luz「どんな状況でも続けること」ファンへの想いと信念に迫る
INTERVIEW

luz

「どんな状況でも続けること」ファンへの想いと信念に迫る


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年10月30日

読了時間:約10分

 ソーシャルミュージックシーンにおいて絶大な人気を誇るluz(るす)が10月27日、約4年振りとなる4thアルバム『FAITH』をリリース。luzはソーシャルミュージックシーン発の男性アーティストで2010年に動画共有サイトに動画を初投稿し、これまでにアルバムを3作、シングル2枚をリリース。絵師・動画師のRAHWIA、ボカロPの奏音69と結成したクリエイターユニット・Royal Scandalとしても活動している。そして、2015年に立ち上げ、luz自身がオーガナイザーを務めるライブイベント「XYZ TOUR」は2019年に横浜アリーナ公演を開催するまでに規模を広げている。

 今作『FAITH』はサウンドプロデューサーに堀江晶太を迎え、リード曲「FAITH」、人気楽曲「FANATIC」を初収録し、加えて山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)、明希(シド)、ケンカイヨシ、すりぃ、奏音69、蝶々P、かいりきベアの作家陣による書き下ろし楽曲を収録。luzの今のスタンスが垣間見れる1枚に仕上がった。インタビューでは、この11年間での変化から、4年ぶりのフルアルバムに込めた想い、レコーディングに欠かせないものなど、多岐にわたり話を聞いた。【取材=村上順一】

誰かのオンリーワンになれたら

『FAITH』アナザージャケットカード

――7月にツアーを終えられましたが、改めてどんなツアーでしたか。

 10周年の際は無観客でライブというより一つのショーを届けるようなイメージでした。今回、有観客でライブが出来て、お客さんがいるのといないのとでは自分のテンション感がここまで違うのか、ということに気づかされたツアーでした。

――ファイナルでは涙も流されたとか。

 自分の中の思い出が蘇ってきて感極まってしまいました。ライブができなかった想いや、お客さんのマスク越しの目元でもわかる「やっと会えた」という表情がひしひしと伝わってきて。すごく心に残ったライブでした。

――ライブを始めた頃と今とのライブの変化は?

 当時と今の自分では、歌声もパフォーマンスも誰が見ても別人ですね。当時はいい意味でも悪い意味でもluzというものが定まっていなかった、色で言うと透明な感じだったと思うんです。今の自分のスタイル、信念で音楽をやりたいというのが固まって、こういうスタイルで届けたいというのが自分の中で表現できるようになって、よりライブが楽しくなりました。

――自身のスタイルが確立されたと思った瞬間は?

 ワンマンライブをやるようになってからです。自分が主催しているライブの経験を経て、自分はこういう風に見せたい、歌を届けたいというのが強く変わってきたと思います。

――自分の強みもわかってきた?

 僕は人と被りたくないという気持ちが何よりもあるんです。特に同じ界隈では似たことはしたくなくて。何をやっても「luzっぽいね」と言ってもらえたらいいなって。もともと最初からナンバーワンになろうとは思っていなくて、誰かのオンリーワンになれたらいいなとずっと思っています。それは今も昔も変わらないかもしれないです。

――とはいえナンバーワンになりたい時もありませんか。

 数字や結果はもちろん大事だと思うんですけど、どちらかというと自分が満足したものをちゃんと届けられたかどうかが大きいです。そこに対するこだわりで今まで活動してきたかなと思います。自分の中でライバルは常に自分なんです。

――今作もそういった気持ちの上で楽曲制作をされていて。

 はい。4年ぶりのアルバムなので、まず4年前の自分を超えなくてはいけないというのがありました。みなさんのおかげで得た色んな経験、自分のパフォーマンスや歌声は当時よりは前進していると思えたので、超えられた自信があります。あとはそれをファンの方に納得したものをちゃんと届けられるかどうかでした。

――経験値もそうですけど、他にも要因があったり?

 基本的に今までのアルバムやシングルは、セルフプロデュースでした。今回サウンド・プロデューサーとして堀江晶太さんに参加していただいたことが大きくて。作品のクオリティが何倍にもなりました。自分の中でのこだわりを全部、堀江さんは寛容的に汲んでくれて、それを2倍にして返してくれるというか。「こうしたい」と言ったものを、「じゃあ、こういう選択肢もあるからどう?」、「それもふまえてこういう風にしようよ」とか否定もせず、さらによくする選択肢をいただけて。

――堀江さんとは元々どのような繋がりがあったんですか。

 2ndワンマンライブで披露した楽曲「Dearest, Dearest」が堀江さんの提供曲なんです。この曲をライブで演奏した時のお客さんの反応がとてもよくて。自分が「こうしたい」と思っていたものとお客さんが求めているものが初めて合致した感じがありました。そして、「FANATIC」という2年前に作った曲でさらに確信に近づいたと感じていて。

――アルバムを制作して、また新しい何かが見えた部分もある?

 今回のアルバムで見えた点としては、自分は重い音が好きなんですけど、自分だったら選択しないカードを堀江さんは出してくれて、僕はそれに初めて気づけたというのがありました。

――それはどの曲でしょうか。

 13曲目の「Despair」です。絶望という意味を持つタイトルなんですけど、「FAITH」や「FANATIC」とはイメージが違って希望の歌で、自分はこういう希望の歌も歌えるんだなと思いました。堀江さんは単に明るい歌とかではなく、明るい中でもちゃんと悲壮感や絶望感、切なさを入れて僕らしさをその中に加えてくれたんです。そこが堀江さんの凄いところだと思っています。それはお互いの信頼関係がないとできないことだなと思います。

――コーラスの<lalala...>はライブの最後にやったら感動するだろうなと。

 正に、僕の堀江さんに対するリファレンスとしては、ライブのアンコールやラストでやって、定番曲としてお客さんがコロナ禍が終わった際にでも口ずさめるような楽曲がいいということだけ伝えたんです。堀江さん的には「聖歌みたいな歌を作りたい」とお話して。

luzが信仰しているものとは?


――さて、1曲目にアルバム表題曲「FAITH」の作詞はluzさんですが、書くにあたってどのような想いを込めましたか。

 「FANATIC」は教祖目線の楽曲になっているんですけど、「FAITH」はリスナーさんがこう思っていたらいいな、これくらい愛していたらいいなという希望、妄想なんです。ただ、第三者のよくない風潮だと思うんですけど、たとえば何かを好きと言ったら「それダサいよ」とか「それ嫌い」という人もいるじゃないですか? そういう人に対してのアンチテーゼも入っています。そういう人にも負けず、私はあなた、信仰しているものをちゃんと愛している、という歌詞になっています。

――その「FAITH」は「信仰」という意味ですが、このコンセプトにたどり着いた経緯は?

 「FANATIC」からです。“教祖ロック”というのか、人気投票でも「FANATIC」が1位、「Dearest, Dearest」が2位になって、みんなが崇拝するような楽曲を求めているのかなと思って。それって信仰の対象じゃないですか? それだったらコンセプト自体を信仰にしてしまえば面白いのではないかと思いました。

――楽曲を作ってもらうに当たってどのようなオファーをされたのでしょうか。

 全作家さんに共通してお願いしたのは、「信仰のテーマは各自それぞれに任せます」とお任せしました。教祖の信仰でもいいし、愛に対する信仰でもいいし、色んなものがあっていいと。コンセプトがあるとはいえ、ストーリーになっている必要はないと思っていて。ストーリーとして汲み取るのはリスナーだと思っています。

――luzさんが信仰しているものはありますか。

 多大な影響を受けたのはJanne Da ArcさんとAcid Black Cherryさんのボーカリストのyasuさんです。yasuさんのライブに活動休止される前にもっと行っておけばよかったなと思ったんです。自分がアーティストとして、「ライブ行けばよかった」と思われるくらいのアーティストにもっとなりたいと思いました。

――「ブラックレディ」はそのルーツを感じました。

 「ブラックレディー」は絶対に自分では出てこないだろうなと。奏音69さんが、今まで僕に提供してくれた楽曲たちのアンチテーゼソングが「ブラックレディー」なんです。今までの提供曲の歌詞のオマージュが全部入っていて、それが反対の意味になっていて。

――そして「SPIDER」は山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)さんが作っていて、最初に聴いた時に曲調が「オーラルっぽいな」と思ったんです。

 それは僕も凄いなと思って。僕が歌っているのにオーラルっぽいって凄いなと。実際に歌ってみたらめちゃくちゃ難しかったです。普段自分が歌わないジャンルで、あの音域であのリズムの取り方を今まで僕はしてこなかったんだなと気付きました。

――楽曲の個性があるんですよね。山中さんとはどのような繋がりが?

 元SuGの武瑠くんと僕が親交があって、武瑠くん経由で拓也さんを紹介して頂いたんです。いつかご一緒したいなと思っていたのでこのタイミングでご依頼させて頂きたいなと思って提案させて頂きました。そうしたら快く引き受けてくださいました。

――今作は色々な方に曲を書いて頂いていますが、仮歌はその方々が歌っているものでしょうか。

 拓也さんのはご本人で、あとはボーカロイドの方もいれば、別の方が歌唱しているものもあります。ケンカイヨシさんはご本人が歌っています。

――仮歌のバージョンも面白そうですね。

 そうなんです。ケンカイさんの仮歌が届いた時は、これ本当に僕合うのかなと思いました。「めっちゃR&Bだ」と思いましたから。

――これは挑戦の部分でもあったのかなと思いました。難しさで言ったら一番苦戦した曲は何でしょうか。

 「Despair」は自分が今まで使ったことのない音域の高さで歌っていて、史上最高音なんです。それが出せるようになったのも長年のボイストレーニングの成果というか。「Despair」は一番レコーディング苦戦したかもしれないです。

――ボイストレーニングはいつ頃から受けていたんですか。

 3、4年前くらいです。友人の紹介でyasuさんと全く同じ先生の所に通っています。

――その先生からはluzさんの歌の客観的な感想を言ってもらえたことはあるのでしょうか。

 声が唯一無二だと言っていただけて、どんな激しい音でもちゃんと聴き取れる、埋もれないと。

レコーディングで欠かせないものは「メガシャキ」!?

――曲順は悩みましたか。

 曲順も堀江さんと相談したんですけど、割とスムーズに決まりました。ちょっと悩んだのは後半の「Despair」や「Glare」、「FANATIC」の位置くらいでしょうか。「FANATIC」は、あの冒頭の音で全部シーンを変えることができるので、どこに置いても大丈夫だなという結論に至って、仕切り直しの激しいところに持ってこようという話になって結局後半の方に持ってきました。

――luzさんは、アルバムという作品自体をどう捉えていますか。今はサブスクなどで1曲1曲で聴かれる時代でもありますが。

 アルバムとして作るなら、僕はやっぱりコンセプトがしっかりしていないと作る意味がないかなと思っていて。ベストアルバムだったらまた話は変わりますが、『FAITH』はしっかりコンセプトを固めて作っています。コンセプトアルバムというのはアートワークもより強く関わってきます。音だけではなくデザインなど全てが一つの作品として繋がっていることがアルバムだと思います。

――最初からある程度アルバムのことも想定した上で曲を作らないと…。

 ところが全然想定していなかったんです(笑)。自然と『FAITH』に繋がったという感じです。普段のスタイルに統一感があったので、アルバムとして収録しても不自然はなかったかなという感じはありました。

――ところで、レコーディングに欠かせないものやジンクスはありますか。

 「メガシャキ」を飲むことです。

――「メガシャキ」はどんな位置付けで飲んでいる?

 今はドーピング的な感覚で(笑)。昔どうしてもレコーディングで眠い時があって、それを飲んだらすごく声が出たのでそこからだと思います。僕は毎回ワンコーラス録り終えたとしても絶対あとから録り直すんです。理由が、僕がスロースターターで、全部録り終わったあとに改めて聴くと「あれ、1番、声出てなくない?」みたいな。

――眠くなくても「メガシャキ」を飲むんですね(笑)。さて、luzさんが音楽活動をしていく中での信念みたいなものはありますか。

 どんな状況でも諦めないで一つのことを続けることです。この11年、後悔した出来事もありましたし、成功したことなど、様々なことがありました。その中でも歌い続けるということはやめなかったので、それをちゃんと続けられた自分がいたから、諦めなかったからこそ、今こうしてお話をする機会もあったと思えています。

――11年の中で歌をやめようかなと思った瞬間も少しはあったのでしょうか。

 もともとが音楽をやろうと思って始めたものではないので、それこそコロナ禍とかけっこう精神的なダメージはありました。ライブができないとか。

――コロナ禍はluzさんにとっても相当ダメージが大きかった?

 色々なチャンスを全部失ったような感じがしました。

――その中で、諦めないという気持ちになれたのはファンの存在?

 もうそれが一番強いです。そこで待ってくれている人がいなかったら前に進んでいなかったと思うし、そこで待ってくれている人が一人でもいるからこそ、僕は今でも頑張れるんだなって。

――最後にファンの方にメッセージをお願いします。

 今回4年ぶりとなってしまいましたアルバム『FAITH』ですが、ここまでお話した通り自分のこだわり、4年を超えた色んな想いがこもったアルバムを作ることができました。初めて聴く人も、待っていてくれた人も、この一枚をぜひ聴いてもらえたら嬉しいです。

(おわり)

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