足立佳奈「素直に書きたかった」記憶を辿ったニューアルバムに込めた想いとは
INTERVIEW

足立佳奈

「素直に書きたかった」記憶を辿ったニューアルバムに込めた想いとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年11月26日

読了時間:約8分

 岐阜県海津市出身のシンガーソングライター・足立佳奈が24日、3枚目のオリジナルアルバム『あなたがいて』をリリース。2014年に開催された「LINE×SONY MUSICオーディション」で、応募数12万5094人の中からグランプリを獲得してデビューのきっかけを掴み、その後、15秒ソング動画「キムチ~笑顔の作り方~」がTwitterで2500万回以上のインプレッションを記録。2017年8月30日にシングル「笑顔の作り方~キムチ~/ココロハレテ」でメジャーデビューした。

 2ndアルバム『 I 』(アイ)から約1年9カ月ぶりのリリースとなるニューアルバム『あなたがいて』は、wacciと初コラボした楽曲「キミとなら」をはじめ「Film」、アルバムからのリード曲として11月8日に先行配信された「This is a Love Story」、楽曲制作を足立一人で作り上げた「雨の日は」など全12曲を収録。足立佳奈のリアルが詰まった1枚に仕上がっている。インタビューでは素直に書きたかったと話すニューアルバムの制作背景、大切な人を思い浮かべながら書いたという楽曲に迫った。【取材=村上順一】

自分の中でモヤモヤしていたものが整理された

『あなたがいて』通常盤ジャケ写

――アルバムを意識したのはいつ頃からでした?

 今年の夏前にアルバムを作りたいというお話が出ました。これまでリリースしてきた楽曲もありましたし、そこから1カ月くらいで自分がいま表現したいものを作り始めました。その中で私が生まれてからこのアルバムを作るまでの22年間で関わってくださった人に向けた作品にしたいと思って。まず紙に誰に向けて歌うのか、というのをまとめてみました。それもあってスムーズに書くことが出来ました。

――1曲目に収録されている「なんかさ」も誰かに向けた曲?

 これは私の口癖なんです。なので、この曲は誰かに向けたというよりも、自分との会話みたいなイメージで作りました。それもあって音数も少なくして、声を重ねるアレンジにしてみました。

――プログラミングも足立さんが担当されて。

 ピアノが入っているんですけど、私がパソコンを使ってMIDIで弾いたものです。

――ギターではなくてピアノを選んだのも興味深いです。

 自然とそうなった感覚なんですけど、ピアノだとギターとは違う柔らかさや、レンジが広くて高い音と低い音を同時に出せるところが魅力的だなと思いました。前作「I」に収録されている「二子玉川」という曲ではギターの弾き語りに挑戦しましたが、今回のピアノというのも挑戦のひとつでもありました。

――ところで、アルバムを作るにあたって裏テーマみたいなものはありました?

 裏テーマというほどのものではないんですけど、自分の中で素直に書きたいという気持ちはありました。自分のパーソナルな部分を表現している曲もありますが、照れ臭い、恥ずかしいという感情は一旦置いておいて、素直に思っていること、事実をお伝えしたいと思って。それも大切にしていたことの一つでした。

――リアルな部分ですね。その一つに「2歳の記憶」という曲があって、お父さんのことを歌った曲ですね。この曲を書こうと思ったきっかけは?

 この曲は、ある方のライブを観に行ってその時のMCで「鮮明に覚えている小さい時の記憶はありますか」と話していたのがきっかけでした。記憶にまつわる歌を歌われていたんですけど、私はその歌を聴いて、こんなにも生き様を歌にできているってカッコいい。私の思うアーティストの理想像ってこういうことだなって。それで家に帰ってから私は「2歳の時の記憶が一番鮮明かも」と思って書きました。

――とはいえ、思い出したくないことでもあったのでは?

 確かにネガティブな記憶でもあるんですけど、それが今の自分を作ってくれた一つの思い出ですし、たった一人の私の父なので、その気持ちを素直に書きたいという思いがありました。これを書いたことで人の大切さがわかったり、自分でも納得出来ることがありました。それをこれからも大事にしていきたい、そう思えたのもこの歌を作れたからだなと思います。自分の中でモヤモヤしていたものが整理されたところもありました。

――発見があったんですね。さて、先行配信された「This is a Love Story」は、どんな心情の時に書かれたのでしょうか。

 アルバムのタイトルにも通じるあなたがいるから幸せ、というハッピーな気持ちになれるような曲を作りたいと思いました。これまでもいくつかラブソングは書いてい
ましたが、切ない曲が多かったんです。今回、アルバムとして色々な場面を切り取った曲を作りたいと思っていたので、苦しいことばかりじゃないよ、ということを伝えたくて。

 歌詞に<私たちなら問題ないわ あなたがいて今日も幸せよ>とあるんですけど、それは色んな場面に通ずるものがあって。例えば学校で怒られたら、すごく凹むんですけど、友達がいるから大丈夫だと思えた瞬間が沢山あります。ラブソングなんですけど、サビだけ切り取ったら恋人じゃなくて友達でも当てはまるようにしたい、という思いもあって過去の思い出を振り返りながら作った曲なんです。

――この曲はMVもあるんですよね。

 はい。歌詞の内容にリンクした恋人との話ではなくて、ラブストーリーの小説家という設定の作品になっています。MVの中でカップケーキを沢山食べているんですけど、何個食べたか皆さん数えてみてほしいです(笑)。人生で一番カップケーキを食べましたから。

――カップケーキを食べることになったのは、どんな理由があるんですか。

 私が曲を書いている時に甘いものが欲しくなって、カップケーキやベーグルをよく食べているので、それを再現しています。監督さんとお話しして私の日常とリンクさせた映像になりました。

動物園のライオンが自分と似ている、その意味とは

――「ライオンの居場所」はタイトルが面白いですけど、どんな心境の時に書かれたのでしょうか。

 家族と土砂降りの日に動物園に行った時のことです。ライオンがいたんですけど、そのライオンが自分と似ているなと思って書いた曲です。いま私は東京でお仕事をさせていただいていて、でも、岐阜の実家に帰ればすごく甘えられる場所があって、気の張り方がそれぞれ違うんです。

 ライオンも野生で暮らすのはすごく厳しいことだと思うんです。でも、動物園にいれば決まった時間にご飯も出てくるし、それは私の実家みたいな感じだなと思いました。あと、歌詞には最初、母とかも登場していたんですけど、この曲をプロデュースして下さったハマ・オカモトさんが「誰に向けて歌っているのかわかった方が聴き手は受け止めてくれるよ」とアドバイスをくださって。それで歌詞の言い回しや表現方法が変わりました。

――アレンジもユニークですよね。

 みんなに驚いて欲しい、という思いが漠然とですがイメージとしてあったので「サビで雰囲気を変えたい」、違う面を引き出せるようなものにしたいと、私からハマさんにお伝えしました。皆さん他のお仕事でお忙しい中、ビデオ通話で打ち合わせをさせていただいて作っていきました。

――私も曲の展開に驚きました。そして、「おやすみ」はMichael Kanekoさんと久しぶりの共作ですね。

 実は1年半くらい前に出来ていた曲です。アルバムを作ることになって歌詞を書き直しました。音に関してもMichaelさんと打ち合わせをさせていただきながら、改めて曲の雰囲気も調整していただいて。

――どんな想いが込められているのでしょうか。

 私は、寝る前にギターを持って思い出に浸ったり、なにか考える時間を設けたりしています。それが私の日常の中でのあるあるなんです。それをこの曲の主人公の男の子にテーマを置き換えて歌詞を書いてみました。女の子は一緒に想いを共有したりするのが好きですけど、男の子は多くを語らずその場を楽しむことをしている人が多いんじゃないかな、と思って書いた部分もあって。

――歌詞に<山札をめくって>とカードゲームをしているような描写は、そういうイメージからだったんですね。あと、<眠りにつけない夜>とありますが、足立さんは眠れない時はどうしてますか。

 そういう時は韓国ドラマをみたり、曲を作ったりしています。頑張って寝ようとしても、逆に目が冴えちゃうタイプなので、違うことをするんです(笑)。

――最後を締め括る楽曲として「雨の日は」を持ってきた意図は?

 何パターンも並べて聴いてみたんですけど、シンプルに最後に聴いて気持ち良かったんです。この曲を作る上で新しい発見もありました。それは虹を見た時に過去の恋人と似ているなと思ったんです。虹というのは忘れた頃にフッとキレイなものとして出てきて、すぐに消えてしまう。過去の恋人も同じで突然駅でばったり会ったりして。虹を見て出来た曲だったので。

――あと、歌詞の最後に出てくる<今日もひとりでに笑った>という言葉が印象的でした。

 曲と歌詞を同時進行で作った曲だったので、自然と出てきた言葉でした。すごく言葉としてハマりが良かったんです。

ジャケ写の意図

『あなたがいて』完全生産限定盤ジャケ写

――今回、パッケージとして豪華な完全生産限定盤がありますけど、足立さんのリクエストも反映されている?

 はい。パッケージとして手に取っていただくなら、このアルバムを買って良かったなと思ってもらいたいなと思いました。最近はCDを買うことも少なくなってきている中で、どうしたら喜んでもらえるだろう、と考えました。私だったらこういうのが入っていたら嬉しいなと思うものを入れました。

――ジャケ写は歌詞とリンクしたアイテムが並んでいますね。

 通常盤では新曲に込めた想いをジャケットを見ただけでもわかるように置きました。完全生産限定盤の方では自分の日常を曝け出したいと思いました。私はオレンジジュースをよく飲むので、それを置いてみたり。私が作詞をしている日常の1ページを表現しています。

――通常盤で見られる“m”のオブジェは何を意味しているんですか。

 「おやすみ」の歌詞にある<悲しみのマイナーにならなくていいのに>のマイナーを表しているのがmなんです。あと、「雨の日は」のきっかけになった虹や、飾られているお花はポピーなんですけど、このお花でアルバム全体を表現したいなと思って。ポピーの花言葉は“感謝”で、『あなたがいて』、「This is a Love Story」のテーマに寄り添っているなと思い選びました。

――手が差し伸べられていますけどこれは?

 今作で登場するいろんなあなたに繋がったらいいなと思って、その想いを手で表現しました。「誰の手?」という先入観を持ってもらいたくなかったので、手袋をしているんです。

――ひとつ一つにしっかり意味があって深いですね。さて、このアルバムがリリースされる11月24日が、ダーウィンの誕生日で「進化の日」みたいなんです。それにちなんで足立さんが進化したいことは?

 今回すごくリアルな想いをアルバムに詰め込んだんですけど、イチからフィクションで作品を作れるようにもなれたらいいなって。それが私の進化として皆さんに届けられる日がきたらいいなと思っています。

(おわり)

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