「50を過ぎたから出来ることがある」ビリケンブラザーズは幸運のしるし
INTERVIEW

ビリケンブラザーズ


記者:編集部

撮影:

掲載:21年11月23日

読了時間:約6分

 ビリー・ジュニア(ベース)、ケン・コテツ(ハーモニカ)、ブラザー・ヒトシ(ピアノ)の3人組バンドのビリケンブラザーズが17日、ミニアルバム「Trippin’ Orchestra」をリリースした。

 音楽に求めるものは年齢によって変わってくる。

 若い時は、思うようにならない自分の恋愛への救いや癒しであり、学校や家庭への不満のはけ口を求めたりという聞き方が多いのではないだろうか。

 それは「やる側」にも同じことが言えるように思う。どうすれば有名になれるか、今の生活から抜け出せるか。そのための手段としての音楽でありバンドだったりする。

 年を重ね人生経験も豊富になってくるとそんな動機も変わってくる。音楽そのものを楽しめるようになってくる。

 11月17日にデビューアルバム「Trippin Orchestra」を発売したビリケンブラザーズは、まさにそんな稀有な例だ。

 デビューアルバムなのだから「新人」ということになるのだろうがメンバー3人は全員50代。この30年あまりの日本の音楽シーンを支えてきた実績の持ち主ばかりだ。

 メンバーは、ビリー・ジュニア(ベース)、ケン・コテツ(ハーモニカ)、ブラザー・ヒトシ(ピアノ)という3人組。それぞれの頭文字をとったのがバンド名だ。“ビリー”は、三宅伸治バンドやウルフルズ、など多くのサポートをつとめてきた高橋“Jr.”知治、“ケン”は忌野清志郎に憧れたことがきっかけという日本屈指のハーモニカ奏者、ケン・コテツ。そして“ブラザー“は、去年、デビュー30周年を迎えたBEGINのピアニスト、上地等である。

 そんな3人の全員が詞曲を書いて歌っているというバンドだ。

ビリー「最初のきっかけは僕とコテツが大阪のシンボルでもある“ビリケン”に似てるというところからですね。冗談でビリケンブラザーズにしようかと話をしてたんです。ベースとハーモニカだとピアノが必要だなと思って、真っ先に思いついたのが、以前から渋谷のライブハウス、B.Y.Gでやっている「うたの日コンサート」とかでBEGINにベースで参加して仲の良かったヒトシなんですね」

ケン「今まではブルースのカバーが多かったし英語の曲に日本語を載せたりはしてたんですけど、完全オリジナルというのは今回が初めてですね。この歳になってこういうことをやるのは思ってなかったので、そういう意味では新人ということになりますね(笑)」

ブラザー「元THE BOOMの宮沢さんがおっしゃってたんですが、ずっと音楽をやってきて50歳くらいになるとみんな今後の自分の音楽性を考えるようになると。BEGINが30周年に向かうぞという時でしたし、栄昇も石垣島で色々やったりして、優も沖縄本島でそれぞれ動いていた中で僕も何かやりたいなと思ってたんで、声をかけられた時は嬉しかったですね」

3人がどんなキャリアの持ち主なのか。アルバムの一曲目『Stay With Me』が端的に物語っている。作曲はブラザー・ヒトシ、作詞は3人がそれぞれ担当、歌も歌っている自己紹介ソングだ。ブラザー・ヒトシは35年という自分の活動と家族と猫と犬と暮らす日常を。ケン・コテツはハーモニカのコンテストで勝ち上がりシカゴに乗り込んでいった武勇伝を。ビリー・ジュニアは、”イタリア生まれの帰国子女“”名家に生まれたアウトロー“という生い立ちを歌っている。曲は肩の力が抜けて心地よく揺れるスローレゲエだ。

ビリー「最初にヒトシが書いてきた曲なんで、みんなで作詞しようという事になって。最初の4行くらいで全部を語れって面白い題材じゃないですか。普段はあまり言いたくないんですけど、僕のひいお爺さんが高橋是清さん。父は商社の副社長。そんなことこういう時じゃないと恥ずかしくて言えないですよね(笑)」

ブラザー「みんな上手いしブルースやジャズをやればもっとかっこいい大人の音楽になったかもしれないけど、50過ぎてるんだし、カッコ悪いことも隠さないで全部見せようと思ってああいうシンプルなメロデイーになりました。“名家”って入っているのは、いいなと思いましたね。」

ケン「詞を書くことは、オリジナルを作ろうということになってから意識するようになりましたね。シンガーソングライター的なこととは無縁でした。音の聞こえ方も変わってきて、思いついたことや気になったことをメモするようになりました。生まれて初めてです(笑)」

メンバーそれぞれが詞曲を書いている6曲入りのアルバムのタイトルは「Trippin‘ Orchestra」。つまり、「旅する楽団」。BEGINのデビューアルバムのタイトルも「音楽旅団」。自分たちのやるべき音楽を求めてそれまでやってこなかった「島唄」にたどり着いたのが2000年までの10年間だった。

ビリケンブラザーズには、もう一人、欠かせないゲストヴォーカルがいる。やはり沖縄出身の女性シンガーソングライター、多和田えみ。彼女の声が3人の持ち味を更に心地よいものにしている。中でもブラザー・ヒトシが曲を書き、ケン・コテツとともに詞を書いてる『月の面影』は、男性が歌ったら絶対にこうはならないと男の失恋ソングになっている。

ビリケンブラザーズ&多和田えみ

ブラザー「ゲストヴォーカルの候補は何人かいたんですけど、えみちゃんがあまりに良すぎて(笑)。最近のラブソングって美しいラブソングが多くて、憂歌団の『胸が痛い』とか、上田正樹さんの『悲しい色やね』みたいな男の失恋の曲ってないじゃないですか。我々の頃は、ダメな男っていたし。『月の面影』は、そんな曲にしたいねって話してたんですね。僕らが歌うとそのものになってしまう(笑)。メロデイーがきれいだったんで、えみに歌ってもらいました」

ケン「こんな男、絶対に嫌だと思って書いてましたね(笑)。この昭和感ってみんなかっこ悪いと思ってやらない。10代、20代ではなく同世代に刺さればいいやと。こういうことも恥ずかし気もなくやるのがビリケンブラザーズですね」

ビリー「奥さんと喧嘩してる時に書いた、奥さんを讃える歌というのもあります(笑)。大人の男の実体験ね。昭和の僕らは全部実体験で行きたい(笑)」

ブラザー「この3人で本当にいいバランスになりましたね。この3人じゃないとこの雰囲気にはならないだろうって改めて感じます。まずはこのアルバムをもってツアーをやりたい。やれるところまで行きたいですね」。

 50を過ぎたから出来ることも歌えることもある。新しいことを始めるのに遅すぎることはない。ビリケンさんというのは、大阪の通天閣に祭られた幸運の神様の金色の像。やや尖ったヘヤースタイルと吊り上がった目と少年のような愛嬌のある笑顔。ビリケンブラザースは、聴いているだけで微笑ましくなる幸運のしるしのようだ。

 ビリケンブラザーズは12月9日(木)に渋谷B.Y.Gで初となるワンマンライブも決まっている。【インタビュー・文:田家秀樹】

作品情報

ビリケンブラザーズ
「Trippin’ Orchestra」
2021年11月17日(水)発売
定価:2,000円(税抜価格 1,818円) 
TECI-1750

「Trippin’ Orchestra」ジャケ写

【収録曲】
1. Stay With Me
2. キャプテン
3. Good Morning Blues
4. ガタゴトシーソー
5. 月の面影
6. パートナー

ライブ情報

ワンマンライブ決定
2021年12月9日 (木) 渋谷B.Y.G
開場18:00 / 開演19:00
前売 4,500円(税込) 当日5,000円(税込)(別途1ドリンクオーダー)
bygrock1969@yahoo.co.jp にて予約受付中!

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