AK-69「格が違う」ニューアルバムに込めたカリスマの矜持
INTERVIEW

AK-69

「格が違う」ニューアルバムに込めたカリスマの矜持


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年06月14日

読了時間:約12分

 ラッパーのAK-69が9日、Def Jam Recordingsから4枚目となるフルアルバム『The Race』をリリースした。強力な個性を持った豪華客演との楽曲、先行配信された「Racin’ feat. ちゃんみな 」を含む全10曲収録。本作は、ここまで走り続けてきたAK-69の矜持が刻まれている。インタビューでは、『The Race』に込めたメッセージを解き明かすとともに、レジェンドになるためにラッパーとしてのゴール、最後のシーンを決めているというAK-69に迫った。【取材=村上順一】

恰好つけたいというところが一番

『The Race』通常盤ジャケ写

――AK-69さんはマイクを握って25年とのことですが、そもそもラッパーになったきっかけは?

 中学生の時に初めて尾崎豊さんの歌に衝撃を受けて「俺も歌いたい」と思いました。ギターを買って尾崎さんの曲のコード進行を使って自分で歌を作ったりして(笑)。そのあとちょっと道を外してしまい、荒んだ生活の中でギターで歌っているというのが何かしっくりこなくて。でも音楽は好きだから続けていたんです。

 服屋でバイトしていて、そこがHIP HOPの服を扱っていて、ギャングスタ・ラップとかに詳しい先輩が働いていたんです。それで彼に色々とHIP HOPのことを教えてもらって。なんだか悪そうな人達がラップで稼いでいかついネックレスして、いい車に乗って女をはべらかして、みたいな。そういったMVにもやられたし、荒んだ生活の中で培ったメッセージを歌って、それが人に賞賛されているという衝撃が単純に恰好いいと思って「俺もやりたい」となったのがきっかけです。

――名古屋のHIP HOPシーンは相当危険だったと聞きますが…。

 もう無茶苦茶ですよ! 名古屋と福岡は鎖国状態で。何かのきっかけを探して、他のところから来た人にちょっかいだしてましたから。もう、なんだったんですかね(笑)。血気盛んというか。

――そんなシーンからもAK-69さんは衝撃を受けて、ステージで登りつめて行こうと?

 そうですね。怖い人達しかやっていないという音楽だったから。俺もちょっとグレてたし、当時はガキだったので「ただの不良じゃ嫌だ。音楽やっている不良が格好いい!」と思っていたのは確かです。何かが欲しいみたいな時に見つかったのがHIP HOPだったんです。だからそこに一気にのめりこんだのは大きかったです。

――ちなみに、当時HIP HOPを始める前のAK-69さんをご自身で振り返るとどう感じますか。

 もうゴミですよね(笑)。俺の中のダメなところの塊みたいな感じで。暴力で自分の立ち位置をつくっているつもりになったり、人に迷惑をかけることばかりしてました。もう当時のことは武勇伝として語りたいと全く思わないですから。でも、それがあったから色々気付けたこともありました。

――HIP HOPに出会って人生が変わったと思われますが、25年の中でターニングポイントを3つ挙げるとしたら?

 17歳から始めて最初はただの不良じゃ嫌だからやっていただけなんですけど、恥ずかしい話、塀の向こうにいて出てきたのが19歳の終わりぐらいの頃だったのかな…その時に一番初めに音源を出したのがB-ninjah & AK-69というグループでした。B-ninjahと組んでマイクコンテストに出て優勝して、カセットテープを出したんですけど、それが地元の仲間内で凄く受けたんです。2,000〜3,000本くらい売れたのかな? それまでは当時のスターだった奴らに勝てるとか、並べるとも思っていなかったというか、だけど初めて「俺いけるんじゃねえか?」という良い勘違いをしたのがその時です。

 第二が、2007年に「Ding Ding Dong~心の鐘~」という曲をリリースして、それが急速に全国区に名前を広げる曲になったんです。そこで飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃が始まって行くんですけど、間違いなくターニングポイントになると思います。

 そして、第三が前の事務所、MSを抜けてFlying B Entertainmentを自分で立ち上げた時です。第二章の始まりというか。今まで勢いで全部上手く行っていたことが、「あれ?」と勢いが止まって、何をやっても勢いがある時みたいな結果が返ってこないという連続で。もうやめようかなというくらい気分的にも滅入ったというか、プライベートでも色々あったんですけど。それでも持ち直した時が、一番ドラマチックだったなと思います。

――それはどう乗り越えたのでしょうか。

 本当にシンプルなんですけど、恰好つけたいというところが一番でしたね。このまま終わって恰好いいのか悪いのかと言ったら恰好悪い、それをなんとかしたいという。恰好つけるというのは口で言ったり着飾ったりと、そういうことではなく、本当の意味で恰好つけるためにはめちゃくちゃ努力しなければいけないんですけど。その中で人と違うことをしたい、というのがどんどん大きくなっていって。もとから人と違うことをして恰好つけたいというのが原点なので、それがモチベーションでした。

――そこは変わっていないところなんですね。逆に変わったことはありますか。

 それに対して取り組む努力や考える量、思いの強さはどんどん増しています。自分についているファンの数も単純に昔とは違いますし、今背負っているチームの数も違います。色んな意味で恰好つけなきゃいけない相手がたくさんになっているので、それに対する努力の仕方は変わった部分かな。

――ところで、SNSで“第六感は信じた方がいい”、といったコメントをされていましたが、何か思うところがあったのでしょうか。

 俺は変な人を察知する能力が凄く高いんですよ。「人間として邪悪」というのがわかってしまう。やっぱり生きていると凄い嫌だと思うこともあって、そこには理由がちゃんとあるんです。そこを無理して「そんなことないよな」と思う必要もないし、冷たいように聞こえるかもしれないけど、嫌だと思ったら“切る”というのは実は凄い大事で、そこは第六感を信じていて。変なことに気をとられたくないなって。本当にいい人間としかいたくないという。俺はまだ慈善事業で人の心を浄化するフェーズに入っていないので(笑)。

俺は一周お前より周ってるから

――今回『The Race』がリリースされますが、このタイトルになったいきさつは?

 コロナ禍で色んなものが淘汰されて、確信できたことからです。俺はコロナ禍で実際に会社経営的に見たらツアーが飛んで何千万円とか失っていますけど、それよりもこの期間にチームのウィークポイントを修復したりすることに時間やお金を使ったので、少しも悲観的になっていないです。そういう中で、このコロナ禍でビクともしない体力というのは長年走り続け、結果を生み続けてきた証だと思って。やってきたことに対しての自信がみなぎっている、それは、走っているのは俺だけど、それを支えてくれているチームがいるのもレースの世界観と同じだと感じてコンセプトを「レースにしよう」となりました。

――自信というのはどこで感じることが多いですか。

 名古屋城の配信ライブや武道館など、かましたいライブはいつも赤字覚悟でやっているんですけど、そういうのもやれたという自信というのかな…俺は全国区になってから15年くらい経っているけど、ずっと勢いのあるまま走れているわけではないし、勢いが止まって「もうやべえ」というのも経験した上での最前線なんですよね。それは自信に繋がっていると思います。

 だから今の瞬間速度で俺に並んでいるアーティストもいるんですけど、やってきた年数が違うので、格が違うんですよ。物質的なもので言っても、車や時計やネックレスだったり、持っている物も違って当然で。そこで俺と並んだつもりとなったら大間違いだよという。歌の中でも言っているんですけど、「お前、俺と今並んでデッドヒートしているつもりかもしれねえけど、俺は一周お前より周ってるから」と。

――キャリアが違うと。その中で様々なゲストとコラボされていますが、どのように決めたんですか。

 ほぼ自然な流れで決まりましたね。その中でちゃんみながオファーを受けてくれたというのが意外だったというか、すごく嬉しかったです。というのも彼女は基本、客演をやらないので、オファーしてもやってくれるのかなというのはありました。今回実現しなかったラッパーもいたんですけど、結果これで良かったです。

――ラッパーでこの人いいなと惹かれる要素は?

 フロウと、言葉が恰好いいかそうでないかというところですかね。絶対の基準は難しいです。その人によって良さが違うので。生き様重視タイプもいますし…でも、やっぱりアーティストとしてカリスマ性があるかないかというのは大きいです。どれだけフロウが恰好良かったり、海外のアーティストっぽいフロウが歌えるとかでも、カリスマ性がない奴と俺はやりたいとは思わないですから。アーティストって楽曲の良し悪しや歌の上手さよりもカリスマ性って凄く大事なので。

――今回収録されている曲に「PPAP」があるんですけど、これはピコ太郎さんの「PPAP」と関係性はあるのでしょうか。

 全くないです(笑)。たまたま字面は一緒なんですけど、パテック・フィリップというブランドの時計の「PP」という頭文字と、オーデマ・ピゲいうもう一つの好きな時計があって、その頭文字「AP」を並べると「PPAP」になるんですよ。この二つが世界二大時計と言われていて、一番歴史があるブランドとして、時計好きや金持ちの会話に「今はPPAPで世界は回っているよね」という表現でスラング的に出てくるんですけど、それを歌にしたんです。

――AK-69さんが今付けている時計はかなり高価?

 これは3,400万円くらいですね。

――すごい! AK-69のSNSを見るとフェラーリを購入したりすごく夢があると感じます。

 俺も見栄を張ってやっているわけではないし、しかもInstagramで見せているのはほんの一部というか全部ではないので。あれを見せることは、ラッパーとしてのステイタスというのはもちろんあるんですけど、それと同時に若い子が「こうなれる」とわかってほしいという。でも、見て嫌な気分になる人も絶対いると思うんです。でもその人達のことは全く考えていないです。嫌な気持ちになる人はどうでもよくて。それよりも、あれを見て「うわ! 俺もこういう風になりたい!」と思う若者を生むことの方が俺は大事だと思っています。野球選手やサッカー選手は年棒などが公開されてて「頑張ったらこれくらい稼げるんだ」とイメージできるじゃないですか? ラッパーって成功したらどうなるんだと皆目検討つかなくないですか?

――確かにあまりイメージできないです。

 俺は一番ラッパーでヤバいなと思ったのが、金のネックレスをしてローライダー乗ってお姉ちゃんを連れて豪邸でラップをしているというもので。それが「ヤバい! 俺もこういう風になりたい!」と思ったところからスタートしているので。だから「いや、自分なんて」とか、「これ、いくらですか?」と聞かれて「いやそんな、まあまあ…」みたいな、そういうのってラッパーらしくないんですよ。ラッパーだったらあからさまに高い時計を「ああこれ? 3,400万円」と言うのがラッパーだと俺は思ってます。

 絶対に不可能なことってもちろんありますけど、イメージできたことってほぼ実現できるということを凄く言いたいです。俺も特別な才能があったわけでもないのに。HIP HOPの良さって、音楽性だけではなく自分の人生を投影、プラスすることによってこういう風になれるという良い例だと思うので、それがHIP HOPの良さでもあるし、想いの強さでここまで来れるということは本当に言いたいなと思います。

最後のシーンを決めている

『The Race』初回盤ジャケ写

――今作でAK-69さんがキーとなっていると思われる楽曲は?

 あえて挙げるなら「It’s not a game」かな。「俺が最強だ」と言ってるんですけど、あの歌は誰もいないサーキットで憂いを感じているイメージの歌なんです。このレースで散って行った奴は何人も見ているし、そういった痛みや影の部分を歌っていて。自分も何回も負けたこともあるし、そこの部分がリアルかなと。勢いで勝ち続けている時なんて、実際の話まだ本当の勝ちではなくて。それだけのドラマを経て影の部分を歌っているこの曲はアルバムのキーになっているかなと。

――負けてからが本当のスタートという部分も?

 そうですね。やっぱりそこを乗り越えられないと。

――AK-69さんにとっての敗北とはどんな時でしょうか。

 自分が滅入っている時ですかね。いつでもこうやって元気と自信にみなぎっていれば世話ないんですけど、やっぱりこう見えて滅入る時があるので。会社を立ち上げて一発目の再起をかけた武道館をやる前とかは、本当に今思うと負けていましたね。でも投げ出さなかったので結局負けではないんですけど、自分に負けそうになった瞬間というのはあります。CDがこの人より売れた、売れてない、というのは日常茶飯事ありますけど、トータルで見た時にこのレースって、瞬間速度や瞬間風速で争っていないという、結果俺がマイクを置いた時にどれだけ偉大なアーティストだったかということ、そこがこのレースのゴールだと思うので、自分に負けないというところはずっと保ちたいと思ってます。

 このアルバムを締めくくる「Victory Lap feat.SALU」で歌っているのは、一貫して俺の作品で言ってきている自分との戦いだと。ちゃんみなとかとデッドヒートしている場面を歌ってたりして、「俺に並んだと思うなよ」と歌っているけど、それって実は本当はどうでもいいことで、実は敵は誰もいない、自分との戦いだということを最後に歌っているんです。自分に負けないことがおのずと結果を生んでいく、「こいつを抜かしたいから」ではなく、自分に負けないと自分に挑んでいくことで、結果誰も寄せ付けないスピードになっていたということを今回表現できたかなと。

――「マイクを置いた時」というお話がありましたが、ここからどんな姿を見せていきたいと思われますか。

 俺はもう最後のシーンを決めています。最後のステージも、そこで話すことも決まっているのでそこに向かって走り続けるだけなんです。それのために、自分のプロジェクトだけではなくてHIP HOPのシーン自体がもっと大きなマーケットになるでっかいプロジェクトも今水面下で動かしています。それが出来た暁にはきっとこのゲームがもっと大きくなって、俺の最後の華々しいフィナーレを迎える状況にできるんじゃないかなという。

 AK-69としてのプロジェクトだけで言えば、例えばドームにソロで立つとかって、やりたいことですけど想像がちょっとクリアにできないというか。自分が今考えているプロジェクトはシーンのためでもあり自分のためでもあるというか、これをやらないと日本と海外のHIP HOPのマーケットの差が埋まらないと思っています。

――あと何年、というのは決まっているのでしょうか。

 そこは状況によって多少変わってくると思っています。俺はそう長くはフロントマンでやろうとは思っていないので。自分の子供ができて、その子がHIP HOPを聴き始めて「やりたい」となる歳まで今の状態を保っていられるかというと、到底それはちょっと無理だと感じていて。

 やっぱり子供に対してどうやったら恰好がつくかなと言ったら「俺の親父AK-69なんだ」と言って友達が「マジで! AK-69なの? めっちゃヤバいじゃん!」となるためにも、そこまで恰好つけ続けたい。それに対して何が一番かと考えた時に、レジェンドになることだと思って。自分の真空パックの仕方みたいなものを考えて、最高沸点で最後を迎える、というところが子供のためにも、チームの人達の誇りにもなると思っています。

(おわり)

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