魅惑のクロスオーヴァーユニット・SiriuS(シリウス)が1月24日、サントリーホール ブルーローズで『デビューコンベンション』をおこなった。東京藝術大学声楽科卒のテノールの大田翔とバリトンの田中俊太郎によるユニットで、2月19日にアルバム『MY FAVORITE THINGS』でメジャーデビューする。デビューに先駆け、関係者向けのコンベンションライブをおこない「ビー・マイ・ラヴ」や「天国への階段」など5曲披露した。その模様を以下にレポートする【取材=村上順一】

田中俊太郎(撮影=はぎひさこ)

 ホールに入るとシャンデリアがキラキラと鮮やかに輝き、ステージにはスタインウェイのグランドピアノが存在感を放つ。開演時刻になり、伴奏を担当するピアニストが登場しスタンバイ。そして、どこからともなく美しい声が響いてきた。下手側、客席後方からテノール・大田翔が歌いながら登場するというサプライズ演出。続いて、会場を包み込むような低音が魅力のバリトン・田中俊太郎が上手側の客席から登場し、2人はステージで合流。

 オープニングを飾ったのは映画「ニューオリンズの美女」より「ビー・マイ・ラヴ」。マイクを使用しない2人の生声が美しいハーモニーを作り出し、1曲目からSiriuSの世界へといざなった。

 2曲目は映画「サウンド・オブ・ミュージック」より「私のお気に入り」を、今度はマイクを通して披露。清流のように澄んだ歌声は、後半に進むにつれダイナミックに変化していく。1曲の中にドラマを作り上げていく2人の歌声に惹き込まれていく。

 MCでは、それぞれのパートを説明するために、アカペラでの実演。大田はテノールが生きるジャンルの一つカンツォーネで突き抜けるような歌声を披露し、田中は「荒城の月」を圧巻の重厚な響きで表現した。テノールとバリトンの違いをわかりやすく説明し、「声の持ち味を堪能してほしい」と語った。

大田翔(撮影=はぎひさこ)

 続いては2人の熱い友情を表現するのにうってつけの1曲だという歌劇 『ドン・カルロ』より「友情の二重唱」を届けた。この曲は再び生声で躍動感あふれる歌声を響かせ、そのエネルギーから2人の絆の強さを感じさせ、ホールの持つ響きと一体となって、溶け込んでいくかのような感覚を与えてくれた。

 今後どのような活動していきたいかという話題で「僕たちはクラシックをやってきた人間なので、その声、技術を使い色んな曲を歌って、声や音楽の魅力を伝えていきたい。いずれは日本の名曲も歌っていきたい」と、ジャンルにとらわれない活動をしていきたいと意欲を見せた。早速そのひとつとして 作曲家・古関裕而氏の曲から「イヨマンテの夜」を歌唱し、楽曲の新たな一面を打ち出し、力強い歌声で魅了した。歌の表現力と曲に乗せたときの感情の運び方が卓越しているからこその説得力だった。

 ラストはミュージカル映画『巴里のアメリカ人』より「天国への階段」を披露。しっとりとした導入から、軽快で華やかな世界観が広がっていく。2人はミュージカルのように手振りやステージを動き回りながら、リズミックなスキャットなど、生き生きとした歌声を届け、約30分というコンパクトな尺の中でも十二分にSiriuSの存在感を示した。

SiriuS(撮影=はぎひさこ)

 ジャンルにとらわれないクロスオーヴァーユニット・SiriuSは2月19日にメジャーデビューする。実際の恒星、シリウスのように強い光を放つ2人が、唯一無二のハーモニーでどんな新しい世界を作り出してくれるのか、期待感が高まったライブだった。4月18日にサントリーホール ブルーローズで『デビュー記念コンサート』を行うことも決定している。

セットリスト

01.ビー・マイ・ラヴ(「ニューオリンズの美女」より)
02.私のお気に入り(「サウンド・オブ・ミュージック」より)
03.友情の二重唱
04.イヨマンテの夜
05.天国への階段(「巴里のアメリカ人」より)

▽SiriuSプロフィール

 共に東京藝術大学声楽科卒のテノールの大田翔とバリトンの田中俊太郎によるユニット。卒業後、オペラやミュージカルの舞台でお互いの歌の道を進んでいた中、偶然再会をした二人。たまたま二人で交わしたハーモニーが「セクシーヴォイスすぎる」と話題になったことをきっかけに結成。クラシックの枠を飛び越えて、ミュージカルから映画音楽、ジャズ等、多彩なナンバーを英語、日本語で歌唱。クラシカルな格調とエンターテインメント性を兼ね備えた、新たなスターの誕生である。

▽SiriuSの由来

 シリウスは地上から見える最も明るい恒星であり、シリウスAとシリウスBの二つが重なった連星である。彼らの醸し出すハーモニーは、まるでシリウスAとシリウスBの二つの連星が重なった時に放つ、全天で最も明るい恒星シリウスの眩い輝き、そのものということでSiruSと命名。また、翔と俊太郎の頭文字もSということで、頭と後ろに大文字を使っている

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)