AKB48G“ミューズ”の軌跡:Nona Diamonds

秋吉優花(HKT48)

「歌う真の意味を知った」


記者:木村武雄

掲載:21年06月28日

読了時間:約8分

<AKB48G“ミューズ”の軌跡:Nona Diamonds(6)>

 AKB48国内6グループから最も魅力的な歌い手を決める『第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』のファイナリスト、池田裕楽(STU48)、野島樺乃(SKE48)、岡田奈々(AKB48/STU48)、秋吉優花(HKT48)、古畑奈和(SKE48)、矢野帆夏(STU48)、三村妃乃(NGT48)、山内鈴蘭(SKE48)と、審査員特別賞の山崎亜美瑠(NMB48)によるユニット「Nona Diamonds」が「はじまりの唄」でデビューする。作詞・作曲は決勝大会の審査員を務めたゴスペラーズ・黒沢 薫。「9つのダイヤモンド」を意味する造語を冠したユニット名には「一人一人の歌声がまるでダイヤモンドのようで、これからも磨いていき、まわりの楽器と共にキラキラと輝いてほしい」との思いが込められている。今回、MusicVoiceでは9人のインタビューを連載。歌に見出された“ミューズ”はどのようにして輝き出したのか、その軌跡を辿りつつ「はじまりの唄」、そして歌への想いを聞く。【取材=木村武雄】

秋吉優花、歌のはじまり

 第3回大会。審査員の井上ヨシマサは「大音量に負けない抜けのある歌声。特に低音が良い」と評し、同じくゴスペラーズの黒沢 薫は2曲目に歌った「アイノカタチ」(MISIA)を「Aメロからサビまで物語を繋いだ。このテイクが一番良かった」と絶賛した。

 3回目の出場で初めて楽しさが緊張に勝った。4位という結果に悔しさもあるが充実感がある。

 爆発力のある声量と低音の力強さ、そして包容力が特徴的だ。しかし、第1回大会で大きくつまずいた。決勝大会に駒を進めるも結果は予選敗退。「歌が好きですし、練習もたくさんしてきたので、良い順位に行けると思いました。より歌が難しいと思いました」

 自信は打ち砕かれた。

 この予選で歌ったのは「366日」(HY)。

 「一人で歌う経験がなかったというのもありますし、上手く歌おう、良い成績を残そうという想いが強すぎて、音程とかそういう所に意識しすぎました。大会までに時間を掛けてボイストレーニングに通ったりすごく練習したのですごく悔しくて」

 悔しさのあまり、大会後、歌うのが嫌いになった。

 それでも第2回大会にエントリーした。「アーティストのライブを観に行ったら、改めて歌からパワーをもらっていることを感じて、届ける側でいたいとすごく思いました」

 決勝大会の予選を勝ち抜き7位を得た。躍進だ。

 もともと音楽が好きだが、良く聴くようになったのは中学校2年生の頃。エド・シーランにハマり、アルバムを延々と聴いた。その後も多くの音楽に触れた。なかでも大きく影響を受けたのは向井太一。「空」は高校の同級生とカラオケで歌うお決まりの歌だ。

 「向井太一さんの音楽はすごく好きです。純粋に好きで、ライブに行ったり、向井さんの音楽からパワーをもらって、私もそうなりたいと思いました」

 ブレスの使い方など、どこか向井太一にルーツを感じさせる。

 ただこの大会に出るまでは歌うことが得意だと思っていなかった。

 「歌が好きだという気持ちはありましたが、グループで活動していても、歌をメインにやりたいとは思っていなかったんです。でも、この企画で『私は歌いたいんだ』という本心を改めて知りました」

 知ったのは歌が好きということだけではない。「歌は、うまく歌おうとかそういう事ではないという事に気付いて。自分の気持ちや歌の意味を考えて、それを聴き手に伝える。それで初めて歌に込めた気持ちが伝わるんだということを学びました」

 歌と向き合い、大会を重ねるごとに成長し、粗削りだった歌は磨かれていった。そして、第3回大会のファイナリストライブで、あの曲と向き合った。「366日」(HY)。肩の力を抜き、曲に込められた思いを丁寧に歌いあげた。

 「自分が納得のいく表現が出来るようになってから披露したいと思っていましたので、今回披露できて、私の中の想いが成仏したかなって思います(笑)」

 歌うことの意味を知り、成長した。彼女からしてみれば第3回大会で一つの章を終えたようなもの。次回から新たな章が始まる。

 そんな彼女にとって歌はどういう存在なのか。

 「支えです。今は歌うのがすごく楽しくて、自分も歌の仕事しながら曲にパワーをもらっています。Nona Diamondsのメンバーのなかでも『グループでたくさん活動したいね、売れたいね』という話をしていて、HKT48もそうですが、みんな同じ方向に向きながら歌っているのが楽しいですし、嬉しい。歌はこれからも寄り添っていたい存在。一緒に歩んでいきたい存在です」

 歌に寄り添い、そして、人々の耳元にも寄り添う。与えられたパワーを今度は多くの人に与えていく。

「第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦 ファイナリストLIVE」より

 ここからは一問一答。

歌唱力決定戦、物語を紡ぐことができた

――第3回大会で「あなたのキスを数えましょう」(小柳ゆき)を歌いました。

 この曲は友達が勧めてくれて、聴き込んで良いなと思って。失恋ソングって、自分が失恋した事がなくても曲の世界観でそっちの気持ちにいける。特にこの曲はそう感じたので選曲しました。だけど、あの場に立ったら心臓がバクバクして…(笑)。でも、その時のベストを出し切った気持ちでした。それと同時に課題が毎回たくさん見つかるので、またたくさん練習して、もっといい歌を歌いたいなという気持ちになりました。

――どんな課題ですか?

 基礎体力が足りなくて、ロングトーンやビブラートとかがまだまだ足りないなと実感しましたし、前回の大会だと、野島樺乃ちゃんのビブラートがすごくて。そういうところにも差があると思っています。

――その後に「アイノカタチ」を歌って、黒沢さんがAメロ、Bメロからのサビに物語をちゃんと紡いでいて過去一良かったと。

 そういう風に伝えようと思って歌ったので、ちゃんとストーリーが出来ていると言ってくださったのは嬉しかったです。ホイットニー・ヒューストンの「I will always love you」(第2回大会決勝)を歌ったとき、黒沢さんから厳しい意見を下さりすごく悔しかったので、褒めてもらって嬉しかったです!

――第1回で歌うことの切さを知って、第2回で課題がみつかり、第3回でそういう言葉をもらって。1つの章が終わったような。

 まだまだですが、成長できていると思います。今まで歌う仕事はほとんどなくて、ソロで歌う時はあまり上手く行かない事が多くて。歌はやるだけついてくるんだと思いましたし、少しずつ響く歌を歌えるようになってきたんじゃないかなと思います。

「はじまりの唄」、0から100か

――「はじまりの唄」を最初に聴いた印象は?

 AKB48グループの曲のテイストとはまた違った曲で、この曲をAKB48グループみんなで集まって歌うことに意味があると思いましたし、挑戦になるんじゃないかと思いました。曲が難しいので、曲で勝負するというのが伝わる曲だと思います。普段は踊ったりしながら歌いますが、歌だけなので、聴いている人も歌に集中してくれると思っています。後半にフェイクするところがありますが、アイドルの仕事では絶対にやらないし、音域が広いのでそういう部分でも挑戦。「こういう曲もあるんだ」と興味をもってくれたらいいなと思います。

――下のハモリが多かったようですが、歌割をどう思いましたか。

 人数が多いので、サビを歌わないのが私にとって初めてでした。個人的な事で言うと、歌割の音程がすごく低くて苦労しました。自分では下の音域は出る方だと思っていたんですけど、かなり低くてビックリしたのと、歌い込まないと歌えない曲だと思いました。

――黒沢さんから言われたことは。

 フェイクは、レコーディングの時に三村さんと山崎さんの3人でオーディションみたいな形で決めたんです。私は黒沢さんに0か100かと言われて(笑)。ムラがあるけど出すときは100出すよねって。選ばれた時は、私が信頼されたから選ばれたんじゃなくて、3人とも声質良いし、100出せる時は私の声質がいいから任せましたって言われました。

――そう考えると決勝大会の「アイノカタチ」も100出たんですね。

 そうですね。ライブの時は上手に歌うとかじゃなくて、出し切る感じでぶつけてくださいと言われました。それと練習しすぎとも言われました。前日も当日も歌いすぎて、本番中に喉が死んでいると。だから練習しすぎないようにしてライブでぶつけてくださいねと。「あなたは大丈夫だから練習しないで下さい」って。そう言って下さって嬉しかったですし、リハーサルの時にそう言われて、ファイナリストライブ前日当日あまり練習しないようにしたんです。そしたら本当に上手くいきました。練習しすぎも良くないということも黒沢さんから学んだ1つです。

ファイナリストライブ、限界突破

――「自分の殻を破りたい」とファイナリストライブで「限界突破×サバイバー」を歌われました。

 大会で歌う曲とファイナリストライブで歌う曲は違うと思っていて、ファイナリストではとにかく楽しめる曲と、自分が見せたことがない一面を見せたいと思っていたので、限界突破したいなと思って選びました!

――なぜ限界突破したいんですか。

 サビ終わりにあるシャウトがかっこいいなと思って。シンプルにこの歌が好きというのもあって、ちょっとはじけようかなって。あの時、髪もオレンジにして、今までずっと緊張してきたのに、あの日はまったく緊張しなかったんです。あの日のライブを通して自分の殻が破れたというか、一番楽しみました。今までは良く見せようとかありましたが、あの歌でありのままの自分というか、全てを出し切った感じがありました。

――ほかに印象的だった曲はありますか。

 1曲目で、全員で「I Will Follow Him」(映画『天使にラブソングを』)を歌ったんですけど、オブリガードを担当したのが印象的でした。最初聞いた時、ゴスペルソングを1曲目にやるという事が衝撃的で。あのパートは、今まで歌えなかった子があの曲通して歌えるようになったみたいなパートらしくて、そこを任せてもらったのも嬉しかったです。前回大会で洋楽を歌ったことが活きてきて、繋がったなって思いました。この曲は高いところも結構あって、自分では出ない音域だと思っていたんですけど、1曲目の練習を通して自分の音域が広がりました。すごく自信に繋がりました。

――そういえば山崎(亜美瑠)さんが、秋吉さんの歌い方に憧れると言っていました。

 えー! 本当ですか! 嬉しい! 真反対な感じがするけど…。一緒に「ドライフラワー」(優里)をやったんですけど、対極にある歌声だなって感じました。亜美瑠ちゃんの高音と艶やかな感じが羨ましいです!

――高音の山崎さん、低音の秋吉さんという印象がありますね。良いコラボでした。それと将来の夢にソロライブがやりたいと。

 言った時は、そんなに軽い気持ちだったんですけど、最近ちゃんと思い始めたというか。Nona Diamondsで活動し始めてから心から歌うことが大好きだなと思えて。今は本当にソロライブやりたいです。

(おわり)

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