内田真礼「歌いたい気持ちは変わらない」どんな状況下でも変わらない信念
INTERVIEW

内田真礼

「歌いたい気持ちは変わらない」どんな状況下でも変わらない信念


記者:榑林史章

撮影:

掲載:21年05月22日

読了時間:約10分

 声優・歌手の内田真礼が12日、12thシングル「ストロボメモリー」をリリース。表題曲はTVアニメ『SSSS.DYNAZENON』ED主題歌で、カップリングには内田の現在の内面が投影された「カナリア」と、2018年にリリースした8thシングル表題曲のリミックスバージョン「youthful beautiful -y0c1e Remix-」を収録。今作の制作エピソードを聞くとともに、今作に反映されたという彼女の現在の心境を語ってもらった。【取材=榑林史章】

思い出は良くも悪くも自分を縛るもの

「ストロボメモリー」初回盤ジャケ写

――「ストロボメモリー」は、ちょっと独特なテンション感のある曲ですね。

 激しく歌うのも違うし、静かに歌っても違うし、どういう風に歌えば正解なのか、すごく考えました。それで100%の力を入れて歌うのではなく、少し力を抜いて70%くらいで歌いました。例えばサビの高音のところは、思い切り声を張り上げて当てに行くのではなく、どちらかと言うと少し力が抜けているように歌ったんですけど、その案配がすごく難しかったです。

――でも最後のサビはすごく熱くて、そこに向かってうたっているような雰囲気を感じました。

 そうですね、最後に向けてどんどん感情も高まって行って、最後にやっと笑っているのが分かるんです。感情としては抑えたものにはなっているけど、表情みたいなものはすごく見える曲なんじゃないかと思います。

――「ストロボメモリー」というタイトルは、どんな解釈をしていますか?

 作詞・作曲・編曲のRIRIKOさんが付けてくださったんですけど、カメラのフラッシュがパシャパシャとたかれて、輝いている瞬間を切り取ったきれいな思い出のような感じかなと。強く思い出せるし、それに囚われたりもするけど、それがすごくいい思い出だったりもする。捉え方によって、いろいろなものが見えてくるタイトルなんじゃないかなと思います。

――歌詞に出てくる<君>は自分自身のことで、フラッシュバックする思い出と向き合っているのかと思いました。

 そういう受け取り方もできますね。この歌の人物はどこの誰なのか、男か女かどんな人なのかも分からない、その曖昧さがこの曲の良さだと思います。何となくボヤけていて、思い出ってそういうものだよなって思ったりもしました。でも曲が進んでいくと、だんだん見えてくるんですよね。それと同時にサウンドや歌が力強くなっていくところに、気持ち良さを感じます。

――自分が取り残されていくような不安や焦りがあって、でも時代はどんどん未来へと進んでいく。今の時代だからこそ特に感じる気持ちもあるなと思いました。

 その感じはありますね。一人でいることの怖さはあるけど、前に進んでいかなきゃいけない。その後押しをしてくれる曲かなと思います。

 私は、悩むことは悪いことではないと思っていて。悩んだりくじけたり、つらい思いをすることとかも、絶対成長につながるから。そういうものを乗り越えて前に向かって歩く、そんな自分を褒めてあげたいみたいな、そういうものを感じる曲だなと思います。

――内田さんもけっこう悩まれるほうですか?

 すごく悩みますよ。悩んでばかりです(笑)。基本的に仕事のことばかりで、例えば役のことで、この台詞をより良く言うためにはどうやったらいいか考えて、原作を読み直してみたり。オーディション前は特に考え込みすぎてしまって、ご飯を食べている時に、母がいろいろ話しているんですけどずっと上の空で、母から「今、オーディション前なの?」って察されるくらいです(笑)。それか今後の活動に対して、どういうことを勉強していったらいいかとか、考え始めるときりがないです。

――この1年くらいは、普段悩まない人でも悩んだりしたでしょうね。

 でも、悩むことは決して悪いことではないと思っています。悩んだ時に他の意見が欲しくなって、ネットを調べると良い意見も悪い意見も転がっていて、回りからの意見もいろいろで。そういう中で、惑わされずに自分が信じるものをつかみ取ることができた時に、道が開けるのだと思います。つまり、自分を信じることで、一人で悩むのはそのための時間だと思う。

――MVも拝見しましたが、今回はちょっとシリアスめな感じで。

 私は笑顔のMVが多いので、ここまで笑っていないとか正面の顔が映っていないのは珍しいです。でも曲とマッチしていて、映像と一緒に聴くと曲がスッと入ってきます。

 見所は最後の<南南西>と歌うところです。私が土手を走っているんですけど、いいタイミングで鳥がブワ~って飛ぶんです。あれは演出ではなくたまたまで、本当に奇跡的な瞬間でした。気持ちが前を向いたことが、すごく伝わるシーンじゃないかなと思います。

――コンパクトを水槽に落とすシーンがありましたが、あれはどういう意図が?

 思い出からの脱却です。一度水槽に落としてもう一度取り出すんですけど…思い出はキラキラして今の自分には眩しいけど、目を背けず受け入れて前に進んでいくという心情を表しています。思い出って良くも悪くも自分を縛ることもあって、それを受け入れられた時に前に進むことができるのかなと。

――監督が女性で初めて仕事をされる方だったそうですが、その監督ならではだなと思ったところはありましたか?

 いたるところで、細やかさを感じました。まず切り取り方がそうで、内田真礼が主ではなく、部屋があって私も小道具の一つとしているような撮り方が面白かったです。小道具や部屋のセットもとてもすてきで、コンパクトやテーブルの上に置いてある小物は、どれもレトロな雰囲気もあってかわいかったです。こんな部屋に住んでみたいなって。

――ちなみに内田さんの部屋はどんな感じですか?

 シンプルですよ。基本は白、茶色、黒で、テーブルや棚の木の色合いも、薄い色より濃いめが好きです。どちらかと言うとメンズチックかな。カフェっぽいと言うか、コーヒーが似合いそうな部屋です(笑)。それで最近は、コーヒーの木も育てているんですよ。植木鉢サイズですけど、頑張れば実がなるみたいで。収穫できたらコーヒーを入れられたらいいなと(笑)。ただ、ちょっとシナッとなってしまったので、どうやったら元気に育てられるかが今の悩みです。

誰かに認めてもらわずとも自分の意思で進んでいく

内田真礼

――カップリング曲の「カナリア」は、とても格好良いですね。こういうジャズやR&Bを取り入れたサウンドは、今まであまり歌っていなかったですね。それに、こういうちょっとけだるい感じの内田さんの歌を、もっと聴きたいなと思いました。

 ありがとうございます。こういう感じって自分の中に無かったわけではないのですが、なかなかお聴かせする機会がなかったので、今回こういう曲を収録できてすごくうれしいです。前からプロデューサーの富田明宏さんに話していたんですよ、決してテンションが高いわけではなく低温な感じだけど思いは熱いみたいな、そういう曲もいいと思っていますって。

――でもテンポが速いし同じ展開が出てこないので、自分なら絶対覚えられないと思いました(笑)。

 私も最初に聴いた時は絶望しましたよ。「むず~」と思って(笑)。「なんで2番が同じじゃないの?」って。でもそれが面白いし、歌詞とも相まって、気持ちが移り変わりながら一回も止まらず進んでいくみたいな感じが表現されていて好きですね。きっとヘッドフォンとかで聴くと、よりいいんじゃないかと思います。<整合性を>のところは音を左右に分けているし、<1・2・3>のところとか、きっと面白いと思います。

――<責任はとれませんけど>というフレーズがいいですね。

 今までなら言葉の意味としてちょっと強いかなと思ったでしょうけど、意外とこの突き放している感じはいいなって思いました。すごく気まぐれで、この曲の主人公がどんな人か見てみたいと思わせますよね。こういう表現は、1年前にはできなかったです。

――制作はいつくらいだったんですか?

 カップリング曲は、今の自分の気持ちを曲にしていることが多くて、毎回プロデューサーの富田さんに最近思っていることを吐き出して、それを歌詞にしてもらっています。この曲は12月くらいに思っていたことや、今のご時世で思うこととかを話させていただいて。歌詞としては言葉遊びがたくさん入ったものになっていますけど、その時に話した気持ちが素直に書かれているなと思います。

――去年の12月は何を思っていたんですか?

 くすぶっていたんですよ(笑)。やりたいことがたくさんあるのに、それができない。例えば昨年7月5日に予定していた横浜アリーナでのライブが、中止になったこととか。代わりに当日は生配信ライブ『Hello, ONLINE contact!』を配信したんですけど、2019年に開催したツアー「UCHIDA MAAYA Zepp Tour 2019『we are here』」がすごく印象的で、あの熱いステージを知ってしまったからそこに対しての熱量とか、横浜アリーナからの景色が見られなかった悔しさとか、いろんなものが心の中に渦巻いていて。いろいろ考えたけど、結局歌いたい気持ちは変わらないし、歌をやめるわけじゃないし、そうやって前に進むしかないんだなって。

――結局「カナリア」は、内田さん自身なんですね。

 そうです。歌詞で<わたしが選んで 決めたNew World>と歌っていて、それがどんな世界かは未知数ですけど、こういうことを思ったんだということは、見えるんじゃないかと思います。

――内田真礼のNew Worldに期待していてね、と?

 そうですね。あと、最後のサビの<責任はとれませんけれど>だけ、いつもの内田真礼っぽく歌っています。1回目はちょっと突き放すんですけど、最後は笑っています。ここまでずっと聴いてきて「いつもと何か違うな」と思うけど、最後の一行だけいつもっぽいんですね。だから「戻って来てくれた」と思ってもらえる感じになっています。全体にちょっとやさぐれて<責任はとれませんけれど>と歌っているけど、いたずらっぽく笑っていて、そこのニヤリ感を感じ取ってもらえたらうれしいです。

――すごく等身大なのかなと思いました。

 曲としては難しいですけど、メンタル面ではすごく入りやすかったです。頑張ってないと言うか、今ここにいるだけで偉いみたいな。私がこう決めたから、こう行くんだみたいな。誰かに認めてもらわなくても、自分の意思で進んでいくのが、強さであり自由さでもあって、それが今の自分らしいかなって思います。

――3曲目には、「youthful beautiful -y0c1e Remix-」を収録しています。

 リミックスを収録するのは初の試みです。「youthful beautiful」はTVアニメ『SSSS.GRIDMAN』のED主題歌で、今回の「ストロボメモリー」はTVアニメ『SSSS.DYNAZENON』のED主題歌という繋がりがあったり、どちらの曲も作詞・作曲・編曲がRIRIKOさんです(「youthful beautiful」の編曲には白戸佑輔が共作で参加)。TVアニメ『SSSS.DYNAZENON』から私を知ってくれた方にも、「youthful beautiful」を聴いてもらえたらうれしいと思いました。「カナリア」を作曲・編曲してくださったy0c1eさんがリミックスしてくれているので、いつもの「youthful beautiful」とはだいぶ印象が違うと思いますけど。

――これまでの曲のリミックスも、聴いてみたくなりますね。クラブでかけたら盛り上がりそうです。

 そうですね!それに私、自分の声がエディットされたり加工されることに抵抗がなくて、「どんどんやってください」というスタンスなんです。素材として面白いと思うし、こんな風に私の声で遊んでくださるのは、すごくうれしいです。

――こういうスタイルも、内田さんのNew Worldの一つということでしょうか。

 そうですね。「youthful beautiful -y0c1e Remix-」は、それこそ最後にNew Worldに降り立ちます。口笛と鳥の声が聴こえてきて、一体どんな世界なのかすごく不思議です。まさかのアレンジなので、ぜひ聴いてください!

(おわり)

作品情報

内田真礼

12thシングル「ストロボメモリー」
5月12日発売
ポニーキャニオン
【初回限定盤】(CD+DVD)/PCCG-01992/1980円
【通常盤】(CD only)/PCCG-01993/1400円

【CD収録内容】

01.ストロボメモリー
02.カナリア
03.youthful beautiful -y0c1e Remix-
04.ストロボメモリー -Instrumental-
05.カナリア -Instrumental-

【初回限定盤特典】

フルカラーブックレット
DVD
ストロボメモリー
01.Music Video
02.off shot
03.Making of Music Video

公演情報

『UCHIDA MAAYA LIVE 2021』
7月3日 立川ステージガーデン

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