シンガーソングライターのさかいゆうが13日、東京・日比谷野外大音楽堂で『さかいゆう10th Anniversary Special Live“SAKAIのJYU”』をおこなった。10周年記念ライブとなったこの日は、3部構成で展開された。さかいゆうは第2部総勢9人のゲストとDJ MURO、「JAMNUTS」メンバー、そして“SAKAIのJYU”バンドメンバーらと共に演奏したセットリスト全22曲にプラスして、セッション、DJ MUROによるDJ TIMEと、特大ボリュームのスペシャルなライブを披露した。【取材=平吉賢治】

リハ無し即興“ジャムセッション”パート「JAMNUTS」

さかいゆう(撮影=古賀恒雄)


 
 会場前にはDJ MUROによるソウル、R&Bをメインとしたグルーヴ感溢れる選曲でライブ前からオーディエンスの体と心を揺らし、野音を十分に温めた。3部構成の第1部は、“ジャムセッション”パートの「JAMNUTS」。さかいゆうが笑顔で両手を振って登場し、インディーズ時代からセッションをしていたメンバーがステージに集結。内田壮志(Ba)、伊原anikki広志(Gt)、柴山哲郎(Gt)、村上広樹(Dr)、Pochi(key)、竹本健一(Vo)、Hiro-a-key(Vo)、そしてさかいゆうの総勢8名のメンバーがリハーサル無しで挑むというジャムセクションからライブはスタートした。

 さかいは<今日は何しても自由、“SAKAIのJYU”>と、鍵盤を弾きながら即興で歌い、和音のコードネームを挙げながらの各メンバーと共に音を重ねていった。各パートが踊るように、自由に演奏をするなか、オーディエンスとのコール&レスポンスもあり、ジャムセッションは会場一体感を醸し出していた。2台の鍵盤を行き来しながら華麗なプレイを見せたさかいは、セッション終了後に笑顔で「本当はあと3時間くらいやりたいけど」と、セッションの楽しさを言葉としても表現していた。そしてライブは豪華ゲストを招く第2部へ――。

豪華ゲスト9人、至極の“コラボ”パート

KREVA(撮影=古賀恒雄)

 さかいのこれまでの活動に関わった豪華ゲストを招いての “コラボ”パートのバンドメンバーは種子田健(Ba)、石成正人(Gt)、Tomo Kanno(Dr)、Pochi(Key)、吉岡悠歩(Cho)、横沢ローラ(Cho)。まずは竹内朋康(マボロシ/ex.SUPER BUTTER DOG)が登場し、「SHIBUYA NIGHT」を披露。ワウサウンドのバッキングプレイにミッドサウンドがけたたましく響き渡るソロと、竹内は存在感十分なギタープレイを見せ、さかいと絶好のコラボを魅せた。

 続く「愛は急がず-Oh Girl-」では西寺郷太(NONA REEVES)を招き入れ、さかいとの息の合ったコンビネーションで熱いボーカルを魅せた。そして、さかいは「次のゲストはビビるぜぇ〜」という言葉でオーディエンスの期待感を膨ませ、現れたのはジャズトランペッターの日野皓正。さかいの熱い歌唱の合間に、鋭くも簡潔なオブリガード、迫力・情熱・気品溢れるトランペットソロ、更にアウトロでは、さかいと日野の魂がぶつかり合うような熱量の掛け合いが会場を大いに沸かせた。

 “10th Anniversary Special Live”の名にふさわしい盛り上がりを見せる第二部、続くゲストは秦 基博。「さかい君、10周年おめでとう」と、ハグをして「ピエロチック」の演奏に進み、ファルセット混じりの歌唱の秦、ソウルフルなボーカルのさかいと、美麗でゴージャスなハーモニーを響かせる。そして「How Beautiful」では土岐麻子の表情豊かなボーカルがさかいの鍵盤プレイと色鮮やかに絡み合い、ゲスト中紅一点の土岐はライブに更なる彩りを加えた。

 さかいは「3年に一回、激レア中の激レア」という前置きを挟み、冨田ラボ(冨田恵一)とのコラボに突入。冨田がステージ中央で伴奏をし、さかいがハンドマイクでのパフォーマンスをする「いつもどこでも」は正に“激レア”な演出。さかいのハンドマイクパフォーマンスはその後の「Here I Stand」でのJAY’EDとのコラボへ引き継がれ、Pochiによるピアノの伴奏で、さかいとJAY’EDの圧倒的声量が野音に鳴り響いた。

 そして、「ミュージシャンを目指す前から好きだった」と紹介されて登場した佐藤竹善(SING LIKE TALKING)は、その言葉を受け「インディーズの頃からコーラス入ってくれて注目していた」と、さかいゆうとの親交の深さを表した。2人による「WHAT YOU WON’T DO FOR LOVE」のソウルフルな熱演が野音を包み込み、オーディエンスをたっぷりと魅了した。

 第2部最後はシークレットゲストのKREVAと共作楽曲「生まれてきてありがとう」を披露。ステージ全面でオーディエンスの熱を焚き付けながら繰り出すハイスキルのKREVAのラップ、そしてさかいのパフォーマンスに会場は大いに盛り上がり、これでもかというくらいの豪華ゲストが出演したコラボパートは大歓声のなか締めくくられた。

10年間のヒストリーを凝縮、その最新進化型“ワンマンライブ”

ライブの模様(撮影=古賀恒雄)

 そして最終セクション、さかいと“SAKAIのJYU” バンドメンバーらによるワンマンライブがスタート。陽が落ちた野音のステージを薔薇色の照明がロマンティックに照らし、「薔薇とローズ」から第3部を走らせた。タイトなアタックでリズムを走らせ、サビではゴージャスなアンサンブルを光らせ、艶のあるさかいの歌声は会場中に、それ以上の距離まで響き渡るような広がりを見せた。続く「Jammin’」でのグルーヴィーなサウンドに吸い込まれるようにオーディエンスは総立ちとなり、会場いっぱいサラウンドに広がるクラップで応えた。

 MCでさかいゆうは「1、2曲でめっちゃ盛り上げたんだけど、次もガンガン盛り上げていいですか?」と、スペシャルライブはまだまだ熱気を上がることをオーディエンスに伝え、ライブのボルテージは更に上昇。美メロを美声で清涼感たっぷりに響き渡らせる「SO RUN」、ジャジーな空気に一転した「桜の闇のシナトラ」、続く「Haedphone Girl」でのリズミックなさかいゆうのボーカルと、様々なカラーの楽曲でライブの色彩を更に広げていった。

 さかいゆうはMCではリラックスしたムード、オーディエンスに語りかけるようなトークで会場を和ませる。そして「僕の中の渾身のスローソウルバラードたちを3曲みなさんにお届けしたいと思います」と、オーディエンスへ伝えると、「時季(とき)は巡る」「ROOM」「ジャスミン」をじっくりと聴かせてくれた。

 柔らかさと鋭さ、そして艶やかな倍音。美しい旋律に乗る声がストレートに胸に体と魂に響くさかいのボーカルは、この3曲のバラードの演奏でより深く、熱く、心地良く染み渡る。低音域から高音域、そしてファルセット、ロングトーンと、ブレのない“歌力”のポテンシャルは最大限までに発揮され、さかいから「普段出ない声が出た(キー的に)」という言葉が出るほど、存分にさかいゆうの歌唱を全身に浴びることができた。そして、MCでの「新曲行くぜ!」という力強い叫びと共に、未発表曲「21番目のGrace」へと進んだ。

 「ライブでやったことのない曲」という「21番目のGrace」での力強いビート、サビでのシンコペーションのリズムはライブ終盤で更に会場の熱を上げ、リズミックなギターカッティングから入る「She’s Gettin’ Married」ではオーディエンスの多幸感が滲み出すようなノリを巻き起こし、ラストはミドルテンポの4つ打ちがたまらない「ストーリー」でフィニッシュ。あまりにも豪華演出、ゲスト、セットリストで構成された本編は大盛況のなか幕を閉じた。

 さかいはアンコールを受けてバンドメンバーと第2部のゲストと共にステージに現れた。カラフルな照明に包まれながら「Journey」を超豪華面子で演奏すると、オーディエンスは総立ちの好レスポンス。そしてさかいはステージ前方で飛び跳ねてハンドマイクパフォーマンス。会場全体がこの日のライブの最高の熱気を全身で表現するような光景が広がっていた。

 アンコール1曲目を終えると、さかいゆうは来春のアルバムリリースをアナウンスし、更にもう1曲披露してくれそうなそぶりを見せてくれる。「大事な曲、歌おうかな」という言葉に会場は沸くと、さかいはメインステージから移動し、客席中央に設置された特別ステージへ向かった。

 公演ラスト曲は「君と僕の挽歌」。さかい1人での鍵盤弾き語りスタイルで披露された。このとき、位置的にさかいと数メートルという距離で聴いていたのだが、生声が直に耳に入ってきた。その力強さ、メロディラインの美しさ、そして魂がビリビリとする感覚、そして優しく伝わる人間的温かみのある歌に、ただただ圧倒されるばかりだった。

 セッション、豪華ゲスト、ワンマンライブと3部構成で展開されたスペシャルライブは大歓声に包まれながら終演。さかいゆうの10年間の軌跡、そして進化型の姿をあまりにも生々しく表したこの日の野音公演は、“この日限り”であろうという演出が数多くあり、この日にしか体験できない素敵な音楽体験として深く記憶に残るアニバーサリーライブだった。活動11年目以降のさかいの活躍に大いなる期待が膨らむ――。

セットリスト

『さかいゆう10th Anniversary Special Live“SAKAIのJYU”』
2019年10月13日@日比谷野外大音楽堂

【DJ TIME】
MURO

【第1部】
JAMNUTS

【DJ TIME】
MURO

【第2部】
01. SHIBUYA NIGHT with 竹内朋康(マボロシ/ex.SUPER BUTTER DOG)
02. 愛は急がず-Oh Girl- with 西寺郷太(NONA REEVES)
03. 闇夜のホタル with 日野皓正
04. ピエロチック with 秦 基博
05. How Beautiful with 土岐麻子
06. いつもどこでも with 冨田ラボ(冨田恵一)
07. Here I Stand with JAY’ED
08. WHAT YOU WON’T DO FOR LOVE with 佐藤竹善(SING LIKE TALKING)
09. 生まれてきてありがとう with KREVA ※SECRET GUEST

【第3部】
01. 薔薇とローズ
02. Jammin’
03. SO RUN
04. 桜の闇のシナトラ
05. Haedphone Girl
06. 時季(とき)は巡る
07. ROOM
08. ジャスミン
09. 21番目のGrace
10. She’s Gettin’ Married
11. ストーリー

ENCORE

EN1. Journey
EN2. 君と僕の挽歌

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