早見優「今だからこそ何かをしなきゃ」本田美奈子.さんの散文から感じた想いとは
INTERVIEW

早見優

「今だからこそ何かをしなきゃ」本田美奈子.さんの散文から感じた想いとは


記者:村上順一

撮影:木村武雄

掲載:21年11月13日

読了時間:約12分

 歌手の早見優が11月6日に「Dear Earth」を配信リリースした。同曲はシンガーソングライターの半崎美子(※崎はたつさき)が作詞作曲し同日にリリースした、毎年11月3日に開催されているチャリティライブ『LIVE FOR LIFE』オフィシャルソングの「地球へ」の英語詞バージョンで、半崎の書いた歌詞を早見が英語に意訳して歌唱された作品。「地球へ」は本田美奈子.さんが闘病中に残した散文が元になり、たくさんの人たちに命のメッセージを伝えていこうという思いから生まれた楽曲。半崎が本田さんの想いを歌詞に落とし込み優しさ溢れる楽曲に仕上がった。その「地球へ」を早見が英訳詞した「Dear Earth」は、編曲に山川恵津子氏を迎え、早見の実の娘2人も参加。初の親子共演が実現し世代の繋がりを感じさせる曲となった。インタビューでは早見に「Dear Earth」に込めた想いや制作背景について、本田さんとの思い出など多岐に亘り話を聞いた。(取材=村上順一/撮影=木村武雄)

「地球サミット」での経験

木村武雄

早見優

――コロナ禍で早見さんはどんなことを考えていましたか。

 パフォーマンスができる場がなくなると、自分はなんのためにいるんだろうと不安な気持ちになり、ちょっと落ち込んでしまった時期もありましたから。あと、当たり前だったこと、友達と食事をしたり、同じ空間で歌を歌ったり聴いていただいたりすることが、すごく大切で幸せなことだったんだなと考えさせられる時間でした。娘たちはもっと不安になっているみたいなんですけど、親という立場として娘たちに絶対に良くなるし、そうじゃなくてもニューノーマルな時代が来るから、と話して、お互いに励まし合ってきました。

――娘さんは今アメリカにいらっしゃるんですよね。海外で暮らすためにどんな心持ちで行くのが良いですか。

 昔と今とでは違うかもしれませんが、しっかり自分の意見を言えないとアメリカではダメです。曖昧な返事をすると自分の意見がない人だと思われてしまうんです。それが正反対のことでも良くて意見を述べることが大切なんです。

――早見さんは日本に来られた時、ご自身の意見をしっかり話されて?

 はっきりと色々言いすぎて、マネージャーやディレクターに「その時は『はい』と言えばいいの!」と怒られていましたね(笑)。その文化の違いで悩んだんですけど、言いたいことは言いたいので、言い方を考えてました。「それはどうなんでしょう」と中立っぽい感じで入って、徐々に自分の意見を言ったり(笑)。

――試行錯誤されていたんですね。文化と言えば90年代にブラジルで行われた「地球サミット」という会議に参加されていました。どんな経験になったのでしょうか。

 作詞家の湯川れい子先生に勧めていただいて参加しました。湯川先生が作られた「地球環境・女性連絡会」というNGO団体があって、そこを代表して行かせていただきました。「地球サミット」はすごい方々が参加されると知って、「私なんか無理です」とお話したんですけど、湯川先生は20代の人が地球のことを考えてくれないと困ると言ってくださって。

――特に印象的だったことは?

 当時は携帯電話もなかったので、その時感じたことを公衆電話から日本の新聞記者の方に伝えて記事にしていただいていたのを覚えています。あと、ブラジルのリオに大きな広場があるんですけど、そこに各国がテントを張って環境に対してどういった取り組みをしているか発表していました。ドイツのテントが興味深くてスーパーマーケットの棚を再現していました。それに対してどこに一番目に行きますか、という問いがあって、ここに商品を並べるには企業の強さだったり、売れ筋だったりそういった力が働いているというのを知って。それまではこんな20代が参加して何ができるんだろうと気持ちが折れてしまうところもあったんですけど、ドイツのテントには一人ひとりが意識改革すれば大きなことに繋がると。

――ちなみに早見さんがスーパーに行った時にチェックされるところは?

 『はなまるマーケット』(TBS系)に出演していたことが活きているんですけど、入ってすぐに山積みになっている棚が旬のもので特売なんです。なので、そこに一番最初に目が行きますね。旬のものを体に入れることは健康にも良いですから。

――近年話題となっているSDGs(持続可能な開発目標)に関してはどのように考えていますか。

 これまでも色んなところが取り上げてはいたんですけど、企業が積極的に取り上げてくれたら急展開して。環境にも良くて経済も動くとわかってからガラッと変わったと思いました。世の中、バランスよくやっていかなければいけないんだろうなということを実感しました。

大切な人を思い浮かべながら歌った「Dear Earth」

――そして、本田美奈子.さんが書かれた散文が地球への危機感を綴ったもので、SDGsなどと繋がりますね。今回「Dear Earth」の制作の経緯はどんなものだったんですか。

 美奈子.ちゃんの事務所の社長の高杉さんと、私の事務所の社長故市瀬さんが、この散文を見て面白いから何か出来ないかという話しから始まりました。私が以前から環境問題に興味があることも市瀬社長が知っていて、その上、「LIVE FOR LIFE」という美奈子.ちゃんが残してくれたチャリティーのMCも十何年務めさせていただいていたので、企画から参加しないかとお話しをいただきました。そこから半崎美子さんが作詞作曲して下さいました。半崎さんは地球に住む一人ひとりに話しかけるように作詞して下さったので、よりメッセージが伝わるのかなと思います。

――その歌詞を早見さんが英訳されて。

 この英語バージョン「Dear Earth」は誰が歌うのか決まっていなかったんです。半崎さんが歌う、子どもたちが歌うという案もありました。毎年11月3日に開催されている『LIVE FOR LIFE』に向けて制作を進めていたのですが、昨年に続きコロナ禍で延期になって...。誰が歌うのかわからないけど、わかりやすい英語にしたいと思いました。

――そうしたら早見さんが歌うことになって。

 ガイドメロディを入れに行った時に「歌って」と急に言われて。私は「この曲は音域が高いから歌えない」と伝えたんですけど、プロデューサーが、「優が歌う方向で話が進んでるから、とりあえず歌って」って(笑)。

――けっこう軽い感じで進んでいったんですね。

 光栄でしたけど、やっぱり不安もあって。それで娘のありさだったらキーが合いそうだなと思ってプロデューサーの川原(伸司)さんに相談したら、マイクをアメリカに送るからこれでレコーディングしてもらってって。それを聞いたありさもビックリしていたんですけど、「GarageBand(音楽制作ソフトウェア)持ってるでしょ?」とそれで録音してもらって(笑)。ありさは試験中だったんですけど、忙しい中お願いして録音したものを送ってもらったんです。

――歌詞にある<Mother Earth>という言葉が印象的ですね。

 アレンジをしてくださった山川恵津子さんとお話しして地球というのは女性の趣がある、というところからです。それもあって女性の声で作れるといいねとなって。次世代に繋げたいという思いもあり、親子で参加するのも楽しいかなと思いました。あと、山川さんのお知り合いの10歳の女の子も参加してくれています。

――可愛い声はその子の声だったんですね。早見さんのレコーディングはいかがでした?

 半崎さんが歌った「地球へ」よりも少しテンポも早くなって、全体的にハートフルなものになっているんですけど、いただいた時に同じ曲でもアレンジでこんなに違うんだと驚きました。歌も仮歌を入れている時からどう表現しようかというのもイメージが湧いたので、レコーディングはスムーズでした。

――歌詞はどんなところにこだわって訳されましたか。

 直訳ではなく意訳したのですが、日本語詞が<眠らずに>と“ね”から始まる言葉だったので、英語も「Never」と“ね”から始まる単語を選んで作詞してみました。最初はなかなか進まなかったんですけど、山川さんのアレンジが上がってきてから早かったです。あとは締切のプレッシャーもありました(笑)。

――早見さんはこの「Dear Earth」を聴いてもらって皆さんにどんなことを感じて欲しいですか。

 地球のことを歌った曲なのですが、歌詞を書いている時に遠く離れている娘たちのことが思い浮かびました。無理していないかな、疲れていないかなとか、歌う時も大切な人を思い浮かべながら歌いました。

――過去のレコーディングでも、誰かを思い浮かべて歌うことも多かったのでしょうか。

 その曲によって変わるんですけど、誰かを思い浮かべて歌うこともありました。藤井隆さんと一緒に制作した「Right Here, Right Now」(Giorgio Moroder)のカバー時は、「炭酸で言うと微発泡な感じで」とかリクエストをいただいたり面白かったです。

――過去にも変わったリクエストはあったんですか。

 アイドル時代はディレクターさんから「好きな人を思い浮かべて歌って」とか言われたんですけど、「アイドルだから好きな人はいませんよ」とか言いながらレコーディングしてました。あと、あの頃は3ヶ月に1枚シングルをリリースしていてスケジュールも忙しかったので、レコーディングは割と風邪をひいていましたね。

――全然絶好調ではなくて。

 なので、自分も納得がいかなくて何度も録り直すんですけど、最終的には「これ以上良くならないから終わろう」とか言われたり。すごく悔しかったですね。逆に「PASSION」(1985)という曲は3回くらい歌ってオッケーが出たりして、そんな時もありました。ただ『COLORFUL BOX』(1983)というアルバムは全曲風邪ひいていたんですけど、すごく頑張ってレコーディングしていたのでぜひ聴いてみて下さい。このアルバムには今回アレンジしてくださった山川さんの曲も2曲入っています。今、80年代の曲が流行っているみたいで娘から「COLORFUL BOX」の曲を「すごくいい。これ知ってる?」と聞かれて。娘は私の曲だと思っていなかったみたいで(笑)。

「ありがとう」という言葉を伝えたい

木村武雄

早見優

――本田さんとの思い出にホットケーキが美味しかったと話していましたが、ハワイ出身の早見さんがそう言われるのなら、相当美味しかったんですね。

 あんなに美味しいホットケーキは初めて食べました。そして、すごく丸く焼けていて見た目も良くて。どうしてこんなに丸く出来るのと聞いたら、美奈子.ちゃんは「ミックスだよ」って。

――ホットケーキミックスですね(笑)。

 それで私も買って挑戦したんですけど、あんなに丸くは出来なくて。美奈子.ちゃんの歌もそうですけど全てが丁寧なんですよね。そして、舞台をやっていた時も喉を冷やしてはいけないと首にタオルを巻いて廊下を歩いていたのも印象に残っています。性格もすごくサバサバしていましたね。

――本田さんの歌声もアイドル時代とその後では声の印象も違いました。歌唱力、表現力の高さを痛感させられましたが、そういったケアもされていたんですね。

 美奈子.ちゃんは当時のアイドルの中でもすごかったです。レッスンもしっかり受けていたんじゃないかなと思います。『王様と私』というミュージカルを観に行った時に、耳を疑うくらい歌い方が変わっていて驚きました。あと、闘病中に歌った「アメイジング・グレイス」のアカペラにピアノの伴奏をつけたことがあって、キーが全然ずれていなくてびっくりしました。

――音感もすごく良かったんですね。早見さんもボイトレを受けて?

 アイドル時代はデビュー前にボイトレやお芝居など一通り受けましたけど、デビューしてからは時間がなくて出来ていなくて。今はボイトレもやっていて、舞台の時は舞台にあったレッスンを受けたりしています。今回「Dear Earth」のレコーディングに向けてのボイトレは時間がなかったので受けることはできなかったんです。

――ライブで歌うときなど、どんなことを意識して歌われていますか。

 昔の曲を歌う時はどうしても癖が出てしまうので、それを出ないように歌いたいとは思っていて。

――さて、今のアイドルシーン、早見さんはどう見えているのでしょうか。

 人数が多いので、心強くて羨ましいですね。もちろんグループならではの大変なこともあると思うんですけど。今の子たちはしっかりしているし、情報もたくさんあるからちゃんと自分持ちながら活動していけているのかなと思います。今のアイドルの方と対談させていただいたりするんですけど、髪型が被らないようにとかあるみたいで大変だなと思いました。私の時代はみんな(松田)聖子ちゃんカットで、けっこう被ってましたからね(笑)。あと今の子たちは20歳を過ぎてもアイドルをされていますけど、私たちは20歳になったら卒業と言われていたので、その違いというのは感じますね。

――早見さんは孤独を感じたこともありましたか?

 当時、アイドル同士で仲が良かったので孤独を感じることはなかったです。みんなでお菓子を分け合ったり楽しかったです。最近では松本伊代ちゃんと森口博子ちゃんの3人でジョイントコンサートをやったりしているんですけど、楽屋が一緒になると本番ギリギリまで喋ってますから(笑)。

――『LIVE FOR LIFE』でも一緒に出演されていますよね。はこの15年でどのような変化がありましたか。

本田美奈子.さん

最初の頃よりもチャリティーという意味を持つイベントをサポートする気持ちが年々増えてきたと感じています。私たちが美奈子.ちゃんの曲を歌うと、ファンの皆さんの目がすごくキラキラしているんです。それを見ると「みんなが本当に美奈子.ちゃんのことが好きで今でも応援してくれているんだ」というのが伝わってくるんです。彼女のことを好きというエネルギーが集まっているので、会場に美奈子.ちゃんがいるという気持ちになります。いつも素晴らしいイベントに参加させていただいて嬉しいです。

――最後に本田さんにメッセージを送るとしたらどんな言葉を送りますか。

 感謝の気持ち、「ありがとう」という言葉を伝えたいです。美奈子.ちゃんが残してくれたものはすごく大きいですし、『LIVE FOR LIFE』もその一つで難病と戦っている方達への励ましにも彼女はなっています。今回の楽曲の元になった散文も私たちが当たり前のように生かされている地球に対して、「今だからこそ何かをしなきゃいけない」と思わせてくれましたから。本当に感謝ですね。

(おわり)

楽曲音楽配信サイト

早見優「Dear Earth」

https://inpartmaint.lnk.to/tCZAqDcK

【早見優プロフィール】(歌手)

日本生まれ。3歳から14歳までをグァム、ハワイで育つ。
「夏色のナンシー」や「PASSION」などのヒット曲がある。
バイリンガルと国際感覚を生かしTV、舞台などで活躍。
上智大学比較文化学部日本文化学科を卒業。
2008年にワインエキスパート認定。2018年4月にダンスフィットネスZUMBA(R)のインストラクター認定、AFAAプライマリー・フィトネス・インストラクター認定。
NHK World「Dining with the Chef」やNHKラジオ「深夜便ビギナーズ」(毎月第三土曜日)のレギュラー出演中。
2018年にはデビュー35周年迎え、ベストアルバム「CELEBRATION」・写真集「サマーガール」を発売。
2020年10月にスレンダリーレコードよりRIGHT HERE RIGHT NOW をリリース。
2021年11月6日に「Dear Earth」(英訳詞も担当)を配信リリース。

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木村武雄
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