希帆が9月28日、重盛さと美プロデュースで配信シングル『uchiseiuchi』をリリースした。同じ事務所に所属する2人は公私にわたり仲良し。ステイホーム期間中に著名ラッパーたちが自作のラップを乗せてパフォーマンスしていた「TOKYO DRIFT FREESTYLE」に、希帆が友達として客演した重盛さと美feat.友達で2人もラップに挑戦。5月にアップされ現在、2000万再生に迫る勢いを見せている。それをきっかけに重盛が希帆を全面プロデュース。
リリースされた楽曲は年季の入った希帆の実家事情を歌詞に落とし込んだ「uchiseiuchi」、彼氏が欲しいとずっと言い続けていることから生まれた「K.A.R.E.S.H.I.H.O.S.H.I.I」など3曲を収録。インタビューではプロデュースに至った経緯や、貧乏によって生まれたメリット・デメリット、音楽シーンにどんな爪痕を残したいかなど、重盛と希帆の2人に話を聞いた。【取材=村上順一】
実家はコンプレックスだった
――お二人の出会いは10年以上前で、TV番組がきっかけだったそうですね。
重盛さと美 そうなんです。それぞれ違う事務所にいる時に同じ番組で一緒になって、その最終回の日に希帆ちゃんが私に連絡先を聞いてくれました。
――希帆さんはその時に連絡先を聞こう、と思うほどの何かを感じて?
希帆 そうなんです。さっちゃん(重盛さと美)は誰とも紛れず一匹狼だった部分もあるし、あと見た目とのギャップかな。洋服とか商店街の安売りで売ってそうなのを着ていたんです(笑)。私は貧乏な家庭で育ったので、さっちゃんからもどこか貧乏っぽさを感じて、連絡先を聞きました。
――実際は貧乏ではないですよね?
重盛さと美 私もどちらかというと貧乏だったんですけど、屋根と壁はあったので希帆ちゃんほどではないです。希帆ちゃんは凄い環境で育ったのに「こんなにいい子に育つんだな」と思いました。出会った時はまだ貧乏なことも言いたくないし、家も見られるのが恥ずかしいと泣いていることも多かったんですけど、そこを私がずけずけと実家に行きムービーをまわして世に出し、無理やり武器にさせました!
――コンプレックスを表に出すことは勇気がいることではないかと思います。
希帆 本当に勇気はいりました。実家のことはさっちゃんと出会って最初の5年間くらいは隠していたくらいコンプレックスで…。でも、そこから私の人生のプロデュースしてくれている感覚なんです。
重盛さと美 貧乏だと言葉では聞いていたけど、どれくらいかまでは知らなかったんです。ある日実家を見る機会があって見たらびっくりで。これは世に出さなければもったいないと思って、マネージャーさんにプレゼンしました。
――重盛さん、人の心の中に入っていけるのは特殊能力ですよね。
重盛さと美 わたし入ってた?
希帆 ずけずけと入ってきた(笑)。
重盛さと美 希帆ちゃんはもっと進化して、色んな人に好かれて優しくしてもらえる、という自信があったんです(笑)。希帆ちゃんに関してはどんなプロデューサーにも負けない自信があります。彼女の良さを一番よく知っているので、それを歌でもMVでも表現できるように今回頑張りました。
――今回のプロジェクトのきっかけは、5月にYouTubeにアップした重盛さと美feat.友達「TOKYO DRIFT FREESTYLE」ですよね。ガールズユニットとは別軸で動いた意図は。
重盛さと美 私たちも踊りたい、アイドルを目指したいというわけではなかったですし、「もうアラサー2人で、アラサーっぽいことをしよう」となりました。ずっとHIP HOPっぽいのをやりたいなと思っていたので。
――希帆さんは「『TOKYO DRIFT FREESTYLE』流行ってるからやろうよ」と重盛さんに誘われたとのことですが、その時のことを改めて振り返ると?
希帆 私も流行っているということも聞かされず、ボイスメモだけ送られてきて「これ覚えろ」みたいな(笑)。その後に流行っていることや色んな人がやっているのを送ってもらったら、「この撮り方も、この歌い方もいいな」とか色々火が付いたといいますか、興味が出てきました。
貧乏で良かったこととは?
――『uchiseiuchi』は希帆さんの誕生日にリリースされました。一つ歳を重ねるということで抱負をお聞きしてもいいですか。
希帆 29歳こそは彼氏をちゃんと作ります。歌をやれるきっかけを今回頂いたので、これからも私はさっちゃんの家事をやりつつ、さっちゃんに曲を書いてもらいつつ、もっと歌活動に力を入れていければなと思います。
――彼氏作りも継続しながら歌も頑張っていきたいと。
希帆 楽しみながら(笑)。
重盛さと美 音楽活動と彼氏だったらどっちなん?
希帆 両方だよ(笑)。私が今まで恋愛で失敗してきたことも全部歌詞にされるので、たぶん一生彼氏ができない感じがしているんですけど…。
重盛さと美 いいよもう! 彼氏おらんの飽きたけん、そろそろ作ってくれないと。
希帆 じゃあ29歳は絶対彼氏ゲットです!
――できたらできたでまた新しい曲ができるからいいですよね。
重盛さと美 次はハッピーソングを作りたいですね。
――今回収録されている「K.A.R.E.S.H.I.H.O.S.H.I.I」という楽曲がありますけど、欲求が凄い歌詞なので(笑)。
希帆 (笑)。
重盛さと美 この歌詞読んだ男の人はみんな引くよね。
――でも、重盛さんは希帆さんのことをよく見ている、というのが歌詞の内容から伝わってきました。
重盛さと美 もうずっと「彼氏欲しい!」と言っているので、そのまま録音した感じです(笑)。
希帆 4年間、言い続けているんですけど、なぜか全然彼氏ができないんですよ。
――できるように陰ながら応援したいと思います(笑)。今回、希帆さんをセイウチに見立てたのは何か理由があるのでしょうか。
重盛さと美 希帆ちゃんの体型がセイウチに似ていて(笑)。脱いで四つん這いにさせたらもうセイウチで、特に腰のあたりが凄いんですよ! どう見てもセイウチなんです!
――見た目からでしたか。
重盛さと美 そうなんです。それで私が一回希帆ちゃんのことを「セイウチ」とInstagramで紹介したら、ファンの間でもセイウチが浸透しちゃって、そこから希帆ちゃんのことを「セイウチ」と呼ぶようになって。今回のリリースのお話をいただいて、コンセプトのお話なった時に「こういう写真があるので、セイウチとペンギンというのをテーマにそれぞれ曲を作りたいです」と伝えました。この写真が使える時が来て良かったなと思います。
――希帆さん、セイウチとあだ名をつけられた時は、素直に受け入れられました?
希帆 当時はまだオブラートに包んで「可愛すぎるセイウチ」と言ってくれていたんです。でも1年経ったら「セイウチ」だけになっていて(笑)。「可愛すぎる」がついてたから「これも愛嬌かな」と思っていたんですけど、まさか1年後「セイウチ」と呼ばれるようになるとは想像していなかったです。
――さて、『uchiseiuchi』の歌詞にある<夢叶えたい>というフレーズがひときわ輝いて見えました。これはどんな夢ですか?
重盛さと美 希帆ちゃんは一回芸能界を辞めてしまったんです。でもやっぱりもう一回やりたいと言っていたんですけど、なかなか事務所が決まらずに落ち込んでいました。やりたいことはあるけどなかなかできない、落ち込む希帆ちゃんを私はずっと見ていて。でも今は希帆ちゃんのことを応援してくれる人がどんどん増えていて、貧乏だけどバイトも毎日して、頑張っている姿を見ていたら、いつしか希帆ちゃんの「売れたい」という夢が私の夢にもなって、二人の夢を叶えたいという意味です。
――とてもいい歌詞の部分ですね。希帆さんをバックアップしたいという気持ちもあってと。
重盛さと美 そうです。お母さんみたいな感じで「でかい娘だな」と(笑)。
――凄くよい関係性ですね。もう希帆さんの彼氏は重盛さんでいいのでは?
希帆 本当に思うんです! さっちゃんみたいな性格の人が私は理想なんです。
重盛さと美 私も希帆ちゃんみたいな人が理想なんです。
――その関係性からこの歌詞が生まれて、インパクトのある歌詞の中で<夢叶えたい>というフレーズがひときわ輝くんですよね。
希帆 やっぱり貧乏な人が夢を叶えたらグッとくると思うんです。
――ちなみに貧乏で良かったことと悪かったことを挙げるとしたら? 良かったことはあまりないとは思いますが…。
希帆 良かったことは想像力が豊かになったということです。お金がない中で何をしよう、何を作ろうとか、DIY精神が生まれてくる発想力は、たぶん貧乏じゃなかったらなかったと思います。
嫌だったことは、お風呂に入れなかったので…その反動か、潔癖症みたいになってしまって、いまお風呂の時間がすごく長いんです。幼少期のトラウマと言いますか「今洗っておかなきゃ」みたいな。だから水道代が高いのがデメリットです。旅行とかに行っても夜2時間、朝1時間くらい入ってしまうんです。
――それは長いですね。重盛さんは希帆さんの想像力で凄いと思ったことはありますか。
重盛さと美 あります。昔は浴衣が買えなかったみたいで、バスタオル2枚とガムテープで作っていたと聞きました。実際に『uchiseiuchi』のMVでバスタオル浴衣作ってもらったんですけど、それが思いのほか可愛くて。でも帯が全部ガムテープだから変なんですけど、凄く可愛いし貧乏だけど楽しもうとしてる、楽しむのを諦めていないところがすごいなと思いました。
変な爪跡を残したい
――重盛さんはタレント、アーティスト活動で人前に出ることはどういうことだと考えていますか。
重盛さと美 人前に出ることは、お仕事だと思っています。でも楽しいことの方が多いです。
――楽しく仕事が出来ているのはすごくいいですね。希帆さんはタレント活動はどういうスタイルの考えを持っている?
希帆 TVのお仕事はお家ありきが多いので、仕事とプライベートの境界線がないかもしれないです。プライベートを全部さらけ出しているので、仕事という感覚よりも「自分はこれです」という感覚かもしれません。
――仕事とプライベートの境界線がないと、ストレスはありませんか。
希帆 逆に「こうありなさい、こうしなさい」と言われる方がストレスになっちゃうタイプなんです。今はのびのび自由にやらせてもらっています。今回も「TOKYO DRIFT FREESTYLE」で、相談せずに勝手にラップをやってしまったんですけど、普通の事務所だったら、すごく怒られると思うんです。でも、そこまでは怒られなかったので(笑)。
重盛さと美 しかも事務所公式のYouTubeチャンネルに上げればまだ良かったかもしれないんですけど、プライベートアカウントに上げてしまったので…。
――映像のクオリティもけっこう高いですよね。あれは重盛さんが全部一人でやっているんですか。
重盛さと美 はい。でも、あれは私と希帆ちゃんが別々に撮ったものを編集で繋げただけなので、きっと誰でも出来ますよ。あとは洋服とかでおしゃれして、見栄えをよくして雰囲気を作って。今回やってみて本当に今は自分達でなんでもできる時代だなと思いました。
――もう本人のやる気しだいですよね。最後に、お2人は音楽シーンにどんな爪痕を残していきたいですか。
重盛さと美 変な爪痕を残したいです(笑)。自分達が楽しいことをしているだけなので、それをみんながどうとるかは全く予想できないんですけど、本人達がめっちゃ楽しんでるから見ている人も楽しいかなと思います。私達が新しい作品を作れるのも、本当にいつも応援してくれるみなさんのおかげです。なのでこれからも新しい楽しい作品を届けたいと思っているので応援してくれたら嬉しいです! これからもウチらを応援してください。よろしくお願いします。
希帆 いいもの届けます!
(おわり)