DEEN「大人になったね」その言葉の意味とは
INTERVIEW

DEEN

「大人になったね」その言葉の意味とは


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年12月22日

読了時間:約9分

 DEENが12月22日、初のWinter Special Album『シュプール』をリリース。これまでに季節をテーマにした「クロール」、「バタフライ」をリリースしてきた企画アルバム第三弾。冬のシティ・ポップをテーマにした収録曲はオリジナル曲に加え、 松任谷由実の「恋人はサンタクロース」と桑田佳祐の「白い恋人達」のカバーや、「愛の鐘が世界に響きますように… <spur style>」などセルフカバーで構成した全10曲を収録。 初回生産限定盤には特典CDとして☆Taku Takahashi (m-flo)による DEEN冬ベストソング MIX CD 「DEEN WINTER SONG PLAYLIST mixed by ☆Taku Takahashi (m-flo)」も収録した。インタビューでは『シュプール』の制作背景から、2人のクリスマスの思い出など、話を聞いた。【取材=村上順一】

池森が歌うとDEEN色になる

『シュプール』通常盤ジャケ写

――今年はカバーアルバム『POP IN CITY 〜for covers only〜』、オリジナルアルバム『TWILIGHT IN CITY 〜for lovers only〜』、そして今作『シュプール』と3枚のアルバムをリリースされました。精力的な1年になりました。

池森秀一 コロナ禍で制作期間が増えたというのもあるんですけど、すごく制作モードの一年でした。良い作品を作りたいというところに気持ちがいっていたんだと思います。なので、コロナ禍じゃなかったとしてもそういう年になっていたかもしれないです。

山根公路 コロナ禍でライブもお客さんをキャパの半分しか入れなかったり、来れなかった人もたくさんいたと思います。今年は3枚のアルバムを出せたということで、来れなかった方達とも繋がりを違う形で持つことができたのかなと感じています。

――今年リリースされた2作の反響はどのようにお2人に届いていますか。

池森秀一 カバーアルバム『POP IN CITY 〜for covers only〜』は、皆さん新鮮だったと言ってくれました。ファンのみんなの中では僕らがAORという音楽性を掲げてやっていたのは知っているので、シティ・ポップに対して驚きはなかったと思うんです。でも、こういった取材の中で「DEENがなぜシティ・ポップを?」をという話も結構ありました。僕らの中ではそんなに大きな変化とは捉えていなかったので、面白かったです。

山根公路 カバーアルバムで山下達郎さんの「RIDE ON TIME」を僕がソロで歌わせていただきました。誰もが知っている名曲なので、すごく喜んでもらえたのは嬉しかったです。自分も含め、昔から聴いていた曲をカバーさせていただいて、それを皆さんに聴いてもらえる日が来たというのは、学生時代の自分に「いつかこの曲を歌うぞ」と教えたくなります(笑)。

――今作に収録されている「White landscape」でも歌われていますが、山根さんの歌声は往年のシティ・ポップ歌手のフィーリングがすごく出ていますよね。

池森秀一 もう完全に世代ですからね。そこを通って生きてきましたから。

山根公路 僕は、逆にロックボーカリストのように、がなって歌うことはできないんですよ。なので、もんたよしのりさんのような歌い方に憧れたりします。

――山根さんはDEENではいつから歌われるように?

池森秀一 『Diamonds』(2006年リリース)というアルバムからオリジナルアルバムでは必ず一曲歌ってもらおうとなって。サザンオールスターズでいうところの原(由子)さんが歌うみたいなイメージです。あと、「RIDE ON TIME」でエピソードがあって、カバーアルバムを聴いていた僕の知り合いが「これ、池森の声じゃない」となって、ゲストボーカルを呼んだんだと思ったみたいで。それを聞いて、山根が歌うことも伝えていかなきゃなと思いましたから。

――山根さんが歌われる方だと思っていなかったんですね。今作を聴かせていただいて改めて池森さんの声の存在感、個性というのもカバー曲から伝わってきました。

山根公路 そこに助けられているところもすごくあるんです。変わった曲を作ったとしても池森が歌うとしっかりDEEN色になって。曲を作る者としてはすごく楽しいし、やりやすい部分もあります。

――池森さんに似ている声の歌手もいないですよね

池森秀一 歌い方を真似してくれている人はいても、確かにちょっと違うんですよね。でも、デビュー前に「何を歌っても同じに聞こえるんだよな」と言われたことがありました。なので、僕の中ではこの声はコンプレックスだった部分もあったんですよ。でも、結果的にDEEN色になったらそれでいいと思えて。

――オリジナリティがあるのが、悩みになることもあるんですね。さて、ニューアルバム『シュプール』は、オリジナル、カバー、セルフカバーと3種類の曲が収録されていますが、どんな作品にしようと思われたのでしょうか。

池森秀一 誰もが冬になるとこのアルバムを棚から引っ張り出してもらえるような作品、冬の名盤にしたいと思いました。 最初のスタートとして 誰もが知っている冬のJ-Popの曲を 2曲ぐらいカバーして収録しようと思いました。その中で選んだのはユーミンさんの「恋人がサンタクロース」と桑田(佳祐)さんの「白い恋人達」で。 この2曲の印象がすごく強くて完全にアルバムの色が決まりました。今回『シュプール』を描くのにすごく重要な役割を果たしている2曲なんです。

山根公路 この2曲を軸に他に入れる曲を考えていこうとなりました。

――ちなみに、カバー曲は他にはどんな候補があったんですか。

池森秀一 山下達郎さんの「クリスマス・イブ」とかもあったんですけど、 オリジナル曲とのテンポ感がちょっと違ったので今回は先ほど挙げた2曲になりました。

――「クリスマス・イブ」が選ばれていたら山根さんが歌われていた可能性も?

池森秀一 無きにしも非ずです(笑)。山根も器用だから近い雰囲気にできると思うんですけど。

山根公路 いやいや、滅相もない(笑)。「クリスマス・イブ」は、アレンジをするとなってもけっこう難しいなと思いました。

――カバーをするにあたってオリジナルを改めて分析されたりも?

池森秀一 ユーミンさんの曲はDEENで何度かカバーさせていただいたことがありました。 周りの人たちもユーミンさんのカバーをやると「すごくいいよ」と褒めてくれて。 当たり前ですけどやっぱりメロディーも歌詞もすごくいいんですよ。「恋人がサンタクロース」の歌詞は 読めば読むほど、よくこういった観点で歌詞を書くことができるなと、勉強になります。

 「白い恋人達」は桑田さんのソロの曲で、DEENがこの曲を歌ったらどうなるのか、というのがありました。それはすごく冒険でした。 先に桑田さんのファンの方には謝っておきますが、畏れ多いんですけど実際に歌ってみたら、「あれ、これDEENの作品なんじゃないか」と思ってしまったんです。それぐらい違和感を感じずに歌うことができて、DEENの曲にすることができたなと思いました。

山根公路 いろいろと試しているときに、この曲は跳ねさせたほうがいいと思ったんです。オリジナルはストレートなリズムなんですけど、跳ねた感じでやってみたら、「これ、めちゃくちゃいいじゃん」となって。

池森秀一 僕が感じたことなんですけど、桑田さんが歌っているものを聴くと、サビでスウィングしている感じがするんです。それもあって、その要素を楽曲全編にいれてみたら、上手くハマりました。とはいっても露骨に跳ねた感じにも聴こえるわけでもなくて。

山根公路 それによって、オリジナルとはまた違ったシティ・ポップのようなおしゃれな感じになったと感じています。

「DEEN、大人になったね」

――そして、オリジナル曲の「シュプール」は、シティ・ポップの良いところを凝縮された楽曲ですが、制作はどんな感じだったのでしょうか。

山根公路 今回オリジナル曲は6曲収録されていて、この曲は最後の方にできた曲です。5曲目くらいまでは、好きなように作っていたのですが、そこからどんな曲が足りないのかを考えました。そこで、明るくてテンポが軽快な曲が足りないと思って、制作した曲でした。

――アレンジャーは侑音さんでDEENではおなじみですよね。シティ・ポップに精通されている方なのでしょうか。

山根公路 カバーアルバムの時にシティ・ポップの曲について話していたんですけど、よく知らない曲もあったみたいです。でも、それが良かったのかオリジナルの先入観もなくアレンジができて、雰囲気を変えることに成功したのかなと思っていて。知りすぎていると、オリジナルのイメージから脱却できなかったかもしれないですし。

――歌詞に関してはどんなこだわり入れていますか。

池森秀一 冬の景色というのは全曲に投影しています。「シュプール」だったらスキーで滑った後にできる轍を、恋人たちが歩んできた道と、これから歩んでいく道というのをイメージしながら描いていたり、「マイナス 20°C」は、冬にしか現れない神秘的なオーロラを君と見にいく、という光景を思い浮かべたりしていて。僕は雪国の出身なので、雪を背景にしたストーリーというのは描きやすかったですね。

――今作で新しい試みもあるのでしょうか。

池森秀一 DEENの中でコーラスや要所ではやったことはありましたけど、主旋のメロディーをガッツリとファルセット(裏声)で歌うというのはやっていなかったんです。前作『TWILIGHT IN CITY 〜for lovers only〜』に収録した「twilight chinatown」という曲でも割と多めにファルセットで歌っていましたが、それがだんだん板についてきたのかなと思っています。

 「マイナス 20°C」はサビ全部がファルセットですし、4曲目の「Farewell to the snow」もファルセットが多いです。それは僕らの中では新しい試みであり変化の一つでした。たぶん、デビューアルバムを聴いて、今作を聴いてもらえたら「DEEN、大人になったね」と思ってもらえるんじゃないかなと(笑)。

――新しい表現方法でもあるんですね。

池森秀一 それをどう説得力を持って皆さんに提示できるかというのが、年齢と共にできてきたのかなという気がしています。今の音楽シーンではファルセットもすごくポピュラーな存在になっていて、シティ・ポップをやっている若いアーティストは、みんなすごく上手ですよね。

山根公路 ファルセットは確かにそうだね。僕の音域と池森の音域だと1音半くらい違って、僕の方がちょっとキーが高いんです。なので、曲を作る時は自分のキーで作って、池森に渡すときは少しキーを下げています。でも、今回2曲ほど僕のキーで歌ったまま渡したんですけど、高いところがファルセットになってすごくいいなと思いました。今はこれが新しいDEENの味になるんじゃないかなと感じています。

――最後に今作のリリースがクリスマスに近いので、お2人のクリスマスの印象的な思い出を教えてください。

池森秀一 そんなに盛り上がる思い出はないよ(笑)。

山根公路 ここ10年くらいはカウントダウンライブをやっていたので、クリスマスはもうリハーサルの思い出しかないからね。

――デビュー前とかのクリスマスはいかがですか。

池森秀一 札幌にいた学生時代のクリスマスはクラブで歌っていたんですけど、バブル絶頂だったからチップがすごいもらえたんですよ。それはすごく良い思い出です。なので、東京に出てきてからが一番貧乏でしたね(笑)。1988年、89年頃だったんですけどクリスマスの日は昼からすごい人でしたし、歌っていたクラブも超満員でしたから。僕自身もめちゃくちゃキラキラしていたと思います。

山根公路 本当にすごかったよね。

――山根さんが貰って嬉しかったプレゼントは?

山根公路 小さい頃なんですけど、ラジコンカーですね。それもすごく大きなラジコンカーで、2〜3万円くらいすると思うんですけど父が買ってきてくれました。当時は空き地もたくさんあったから、ラジコンを走らせる場所もあったんですよ。そのプレゼントが一番記憶に残っています。こんなこと言ったら過去にプレゼントをくれた人たちに怒られるかもしれないですけど(笑)。

(おわり)

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