。

――高校生でレディオヘッドのコピーは難しかったのでは?

田中慧 さすがに2ndアルバムくらいまでの曲、「Just」という曲などをやっていました。それより後のレディオヘッドの曲をやろうとは…。

斉藤雄哉 再現できないよね(笑)。

――わりとロック寄りの音楽が背景にあるのですね。

田中慧 そうです。みんなそうだと思います。

野元喬文 僕はエイフェックス・ツイン(英・ミュージシャン、DJ)なども聴きます。ヨナオ君に教えてもらいました(笑)。

荒谷翔大 ヨナオ君は色んな音楽を僕らに教えてくれるんです。

野元喬文 エイフェックス・ツインは聴いているうちに「音楽家として凄い人だ」と実感して、そこからめちゃめちゃハマりまして。もともと電子系の音楽も好きだから惹かれたというのもあります。

――なるほど。斉藤さんは?

斉藤雄哉 僕もロックは好きで、高校生の文化祭ではレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(米・ロックバンド)やアークティック・モンキーズ(英・ロックバンド)、ザ・ストロークス(米・ロックバンド)などをやったりしました。ガレージロックのジャカジャカしたものをよくコピーしていました。あと、聴くのはジャズも多くてビル・エヴァンス(米・ジャズピアニスト)なども聴きます。

荒谷翔大 僕も4人と重なるところが多いです。ザ・ストロークスもアークティック・モンキーズも好きで、中高生でハマったのがガレージロックで。もっと遡るとノラ・ジョーンズ(米・ミュージシャン)や松任谷由実さんなど、そのあたりが曲を作る中では一番引っ張られているところかなと思います。母が好きでよく聴いていた影響もあると思います。

――yonawoはネオソウルバンドという風に最初お聞きしたのですが、ネオソウルといえば個人的にはまずディアンジェロ(米・シンガーソングライター)が思い浮かびます。みなさんはディアンジェロもお好き?

斉藤雄哉 ディアンジェロはみんな大好きです。

荒谷翔大 ハマった時期も同じなんです。高校卒業してからくらいです。

――ディアンジェロが1stアルバムを発表した1995年はみなさんが生まれる前ですよね?

荒谷翔大 ストリーミングで聴いていると年代などは気にしないんですけど、やっている時期をよく見たら「えっ?」ってなります(笑)。

斉藤雄哉 『VOODOO』(ディアンジェロ2ndアルバム)を聴いた時は「新しい!」と思いました。でも20年前のリリースと知ってびっくりしました(笑)。

荒谷翔大 みんなリスペクトしているアーティストです。

――本作を聴くと確かにネオソウル感もありますが、どこかにくくることができない音楽性とも感じます。あまりそういったことは意識していない?

荒谷翔大 あまり気にしていないんです。「あ、ネオソウルバンドって謳ってたんだった」というくらいです(笑)。

“あたかも当然”のような不思議さが詰まっているアルバム

――本作が完成した率直な心境は?

野元喬文 偶然が重なった部分が多いと思っています。曲も流れができているけどしっかり考えたかと言われればそうでもないんです。ちょいちょい曲間などは考えられていますが、実際に曲を並べてみるとピースが重なるように上手い具合に出来たと感じました。アルバムタイトルも最後の方まで決まらなかったんですけど、荒ちゃんと雄哉君で話して出てきたタイトルなんです。それも本当に「このアルバムのタイトルだな」と思わせるような、このタイトルがあって作った作品ではないのに、あたかも当然みたいな感じなんです。そういう不思議さが詰まっているアルバムなのかなと思います。

――不思議さというとジャケットからも感じるところです。

野元喬文 このジャケットは僕が赤ちゃんの部分だけ書いたんです。それでファンの方に募集をして何100通の中から選んでジャケットになりました。これもノリで決まったわけではなく、みんなで話してスッと決まったんです。

――なるほど。田中さんが本作でこだわった曲などは?

田中慧 「cart pool」は自分が初めてyonawoで作曲した曲で、歌詞も少し書いていて、この曲はこだわりました。

斉藤雄哉 僕は本作全体が好きで、ラフミックスの段階でのもっちゃんと爆上がりしてました(笑)。そのままスッと完成した感じがあるんです。

田中慧 「これで大丈夫かな?」というくらいスッと。結果それでよかったんですけど、完成した時はそういう風に思ったりして。

斉藤雄哉 慧はいいテイクが出るまでレコーディングを重ねたがるんですけど、慧以外はけっこう一発でOKみたいな感じもあったので。

荒谷翔大 慧のそういう感じがいい塩梅になっているんです。ちゃんと支えてくれているというか、アレンジ面でもそうなんです。

斉藤雄哉 見極め役というかそういった感じでして。僕らがやりすぎるのをブレーキかけてくれるんです。

――アレンジの主導権を握るメンバーがいたりする?

田中慧 基本は荒ちゃんがゼロからイチにしてきます。

荒谷翔大 僕が大体の流れなど、ドラムやベースまで出来たらちょっと入れて簡単な流れを作ってそれを聴かせるというのがありますが、最終的にはみんなで決めます。

――各パートに無駄がなく、やり過ぎていないという印象があるんです。ある種の“引き算”的なアプローチが鋭いと感じる部分もありまして。必ず入るであろうと思われる部分のキックがなかったりと。

荒谷翔大 そういうのは僕の好きな感じです。ビートなどけっこうこだわりがあって、考えるのが好きなんです。

斉藤雄哉 頭でビートを打たないで裏から入ったりと。

――そのあたり、ネオソウルというフィーリングがありますね。

斉藤雄哉 それこそディアンジェロ感もあるかもしれません(笑)。

各楽曲の背景と裏話

――各楽曲についてですが、ドラマ『love distance』主題歌OP曲「トキメキ」の制作はどのように進行したのでしょうか。

荒谷翔大 これは曲が出来てから主題歌に決まったので書き下ろしではないんです。作詞作曲したのが高校生の頃だったと思うんですけど、あらゆるところで人それぞれ「トキメキ」を感じるじゃないですか? それに対しての想いを書いた楽曲です。

――「rendez-vous」の制作の進行は?

斉藤雄哉 これはデモが1、2年前からあって、その時はメロウで静かな感じだったんです。

荒谷翔大 僕がDAW(PCの音楽制作ソフト)で作ったものは本当にしっとりしていて音もめちゃくちゃ少なかったんです。ドラムだけパターン一緒のままでいこうという話をしていたんですけど、いつの間にかギターが歪み始めてどんどんそっちの方に寄っていたんです。

――「天神」は福岡県の地名から?

荒谷翔大 そうです。街の名前です。

――するとコンセプチュアルな楽曲?

荒谷翔大 と思いきやそうではないんです(笑)。天神は自分の地元と近いんですけど、小さい頃も行っていたし天神という名前の響きも好きだったので。タイトルをつけるのは僕はけっこう適当な方なんですけど、この曲には「天神」をはめたいと思ったんです。バンクーバーに1年留学していて地元に想いを馳せていた時にこの曲のデモを作っていたら、タイトルは「天神はいいな」と思ってつけました。

――曲順について、「独白」から始まり「告白」で締めくくられているのにはどういった意図があるのでしょうか。

荒谷翔大 「独白」と「告白」はこのアルバムのために書いた曲なんです。「独白」は最初から1曲目にしようと思っていたんですけど、曲名は最初「独白」ではなくて歌詞の最初にある「good to meet you」にしようとしていたんです。でも日本語の歌詞をあとから入れたら、「タイトルは曲中の歌詞にある『独白』にしようかな」と思い立ってみんなに報告したんです。それでアルバムの曲を振り返ったら「告白」があったので、頭と終わりをそれぞれ「独白」と「告白」にしようとなったんです。「独白」は最初だし、「告白」は最後っぽいし締まると思いまして。

――自然に形成されていくという部分が各要素に共通していますね。本作のコンセプトを最初に決めて狙うというよりも、作り上げていく中で想いが形となって仕上がっていくというような。ところで、みなさまはなぜ音楽の道を選んだのでしょうか。

野元喬文 楽しそう…だからです!

荒谷翔大 重みのある言い方だったね(笑)。

野元喬文 ドラムを選んだのは、雷様みたいだからというか…。

斉藤雄哉 どういうことだよ(笑)。

田中慧 たぶん、雷様みたいな気分で叩けるからじゃないかな。

野元喬文 自分が他の楽器をやるイメージもなかったんです。

――田中さんはなぜ音楽の道を?

田中慧 正直、まだ「こうだからです」という断言はできないんですけど、まず、みんなと一緒にいたくて音楽をやっているというのがあったんです。そして、個人的に発したいことがあるという風に思っています。作詞作曲した「cart pool」でそれを表現したこともあり、僕にも言いたいことがあるんだと思っています。

――斉藤さんは?

斉藤雄哉 好きだからです(笑)。それ以外ない気がします。

田中慧 それでいいんだよね。

荒谷翔大 僕は、なぜ曲を作るかというと、実体験として音楽を聴いて、アーティストからもらった感情があって、その瞬間が心地よくて繋がった感じがあるんです。その時は気付かないんですけど、歳を重ねていくにつれてそれが何かと繋がれた気がする感覚を、自分もそっち側に立ってやってみたいと自然と思えたのは確かなことだと思います。普段みんなといくら仲が良くても孤独は感じるんです。それを一瞬でも取り去ってくれるのは、僕にとって歌や作曲で、音楽はそういう境をなくしてくれるものとしてあります。僕にとってはそれが音楽なんです。

――たまに感じる孤独を一瞬でも取り払ってくれるのが音楽と。

荒谷翔大 そういうもの全てを忘れさせてくれるというか、奥深くに入っていける感じがあるんです。

――今後の目標として具体的に掲げていることは?

斉藤雄哉 福岡にプライベートスタジオを作りたくて、そういう場所が出来たら制作の幅も広がって楽しいと思います。

――最後に読者のみなさまにメッセージをお願いします。

荒谷翔大 たくさん聴いてください!

(おわり)

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