乃木坂46「Route 246」センターは齋藤飛鳥

 乃木坂46の配信限定シングル「Route 246」が好評だ。小室哲哉の2年3カ月ぶりの復帰作で、秋元康との約10年ぶりの共作。globeの「Feel Like dance」を彷彿とさせるTKサウンドと、清楚なイメージのある乃木坂46の意外な組み合わせが絶妙にマッチしている。7月29日発表のオリコン週間デジタルシングルランキングによれb、配信開始から3日間で3万3391ダウンロードを記録し、前作の配信シングル「世界中の隣人よ」を上回るヒットとなっている。そんな話題の新曲「Route 246」の魅力を、「歌詞」と「ファッション」の2点から分析していく。

気弱な女性像から芯のある女性像へ

 強い女性像が思い浮かぶ「Route 246」の歌詞。特に、1番のBメロの<他人の目気にして生きていたってしょうがないよ>が印象に残った。さまざまなパターンはあるが、乃木坂46の楽曲といえば、どこか人の目を気にしてしまう気弱な女性像が描かれていたことが多かったように感じる。

 例えば、2015年に発売されたシングル「今、話したい誰かがいる」では、<小さい頃からブランコが好きで/シーソーに乗っている時は ただ相手に合わせた>と歌っていた。

 2017年に発売されたアルバム、「生まれてから初めて見た夢」に収録されている「設定温度」でも、<このエアコンの設定温度/君と僕はきっとすれ違っているんだ/少し下げれば涼しくなると/わかってはいても 君が寒がってしまう>と歌う。このように、シーソーに乗っていても相手の目を気にしてしまったり、恋人を気遣い、「温度を下げて」と言えない繊細さを表現している、誰もが持っている弱さにそっと寄り添う楽曲が多かった。

 しかし、「ジコチューで行こう!」のあたりからは、<そうだ何を言われてもいい/やりたいことをやるんだ><どんなに呆れられても/思い通りやるべきだ/嫌われたっていいじゃないか?>と、周りの目を気にしない、彼女たちの奥底にある“芯の強さ”のようなものが前面に出てきたような気がする。聴いていると、前向きになれるような強さを感じさせる。

 「Route 246」でも、そのスタンスは継続している。かつて、<若さに甘えられない/ちゃんと自分の足で歩いてくんだ>と歌った少女が、<あの日眺めていたのは/ショウウィンドウの未来さ/本物が欲しいのなら/自分の手で掴むしかない><坂のない人生は/汗の輝きを知らない>と力強く歌う。そんな感慨深さこそが、この楽曲の魅力の一つなのかもしれない。

乃木坂46「Route 246」ジャケット

女の子から憧れられるアイドルへ

 女性ファッション誌の専属モデルを務めるメンバーが多数所属しているなど、“女子が憧れるアイドル”として、不動の地位を築いている乃木坂46。

 デビュー曲「ぐるぐるカーテン」からずっとロングスカートなどの衣装が多く、清楚なイメージが定着していたが、「Route 246」の衣装は、ショートパンツやミニスカートにスニーカーを合わせたスポーティなものに。夏らしいヘソ出しも注目を集めているが、そのなかでも女性ファンからは、“ヘアスタイル”に関心が集まっている。

 この楽曲でのヘアアレンジは、紫のカラーエクステやヘアピンなど、すぐに真似できるアレンジが満載。今までの彼女たちのイメージとは違った魅力を引き出している。

 しかし奇抜にならず、どこか清楚な香りが残るのも彼女たちの個性の一つなのかもしれない。女性ファッション誌で「坂道系女子」になるための特集が組まれるなど、トレンドアイコンとして注目を集めている乃木坂46。今後の衣装にも注目だ。

 坂のない人生は汗の輝きを知らない――、“絶対的エース”と呼ばれた白石麻衣の卒業を経て、彼女たちは新たな坂を登り始めたのかもしれない。人の弱さに「私も同じだよ」と、そっと寄り添うものから、「強く生きようぜ!」と強く背中を押す楽曲までを歌いこなせる振り幅も、彼女たちの持つ魅力の一つだ。そんな乃木坂46の持つ、希少な清楚さとファッション性に注目していきたい。【文・かなぴす】

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