マハラージャン、肝はベースとアナログシンセ!? 音楽制作のこだわりに迫る
INTERVIEW

マハラージャン

肝はベースとアナログシンセ!? 音楽制作のこだわりに迫る


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年08月05日

読了時間:約10分

 マハラージャンが7月21日、メジャーデビューアルバム『僕のスピな☆ムン太郎』をリリースした。社会人になって感じた強烈な劣等感や理不尽な仕打ちを題材にしたリリックに、ダンサブルで心地よいグルーヴを掛け合わせた「スパイス×ダンスミュージック」というスタイルと、クセの強いビジュアルで元会社員という経歴を持つマハラージャン。6月には一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取るYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に登場し「セーラ☆ムン太郎」を歌唱すると※230万再生と話題に。(※8月上旬現在)今作『僕のスピな☆ムン太郎』にはハマ・オカモト(OKAMOTO’S)や石若駿(Dr)など実力派ミュージシャンが参加し、極上のグルーヴを感じられる1枚に仕上がった。インタビューでは音楽を始めたきっかけから、会社員時代で学んだこと、そしてアナログシンセへのこだわりなど多岐に亘り、話を聞いた。【取材=村上順一】

映画の比喩表現は歌詞にも通じる

――最初に音楽を意識したのはいつ頃でした?

 中学生の頃に吹奏楽部でトランペットをやっていて、「三年生を送る会」で「テキーラ」という曲を演奏しました。その時に16小節くらいアドリブソロを吹いたんですけど、それがけっこう盛り上がって「自分はこういうのが得意なんだ」と思ったのが一番意識した時です。

――トランペットを始めたきっかけは?

 もともと小児喘息持ちで、小学校1年生の時に肺活量を鍛えるといいということで剣道をやっていたんです。それで4年生から入れる吹奏楽部があって、たまたま父が持っていたトランペットがあったので「やってみよう」と思って。

――理系の大学に行って、そのあとCMの制作会社に入ったとお聞きしています。

 もともと親がエンジニアなので「理系以外認めない」感じでした。僕は絵を描くことや音楽が得意だったので、そういう方面に行きたかったんですけど、結局理系の方に行くことになって。でも芸術関係の方が向いていると思っていたので映画の勉強をするところに入りました。その時も、映画の勉強をするというのは口実で、モラトリアム期間を長くして音楽を続けてなんとかしたかったというのがありました。でも就職しないといけなくなってしまって。

――映画は今もけっこう観られるのでしょうか。

 最近はあまり観れていないんですけど、いっときは1日に3本観るというのを続けていました。良い映画って比喩表現が映像の中に結構あって、歌詞も同じなんです。監督の個人的な体験とかそういうものが色濃く反映されている映画ほど深く刺さるものになるなと、観ていて凄く思いました。歌詞もそうでありたいと思って、「いいことがしたい」という曲に反映できたので、何かを掴んだ感覚がありました。

――音楽に一歩踏み出せなかったのはなぜですか。

 自分で自信を持って出せる音楽が出来ていなくて、それがないと活動できないと思っていました。機材も必要だし、色々考えたらまずは普通に働いた方がいいなと思って就職の道を選びました。友達からも、働くんだったら業界が近い方がいいんじゃないかという助言があって、CMの制作会社に入りました。

――CM制作会社で得た学んだことは?

 クオリティの高い映像を作っているところだったので、プロの仕事のなんたるかというのは学んだと思います。厳しい現場にずっといたのでよく怒られていましたけど(笑)。

――音楽に振り切ろうと思ったタイミングは?

 「いいことがしたい」という曲が出来た時に、「これならいける」と思ったんです。

――作曲やアレンジは独学ですか。

 自分一人だけだと難しいなと思い、L'Arc-en-Cielさんのアレンジなどを手掛けている陶山隼さんに教えていただいてました。

――陶山さんからはどんなことを教えて頂いたのでしょう?

 DTMのイロハというか本当に細かいところから曲の作り方など…僕が作ろうとしている楽曲には具体的なビジョンがあったので、それについて「どうしたらそうなるか」というのを教えていただいてました。そういうゴールがあったことで凄くやりやすかったんだと思います。

――教えて頂く中で、ご自身の中の曲の肝がどこにあるかということなどはわかりましたか。

 肝はベースで、一番こだわりたいポイントです。

――ギターはどのタイミングで始めたのでしょうか。

 小学校6年生から触り始めて、大学生の頃に先生について習いました。その先生はファンクとかカッティングが上手で鍛えて頂きました。やりたいのは感覚的に今聴いて気持ちよい感じ。昔のものは昔のものでいいんですけど、今っぽく作りたいというのがあります。

――マハラージャンさんの音楽はそのジャンルのフォーカスする部分が凄く上手いですよね。CMは15秒や30秒で印象的なものを作るという部分があると思うのですが、過去にやっていたCMのお仕事が活きているのかなと。

 それはあると思います。「映像の美味しい部分はここだ」というのを選ぶ力もスタッフみんな必要なんです。それは音楽も同じなので、どこが強いのか、どこが美味しいのか、みたいなところは鍛えられたのではないかと思います。

アナログシンセへのこだわり

――先月、YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に出られて反響を集めていましたが、ご自身のまわりで変化はありましたか。

 めちゃくちゃ反響があって、10何年連絡をとっていない人からメッセージが来たりしました。けっこうまわりの見る目も変わったというか…。

――音楽をやっていること自体を知らないという方もいたり?

 そうですね。もともと社会人をやっていたので、あまり表立って顔出しをしてやりたくなかったというのがありました。パッと見誰かわからないんですけど、気づいた人が連絡してきてくれて驚いてました。

――楽曲についてですが、まずタイトルが目を惹きます。タイトルをつけるにあたりどういった発想があるのでしょうか。

 「いいことがしたい」という曲が出来てからのタイトル、まずそれがあってだんだんスタイルが出来てきたところがありまして。自分の中での軸があって、その派生です。

――色んなことを彷彿とさせる言葉もありますが、それは敢えて?

 人によってそう捉える方もいらっしゃるかもしれませんが、僕としては曲に合ったものをつけているという。響きだったり字面だったりと。(自分にとって)いいかどうか、グッとくるかどうかが重要なんです。

――例えば今作に収録されている「僕のスピな人」の「スピ」はスピリチュアル?

 それも色々解釈してもらった方がいいなと思ってます。「スピリチュアル」も「スピリット」も「インスピレーション」の「スピ」でもいいし、人によって聴き方が変わればいいなと。基本的には素敵な、ビビッとくる運命の瞬間みたいなところから着想しているんですけど、別にそれに限定している歌詞ではないので、色々解釈してもらってもいいなと思います。

――「僕のスピな人」はすごくキャッチーですが、どこから制作されたのでしょうか。

 曲によってそれぞれなのですが、この曲は珍しく歌詞が先に出来て、そのあとメロディが出来たんです。それまでわりとファンクっぽいダンスチューンが多かったんですけど、この歌詞を書いてみた時に浮かんでくるイメージは、今音楽になっているものがそのまま浮かんできたのでそれを形にしたという感じです。

――「僕のスピな人」で一番こだわった点は?

 アナログシンセを使っているところです。僕はアナログシンセの音が大好きで、それが入っていることがグッと耳を引きつけるというか。Minimoog、Prophet-5、JUNO-106(※3つともアナログシンセサイザー)を使っています。

――アナログシンセに興味を持たれたのはどんなタイミングだったのでしょうか。

 好きなアーティストが使っている音、ジャミロクワイも使っていますし、レディオヘッドもProphet-5を使っているので手に入れたいと思ってました。最初はみんな安い機材を求めるというか、実機は買えないと思ってソフトウェアのシンセを買ったりするじゃないですか? それにしかできない表現もあると思うんですけど、やはりどうしても欲しい音が実機のアナログシンセで楽器屋に行って弾いてみたら、やっぱり買わなきゃいけない音をしているんです。

――完全に魅了されて。

 こんないい音をしているんだから、何に変えても表現するのに必要があるなと。Prophet-5は復刻された物を買ってますけど、Minimoogは当時の前期型で一番最初に出た物です。是非、シンセにも注目して聴いてほしいです。

――デジタルとアナログの違いを感じるところは?

 存在感です。やはり説得力が違うと思います。僕はYouTubeで何回も買う前に調べて、なんとか自分を安い方で納得させようとしたけど無理だったんです。安い物だと、メロディのニュアンスが「あ、なんかザラザラしているな」とか、そういうところが結局一番大きく影響していると思っていて。だからやはりいい物でやりたいという。

――「Romantic (ロマンティック) が止まらない」もシンセが凄いですが、ドラムもSIMMONSなど実機のシンセで?

 それが手に入らなくて、デジタルでそれが再現できるものを使いました。そこは実機じゃなくてすみません(笑)。

――オリジナルのよさも残しつつ今の音に昇華されていると思います。シンコペーションしているのが印象的で。オリジナルはこんなにシンコペーションしていないですよね?

 せっかくカバーするんだったら自分なりのものを入れたいと思ってやりました。シンコペーションが好きなのでそこはポイントです。やりすぎかなと思うんですけど、僕はダンスをやっていたこともあって、踊れるかどうかというのを気にしているんです。

――オリジナルを知っている人ほど面白さがわかるカバーかと。この楽曲を選んだ理由は?

 シンセだったり昔のサウンドの面白い部分を持っている曲だからです。

――他にもやってみたい昔の楽曲もある?

 YMOの「Tong Poo(トンプー/東風)」が大好きなのでカバーしてみたいです。

音源では出せない、ライブでしか出せないものを届ける

――こだわりのサウンドをもう少しお聞きしたいのですが、注目して欲しいところは?

 「いうぞ」という曲はベースをMinimoogで弾いています。そのベースが強烈で使えてよかったです。あと、シンセも色々使っていて、KORGの3,000円くらいの小型シンセなんですけど、それが太い音でめちゃくちゃいい仕事をするんですよ。そういう良いアナログの部分を持った曲にもなったので凄く気に入っています。

――マハラージャンさんの音の嗜好が完全にパッケージされていますね。「いうぞ」は歌詞が大胆ですよね。

 最初は曲ありきでした。メロディが出来たあとに歌詞をどうしようかなと思ったんですけど、<お母さんにいうぞ>という部分を思いついて、それを入れて曲を一回作った時に自然と身体が踊ってしまって。でも、こんな恥ずかしい歌詞を自分で歌いたくないな、と最初は思ってたんですけど、改めてやってみたらいいかもと完成させました。歌詞は変えようと思ったんですけど最初にイメージしたものが一番強いと感じたので、そのまま「いうぞ」にしました。

――ということは歌詞の中の<小川さん>と<後藤さん>も最初から変わっていない?

 はい。何回も変えようとしましたけど、それ以外がはまらなくて(笑)。「いうぞ」みたいなフェチが入った曲がちゃんと形になってよかったです。僕のフェチを助けるために歌詞があるようなもので。

――「次いくよ」は決意表明のような意味合いにもとれそうですね。

 うわ、やっちゃった、というのは色々やっているとあることです。でもその時に「次いくよ」との着想で作った曲です。この世界観でどこまで行けるのかみたいなところを歌詞では考えました。

――「行列」にもベースにハマ・オカモト(OKAMOTO’S)さん、ドラムに石若駿さんが参加されていますが、マハラージャンさんからのリクエスト?

 そうです。ベースは上手い人にやって頂きたいというのと、キャッチーなセンスを持ちつつ上手いのはハマさんだなと思って。石若さんはライブを観た時に凄く音がよいなと思って絶対参加して頂きたいと思いました。2人とも本当に天才です。しかも2人は僕の現場で初めて会ったということで、最初はちょっと気を遣ったりしていたんですけど、現場重ねて行く中でいい感じになっていって。特に「地獄 Part2」と「次いくよ」と「行列」のレコーディングの時は、2回目のレコーディングだったんですけど凄く楽しかったです。音楽の奇跡がそこで起きているというか、いい化学反応が起きていました。

――例えば「行列」だと、マハラージャンさんからのリクエストも反映していたり?

 変拍子だけど4拍子で実は作っている曲で、「アクセントが強くなって変拍子になってしまったというニュアンスでやってほしい」とか、そのアクセントの位置やドラムの細かい部分などのイメージは伝えさせていただきました。そのうえで石若さんが「これがいいんじゃないか」と、さらに面白くしてくれて、ハマさんがそこにまたいいベースを足してくれたりしています。

――2021年もあと半年を切りましたが、どんな活動をしていきたいですか。

 音源では出せない、ライブでしか出せないものを届けることです。ライブだと色んなものが解放されるので全然違って聴こえると思うんですけど、それが音楽の魅力だし、そんなマジカルをどんどんおこしていきたい。それが自分のやりたいことだしやるべきことだなと。そういうところを追求していきたいです。

――ライブに対してのモットーはありますか。

 熱を伝えることです。ライブは凄く神聖な“スピリチュアル”な瞬間があると思うんですけど、そういう感覚を味わえるような音楽を作っていきたいです。

(おわり)

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