崎山つばさ「新しい自分を見てもらいたい」新譜で示した姿勢
INTERVIEW

崎山つばさ

「新しい自分を見てもらいたい」新譜で示した姿勢


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:21年04月28日

読了時間:約11分

 2.5次元舞台俳優の崎山つばさが4月21日、自身初となるミニアルバム『latte』をリリースした。5枚目のシングル「桜時雨/忘れな歌」から14ヶ月ぶりとなるリリースは2019年8月リリースの「Salvia」、昨年1月リリースの「桜時雨」、昨年自身が出演した映画『死神遣いの事件帖-傀儡夜曲-』の主題歌「幻想人」に新曲「叫べ」「春始笑」「story」を含む全6曲を収録。(※通常盤では「春始笑」のピアノインストが追加された7曲)新曲3曲は全て崎山が作詞を手がけた。ロックチューンからバラードナンバーまで幅広い音楽性を堪能できる作品に仕上がった。インタビューではこの1年間で感じたこと、ミニアルバム『latte』の制作背景や込めた想いなど多岐に亘り話を聞いた。【取材=村上順一】

“ミニ”じゃなく、気持ち的にはすごく大きなものになった

崎山つばさ

――昨年はどんな1年でしたか。

 コロナ禍になって1年ぐらいですけど、普通にイベントを出来ていた時が懐かしく感じています。イベントが中止になったりしましたけど、気付く事も多くて、今作にもその影響が出ています。この時に感じたことはこれからに活きてくるなと感じています。

――エンタメが苦境に立たされる場面もありましたが、悔しい思いもあったり?

 悔しくなかったといえば嘘になりますけど、今こうやってエンタメ、娯楽がなくならずに存在し続けているのは、それらが必要なんだという証拠だと思います。それを信じ続けてここまできたというのも大きいです。僕だけじゃなくみんなが同じ状況だったので、その中で自分がどう変わっていくか、というのもありました。

――ステイホーム期間に新しく始めたことはありますか。

 「叫べ」のMVでも弾いているギターです。父親の影響で中学生、高校生ぐらいの時に何度か挑戦はしたんですけど、毎回Fコードで挫折していて。昨年は何とかそれをクリアしようと思って毎日練習しました。そうしたらこれまでの反骨精神からなのか超えることが出来たんですけど、またBのコードという新たな壁が立ち塞がって(笑)。でも、壁があるというのは良いことだなと思って、それを一つずつクリアしていくのも楽しいです。

――崎山さんは野球部だったとのことで、そこで鍛えられた精神力もあったのかもしれないですね。

 中学の時の野球部が上下関係がすごく厳しかったんです。そこで鍛えられた精神力はあります。1年生の時に坊主にしていくんですけど、実はそれがすごく嫌でした。髪の毛の長さを9mmにしていったんですけど、それでも長いと3mmにされて、号泣した思い出があります(笑)。

――相当嫌だったんですね(笑)。さて、ミニアルバム『latte』が完成しましたが、ご自身にとってどんな作品になりましたか。

 このミニアルバムを出せたことにすごく感謝しています。新しい挑戦を沢山しました。曲数的にはミニアルバムなんですけど、僕の中では全然“ミニ”じゃなく、気持ち的にはすごく大きなものになりました。

――タイトルの『latte』にはどのような想いを込めたのでしょうか。

 タイトルは全曲で揃ってから一番最後につけました。Billboardでのライブが決まっているんですけど、それを踏まえた上でのタイトルにしたいと思い、飲み物や食べ物に関連した名前が良いなというのがありました。苦味という部分で普通のコーヒーではなくエスプレッソの苦味、ミルクの甘みというのが、今作を表現する上でピッタリだなと思いました。日頃の苦い思いや嫌な事を今作を聴いて“ホット”する優しい時間にしてもらえたら嬉しいなと思って。

――ミニアルバムの制作はどのような流れがあったのでしょうか。

 去年の年末あたりにミニアルバムを作ろうかという話になって、年が明けてから本格的に曲を集めていきました。その間に歌詞をストックしていって、曲が出来たらそこにはめていく感じでした。そこから約3カ月くらいかけて完成させました。

――作詞といえばふとした時に良い言葉が思いつくみたいですね。

 そうなんです。今日はやらないと決めた時にも思いがけず言葉が出てくることが多くて。割とメリハリをつけて生活しているんですけど、作詞に関してはオンオフを決めない方が良いのかなと思っています。

――もともと作詞には興味はあったのでしょうか。

 ブログを書いたり、考えていることを文章にすることは好きなんですけど、作詞をするというのは全く想像していなかったです。初めて作詞をしてみて音楽との向き合い方は変わりましたし、新しい表現として作詞との出会いは大きかったです。最初は楽しいというよりも苦しみの方が大きかったです。こだわりが強いタイプで、その世界観から動きたくないとか、それが良かった面もありますけど、苦しんだ結果にもなって。僕の歌詞のスタンスとして、あまり答えを出したくない曲もあって、聴き手に委ねたい曲もあるんです。もちろん僕が伝えたい思いもあるんですけど、聴く人がいて初めて音楽は成立すると思っています。

――それも踏まえた上でお聞きしますけど、ミニアルバム1曲目の「叫び」の歌詞はパンチがありますけど、これは何か嫌なことがあって?

 はは(笑)。僕をよく知っている人からもこの曲のようなイメージがなくてそう聞かれるんですけど特に何かあったわけではないんです。この曲に関しては自分の荒削りな部分を出してみたいと思いました。普段怒ることとか、人に対して攻撃的になることはないタイプなのですが、怒りやストレスというものを押し出した歌詞を作ってみようと。アルバムとしてのバランスを見て、こういう曲があった方が面白いんじゃないかなと思いました。

――そんな崎山さんが怒る場面があるとしたら?

 舞台とかで表現者としてそれは違うなと思ったら、言うようにはしています。

――ちなみに今、叫びたい事はありますか。

 お腹空いたぐらいですかね(笑)。

――(笑)。「叫べ」が1曲目ですが曲順はどんな風に決めたんですか。

 役者としてもそうなんですけど、新しい自分を見てもらいたい、自分自身も気付きたい、発見したいというのがありました。それが「叫べ」という曲には存分に含まれているので、新しい扉へのメッセージとして1曲目にしました。

――レコーディングはどんな意識で臨みましたか。

 「叫べ」は最初いつも通りレコーディングをしていたんですけど、途中からちょっと違うなと感じたんです。もともと自分の中にはそんなにない感情の部分の歌詞なので、それを呼び起こすためにもまずは空気感を作って、自分の内側から出すようにしたいなと思い、もっとダークな感じにしたいなと思ってボーカルブースの照明を消してもらって、コントロールルームの窓もカーテンで塞いでもらって、完全に一人の空間にしてもらいました。そうしたら歌の雰囲気がすごく変わって、見えるものと見えないものが違ってくるだけでこんなにも変わるんだとわかりました。特に1番は今までとは違う温度感にしたいというのがありました。

――<欠点も個性だろ>というフレーズはすごく背中を押してもらえると思いました。

 日常の中でストレスを感じたりジレンマに陥ったりすると思うんですけど、自分の元々持っているもので勝負してみろというイメージがあって、それで考えた時に欠点も自分が持っているもので自分にしかないものだから、それも武器にしてみたらいいんじゃないかなと。僕は物事を真面目に考えすぎてしまうんです。もっと自由にできたらいいのに、と思うこともあるんですけど、なかなかそうもいかなくて...。でもそれすらも自分のものにしてしまえば長所になると思ってこの言葉を入れました。

自分を見つめ直す場所

――さて、この「叫べ」のMVは熊本県奥阿蘇で撮られていますけど、それは崎山さんからのリクエストだとお聞きしました。

 はい。僕は神社検定を取るくらい神社が好きで、このMVを撮った上色見熊野座神社も以前から行きたいなと思っていました。それで楽曲の雰囲気にも合うなと思って提案させていただいたらオッケーが出て。周りも自然に溢れていて、すごく良いところでした。

――崎山さんにとって神社はどんな場所なんですか。

 手を合わせてその時流れる空気、風はその日その日によって違います。それを感じられる瞬間というのは日常ですごく大切だなと思っていて、神社はそれを思い出させてもらえる場所でもあるし、それを育む場所でもあってすごく自分がフラットになれる、自分を見つめ直す場所になっています。

――神社にはまったきっかけは何だったんですか。 

 僕は千葉県出身なんですけど、自らというわけではないんですけど、受験のタイミングとかで家族と神社に行くことがあって。その時は神社は全然意識はしてなかったんですけど、大人になってから思い出して舞台の前に行ってお参りをしたりしているうちに、それが習慣になっていきました。それで色々神社について調べていくうちに、これめちゃくちゃ面白いなと思いました。それでもっと深く知りたいと思って『神社検定』を受けたというのもありました。

――さて、「春始笑」はこの季節に合う1曲ですが、崎山さんはどんなことをイメージして歌詞を書かれたのでしょうか。

 リリースが春ということもあって、出会いと別れ、そして今のこコロナ禍で会いたいけど会えない、会えなくなってしまった人など、そんな情景を想い描きながら書きました。その中で悪いことだけではなくて前向きに待っていればきっといいこともあると思うし、僕がこれまで見てきたリリースイベントとかの景色やファンの方との交流も入っています。このコロナ禍で会えなくなって、思い出すこともたくさんありました。聴く人の環境によって意味合いは変わってくると思うんですけど、僕の中ではそれらがすごく大きく影響しています。

――この曲のタイトルは造語だと思うんですけど、なぜこのタイトルになったのでしょうか。

 この曲は歌詞の候補もたくさんあって“春”の部分を“晴”にしてみたり。この曲を作っていた時はちょうど冬でこれから春になるということと、世の中の状況的にもまだどうなるかわからないというのもあり、でもきっと春になる頃には落ち着いているだろうし、また新しいことが始まるだろうという希望も含めて、春という言葉をチョイスし「春始笑」になりました。あと、道を歩いていても花のつぼみが出ていたりとか、周りは変わったと騒ぎ立てているけれど、この自然たちは何も変わっていなくて、いつも通りここで芽吹いて花を咲かせてというのがすごく春を感じさせてくれた瞬間でした。それを日常生活でも感じてもらえたらという思いもありました。

――歌詞に<雨の遊園地赤い電車、触れた手どれも懐かしくて>という歌詞があるんですけど、これは?

 ここの部分はあえて正解は出さないんですけど、ファンの皆さんだったらこの歌詞の意味が分かる人がもしかしたらいると思うので、是非当ててみてください(笑)。

振り返ってみると音楽に囲まれていた

崎山つばさ

――そして、お父さんが作曲された「story」ですが、崎山さんから見て作曲家としての父親はどう見えていますか。

 ひいき目なしで、すごく個性があると思います。今回、4曲を候補曲として提出してもらいました。その中に「月よ 太陽よ」という新曲があったんですけど、父は60年間生きてきて作った曲なので他の曲とは重みが全然違って、息子の自分にはまだ歌えないと思って保留になったんです。父はその「月よ 太陽よ」が推し曲だったんですけど(笑)。

――でも今回は「story」を選ばれて。

 そうなんです。この曲は父が今の僕と近い年齢の時に作った曲なんです。僕はその時代の事は知らないですし、父の若い頃の話も聞いたことがなかったのでなかなかそれが面白くて。それで今回、作詞をするにあたって父にこの曲の制作秘話などを聞いたことで、若かりし頃の父の姿が明確になってきて。

――そもそもお父さんの曲を収録しようというきっかけは?

 たまたま実家に帰ったときに家族の車に乗っていたら、父の曲が流れていて。「これなに?」と聞いたら父が「俺が昔作った曲のアルバムだよ」と話してくれて。その時はそれで終わったんですけど、ちょうど1stアルバム『UTOPIA』を制作する時期だったので、父の曲をアルバムに入れられたら面白いなと思いました。それで、採用されるかはわからなかったんですけど、スタッフの方に父のアルバムを聴いてもらって採用されたのが「IN THE HIGHWAY」でした。

――お父さんはどんな音楽が好きだったんですか。

 父は昔バンドをやっていて、矢沢永吉さんやBOφWYとか好きでよくそれらが家で流れていました。母は洋楽が好きでクイーンをよく聴いていて、自分も野球部の試合に行く前にクイーンを聴いて気分を盛り上げていました。それが今も続いていて舞台前にはクイーンを聴いています。あと、祖父もカラオケ大会に出て優勝するくらい上手くて、振り返ってみると音楽に囲まれていたんだなと思いました。

――作詞は崎山さんがお父さんの意図を汲み取って書かれたんですか。

 もともと父が書いた歌詞があって、それを元に僕が書き直したんですけど、父の言葉も残っています。歌詞に出てくる<向日葵>は母親を比喩したものだったり、「ムラサキの香り」は当時あった香水のことなんです。そういった僕が父のニュアンスを汲み取って「メロウな日」や「ファインダー」、「スペアキー」という言葉を敢えて入れてみました。

――さて、通常盤の最後は「春始笑(PIANO INSTRUMENTAL)」で締め括られますね。

 作曲/編曲をしてくださったYuさんのピアノの音に感動して泣いてしまいました。それでこの音を残したい、アルバムに入れたいなと思ったんです。このピアノの音からインスピレーションを受けたので、それを皆さんにも感じてもらえたら嬉しいです。

(おわり)

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村上順一
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