LAMP IN TERRENは12月28日、東京・恵比寿LIQUIDROOMでOne-Man Live『A Dream Of Dreams』を開催した。「未来にワクワクしてもらうための日」と松本大(Vo,Gt,&Pf.)が事前に語っていた物語の節目となる日。「この世の微かな光」という想いを込めたバンドがどのようにステージで瞬くのか、誰もが予想ができない夜に満員のフロアは胸を高鳴らせていた。

 期待と不安が渦巻く会場に流れるBGMが止まり暗転すると、大きな拍手が巻き起こった。SEもなし、演出めいたものは欠片もなくメンバーがステージへ登場。静寂が流れる中、ギターを爪弾くと松本の声が鳴り響く。LAMP IN TERRENの歴史において、初めて松本が等身大の自分を曝け出した“いつものこと”からライヴはスタートした。彼にとって、虚飾のない自分自身の姿を綴ったとしても、リスナーにとって「自分ごと」として音楽を携えてもらえるという芽生えを得た楽曲だ。柔らかで暖かな雰囲気に包まれる中、<いつものように また笑って忘れられる/そんな僕の日常>という歌詞を<いつか未来で また笑って思い出せる/そんな僕の日常>と変化させてラスサビをしなやかに歌い上げた彼の姿は、今日という1日を前向きに進めようとする意思に満ちていた。

LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)

 ここから、聴き馴染みのある電子音が会場に鳴り始める。「『A Dream Of Dreams』にようこそ、LAMP IN TERRENです!楽しんでいこう、どうぞよろしく!」と松本が語って飛び込んだのは”地球儀”。幾度となく会場を沸かしてきたテレン最強のライヴナンバーが序盤で登場だ。この時点で感じたのは、イントロの時点で大屋真太郎(Gt.)のギターリフのキレが素晴らしいということ。彼もまた、今日という1日を楽しむ準備は万端のようだ。

大屋真太郎(撮影=浜野カズシ)

 まだまだ、完全着火したフロアの熱気は冷めやらない。川口大喜(Dr.)が高いテンションを推進力のあるリズムで保ち、飛び込んだのは“キャラバン”。声が出せない状況でも、メンバーの合唱に対して拳でオーディエンスが応え続ける光景は、彼らが築き上げてきた記憶そのもののようだった。

川口大喜(撮影=浜野カズシ)

 ステージにまだ余韻が残る中、松本が「終わりだと思ってるでしょ?」と言わんばかりのひょうきんな表情を見せると、すかさず川口のカウントから雪崩れ込んだのは“オーバーフロー”。中原健仁(Ba.)が「恵比寿ーー!」と更にフロアを煽ると、序盤にして完全にフロアは臨界点を突破。シンガロングで繋がる楽曲において、今の時代にここまでの威力を発揮できているのは純粋なメロディの強度だろう。オーディエンスの分もステージ上で歌うメンバー、「ありがとう!」と無邪気に拳をあげる松本の姿も含めて、郷愁に浸る暇など1ミリも与えない圧巻のファーストフェイズだった。

中原健仁(撮影=浜野カズシ)

 ここで松本がオーディエンスへ自然体に言葉を届ける。「本日12月28日をもって、LAMP IN TERRENとしてステージに立つのは最後になります。(中略)大喜が抜けることが決まって、僕ら3人は新しくバンドを組み直す形にしようと思っています。(中略)解散でもないし、活動休止でもないし、改名とも違う気持ちが俺にあってーー凄く複雑じゃない? 色々と戸惑わせてるところもあると思うから、そこは本当にごめんね」と彼らなりの決断を語った。

 続けて、今日という1日への想いを語る。「俺はあんまり終わりって感じがないから。(中略)だから今回『A Dream Of Dreams』っていうタイトルをつけて。『夢から醒めた夢』ーー僕が中学1年生の時に初めてやった、レクリエーションのお芝居の英題からです。ちょうど今年15周年だし、滅茶苦茶ちょうどいいんじゃないかと思って。未来が見える、そういう1日にしたいと思っています。よろしくお願いします」

LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)

 そう語った松本が「湿っぽくなっちゃうからお前らも話せよ」と振ると中原は「今日、お集まりいただきありがとうございます。今日もメンバー間ギクシャクするわけもなく、和気藹々とやっていますので、最後まで楽しんでください。よろしく!」といつもの彼らしく、朗らかに語りかけた。いつも通りのメンバー達がそこにはいた。

 迎えたセカンドフェイズ、まず叩きつけたのはスタジアムロックの潮流を汲んだ大きな軌跡を描く楽曲たち。この日初めて鍵盤の前に立ち、印象的なイントロから会場を飲み込んだ“Dreams”から、カオティックな歪みを帯びたフロント陣によってダークサイドへ誘った“at(liberty)”を続けて披露。<初めから自由だ/疑っていたのは僕だ>というラインに象徴的なように、諦観を持ちながらも光を探し続けてきた彼ら。アウトロでみせた松本の咆哮に呼応するかのように、もがき苦しむように指板を駆け回った大屋のギターフレーズにもその旅路が詰まっていた。

 ここからグッとまた雰囲気を変え、“ホワイトライクミー”、“New Clothes”と節目でリリースしてきた楽曲を披露していく。後者において、バンド名が煌々と灯る中で松本が叫んだ<今が正しい未来>という言葉には、改めて今日という1日を未来へ続けていく意思が見える。そしてグッと会場の雰囲気が変わり、一面が蒼の世界に変貌。“Water Lily”というラヴソングを、松本は時にはステージ上で座り込んでオーディエンスと同じ目線で歌い上げる。中原が絶妙なタイム感でグルーヴを引っ張ることで自由を得た松本が、柔和かつ囁くように歌う姿ーー突発的にデモ音源を発表するなど、いつだってリスナーを驚かせてきた彼ら。しかし、根底にあったのは最短距離で音楽を届けたいという想いだったことを象徴するようなワンシーンだった。そして、夜空のように深い蒼と星のような灯が美しいステージの上で、バンド屈指の名バラード”ベランダ”を美しき鍵盤の旋律と共に届け、このタームは終了した。

LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)

 ここで、この日を持ってバンドを脱退する川口がLIQUIDROOMという場所での数々の思い出(失敗談?)から、メンバーと過ごしてきた思い出を語る。「大と一緒のとこでミスってて」とここまでのライヴを振り返る川口に対して、松本から「やっぱ俺と一緒にバンドやっていたほうがいいじゃねぇの?(笑)」と言い合うようなシーンもありながら、和やかに時間が過ぎていく。

「有り得ないことなんで。そもそも彼(松本)と出逢って、このバンドでメジャーデビューして、(日比谷)野音とかもやらせてもらったり、今此処に立ってこれだけ大勢の人が最後見に来てくれてーー有り得ないことなんで。本当に有難いなって思ってます」ーーオーディエンスは勿論、今此処でステージに立っていること自体に感謝を伝えた川口の言葉は、彼のまさしく本音だったのだろう。

 ここで感動的な流れになるかと思えば、最終的に今の現状に対して誰が悪い/誰のせいだ、などと本当に幼稚な喧嘩をステージ上で始めるメンバー達。最終的に「バカっ!」と松本と叫んで代表曲“BABY STEP”が始まったのだが、冒頭の<幼いままで大人になって>という歌詞のままに、彼らがこれまでで最も有りの侭の姿をオーディエンスに見せた瞬間だった。

 彼らの最強の武器であるロックバラードは会場を完全に掌握し、「愛しているよ」と松本が語りかけて同曲を終えると、再び彼らはフロアに火を焼べる。この日披露した楽曲の中では、最も古くから演奏されている“林檎の理”は、川口と中原が楽曲中に笑顔で目を合わせながらキメを重ね、またしても会場に大ジャンプを誘う。そして続けて披露された“宇宙船六畳間号”は、配信でライヴを見守るファンにとっては最もジャストな楽曲だっただろう。コロナ禍において、デジタルで繋がる様を描いた同曲はテレンとファンが紡いできた絆そのものだ。

LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)

 「歌をバンドでやっている」とデビュー当時よく語っていた彼らだが、その言葉を最も色濃く映したのは次に披露された“pellucid”。川口のドラマーとして最も優れた才である「歌に寄り添ったドラム」を豊潤なスネアの鳴りから感じたのと同時に、変幻自在にバラードを乗りこなす松本というヴォーカリストという存在も改めて浮き彫りになった。この歌心に、ファンは心を委ね、夢を見てきたのだ。そしてこのフェイズを締めくくったのは、リアレンジが施された“おまじない”。<君と未来に出会うために/いつまでも唱える>というラインは、まるでこの日のためにオーダーメイドされたかのような、彼らの美しき衣装のひとつだった。

 静寂の中、松本が真っ直ぐに言葉を届ける。「今日はアンコールはやりません。絶対、終わりを意識しちゃうから。LAMP IN TERRENとして終わることは間違いないけど、俺たちは俺たちの人生が続くという方を優先させたい。だから、大喜の人生も続く。俺たち3人もまた新しい形でバンドを進めていきたいし、みんなの中でもお別れっていう感じには、ズルイかもしれないけどしたくない。そうしたいです。だから、あと3曲。魂込めて全身全霊でぶつかっていくんで……どんな感情でもいいです、受け止めてください。ーーできれば、笑って欲しい。ありがとうございました」

 ここから紡がれたLAMP IN TERRENとしての最後の刹那は、まさしく未来へ進むための楽曲の数々で走り切った。“EYE”、“I aroused”、“ニューワールド・ガイダンス”という3曲はどれも日本という国の音楽の枠から完全に飛び出たスケール感で「この世の微かな光」というバンドが辿り着いた灯火を描き切っていたと言える。独りであろうとしても他者が存在するこの世界で、疑問ばかりが渦巻く現代で、貴方の心の中に存在する有りの侭の姿と共に生きていこうということーーステージに立つメンバー全員が叫びながら音楽を紡いだ姿は、彼ら自身とオーディエンス全員の歩みを、笑顔で未来に進めるための我武者羅な一歩だった。

LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)

 <夢から目醒めていく>という歌詞と共に、LAMP IN TERRENという夢は終わった。しかし彼らの辿ってきた旅路や、彼らの音楽に出逢った人々の記憶は消えることなく、それぞれの未来を彩っていく。松本大、中原健仁、川口大喜、大屋真太郎、そしてリスナーすべての中にLAMP IN TERRENという微かな光は宿り続ける。

 「また逢えるよ」という未来への約束を刻んで、『A Dream Of Dreams』ーー『夢から醒めた夢』は閉幕。あまりにも彼ららしい、裸の想いが交差した夜だった。【黒澤圭介】

セットリスト

M1 いつものこと
M2 地球儀
M3 キャラバン
M4 オーバーフロー
M5 Dreams
M6 at (Liberty)
M7 ホワイトライクミー
M8 New Clothes
M9 Water Lily
M10 ベランダ
M11 BABY STEP
M12 林檎の理
M13 宇宙船六畳間号
M14 pellucid
M15 おまじない
M16 EYE
M17 I aroused
M18 ニューワールド・ガイダンス

この記事の写真

記事タグ

コメントを書く(ユーザー登録不要)