畠中祐「唯一無二の個性を持っていたい」声優と音楽の相乗効果で目指す高み
INTERVIEW

畠中祐

「唯一無二の個性を持っていたい」声優と音楽の相乗効果で目指す高み


記者:榑林史章

撮影:榑林史章

掲載:21年04月28日

読了時間:約11分

 声優・アーティストの畠中祐が4月28日に7thシングル「TWISTED HEARTS」をリリース。表題曲は、TVアニメ『憂国のモリアーティ』2クール目オープニング主題歌。2005年に映画『ナルニア国物語』シリーズのエドマンド・ペペンシー役の吹き替えで声優デビュー。以降、テレビアニメ『遊☆戯☆王ZEXAL』の九十九遊馬、『僕のヒーローアカデミア』の上鳴電気など人気キャラクターを演じる。2017年7月にシングル「STAND UP」でアーティストとしてデビュー。もともと舞台役者を目指してきた畠中が、声優と真剣に向き合うきっかけになった出来事や音楽活動が声優業に与える影響などを聞いた。一癖ある声を武器に、声優とアーティストの両面で活躍する畠中祐に迫った。【取材・撮影=榑林史章】

自分の声が嫌すぎて泣いた

畠中祐

――ご両親はお二人とも舞台俳優ということですが、声優になろうと思ったきっかけは何だったのですか?

 小学生の時に自分も舞台役者になりたいと思ったんですけど、当時の僕は太っていて。それで親から、太っている状態で役者デビューするとそのイメージが付いて太った役しか来なくなる、と言われて。太った役というポジションを狙っていく役者になるのか、それとも普通の体型にしていろいろな役を選べるようにするのか、どっちがいいんだ? と問われたのですが、その時は決めることができなくて。それならばということで、体格や体型に縛られず自由に演じることができる声優から、まずはお芝居を学んでいくのがいいんじゃないかと母親に勧められて。母親の友達から映画『ナルニア国物語』の声優の一般公募があると聞いて、受けたのが最初です。

――最初は俳優をやるに向けての足がかりだった、その声優に本気になったのは?

 正直、高校卒業くらいまでは、舞台役者を目指すのか声優をやっていくのか、決められずに悩んでいました。そんな時にキャスティングをやっているスタッフさんから、「そんな生半可な気持ちだと、どっちに行っても生き残っていけない。途中で変わってもいいから、どちらかにしっかり決めたほうがいい」とアドバイスをいただいて。その時は『遊☆戯☆王ZEXAL』で九十九遊馬役をやっていた時だったんですけど、その頃は声優の仕事がどういうものなのか、自分でも訳が分からなくなっていた時だったので、その言葉がすごく刺さりました。

――毎回アフレコで泣いていたというのはその時ですか?

 そうです(笑)。うまく演じることができなくて、毎回一人居残って、泣きながら帰っていました。単純に技術がないし、すぐに声が枯れてしまうし。Aパート(CMが入る前の前半)のテストでノドがボロボロに枯れて本番ができないこともあって、そりゃあ怒られますよね(笑)。

――自分のふがいなさで泣いていたと。

 情けなくてしょうがなかった。そんな時に言われたのが、先ほどのスタッフさんからの言葉です。その時に、声優を真剣にやっていこうと決めました。

――畠中さんは、今お話に上がった『遊☆戯☆王ZEXAL』の九十九遊馬、『うしおととら』の蒼月潮、『甲鉄城のカバネリ』の生駒、『バジリスク ~桜花忍法帖~』の甲賀八郎など、デビュー間もない頃から、主役をたくさん演じてきている印象です。『僕のヒーローアカデミア』の上鳴電気も登場回数の多いキャラクターですし、今は『ましろのおと』の田沼総一、『MARS RED』の栗栖秀太郎を演じていて。

 すごくありがたい状況なのですが…経験が少ないぶん、つねに崖っぷちです。必死と言うか(笑)。と言うのも、僕の声はちょっと癖が強くて。声優は、歩行者AとかBとか役名の無いモブキャラで経験を積むものなのですが、僕は声に特徴がありすぎて、モブを全然やらせてもらえなかったんです。最初の頃に2~3回モブをやらせてもらったけど、そこからパタリと話が来なくなって。だから、「どうしよう~」って、最初はすごく焦りました。

――畠中さんの声の特色ありきで、それに合う役をピンポイントで探すしかないと。

 はい。そこにしか生き残る道が無かったんです。

――役を選んでしまう自分の声については、どう思っていますか?

 最初に自分の声を聞かせてもらった時は、すごく泣きました。『ナルニア国物語』で初めて声優をやって、声変わり前だったんですけど、なんか鼻にかかっているし気持ち悪すぎて、泣いちゃって。

――泣くほど嫌だった?

 泣くほど嫌でした。今はもう受け入れていますけど、それでももっとイケボに生まれたかったなと思います。「俺だってイケメンの役をやりたいです(笑)」。それこそ『憂国のモリアーティ』のような世界観にも溶け込める声だったら良かったのになって。

自分が楽しいかどうかが大きな指標

畠中祐

――畠中さんが演じられてきた主人公は、不器用そうなキャラクターが多いですよね。

 そうですね、不器用な男の子の役ばかりです。だいたい何かが欠けてしまっている役が多い気がします。ただすごく素直で誠実という。でも、諦めずこの声で演じられる役の幅をもっと広げていきたいと思っています。それこそイケメンの役とか(笑)。この声でいろんな役を演じられるようになるということは、お芝居の幅を広げていくということ。つまり演技力での勝負になってくるので、そこからは逃げたくないです。

――逆に、その変えようのない声を武器にできるのが歌で、2017年にソロアーティストとしてデビューして4年弱になります。

 歌はもともと好きでしたから、いつかはやってみたいとは思っていました。でも30歳になってからだろうと、漠然と考えていました。

――なぜ30歳だったんですか?

 アーティストデビューした時、僕は22歳だったんですけど、当時は20代の若手でデビューしている人があまりいなくて。それに声優として確立されている方が、音楽活動をやられているイメージがあって。まだ先のことだと思っていたんですけど、僕が城ヶ崎昴役で出演したゲーム『夢色キャスト』のプロデューサーさんが、僕のキャラクターソングを聴いて、ソロでやってみないかと。すごくびっくりしたし、正直頭が大混乱したんですけど、すごくうれしかったです。結果的にやらせてもらって良かったです。普通は経験できないことを、たくさんやらせてもらっているので。

――声優と歌の活動が、それぞれにフィードバックされるものはありますか?

 アーティストをやらせてもらっている時の僕は、もちろん等身大で歌わせてもらっているんですけど、例えば今回リリースさせていただいた「TWISTED HEARTS」のように、TVアニメ『憂国のモリアーティ』2クール目のオープニング主題歌として、アニメの世界観に寄り添ったものを歌うこともあります。特撮ドラマ『ウルトラマンZ』のエンディングテーマ「Promise for the future」もそうでした。そうやってタイアップ作品の世界観に寄り添う時は、「TWISTED HEARTS」ならクールに決めたいとか、僕自身ではあるけど世界観に寄り添うことも考えるわけで、どこか演じることに近い感覚もあるんです。とは言え、あくまでも自分として歌うので、キャラクターソングとも違います。きっとそういう歌が歌えるのは、お芝居をやっていることからフィードバックされているものだと思います。

――逆にアーティスト活動から声優に生かされていることは?

 アーティスト活動は「人に見られる」という感覚がすごくあるんです。聴いてくださる皆さんにどう思われているのか、エンターテインメントとしてどうやって伝えていけばいいのか、今までこんなに考える機会は無かったです。そうやって向こう側にいる人を意識することは、声優としてのパフォーマンスにも絶対生かされていると思います。

――自分を応援してくれる人を間近に感じられる機会がたくさんあるのは、経験として大きいのでしょうね。

 それはすごく大きいです。純粋に勇気をもらえます。役を通して応援してもらう時は作品ごとという側面があって、もちろん音楽活動もチームプレイですけど、自分として自分の歌を歌って、そこを認めてもらえるのはすごく新鮮ですし、すごくうれしいです。

――アーティスト活動をやっている上で、何かテーマにしていることはありますか?

 最終的に自分が楽しいかどうかというのは、かなり大きな指標になっている気がします。その歌を歌って自分が楽しいかどうか、そういう気持ちは歌に乗ると思うんです。「この歌は楽しかったんだろうな」とか、それはお客さんにも伝播するので。幸い今まで、毎回全部楽しいです。

――もともと好きな音楽ジャンルはあるんですか?

 親がミュージカルをやっていたので、小さい頃から家ではいつもミュージカルの曲が流れていました。あとは親父が好きな洋楽とか。自分でハマって聴くようになったのは、J-POPです。母親が、槇原敬之さんやDREAMS COME TRUEさんなどが好きで、その影響で僕もよく聴いていました。

――最近聴いているのは?

 雑食で、サブスクでおすすめされたものをいろいろ聴いているんですけど…Apple Muiscで「ヤンスタ」というカテゴリーができたんです。Z世代と呼ばれている人たちが作った楽曲を集めたプレイリストで、最近の曲が分からなさすぎるので、それを積極的に聴くようにしています(笑)。どの曲もメロディーラインがすごく難しくて、でもそれがすごく面白いですね。

どんなジャンルに挑戦しても畠中らしさは消えない

「TWISTED HEARTS」通常盤ジャケ写

――7枚目のシングル「TWISTED HEARTS」は、どんな曲になりましたか?

 表題曲はTVアニメ『憂国のモリアーティ』2クール目オープニング主題歌で、1クール目オープニング主題歌「DYING WISH」に引き続き歌わせてもらっているのですが…今までもタイアップ曲を何度か歌わせてもらってきましたけど、その中でも『憂国のモリアーティ』は、表現するのがすごく難しいと感じました。そもそもロンドンという舞台設定とか、ダークヒーロー的な正義感であるとか、『憂国のモリアーティ』の世界観が、自分の中にはまったく無かったので。ただ難しかったぶんすごく考えたし、おかげで僕の音楽の方向性を広げてくれました。

――「TWISTED HEARTS」はエレクトロとロックを融合したサウンドで、エモーショナルさもあって。

 でも不思議と踊れてしまうという新しいジャンルで、MVでも踊っているんですけど、すごくやりがいがありました。リボンなどを使った独特な振り付けになっているので、ぜひMVも見て欲しいです。

――カップリング曲は、春がテーマとのことで。

 春にシングルを出すのは初めてなので、せっかくだから春を感じてもらえるものがいいなと思いました。特に「風を作る」という曲は、すごく爽やかで前向きな楽曲になっています。歌詞の<1秒先の自分が 風を作る>というフレーズには、僕自身もすごく背中を押してもらえました。新生活が始めた方にも、マッチすると思います

――カップリング曲は、その時やりたい音楽をやろうという意識ですか?

 シングルによって違って、「DYING WISH」の時はカップリングも『憂国のモリアーティ』の世界観に寄せて、『憂国のモリアーティ』をテーマにした1枚でした。ジャンルもそのシングルごとに違いますけど、基本的にはスタッフさんが、僕のその時の趣味嗜好を聞いて提案してくれています。だから「風を作る」は、僕が最近車の運転をするようになったことを踏まえて、ドライブで聴いても良いようにと考えて作ってくださっていて。

――音楽活動では、基本的に自分のやりたいことや自分の意思を込めていきたい?

 そうですね。でも「風を作る」がそうだったように、結局ヒントをくれるのは回りの皆さんです。「何でもがんばって歌います」というスタンスでいたほうが、新しいものがやってくる気がしますし。自分はこういう曲をやりたいという気持ちは極力無いくらいのほうが、いろんな曲にチャレンジできてすごく楽しいです。

――聴いてくれる人には、次は何にチャレンジするのか期待していて欲しいと。

 でも、僕は七変化できるようなタイプではなくて、どう歌っても僕の癖みたいなものが出てくるので、結局のところ「新しいジャンルだけど畠中らしいよね」と言ってもらえるものになっていると思います。だから畠中らしさというものは、どんなジャンルに挑戦しても消えないんじゃないかなって。

――最後に、目標とする声優はいますか?

 いないと言うとあれだけど(笑)。この業界、唯一無二でないと生き残っていけないし、誰ともかぶりたくないです。その部分で唯一無二の個性を持っている先輩に憧れます。この人にしかできないと言われるような役者にいつかなりたいし、それは歌も同じです。「この人にしか歌えない」と言われるような曲を歌っていきたいです。

――最初に目指した舞台役者を、ゆくゆくはやってみたいという気持ちもありますか?

 そうですね。でも基本的に声優ありきだと思っているので、まずは声優で地に足を付けてから、今はまだ全然ですけど、機会があれば考えたいです。舞台、ドラマ、映画などの役者の仕事は、どれも声優の芝居に還元できるものなので、そういう新鮮な風を取り込めることならやってみたいです。

(おわり)

作品情報

畠中祐
TWISTED HEARTS
4月28日発売
Lantis
初回限定盤(CD+BD)2530円
通常盤(CD)1430円

【収録内容】
<CD>
1.TWISTED HEARTS
2.Moment For Life
3.風を作る
4.TWISTED HEARTS (Instrumental)
5.Moment For Life (Instrumental)
6.風を作る (Instrumental)

<BD>
1:TWISTED HEARTS (Music Clip)
2:Making of TWISTED HEARTS

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榑林史章
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