L’Arc~en~Cielが9月5日、大阪城ホールで結成30周年を祝したツアー『30th L’Anniversary TOUR』の初日を迎えた。メンバーや関係スタッフはもちろん、来場者の協力の下、専用アプリを活用した事前の健康状態チェック、会場でのマスク着用、検温、手指の消毒など新型コロナウイルスの感染拡大予防対策を徹底した上で、7日(火)、8日(水)と同会場で3Daysを開催。コロナ禍で惜しくも完走が叶わなかった2020年のツアー『ARENA TOUR MMXX』と同じくセンターステージを採用し、「HONEY」「flower」「READY STEADY GO」といったキャリアを彩る王道の大ヒット曲群を連打。ツアーは始まったばかりであるため全貌を詳らかにするのは控えるが、1stアルバムからのレア楽曲も披露し、ファンを喜ばせた。

 「大阪の皆さん、『30th L’Anniversary TOUR』へようこそ! L’Arc~en~Cielです。三十路になりました。『おめでとう』って声は出さなくていいからね? その分態度で示してください」「今日は声を出さないプレイを楽しみましょう、大阪!」とファンに呼び掛けるhyde。去る5月29日、30日には、千葉 幕張メッセ国際展示場1-3ホールでバースデーライヴ『30th L’Anniversary Starting Live" L’APPY BIRTHDAY!"』を開催。L’Arc~en~Cielとして初めてライヴを行った記念日当日とそのイヴを祝ったのも記憶に新しいが、大阪初日公演を観て、あの2Daysはツアーの序章であったことに改めて気付かされる。よってセットリストには重なる部分が多いが、曲順の入れ替えが全く異なる印象を生んでいるシーンもあり、特にオープニングの演出には息を飲んだ。たとえ誰もが知る王道の選曲をしても、親しみやすさに偏ることなく、コアファンにも驚きをもたらすエッジが必ず存在する。L’Arc~en~Cielというバンドが内包する多様性を、今回のツアーでも再認識することになるだろう。

hyde(撮影=河本悠貴)

 四方に花道を伸ばす円形のセンターステージは、多くの観客が真正面かつ近い距離感でライヴを体感できる、ファンにとってうれしい演出。ドラムをプレイするyukihiroの後姿を観られるのも、足元を含め細部の動きを目の当たりにできるのも稀な機会である。ステージの形状自体は一見すると『ARENA TOUR MMXX』と変わらないが、ライヴが始まって驚いたことに、回転スピードが高速化したり、内周と外周が逆方向に行き交ったりするなど、機能が大幅にヴァージョンアップしていた。「REVELATION」などではhydeとtetsuyaが共に外周に乗り、高速回転にも怯むことなくジャンプしたり寝そべったりと大胆にパフォーマンス。内周では、土台をしっかりと守るようにkenとyukihiroが呼吸を合わせてプレイ。また別の場面では、3人が内周にいて一人がどこかの花道へと自由に出向いていることがあり、フォーメーションは刻々と変わっていき、観たことのない景色を360度全方位から見守るファンの眼前に立ち上げていく。動きを追うだけでも純粋に楽しく、まるでアミューズメントパークでアトラクションに参加しているかのように錯覚する瞬間があった。

ken(撮影=河本悠貴)

 メンバーのナチュラルな笑顔が垣間見られるライヴだったが、その一方で、トーチが灯り神秘的なムードで引き付けた「花葬」に始まるシークエンスなど、どこか映画的、総合芸術的な表現にも一層磨きが掛かっていた。効果的に組み合わせられたレーザーとスモーク、ステージ上空で繰り広げられる洗練された光の演出には溜息が零れる。年輪を刻んだバンドならではのサウンドの奥行き、歌唱の深み、それらが絡み合って生まれるグルーヴの心地良さに酔いしれる場面が多々。また、飛沫感染防止の観点から、幕張公演以来、声援に代わるアイテムとして音の鳴るバットマラカスライトをグッズとして販売。観客が自らライトの色を切り替えるのだが、まるでコンピューター制御されているかのように自然と一色に揃う現象に感嘆した。ただ周りの人に同調しているというのではなく、L’Arc~en~Cielの楽曲に人々が抱く共同幻想が存在し、そこには色が付いているのではないか?との仮説すら浮かぶ。「MY HEART DRAWS A DREAM」では、hydeはファンに合唱を求める代わりにハミングを提唱。大きな声を出すことはできない状況だが、心を通じ合わせるツールを様々模索しながら、L’Arc~en~Cielはファンとの一体感を求め続けているように見えた。

tetsuya(撮影=石川浩章)

 短いインターバルを挟み、この時世を象徴するようにマスク姿の少女を主人公としたイメージムービーを上映。L’Arc~en~Cielの始まりの地となった想い出のライヴハウス、難波ロケッツ跡地を少女が訪れる場面もあった。その映像に続き、8月にシングルとしてリリースされた「ミライ」を披露。「やっとツアーが始まったということでね。なかなか発表もできませんでしたが、なんとか始めることができました」と語り始めたhyde。感染防止の観点から客席にものを投げ入れることができないため、「バナナも投げられないね」と、終演時のバナナ投げを恒例としてきたtetsuyaを気遣うと、「そうね」と同意するtetsuya。難波ロケッツが今はもう存在しないことに触れ、「寂しいねぇ」と呟きながら、「俺たちはいるのにね」とhyde。「ラルクは生きてます!」と宣言するように語った言葉に、ファンは大きな拍手を送った。

yukihiro(撮影=石川浩章)

 「今日は大変な想いをして来てくれた皆さんに、ご褒美があるような気がします。なんと! 宇宙で一番に、ラルクの新曲、演奏されるのであります」と告げると大拍手とマラカス音が響く。そこでじらすようにhydeが「やめとく?」と尋ねると、ファンは「NO」を示す小さな悲し気な音を鳴らし、「やる?」と訊き直すと「YES」を示す勢いの良い音を鳴らす。その歴然とした違いにkenは笑い、「魂が乗り移ってるね(笑)」とhyde。言葉を介さないステージと客席との想いのやり取りは、幕張に比べて格段に進化していた。いよいよ宇宙最速ライヴ初披露となった「FOREVER」は、曲調は異なるが「ミライ」同様光を感じる、生き生きと弾むような曲。互いの音が絡み合うことで加速度を増していき、疾走感に溢れ、会場内が一段と明るくなったように感じた。

 「皆の声はないけど、気持ちがすごく伝わってるし、表情がすごく……『あぁ、会えて良かったな』と思って。ここへ来るのにいろんなドラマがあったと思います。葛藤もあったと思います。来られなかった人の、空席もあると思いますけど……今日のために感染対策頑張ってくれて本当にどうもありがとう」と代表して感謝を述べるhyde。「これから長いツアー、完走を皆で祈ってもらえますか?」とファンに呼び掛け、しみじみと「うれしい……皆に会えてうれしいね」と語った。最後の曲を届け終え、kenがファンに両手を振って去り、続いてyukihiroが何度か頷きながら階下へと姿を消すと、互いに反対方向から歩いて来たhydeとtetsuyaがすれ違いざまにハイタッチ。そのさり気なくも感動的な場面に大きな拍手が送られた。tetsuyaは、「ありがとう、まったね~!」とリーダーとして最後にファンに挨拶し、ステージ下で見送るスタッフ一人一人に拳で合図を送り、ステージを去った。

(撮影=石川浩章)

 「いつか、『あんなライヴあったね』って。『30周年の時、声出せなかったね』と振り返る時が来る」と、未来から振り返って今を捉えていたhyde。30周年を到達点とせず、その先を思い描いていることが伺える視点であり、L’Arc~en~Ciel の今後に期待したくなる希望の言葉である。年末まで続く長いツアーはようやく幕開けを迎えた。30年前に初ライヴを行った想い出の街 大阪を出港の地に、L’Arc~en~Cielは全国で待つファンの元へと漕ぎ出でていく。【大前多恵】

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