伝えたいこと、君はこんなにスペシャルだったんだよ
――さて、当時の制作で苦労されたことはありましたか。
カレンが歌うということに関して全然苦労した、と感じたことはなかったね。というのも僕は、カレンが歌いやすいだろうなと思う曲を選んでいたのも大きな要因だと思います。ただ、僕の書くコード進行が変わったものが多かったということもあって、それに対して歌をダブルで重ねて録らなければいけないと言う時は、さすがのカレンも大変そうでした。でも、カレンだけではなく僕も大変だったけどね(笑)。
――カレンさんとの作業で特に記憶に残っていることはありますか。
レコーディングに関して僕らは手順が決まっていました。まずリズム隊から録りはじめて、その後に僕がピアノを弾くんだけど、自分で作った曲だから僕は、流れは大丈夫なんです。でも、ドラマーやベーシストは曲を知らない状態でスタジオに来るし、わかっていることはコード進行とドラムフィルの場所くらい。
なので、流れがわかりやすいようにカレンがとりあえず仮のボーカルを入れるんだよ。3rdアルバム『Carpenters』の時はスケジュールが凄くきつくて、「スーパースター」の作業をしていたんだけど、リードボーカルを録り直す時間がなくて。それで、仮ボーカルのテイクがあったのを思い出し、聴いてみたら全然問題なかったから、それをそのまま採用したんだよ。なので、今作で使っているボーカルトラックも仮テイク。シンガーが仮テイクを録っている時は人に聴かれるとは思っていない。でも、カレンは生まれながらのシンガーなので、仮テイクだとしても「スーパースター」で聴けるような素晴らしい歌が歌えてしまうんだ。
――やっぱりカレンさんは天才だったんですね。
そうだね、彼女は天才だよ。
――お聞きしたいことは山ほどありますが、お時間もありますから、最後の質問にします。来年はデビュー50周年を迎えますが、カレンさんにメッセージを伝えられるとしたら、何と伝えたいですか。
皆さんご存知の通り、彼女は今、“トップ・オブ・ザ・ワールド”にいます。カレンがもし生きていたら67歳になるのかな…。できるなら大きなスピーカーで、この『カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団』のレコードを2人で聴けたなら本当に良いなと思うけれど、でもそれは叶わない。だから、天国でこの音を聴いて欲しいなと思います。
そして、それを聴いたカレンに対して言いたいことは、「君はこんなにスペシャルだったんだよ」ということと「今僕が代表して日本に来て、50年という話をしているからね」と伝えたい。まあ、彼女は上から全部見ていると思うけどね(笑)。
(おわり)











