Hakubi「好きになってよかった」新進気鋭のバンドの姿勢に迫る
INTERVIEW

Hakubi

「好きになってよかった」新進気鋭のバンドの姿勢に迫る


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年09月09日

読了時間:約10分

 京都発スリーピースバンドHakubiが9月8日、メジャーデビューアルバム『era』(イーラ)をリリース。2017年に結成され地元京都を中心に全国で活動中のHakubiは片桐(Vo&Gt)、マツイユウキ(Dr)、ヤスカワアル(Ba)の3人組。『夢の続き』、『黎明』2枚のe.pはライブ会場限定にも関わらずそれぞれ3,500枚を販売。2019年4月に3rd e.p『光芒』 を初の全国流通盤としてリリースした。2020年11月には福島中央テレビ開局50周年記念ドラマ『浜の朝日の嘘つきどもと』の主題歌に起用された「アカツキ」を皮切りに、2021年8月までに6作のシングルを配信リリースするなど精力的に活動。2020年USENインディーズ年間ランキングでは「午前 4 時、SNS」が 4 位にランクイン。さらに日本テレビ『バズリズム 02』“これがバズるぞ 2021”で2年連続 13 位にランクインするなど注目を集めている。

 記念すべきメジャー1作目となるアルバム『era』はデジタルシングル6曲と新曲4曲、再録2曲を加えた全12曲を収録し、名刺がわりの1枚となった。インタビューでは、メジャーデビューの心境を聞くとともに、アルバムの制作背景、バンドのスタンスなど話を聞いた。【取材=村上順一】

殻を破っていくという意味を込めた『era』

『era』初回限定盤ジャケ写

――片桐さん以外、お二人はカタカナ表記のお名前ですが、どんな意図があるのですか。

マツイユウキ シンプルにカタカナの方が格好いいかなと。あとは自分が好きなバンドマンもカタカナが入っている人が多かったというのもあります。

ヤスカワアル 僕は本名は漢字でアルなんですけど、漢字にすると読めない人が多かったので、カタカナの方が説明しなくて済むかなという理由からです。

――珍しいお名前ですが由来は?

ヤスカワアル 90年代後半に親が英会話教室をやっていて、その教室の名前がアルでした。定かではないんですけど、たぶんそこから来てるんじゃないかなと思います。

――片桐さんは苗字だけというのも潔いですね。

片桐 実は本名ではないんです。高校生の時にこの名前で弾き語りの活動を始めたのですが、それは自分じゃない誰かになりたいと思ったからなんです。あと、本名が自分には身に余る名前でちょっと重たかったというのもあるんですけど。

――では、片桐さんのお名前の由来はどこから?

片桐 この名前は近所にあるお好み焼き屋さんが片桐だったのでそこからとりました。すごく美味しいお好み焼き屋さんなんです。

――お好み焼き屋からでしたか。ところでバンド名は「特に優れているもの」という意味を持つ中国の故事成語の白眉が由来となっているとのことですが、これはどなたがつけられたんですか。

マツイユウキ 僕です。何か意味のあるバンド名が良いなと思っていました。高校受験の時に中国の故事成語の勉強をしたことを思い出して、辞書を見て端的で意味のある言葉を探していた中で見つけた言葉でした。あと、僕らがバンドを始めた時は3文字でローマ字のバンドが多かったので、僕らもローマ字にしたら、見間違えてくれる人がいるかもしれないなって(笑)。

――(笑)。さて、バンド結成の経緯もお聞きしたいです。

マツイユウキ 僕が大学を卒業してからやりたいことがなくて、唯一自分が続けていたことがドラムだったんです。それでバンドをやりたいと思って、同じ大学で学科も一緒だった片桐を誘いました。急いではいなかったので、そこからベースをゆっくり探し始めました。その中でTwitterのフォロワーだったアル君が、「久々にバンドをしたい」とツイートをしていたのを見つけて、お誘いのDMを送って。

――アルさんはお誘いを受けた時、どう思いました?

ヤスカワアル 深夜の4時くらいにDMが来たのを覚えています。それがすごい長文で。片桐のSNSなどのリンクが貼ってあって、そこで歌を聴いたら上手かったのでこれなら一緒にバンドをやっても良いかなと思いました。

――初めて音を合わせた時は運命的なものは感じました?

片桐 アル君だけがオリジナル曲を演奏するバンドを経験していたので、一緒に音を出した時にどう思われているのか、私の歌やギターが下手だなとか思われていたらやだな...とか私は考えていたので、実はその時のことはあまり覚えていないんです。とりあえずアル君にはバンドに入ってくれてありがとう、という気持ちです(笑)。

意識は変わってもスタンスは変えないで活動していきたい

――『era』でメジャーデビューされますが、活動する中での目標でした?

片桐 特にメジャーを目標、意識して活動していたわけではなかったんです。ただバンド活動をずっと続けていきたいとは思っていて、その先にメジャーという場所があったという感覚です。

――メジャーという場所を選んだのはなぜですか。

ヤスカワアル 色んなレーベルさんからお誘いを受けていました。その中ですごく僕たちの音楽を気に入ってくれたワーナーさんと一緒にやりたいと思ったんです。あと、メジャーからインディーズに戻るのは簡単ですけど、その逆は一握りのバンドしかできないと思うので、チャレンジしてみたいなと思いました。

――どんな意気込みで活動していきたいと思っていますか。

マツイユウキ メジャーに行けたというのはすごいことなんですけど、意識は変わったとしても、自分たちのスタンスは変えないで活動していきたいと思っています。

ヤスカワアル こういった取材もそうなんですけど、音楽でご飯を食べるというのはこういうことなんだなとすごく実感している最中なんです。とにかく頑張りたいという気持ちです。

片桐 これまでとは関わる人の数が多くなったので、自分の中で責任感が生まれました。弾き語りで1人やっていた時はいつでも簡単にやめることが出来たと思うんです。でも、今は多くの人の期待や気持ちを背負っているんだと強く感じています。

――バンドのコンセプトみたいなものはありますか。

片桐 あまりこういうバンドになろうというのはメンバーと話し合ったことはないんです。ライブハウスのKYOTO MUSEの方が「夜に寄り添う音楽」というキャッチコピーを考えて下さったんです。私たちもそれがすごく良いなと思ったので、それがコンセプトに近いのかも知れません。

――アルバムタイトルは『era』ですが、どんな想いが込められているのでしょうか。

ヤスカワアル 僕が持っていった案なのですが、変革期にある時代を表す言葉なんです。僕らは2020年にデビューする予定だったのですが、コロナ禍で一度ストップして、その時書いていた曲もリリースが出来なくなって。その変革期という意味とHakubiとして殻を破っていくという意味を込めて『era』にしました。

片桐 みんなでタイトル案を出し合って、Zoomで5時間ぐらい掛けて決めました。

――他にはどんな候補がありました?

片桐 セルフタイトルで『Hakubi』もありましたし、2nd e.pに「賽は投げられた」という曲があって、それはやるしかないという気持ちを込めた曲なんですけど、メジャーデビュー、やるしかないというのもあって「賽は投げられた」も候補にありました。

――ジャケ写は顔が影になっていますが、どのようなイメージで作られたのでしょうか。

片桐 最初はTシャツだけを撮影する予定でした。それは普段から着ているTシャツは長年着ていると年季が入ってきて味が出る、ということからでした。撮影している段階で、自分の姿も入ったものも撮ってもらっていて、その写真を見た時にカメラマンさんが「これ良いんじゃない?」と提案してくださったんです。その写真を見た私たちも良いなと思ってこの写真に決まりました。

その瞬間にしかないものを届けていきたい

『era』通常盤ジャケ写

――さて、今作でそれぞれがHakubiらしさがより出ているなと感じている曲は?

ヤスカワアル 僕は「アカツキ」です。今作の中でも特に気に入っています。この曲と「栞」はトウミヨウさんに編曲をお願いしまして、シーケンスの使い方や、ストリングスを生で録音していたり、サウンドへのこだわりが強かった曲なんです。そして、歌モノとしてもすごくしっかりとまとまっている楽曲だなと感じています。僕はライブでもこの曲を推していて、1曲目に演奏することも多いんです。

片桐 私も「アカツキ」なのですが、この曲が『era』を象徴していると思っていて。コロナ禍から自分が少しずつ立ち上がっていく姿をそのまま描いている曲です。自分の中ではこんなこと言って良いのかな? と葛藤をしながら歌詞を書いていたんですけど、完成してみて嘘偽りないありのままの自分を書けたと感じていて。音楽人生の中でこの曲が書けて本当に良かったなと思いました。

――片桐さんが歌詞を書く上で大切にしていることとは?

 私の歌詞は経験していないことはほとんど書いていなくて、経験したことを書いているというのが一つの軸になっているのかなと思います。それもあって去年からコロナ禍が始まって、外にあまり出れなかったので曲を書くのがすごく大変でした。そんな中ただ自分はもがいているだけで何をやっているんだろう? という気持ちを書いたのが「アカツキ」でした。

――今回、アルバムの歌詞を読んでいて私の中で3つキーワードが浮かびました。それは、「夢」と「大人」と「生きる」というもので、どの曲にもそれらが入っているように感じました。特に大人になるということへの不安感みたいなものを強く感じたのですが、どのような思いがあったのでしょうか。

片桐 社会に出ていくこと、社会人になることというのは、ある程度ルールがあって、言っても良いことや悪いことがはっきりしてしまう、どこかアイデンティティを出してはいけない、なくなってしまうんじゃないかと感じていて。大人になることというのは何かに寛容になっていったり、許したりすることだと思うんですけど。その考えていたことが自然と歌詞となって出たのかなと思います。

――マツイさんは今作でこれからのHakubiの指針になりそうだと感じた曲はありますか。

マツイユウキ 「在る日々」です。この曲は1番が終わってからEDMアレンジのブリッジがあるのですが、そこがサビと同じくらいのインパクトがあって、こういう手法は今後も使えるんじゃないかなと思いました。この曲が洋楽っぽい雰囲気があって好きだと言ってくれた人もいたので、僕らの新しい一面を見せることが出来た曲なんじゃないかなと思います。

――このアルバムの1曲目に収録された「栞」は映画『浜の朝日の嘘つきどもと』の主題歌ですが、映画を意識された部分も?

片桐 映画の脚本を読ませていただいて、すごく自分と繋がるところがありました。約束をした恩師がいて、その人との約束を果たすために奮闘する内容の映画なんです。その映画で登場する恩師と自分を支えてくれた家族や友人を重ねて書いた曲です。私の曲は家族へ向けて書いているものも多くて、「mirror」という楽曲は自分の名前をつけてくれた家族に向けて書いた最初の曲でもありました。

――それぞれの大切な人を重ねて聴いてもらうのも良いですね。さて、楽器演奏として聴いてほしいポイントは?

マツイユウキ バンドとしての新しいアプローチになったのは「悲しいほどに毎日は」という曲です。この曲はドラムがノリやすい4つ打ちの曲で、1st e.p『夢の続き』に収録されている「もう一つの世界」という曲以来で久しぶりでした。 自分の中で4年ぶりの挑戦だったので、注目してもらえたら嬉しいです。

ヤスカワアル 「栞」や「在る日々」はテーマとなるメロディーをベースで弾くところがあって、僕らの曲ではBメロでそういうアプローチが結構多いんですけど、そのメロディアスなテイストは僕の中で聴いていただきたいポイントです。

――「フレア」の歪んだベースもカッコいいですね。

ヤスカワアル この曲は1年間ぐらい温めていた曲で、ライブを意識して音作りをしました。僕は基本、ベースを指で弾くのがメインなんですけど、この「フレア」では珍しくピックで弾いているので、より激しいアッパーな曲になったと思います。

――片桐さんはギターで聴いて欲しいポイントは?

片桐 アルバムに「:||(リピート)」という曲が入っているんですけど、これはアルバムの中でも異質な曲で。私たちはe.pなどリリースする毎にちょっと変わった曲を入れたいと思っていて、それは「Hakubiってこんな曲もやるんだ」と思ってもらいたいというところからなんです。ギターのアレンジに関してもびっくりしてもらいたい部分でもあって。

――ファズサウンドがクールでした。ファズは何を使ったか覚えていますか?

片桐 ありがとうございます。確かビッグマフを使って弾いたと思います。この曲は沢山音を重ねていて面白いサウンドになっていると思うので、ぜひ聴いていただけたら嬉しいです。

――最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。

ヤスカワアル  メジャーに行ったからといって僕たちの活動する場所が大きく変わるわけではないと思っています。僕たちの活動する場所はライブハウスで、皆さんから「ライブハウスでみるHakubiが一番かっこいい」と思ってもらえるような活動をしていきたいです。

マツイユウキ 僕は早く両親を安心させてあげたいと思っています。『era』はHakubiの名刺代わりといった1枚になったと思っているのでたくさん聴いてもらいたいです。応援よろしくお願いします!

片桐 私たちはライブを大切にしていきたい、ライブバンドでいたいと思っていて、その瞬間にしかないものを届けていきたいと思っています。もちろんメジャーで音楽的にも人間的にも成長していきたいと思っています。今まで私達を応援してきてくれた人たちや、これから好きになってくれる人たちも、「Hakubiを好きになってよかった」と誇りを持ってもらえるようなバンドになりたいと思っているので、これからも応援宜しくお願いします!

(おわり)

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