angela「より自由を手に入れた」今見せたい“angela劇場”とは
INTERVIEW

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「より自由を手に入れた」今見せたい“angela劇場”とは


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年05月21日

読了時間:約11分

 ヴォーカルのatsuko、ギター&アレンジのKATSUから成るユニットangelaが19日、約3年半ぶり10枚目となるフルオリジナルアルバム『Battle & Message』をリリース。2003年に「明日への brilliant road」(TVアニメ「宇宙のステルヴィア」オープニングテーマ)でメジャーデビュー。伸びやかで力強いヴォーカルと確かなステージパフォーマンスで観客を魅了し、国内外からファンの支持を受けるangela。ニューアルバムには念願だったJAM Projectでも活躍する遠藤正明とのデュエット曲「Battle & Message」や、ファンのみんなに会いたい気持ちを歌った「I’ll be…」、これまでとは違う感情を落とし込みたかったと話す「夢と希望に殺される」など全12曲を収録。インタビューでは自由を手に入れたと話す2人にその真意を聞いた。【取材=村上順一】

音楽も時代は繰り返す

――記念すべき10枚目のオリジナルアルバムが完成しましたが、今どんな心境ですか。

atsuko 前作が2017年のリリースでオリジナルアルバムとしては時間が経ってしまいました。いつもアルバムを作る時はどんな曲を作ればいいのか?、といった葛藤があるんですけど、今回はそれがなかったんです。やりたい事を素直に出せた、ちょっとした自由を手に入れた感覚があります。

atsuko

KATSU いつも思っていることなのですが、次出せる時はCDという形態ではないんじゃないかと思っていて。世の中は配信がメインになってきていて日本でもCDを出せることは珍しくなってきています。デビューした頃は1枚でもアルバムが出せたらラッキーみたいに思いながらこの世界にしがみついてきて、今こうやって10枚もアルバムを出せていることは本当に奇跡だなと感じています。

――ジャケ写はいつもと雰囲気が違って新鮮ですね。

atsuko これまでジャケット写真はカッコいい感じのものが多かったんですけど、今回はカジュアルな感じになっていて、通常盤のKATSUさんの表情なんて今までの傾向ではありえなくて、これを表紙として持って来れたのも自由を手に入れたんだなと思った一つなんです。撮影の時にスタッフに「もう少し顔を整えてもらえませんか?」と言われるくらい(笑)。

――何がそうさせたんですか。

KATSU 前作『Beyond』の時に遊びでバナナの着ぐるみを2人で着たんですけど、それを撮影してもらって「これが9枚目のジャケ写です!」と冗談で発表しました。そうしたらファンの皆さんがそれを受け入れてしまって、「これは冗談です」とは言いづらくなって(笑)。その時からちょっと自由を手に入れた感覚はあって、自分たちがやりたい事をやっても受け入れてもらえる体制が出来ているんだとわかったんです。

KATSU

――しかもケミカルウォッシュのジーンズで、80年代を通ってきた方には懐かしさもあります。

atsuko 私たちの世代だとこれ今着てもいいの? みたいな感じで、「しびれるね」とか話しながら撮影していて。若いスタッフに「これどう?」と聞いたら「カッコいいです」と言っていて、ファッションも音楽も時代は繰り返すものだなと長くやればやるほど感じています。自分の中では二度とケミカルウォッシュは着ることはないんだろうなと思っていたんですけど、10枚目という大事な場面で着るとは思ってもいませんでしたから。

「Battle & Message」は令和版「3年目の浮気」

――このジャケ写を見ただけでも変わったなとすごく感じました。さて、アルバムと同タイトルの「Battle & Message」は遠藤正明さんとのコラボでatsukoさんが直接遠藤さんにオファーされたそうですね。

atsuko ずっと男性ボーカルとデュエットしたいと思っていて、その中でも遠藤さんと歌いたい、という思いがありました。アルバムを作るにあたってやったことがないこと、やってみたいことを考えました。やりたいことが一番情熱を注げると思うので、ここは遠藤さんとデュエットするしかない!と思って。普通は事務所さんを通してオファーするんですけど、それではつまらないなと思ったんです。それはオファーの段階から私の中のエンタメだったんだと思います。遠藤さんの連絡先も知っていたので、私が直接メッセージを送らせていただいて、遠藤さんの曲である『爆竜戦隊アバレンジャー』を歌った動画も送って。

――曲もすでに作っていたと聞いています。曲調は意表をつかれた感があるのですが、どんな意図があったんですか。

KATSU 曲のタイトルや遠藤さんが参加するということでみんなハードな曲が来るんじゃないか、と予想されるのは想定していました。atsukoが何年か前からデュエットしたいと話していた時からどういう人がよいのか考えていました。アニソンシンガーで男性ボーカルというのは希少な感じなんですけど、その中で今回は遠藤さんしかいないと思いました。その中でatsukoが令和版「3年目の浮気」や「男と女のラブゲーム」にしたいと言っていて、それなら遠藤さんだなと確信して。曲順も最初か最後だろうと考えて、オープニング曲というのに決めた時にブラスロック的な明るい曲調が良いなと思ったんです。

atsuko 歌謡曲のデュエットは大体が男女の痴話喧嘩だったりするんです。それを令和という時代に普段アニソンを歌っている私たちがやったら面白いんじゃないかなと思いました。あと、カラオケでお客さん同士でデュエットしたら面白いんじゃないかなと。

――お互いのファンの架け橋にもなりますよね。レコーディングはいかがでした。

atsuko 遠藤さんはこちらが何も言わずとも全てを曝け出してくれるんです。テイクを重ねて行く度に笑い声やフェイクなどどんどん出てきて。私がすごいなと思ったのは100%引き出しにあるものを出して、それを好きに使ってという潔さでした。すごく嬉しかったです。

――昨年リリースされたJAM Projectのアルバムに楽曲提供されていましたが、そのレコーディングも今回のオファーに至ったところも?

KATSU すでにその時僕ら2人の中では遠藤さんにお願いしたいと決めていたので、その時のレコーディングは遠藤さんがどんな機材を使っているのか、どんな表現方法があるのかなどは密かにリサーチしていました。

atsuko ハモりってこのスピードで出来るのか、など分析していて(笑)。

KATSU JAM Projectでの遠藤さんは強いイメージなんですけど、普段の遠藤さんはこの「Battle & Message」のイメージのようなキュートな方なんです。面白い一面の遠藤さんを引き出したいと思いました。

――最後に「ごめん」と遠藤さんが謝っているのも面白いなと思いました。

KATSU これは確か4本ぐらい録った最後のテイクなんですけど、すでにOKテイクは取れていたなかで、最後にもう一回、もっと自由に表現してみようと録ったテイクなんです。そこで笑い声やフェイクなど色々やっていただいて、遠藤さんが「このテイクやりすぎちゃった。ごめんね」という意味での「ごめん」でした。男と女のラブゲームというところで、男性が最後には折れて謝るというメッセージになれば曲としても成立すると思って残したんです。(笑)。

ものすごく暗いというのは何だろう?

――さて、新曲の「夢と希望に殺される」ですが、このテーマに行き着いた経緯はどんなものだったのでしょうか。

KATSU 昨年の今頃、緊急事態宣言が発出されてリモート会議というものが突如出てきました。そこでたわいもない話をプロデューサーやスタッフとする中で、「ものすごく暗い曲」というコンセプトが出てきました。2020年はコロナ禍でよりみんなが強くメッセージを発信していた年だと思っていて、僕らがアニメとは関係ないところでメッセージを送ることが、ある意味エンターテインメントだと思いました。

atsuko ものすごく暗いというのは何だろう?と考えた時に、死や別れなど色々テーマはあると思うんですけど、これまでアニメ作品の楽曲では書いていたので、そことは違う感情の切り取り方、誰もが思ったことがあるけどなかなか口には出せないことを曝け出してはどうかなと思いました。例えば大学や専門学校のパンフレットに「夢は叶う」といった言葉がよく書いてあるんですけど、私はそれを信じていなくて(笑)。

――現実主義(笑)。

atsuko 今は年齢も重ねたので周りのせいにすることはなく、自分の責任だと消化することはできるんですけど、若い頃はそういう風に考えられなかったんですよね(笑)。あの子は家庭環境がいいから上手く行ってる...、みたいな。でも、思い切ってその卑屈さを全面に出してみたらどうかなと思いました。最初は全く救いのない歌詞になっていたんですけど、歌詞を提出したらプロデューサーから「もう少し希望が欲しい」と言われて(笑)。でも、いきなり手のひらを返したような歌詞にはしたくなかったので、最後だけ「夢と希望に殺される」から「夢と希望は生きている」という言葉に変えました。この言葉はいろんな意味に捉えられると思うので、聴いていただいた方の感性にお任せしたいなと思います。

――メッセージというところで新曲の「I’ll be…」はファンの方へ向けた曲ですよね?

atsuko はい。この曲は今回のアルバムの中で一番最後に出来た曲なんです。『Battle & Message』というアルバムタイトルに決めた時からコロナ禍でライブが出来なくなった葛藤、早く皆さんに会いたいという気持ちをなるべく軽めの言葉でダンストラックに合うように作っていきました。この曲はダンスチューンなんですけど、歌詞というのはあまり考えさせない方が良いと思っていて、耳馴染みの良い言葉で落とし込みたかったんです。その中でやりたかったことがあって、ひとつのコードだけで楽曲を作ることでした。この曲はCmというコード一発なんですけど、展開があるようにしたいと無茶振りをしまして。

KATSU 展開を作るというところでベースラインがB♭になるところがあるんですけど、上に乗ってるコードはCmなんです。

――ワンコードのアレンジはいかがでしたか。

KATSU 実は18年以上断り続けていたんですよ(笑)。本当にワンコードでアレンジするのが嫌で逃げていたんです。もうこれはアレンジャーの技量を試されるわけで。今回アルバムタイトルが先に決まっていたので、どこまでできるんだろうと、これは自分との戦いだなと腹を括って頑張りました。でも、もう二度とやりたくないですね(笑)。

atsuko ミュージャンの技量も試される曲になりました。この曲でベースを弾いていただいたIKUOさんは「もう引き出しないよ」と言っていて(笑)。皆さんに助けられた楽曲になりました。

KATSU 最初はダンスチューンだしシンセベースにしようと思ったんですけど、IKUOさんならワンコードでもたくさんリフの引き出しを持っているだろうなと思ったのでお願いしました。実際、色んなパターンを弾いていただきました。

angela劇場を楽しんでもらいたい

angela

――そして、「連撃Victory」はクールな中に熱い気持ちが沸いてくる楽曲ですね。

atsuko 私の声はこういったマイナー調の曲に合うと思っていて、その中でも<撃て>というロングトーンのところが私らしさなんだろうなと思いました。皆さんもこれだよねと感じてもらえるんじゃないかなと思います。楽曲としては今回、『Pフィーバー革命機ヴァルヴレイヴ2』というパチンコ台で流れる楽曲なのですが、『革命機ヴァルヴレイヴ』は8年ぐらい前の作品ということもあり、改めてBlu-rayを見直して、パチンコということもあって、より熱くなれるような楽曲が良いんだろうなと。

――歌声というところでは「乙女のルートはひとつじゃない !」の表現方法も素晴らしかったです。バリエーションの豊富さに驚きました。

atsuko ありがとうございます。私の中では相当頑張らないとこういった曲調は表現できないんです(笑)。一生懸命引き出して、それにキラキラパウダーをたくさん掛けてあげないとダメで。でも、こういった楽曲で自分たちの新たな一面出せましたし、「これも良いよね」と言ってくださる皆さんのおかげで新しい財産が増えたような気がしています。

――そして、和を感じさせるスケール感のある「君想う」もあり、本当に幅広い音楽性のユニットだと感じました。

atsuko この曲のような和の感じは大好きで、ここ何年かのアルバムには1曲は入れているんです。最初この曲は私の声がハマりすぎてしまって民謡みたいになってしまい、イメージしていた感じと違ってしまって。自分たちの中でハマりすぎてしまうと逆に面白くなくて、「何これ?」と思えるようなワンエッセンスが欲しくなってきて、メインボーカルを10本重ねました。それに加えてハモっているところは上と下で8本ずつ、全部合わせると最大26本の私の声が重なる部分もあります。編集が大変だと嘆いていましたけど(笑)。

KATSU 最初はそんな沢山録るつもりもなくて(笑)。今までにない音像感の曲にしたかったんです。今の時代ボーカルのダブルは当たり前で、トリプルも主流になりつつあるんですけど、試しに4本にしてみたらそれが良くて、じゃあ6本にしたらどうなるんだろう? と興味が湧いてそれも試して、6本と8本はどう違うのかと気になって、なんだかんだで結果10本になったという経緯がありました。

――10枚目のアルバムだから10本になったわけではなく?

KATSU それは全然関係ないです(笑)。それにハモを2本でやったら全然足りなくて8本までいってしまって…。それで下のハモりも同じ本数が必要になったわけです。そこから、タイミングを揃えて行くんですけど、ちょっと音が短いとか問題が出てくると、atsukoに録り直してもらうという気の遠くなるよう作業でした。

――これは大変ですね...。でもそれがこの楽曲のスケール感にも繋がっているんだと思いました。さて、最後にこのアルバムからどんな事を感じ取ってもらえたら嬉しいですか。

atsuko 今回、ジャケットアートワークにシアターを選んだのも意味があります。劇場というのはコロナ禍で色々制限されました。そんな中でもアーティストやクリエイターは自分のメッセージを作品にして届けたいと試行錯誤していて、私たちもこの10枚目のアルバムでやりたいことばかり詰め込むことができ、より自由を手に入れました。デビューから18年経ってもangelaはまだやりたいことがあるんだ、という想いを楽曲から感じ取ってもらえたら嬉しいです。

KATSU 僕らがこのアルバムでやりたかったことは“angela劇場”だと思うんです。限定盤ではBlu-rayも付属しているので目から見るangelaも楽しんでもらいたいですし、アニソン屋が作るエンターテインメントから何かを受け取ってもらえたり、コロナ禍の時はこういう感じだったよね、と思い返せるような作品になっていたらいいなと思います。皆さんにangela劇場を楽しんでもらいたいです。

(おわり)

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