AKB48G“ミューズ”の軌跡:Nona Diamonds

野島樺乃(SKE48)

「本当の私を教えてくれた」


記者:木村武雄

掲載:21年06月21日

読了時間:約8分

<AKB48G“ミューズ”の軌跡:Nona Diamonds(1)>

 AKB48国内6グループから最も魅力的な歌い手を決める『第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』のファイナリスト、池田裕楽(STU48)、野島樺乃(SKE48)、岡田奈々(AKB48/STU48)、山内鈴蘭(SKE48)、矢野帆夏(STU48)、三村妃乃(NGT48)、秋吉優花(HKT48)、古畑奈和(SKE48)と、審査員特別賞の山崎亜美瑠(NMB48)によるユニット「Nona Diamonds」が「はじまりの唄」でデビューする。作詞・作曲は決勝大会の審査員を務めたゴスペラーズ・黒沢 薫。「9つのダイヤモンド」を意味する造語を冠したユニット名には「一人一人の歌声がまるでダイヤモンドのようで、これからも磨いていき、まわりの楽器と共にキラキラと輝いてほしい」との思いが込められている。今回、MusicVoiceでは9人のインタビューを連載。歌に見出された“ミューズ”はどのようにして輝き出したのか、その軌跡を辿りつつ「はじまりの唄」、そして歌への想いを聞く。【取材=木村武雄】

野島樺乃、歌のはじまり

 母性を感じさせるような温かみのある歌声が印象的だ。

 第1回大会、当時17歳。まだSKE48で選抜にも選ばれたことがなかった彼女に、歌の女神は微笑んだ。初代歌姫の栄冠に「夢みたい」と目を輝かせた。第2回は不参加で、復帰した第3回大会は惜しくも準優勝だったが、歌という道を切り開いた運命に感謝した。

 その第3回大会で応援に駆け付けたSKE48の大場美奈は「優勝してから輝いていて嬉しい」と印象を明かした。「近くで見てくれたメンバーがそう言ってくれた事が本当に嬉しかった」と語る野島にとって歌唱力決定戦は、自分を輝かせ、そして「本当の私を知る」機会を与えてくれた場所だ。

 「『SKE48には歌える子がいるんだ』ということを知っていただけてグループにも貢献が出来たかなと思いました。その日のツイートも1万“いいね”がついて、あまり知られていなかった私がトレンド入りして不思議な感覚でした」

 まだ第1回の開催が発表されていない頃、野島はもがいていた。歌のレッスンはSKE48に加入する前から受けていた。歌には自信があった。しかし、プロの壁に後ずさりする。

 「厳しいこの世界で歌が上手い人はいっぱいいますし、プロとして見られることを考えたときに急に自信がなくなってしまって『特技とは言えないな…』と歌から一時、離れました。当時は、歌以外の特技もないので、何か見つけないと思ってバラエティに挑戦して、パンストも被ったし泥だらけにもなったし、いろいろやってみたけど、どれもしっくりこなくて迷走していました」

 最終的に行き着いたのはやっぱり「歌」だった。「もう一度歌と向き合ってみようと基礎から学びました」

 そんな彼女に歌の女神が手を差し伸べる。第1回大会の開催決定だ。「私には歌しかなかったので衝動的に出ることを決めました」

 歌はもともと好きだ。

 「物心が着いた時からです。お遊戯会でも歌うのが大好きでしたし、誰よりも張り切って本番を楽しんでいました。楽しい歌、悲しい歌、怒りの歌、ストレス発散の歌とかいろいろな歌がありますが『その時々の感情に合わせて歌えるのはいいな、音楽って楽しいな』って思っています」

 好きだった歌うこと。壁にぶち当たり一度は離れるが、いまこうして歌い続けている。

 「やっぱり歌っている時が本当の自分のように感じて自信を持てています。歌イコール本当の私みたいなものが自分の中にあって。それを気づかせてくれたのがこの大会です」

 SKE48でソロライブを3度行った。女神はいろんなチャンスを与えてくれた。そしてSKE48を6月末で卒業する。卒業後はボーカルグループ「&」(アンド)として活動していくことも決まっている。

 「いまは歌を失いたくないと思っています。歌は自分の体で表現するものなので、やめない限り、逃げない限り歌い続けられると思っています。なので、どんなことがあっても一生懸命歌い続けて、自分の武器にしていきたい。これから新しいボーカルグループに移っても私の歌が好き、私の歌を必要としてくださる方がいる環境を作れるように頑張りたいです」

 そんな彼女にこう質問をぶつけてみた。

――どんな人にも必ずチャンスが来ると思いますか?

 「来ると思います。チャンスは色んな所に落ちていると思っていて、ただ、どれを拾うかを選んでいたり、拾ってもベストを尽くせていないとか、自信がないからと踏みとどまっている気がします。私もそうでした。でもそういうことも全て自分に返って来ると思うので、何事も一生懸命に頑張った方がいいですし、頑張りたいです」

 女神は努力した者にしか微笑まない。

 ここからは一問一答。

「第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦 ファイナリストLIVE」より

歌唱力決定戦、歌詞を徹底分析

――歌う際、大事にしていることは?

 音程はもちろんですが、特に歌詞を大事にしています。歌うと決まったらその曲の歌詞を自分なりに解読しています。例えば、決勝大会で歌った「Wherever you are」(ONE OK ROCK)は英語詞ですので、翻訳してノートにストーリーを書いて、ここは温かく歌うとか、大切な人を思いながら歌うとか構成を作っています。

――歌う時はその曲の主人公になるのではなく、歌の世界を伝えることを意識されている?

 第1回大会の時に歌った「パート・オブ・ユア・ワールド」(リトル・マーメイド)は主人公のアリエルになり切っていました。構成を作らなくてもその時の感情に乗せて歌えばいいと思っていたので練習の時、毎回歌い方が違う感じでした。「Wherever you are」は男性から女性に贈る歌でもあると思いましたので、入り込むことなくその世界観を伝えようと、自分が書いたストーリーに沿って最後まで歌う感じでした。

――ご自身の曲「夢の在処へ」はどうでしたか。

 頂いた曲なので、解読するというより一文字一文字を大切にしました。この曲は感情移入しやすいですし、情景も浮かびやすいので、伝えやすいですし、歌いやすいです。自分の今まで辿ってきたストーリーに乗せながら歌っていました。

――決勝で「いのちの歌」(竹内まりや)を選曲した理由は?

 お母さんが大事にしている曲で、よく車を運転している時に口ずさんでいました。私も歌詞を調べて曲を聴き直した時にすごく染みる歌だなと思って。決勝大会では、順位を取りに行くというよりも、そこにいてくださる方に癒しを届けられたらいいなという思いでした。

――歌唱力決定戦で一番印象に残っていることは?

 第1回大会は緊張しなかったんです。緊張したのはタクシーの中ぐらいで、ステージに立ってからはそれがなくて。たぶんフワフワしていたと思うんです。地に足がついていない感じでした。1位と決まった時も涙は出なくてただ「嬉しい!」って。その日からの一週間はずっと夢の中にいる感じでした。

――第2回大会は不出場。そして第3回大会で復帰。順位を下げたくないというプレッシャーはありましたか。

 そういう思いもありました。歌が上手いというのは前提にあって、もっと高いレベルを求められるので、その上のレベルを行かないといけないなと思っていました。1位を獲ってから、いろんなところで歌わせていただく機会を頂きましたが、今回の歌唱力決定戦のステージが一番緊張して。リハーサルが終わった後、手がめちゃくちゃ震えていて、魔物がいるって思いました。あんなに緊張するステージはないっていうぐらいでした。

――審査員の井上ヨシマサさんは「チャンピオンとしての迫力があった」と評価されていましたが、本人は緊張や不安があったんですね。それが取れた瞬間は?

 取れた瞬間は歌い始めた時です。イントロが流れたときに緊張は無くなっていました。

「はじまりの唄」、歌を受け渡す曲

――最初に聴いた印象は?

 仮歌は女性の方が歌っていて、とても上手くてこれを超えられるかなと思いました(笑)。良い曲で聴き入って、歌詞も黒沢さんが私達の立場で書いて下さったと聞いて、共感する部分がたくさんありました。

――黒沢さんからアドバイスを受けたことは?

 黒沢は、歌詞を大切にされている方だなと思いました。語尾に泣きを入れたり、もっともどかしく絞りだす感じで声を出すとか、サビ終わりも2番Aメロに気持ちを託すように、サビの中だけで終わらせないでほしいというアドバイスを頂きました。とても難しかったです。歌詞のメモにいろいろ書きすぎて読めなくなるぐらいでした(笑)。

――バラードを皆で歌うのは難しいと思いますが、バランスはどうしましたか。

 バラードは一番粗が目立つと思っていて、どれだけ上手に歌い切れるかはそれぞれの力量にかかっているので、他の方のハーモニーを壊さないようにしっかりしようと思いましたし、繋げて1つの歌を完成させていく歌だと思うので、入りだしもその前の方の気持ちを受け取るように歌って、次の方にバトンを渡すように歌うことを意識しました。それが「はじまりの唄」ならではの歌い方だったと思います。

ファイナリストライブ

 第3回決勝大会でベスト8に勝ち進んだファイナリストらによる『第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦ファイナリストLIVE』が3月26日、千葉・舞浜アンフィシアターで開催された。生バンド編成でそれぞれが歌いたい曲などを披露した。シングル「はじまりの唄」のミュージックビデオは、そのライブでの映像とメンバーそれぞれのリップシーンによって作られている。

――何か発見はありましたか。

 それは「頑張りすぎない」ことです。黒沢さんが、ファイナリストライブ前日に私達メンバーに「もう早く寝なさい、練習はやめなさい」ってお父さんみたいなツイートしていて(笑)。レコーディングも休憩時間も休まずに練習するメンバーもいたんですけど、「休む時は休んで。それも仕事だよ」って教えてくれました。それをすごく大切にしています。

――ファイナリストライブで印象的だった場面は?

 山内鈴蘭さんとデュエットした「WINDING ROAD」(絢香×コブクロ)が印象に残っていて、練習の時からこのライブの一番と言ってもらえるような、自分たちにとっても一番楽しい瞬間にしようと約束していたので、練習よりもはるかに上手く納得できるステージになって本当に楽しかったです。あれだけ難しい歌をすごく練習して乗り越えて、自分たちが良かったねって言い合える結果に繋げられたのは、達成感もありますし、得られるものもたくさんありました。チャレンジして良かったと思います。

(おわり)

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