パスピエが12月25日、東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で有観客&配信によるワンマンライブ「synonium」を開催した。

 12月9日にニューアルバム「synonym」をリリースしたパスピエ。この日のライブでは、新作の収録曲と既存の楽曲を絶妙なバランスで共存させながら、音楽性、演奏、パフォーマンスを含め、さらに進化したステージを繰り広げた。

 ライブの幕開けは、アルバム「synonym」のリード曲「Q.」。ステージに掛けられた幕が落とされると、そこには笑顔のメンバーの姿が。直線的に突き進むビート、エキゾチックなシンセの音色、<傍観者は嫌だ 退屈だ>というラインが響き渡り、観客は手拍子で応える。続いてはライブアンセムの一つである「トキノワ」。普段よりも性急なイメージの演奏からは、このライブに対するメンバーの強い気持ちが伝わってくるようだった。

(撮影=井手康郎)

 「12月25日を私たちのためにくれて、どうもありがとう。パスピエの『synonium』へようこそ」(大胡田なつき)という挨拶の後も、アルバム「synonym」の収録曲とキャリアを代表する名曲を織り交ぜながら展開。オルタナR&Bの潮流を感じさせるドープなサウンドが心地いい「まだら」、<形だけ人間 心なんて嘘>という歌詞と転調を繰り返すアレンジが共存する「人間合格」から、和テイストをポップに昇華した「とおりゃんせ」(2013年)につながる気持ち良さ。そして、歌詞、メロディ、コードなどがすべて回文構造の「oto」、心地よい解放感に溢れた「名前のない鳥」(2013年)、緻密なアレンジメントとストリングスを想起させるシンセが絡み合う「現代」が生み出す緩急の美しさ。ニューアルバムのタイトル「synonym」は“同義語、同意語”という意味だが、新曲と既存曲を融合させたこの日のステージからも、“多彩な表現を持ちつつ、ルーツを辿ると同じ場所に行き着く”というパスピエの本質がはっきりと感じられた。ライブのために再構築されたアレンジ、成田ハネダ(Key)、三澤勝洸(G)、露崎義邦(Ba)、サポートの佐藤謙介(Dr)によるアンサンブルも素晴らしい。

(撮影=井手康郎)

 中盤のMCで大胡田は「今年出したアルバムを今年こうやってライブで演奏できるのは、ありがたいことだと思っています。今日来てくれた人たちも、配信で観てくれてる人たちも、“どうしようかな?”っていう決断があっての今じゃない? だから、この時間を一層、大切に使わせてもらおうと思っています」とコメント。さらに「私たちは新作を作るたびに新しいことをやろう、いままでパスピエがやってこなかったことをやろうと考えるんだけど、自分が変わろうと思ったときじゃなくても、周囲とか環境の変化で変わらざるを得ないんだなと感じていて。今回のアルバムも作り方を変えたんですよ」と言葉を重ねた。

 「今日のライブはアルバムの曲とこれまでの曲を織り交ぜた醍醐味を感じてほしくて。次の曲は本当に久しぶりにやる曲。皆さんの思うように滾らせてくれたら嬉しいなと思います」(成田)という言葉に導かれたのは、「メーデー」(2016年)。疾走感に溢れたリズム、カラフルなシンセ、派手なギターフレーズが絡み合うアッパーチューンでライブの高揚感は一気にアップ。ステージの前に出て手拍子を煽る成田の姿も印象的だった。

(撮影=井手康郎)

 ここからさらに多彩な音楽世界を体感できるセクションへ。前作「more humor」に収録された「R138」では露崎がシンセベースを演奏。キャスター付きの台にシンベを置いてステージを移動、リズムに合わせて左右に手を振って観客と積極的にコミュニケーションを取り、ライブの一体感を生み出した。また「くだらないことばかり」(2013年)ではメンバーが横並びになり、成田、露崎、三澤、佐藤がサンプラーを操作。即興的なトラックとともに大胡田が<きっと泣いても泣いても泣き足りない/でも、今日は必ず終わるんだ>という切実なフレーズを響かせた。

(撮影=井手康郎)

 エレクトロ、バンドサウンド、和の要素が共存するアッパーチューン「tika」、大胡田がバンド自体のことをテーマに歌詞を紡いだ「つむぎ」によってライブはクライマックスへ。

 「今年のライブは今日で終わりますけど、これからも音楽でおもしろいことをお届けしようと思うので、よろしくお願いします」(成田)という言葉に導かれたのは、成田の高速フレーズから始まった「正しいままではいられない」、そして、心地よい跳ねるリズムと緻密なサウンドメイク、起伏に富んだメロディが合成された「SYNTHESIZE」で本編は終了した(配信もここで終了)。

 アンコールを求める手拍子に応え、メンバーが再びステージに登場。成田に「感謝の気持ちを伝えないと」促された大胡田が「いろんなことが変わってしまうけど、私たちは変わらずに音楽をやってて、お客さんも変わらず聴いてくれていて。今日は“変わらないもの”を共有できたら嬉しいなと思いながら……。今日のことを思い出して、元気にいましょう」と語り掛けると、この日、いちばん大きな拍手が巻き起こった。

(撮影=井手康郎)

 祝祭的なムードに溢れた「つくり囃子」(2015年)、「マイ・フィクション」(2017年)でライブはエンディングを迎えた。さらに表現の幅を広げたニューアルバム「synonym」の楽曲とパスピエのこれまでの軌跡を同時に体感できる、充実のステージだった。【森朋之】

 12月25日開催ワンマンライブ「synonium」は、1月6日18:00までアーカイブ配信中。アーカイブ配信限定にて、リハーサルの様子を映したオフショット映像も見れる。

セットリスト

◆2020年12月25日(金)パスピエ “synonium”
会場:LINE CUBE SHIBUYA
OPEN 17:30/START 18:30

01.Q.
02.トキノワ
03.まだら
04.人間合格
05.とおりゃんせ
06.oto
07.名前のない鳥
08.現代
09.メーデー
10.真昼の夜
11.R138
12.プラットホーム
13.Anemone
14.くだらないことばかり
15.ワールドエンド
16.tika
17.つむぎ
18.正しいままではいられない
19.SYNTHESIZE

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