AKB48G“ミューズ”の軌跡:Nona Diamonds

古畑奈和(SKE48)

「歌は自由になれる時間」


記者:木村武雄

掲載:21年06月27日

読了時間:約8分

<AKB48G“ミューズ”の軌跡:Nona Diamonds(5)>

 AKB48国内6グループから最も魅力的な歌い手を決める『第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』のファイナリスト、池田裕楽(STU48)、野島樺乃(SKE48)、岡田奈々(AKB48/STU48)、秋吉優花(HKT48)、古畑奈和(SKE48)、矢野帆夏(STU48)、三村妃乃(NGT48)、山内鈴蘭(SKE48)と、審査員特別賞の山崎亜美瑠(NMB48)によるユニット「Nona Diamonds」が「はじまりの唄」でデビューする。作詞・作曲は決勝大会の審査員を務めたゴスペラーズ・黒沢 薫。「9つのダイヤモンド」を意味する造語を冠したユニット名には「一人一人の歌声がまるでダイヤモンドのようで、これからも磨いていき、まわりの楽器と共にキラキラと輝いてほしい」との思いが込められている。今回、MusicVoiceでは9人のインタビューを連載。歌に見出された“ミューズ”はどのようにして輝き出したのか、その軌跡を辿りつつ「はじまりの唄」、そして歌への想いを聞く。【取材=木村武雄】

古畑奈和、歌のはじまり

 ギターの歪んだ音がよく似合う。轟く雷鳴をもかき消すような歌声。鬼気迫る迫力に心も体も飲み込まれそうになる。かと思えば繊細なバラードも美しく紡ぐ。

 過去に行われたコンサートでのソロパフォーマンス。突如自身の髪を掴みハサミでバッサリと切った。ソロで見せる古畑はその物語に憑依するかのよう。観客もそうした姿に息を呑み、そして惹き込まれていく。

 初出場となった第3回歌唱力決定戦。順調に駒を進めた彼女は決勝のステージで、ロックナンバー「カワキヲアメク」(美波)と、バラード「to U」(Bank Band with Salyu)を歌った。

 疾走感のある前者はまくし立てるように歌い、「個性が出すぎたかなと思ったけど、思いが届いたのかなとホッとしている」と胸をなでおろした。

 一方、後者は「こういう時期なので少しでも優しい気持ちをこの曲を借りてお伝えしたい」と、しなやかに、そして包み込むように歌った。

 「個性が強く出た」と話したが、どれも個性を入れつつも忠実に歌い上げていた。オリジナル曲への敬意を示しているかのようで、誠実さが見え隠れする。

 うちに宿る感情を吐き出すかのような歌い方、そして、その場の空気で突発的に行動しているかのような姿はワクワクさせる。ただ、全てを成り行きに任せているわけではない。内情を明かすのは「恥ずかしいけど…」と照れ臭そうにこう語った。

 「感情的になると爆発するタイプなので、これをどうにか綺麗に見せたいというのはあります。ある程度、練習中でも感情を爆発させて『今日は行き過ぎたから減らそう』という具合に」

 それでは、普段はどのようなことを意識して歌っているのか。

 「練習はある程度して、歌詞の意味を考えたり、後ろで鳴ってる音の雰囲気に合わせたり、逆に音の雰囲気とは違う声を出したり。例えば、音は暗いけど、声は明るくとか。そういうことを考えています。でも基本はステージに立ったその時の自分が感じたままに歌う感じです。割と試行錯誤する時間が好きなので考えたりもしますが、練習とは違うぐわーっと込み上げてくる感情みたいなものは本番でしか出てこないので、本番で自分の中で曲が覚醒する感覚です」

 役者で言えば、台本を何度も読み返して言葉の裏を探り、あとは現場に立った時に生まれる感情に任せて芝居をするようなもの。エンターテイナーとしての本分がのぞく。

 そんな彼女だが、もともとこの大会に出場しようとは考えていなかった。

 「順位を決めるというのは私の中では苦手で。歌は好きなんですけど、その歌で争いが始まるのは純粋に好きで歌えなくなっちゃいそうで、私の中では見て見ぬふりをしてきた大会だったんです」

 しかし、出場して得るものは大きかった。

 「より歌を知る機会にもなりましたし、改めて歌うことが好きなんだということを知れたので良かったと思います。それと、生バンドの演奏で歌えることはほぼないので、貴重な経験ができてありがたかったです。歌に対しての気持ちだったり、成長していきたいと思ったり、歌への愛が深まった時間でした」

 そんな彼女にとって歌はどういう存在なのか。

 「私にとって歌は自由になれる時間です。何も考えずにただ歌の世界観に浸れて何も気にせずに自由になれる。色んなものになれるということもありますし、その曲の物語にお邪魔している感覚もあります。客観的に見て楽しんで歌っている曲の時もあれば、自分が主人公になっている時の曲とか、色んな楽しみ方ができる。でも一番は何も考えずに楽しんでいる時間です」

 楽しむ時間――。

 小さい頃から歌うのが好きだった。

 「毎日お風呂の中で家族と歌っていて、楽しい時間でした。それが大きいのかもしれないです。歌イコール楽しいという感じで」

 家族と楽しい時間を過ごす役割もあった音楽。それはいつしか、SKE48として歌う立場になり、その繋がりは更に広がりを見せている。クールな姿、何より楽しんでいる姿に、きっとファンはこう思っていることだろう。ファイナリストライブで歌った「BL」(女王蜂)の一節を拝借して…「きみはいつもイケてる」。

「第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦 ファイナリストLIVE」より

 ここからは一問一答。

歌唱力決定戦、考える時間が好き

――歌唱力決定戦に出場することで歌が好きなことを知れたと話されていますが、歌い方の良し悪しも発見できましたか。

 こういう歌い回しが苦手なんだというのも知れました。リハーサルの時に練習通りに上手くいかない時もあってなんでだろうと考えることもありました。それからステージにも慣れていきたいなと思いましたし、結構修正することや学ぶことが多かった機会でした。

――修正点は具体的に言うと?

 自分の感情に自分が持っていかれちゃうんです。それを一歩下がって客観視して、冷静でいられる自分でいなきゃいけないと思って本番前に修正しました。

――弱く歌わないといけないところを感情が高ぶって強くなってしまうとか?

 そうです。自分に飲まれてしまう感覚です。感情を爆発させたい、感情をみんなに伝えたいと思っても、ただ自分が闇雲に歌っていても伝わらないじゃないですか。落ち着いて伝えないと。自分だけどんどん乗っていっちゃうタイプなので、落ち着いて練習通りに出来るようにしないといけないと思って。伝えるって難しいなと思いますね。

――「カワキヲアメク」は古畑さんの印象にピッタリでしたが、「to U」は全く異なる印象で、二面性が見えました。なかでも「to U」はブレスや強弱がすごく大変だったと思いますが…。

 歌う時に昔からブレスはすごく意識しているんです。ブレスも休符も全部、歌のストーリーの一部だと思っています。息の吸い方、息の出る音、息の吸う音程とかも自分が気持ちよく世界観に乗れるように歌いたいですし、聞いている人にも邪魔をしない休みなどを大切にしています。バラードになるとそれが顕著に表れます。今までバラードを歌っているイメージは無いと思うので、ギャップを見せられたらなって思って、すごく楽しんでいました。

――休符はただの休みではなく、次の音への準備という考えもありますから。歌やオリジナルへのリスペクトも感じます。世間からすると髪をライブ中に切ったり、独特の世界観がある印象だと思いますが、話を聞いていると緻密に考えているようにも感じます。過去にはアイドルだから涙は見せないと言っていましたが、大事にされていることは?

 ん…出てこないなー(笑)。でも割とその時に起きた事に対して、どうアクションしていこうかとは考えています。メンバーが多いので、同じにならないように考えたり、その時その時で考えたりします。

「はじまりの唄」、エモさが合っている

――「はじまりの唄」を最初に聞いた時の印象は。

 黒沢さんが愛を持って書いてくださった歌詞だなと思いました。歌割も声質や、この大会にどういう感情で臨んできたか、今までのアイドル人生の道のりとかを考えた上で、各メンバーに合わせて入れているので、すごく歌いやすいです。音を聞いた時はアーティストさんだ~って不思議な感覚でした。しっとりしていて、ハーモニーもあって、すごいなと思いました。

――レコーディングはどうでしたか。

 レコーディングは緊張したんですけど、丁寧に指導してくださって、ゆっくり時間をかけてやりました。ここはこうやってみようと言ってくださるんですけど、私達の個性も大事にしていただき、上手く融合してくださった感じでした。

――黒沢さんからアドバイスは?

 歌い回しや、歌い方、こうやると優しくなるよと教えてくれたり、歌詞の意味を伝えやすくする為に1フレーズの中だけでも強弱がつくようにとか教えてくださいました。

――そのなかで発見は?

 おおまかな歌詞の流れをみて、1フレーズだけでも一言一言大事に伝えるというのは勉強になりました。練習していたときに、休むのも仕事と練習を止めてくださって。そうだよなー、がむしゃらに頑張ったもの勝ちっていうことじゃないよな、喉とかを整えて歌うことが大事だよねって考えさせられました。周りは練習しているのに休んだら置いていかれる感覚になることってあると思うんですけど、プロから休むことも大事と言われると安心して休めるというか、闇雲にやるのがいいことではないなと気付きました。整理する時間というか。喉を休めることが大事。本番前は不安で声出しとかいっぱいしちゃうけど、ちゃんと調節しながらやるというのはプロだなと思いました。

――なかでも印象的なフレーズは?

 黒沢さんが、楽曲の歌詞割を決めるにあたって、一番最初に私を軸に考えたと言ってくださって。私の歌割を先に考えてから他を当てはめていったと言ってくれた時はすごく嬉しかったです。私のパートは全部サビ前なんです。エモい感じが私に合っていると。一番最後のサビ前に<心から(身体中)今叫ぶんだ>という歌詞があるんですけど、私としては、歌いたいんだという気持ちとか、歌が好きという気持ちを込められるパートでもありますし、「心から今叫ぶんだ」という言葉を聞いただけでも強い気持ちが来るので、大切にしている部分です。

ファイナリストライブ、楽しめた

――さて、ファイナリストライブで岡田奈々さんと「革命デュアリズム」と歌ったのは反響が大きかったと思いますが、いかがでしたか。

 2人ともアンケートに「革命デュアリズム」を歌いたいって書いていて、2人して同じ曲を書くのはあまりないことなので、すごく嬉しかったです。歌ってみて、ハモる部分はすごく緊張したけど、最後まで楽しむことができました。生バンドも合う曲だし、一体感みたいな感じが楽しかったです。

――女王蜂の「BL」は初めて?

 初出しです! めちゃくちゃ自由にやらせていただきました。この曲を歌っている瞬間はすごく気持ちよかったです。練習をベースに本番でしか出せない感情で行こうみたいな感じで臨んだんですけど、リハーサルで結構乗ってしまったので、本番では冷静に行って、その中でも感情を乗せつつという感じで歌いました。めちゃくちゃ楽しめました!

(おわり)

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