FIVE NEW OLD「何気ない瞬間を丁寧に楽しむ」新譜で届けたい想いとは
INTERVIEW

FIVE NEW OLD

「何気ない瞬間を丁寧に楽しむ」新譜で届けたい想いとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年04月14日

読了時間:約12分

 FIVE NEW OLDが4月7日、ニューアルバム『MUSIC WARDROBE』をリリース。2010年兵庫県・神戸市で結成。SHUN(Ba)/HIROSHI(Vo,Gt)/HAYATO(Dr/WATARU(Gt, Key)の4人組。2017年に『BY YOUR SIDE EP』でメジャーデビュー。さまざまなジャンルを昇華させたワールドスタンダードなポップサウンドが魅力のバンドだ。

 今作はバンド初となる日本語詞曲「Vent」、coldrain Masatoをゲストボーカルに迎えた「Chemical Heart(feat.Masato from coldrain)」、ECCジュニアCMソングにもなっている「Light Of Hope」、HIROSHIも出演したドラマ『3Bの恋人』主題歌「Hallelujah」など全16曲を収録。インタビューでは『MUSIC WARDROBE』というタイトルに込めた想いから、「ONE MORE DRIP」(日常にアロマオイルの様な彩りを)というコンセプトを掲げるFIVE NEW OLDの未来について話を聞いた。【取材=村上順一】

「ONE MORE DRIP」をもう一度踏み込む

『MUSIC WARDROBE』通常盤ジャケ写

――今作は16曲収録とすごいボリュームですね。

HIROSHI 曲数が増えたのは単純にアルバムを作る上で4人で集まる時間が増えたのもあると思います。最初は10曲入りくらいのコンパクトなアルバムを作りたいという話をしていて、わりとマイペースで作っていました。制作する中で、CMタイアップのお話も頂き作る曲も増えていきました。

――『MUSIC WARDROBE』というタイトルが付けられた経緯は?

HIROSHI 僕らは「ONE MORE DRIP」というコンセプトがあります。「日常に花を添える」「日常の何気ない瞬間をドラマチックにする」という音楽を届けたいんです。例えば服を選ぶ時は、日や場所、気分によってスタイルが変わったりすると思うんですけど、そういった感じで音楽を選んでくれたら嬉しいなと思って、『MUSIC WARDROBE』というタイトルをつけました。

 実は『Emulsification』を作った後に次にどんな作品を作ろうかと、コロナ禍もまだどうなるか全然わからないタイミングで「ONE MORE DRIP」をもう一度踏み込んだらどういう表現になるかなという所が最初の方にあったんです。でも、それを共有して『MUSIC WARDROBE』というひとつのキーワードとして温めていたら、自然にそのコンセプトに添ったものがどんどん生まれていって、じゃあ今このタイトルで作品を出して聴いてもらおうとなりました。

――「ONE MORE DRIP」のその先、という感じもある?

HIROSHI はい。僕たちは「ONE MORE DRIP」を直訳して「もう一滴」と、アロマが変わるようなものというのをずっと表現として説明していたけど、この時代の中で「もう一手間かける」ということがもうひとつの「ONE MORE DRIP」なのかなという新しい発見もあったんです。例えばテイクアウトやリモートなど、ボタン一つで色んなものにアクセスできて、目的まで最短距離で行ったり、ある空間の中で何かを済ませるということが増えたと思うんです。

 そういう時に、例えば音楽だったらレコードを買ってわざわざ針を落とすまで一手間かける、CDだったら爪をひっかけながらシュリンクを剥がして音楽を聴いたりと、そうやって日常の何気ない瞬間を丁寧に楽しむことが大事な時代になってきたと思いまして。「ONE MORE DRIP」もその先に行くと「もう一手間」の中に、音楽をスタイルとしてもっと楽しむということもあるんじゃないかなと思っています。

4人の音楽の聴き方とは?

――音楽の聴き方としての「もう一手間」を挙げて頂きましたが、みなさんは今どのような方法で音楽を聴いていますか。

SHUN 音楽を仕事としてやらせて頂いている部分もあるので、例えばレコーディングの現場に置いてある大きなスピーカーで贅沢に聴くこともできたりするので、逆に日常生活ではそんなにこだわってなくて、iPhoneやイヤホンで聴いたりすることが多いです。音楽を聴く時間というか、それを趣味としてではなく、生活に溶け込んだ瞬間に流れてくることが多いので、ラジオを聴く時間が多かったり、そこで流れる音楽に触れることが多いです。

HAYATO 僕は、ジョギングの時は基本的に音楽を聴いています。その時はビートをあまり感じないインストを聴くことが多いです。家の環境で聴く時はそこまで良いものではないんですけど、スピーカーで聴いたりイヤホンで聴いたりしています。たまに、ライブで使っているイヤモニ(イン・イヤー・モニター)で聴いたりして聴き比べたりすることもあります。色んな音がちゃんと聴こえるので、音を楽しむというか仕事のようになってしまうんですけど(笑)。だからコンプレッサーがかかっているような感じのイヤホンで聴くと気持ちいいので、日常ではそっちなんです。

――WATARUさんは?

WATARU 僕は2つあって、1つは制作でヘッドホンをよく使うんですけど、それは細かい音を聴きたいからなんです。制作の一部が日常の一部みたいなところがあるので、それが1つです。あとは、料理中に音楽をかけたりして、Macのスピーカーでインストの曲をかけたりするとその世界観に浸れる感覚があるのでそういう聴き方をしています。

HIROSHI レコードを聴く機会が増えてきています。今の楽曲のレコードと、例えばフランク・シナトラのレコードを聴いた時とでは聴こえ方が全然違うんです。今の音楽はわりとダイナミックにくるというか「聴け!」という感じなんですけど、逆にフランク・シナトラなどは日常に溶け込む感じがして。「こういう音も作られたらいいな」と思ったりします。もちろんサブスクで新しい音楽を掘りにいったりすることもあります。最近もともと制作用に使っていたスピーカーを新調して、前のスピーカーが余って家にあるので、イヤホンなどはあまり使わずにスピーカーで聴くようにしています。

――インストを聴くというお話しがありましたが、今作ではインストが数曲入っていますね。

HIROSHI 一つ理想があって、ふと入ったカフェや服屋などで、音量が絶妙なお店ってあるじゃないですか? 入ってくるわけでもなく、聴こえないわけでもない、そういう音楽、いわゆる質の良いBGMみたいな。そういうことは表現したいものの一つではあった感じがしています。9曲目の「Nebula」はWATARUが作ってくれたんですけど、今年の夏に僕はダライ・ラマのアルバムを凄く聴いていて、そういうスピリチュアルなものだったり、アンビエントミュージックが持っているヒーリング効果だったり、音楽が持っているエンターテインメントとして楽しむ部分だけではなく、芸術性や人の心を癒す部分なども『MUSIC WARDROBE』としては用意しておきたい気持ちがありました。

WATARU インストのストックは多いんですけど、インストが出来る経緯も色々あります。今ガレージを借りていてそこでみんなで集まって作業するんですけど、そこでHIROSHIと一緒に突然生まれるものがあります。僕は曲を作る時にバンドのオケを先に作ってHIROSHIに渡して「何か歌を入れてみて」ということもやるので、おのずとそれがインストになるんです。そういうものも今回は入っています。僕にとってのインストはわりとニュートラルな部分にあるので、特殊なものではないんです。

――ところで、すごくアナログ感が音源から感じられるのですが、アナログレコーディングなんですか。

HIROSHI 僕達はインスト曲はセルフミックスをしているんですけど、デスクトップで全て完結させる手法をとっています。他の楽曲に関しては、昔ながらのレコーディングである、コンソールミキサーを全て通して最終的にアナログテープに通しています。アナログというとアバウト、ファジーなものというイメージがあるんですけど、実はデジタル、Pro Toolsなどレコーディングで使うソフトも再生すると1回目と2回目で音が違うんです。

――えっ、そうなんですか。

HIROSHI みんなデジタルは常に同じものを提供していると信じているけど、デジタルの二進数や色んなプロトコルの組み合わせって実は誤差が多いらしいんです。それをアナログテープに通すと、アナログの方がそれを正確に音として残します。だから1回目と2回目のテープに録ったは音に違いがでるんですけど、傾向として1回目はMid(中音域)とLow(低音域)がボンッと出て、2回目はレンジが広くなるんです。それもあり僕達は2回から多い時は4回、同じテープに通します。それで4つのタイプの曲を、この曲にはどれが合っているかを判別しています。その時間が楽しくて僕たちのご褒美なんです。

それぞれのチャレンジやこだわり

――今作で気に入っている曲や、新しい試みをした曲は?

HIROSHI 新しいという部分では、フルで日本詞が入っているところだと思います。「Hallelujah」「Vent」は、リリシストとしても、僕はメロディから作って英詞をはめることが多いのですが、英詞が持つ子音が続いた時のパーカッシブな感じを、母音が必ずある日本語の中でどうやってリズムを崩さずに耳触り良く聴いてもらえるか、なおかつ言葉として美しく、色んなものを連想させる言葉を残せたらいいなというのが新しい挑戦だったと思います。

――日本語の歌詞を敬遠していた部分も?

HIROSHI 単純に洋楽で育ったので、英語で歌うことが自然だったんです。あと、どこか自分で書いた日本詞に照れ臭さみたいなものも感じていて、それを感じずに表現できる詞が書けるまで時間がかかったというのもあります。10年目という節目の中で、もう一度ちゃんと日本詞と向き合うことができたので書けるようになってきて。日本のマーケットを見た時に単純に日本語があると受け入れやすいというのが事実としてあるので、どちらのポイントにおいてもメリットがあったのでチャレンジするべきだと思いました。

――新しいことといえばドラマに出演されてましたが、演技はやってみたいと思っていた?

HIROSHI 最初は思っていなかったんですけど、なんとなくできないことはないなと思っていました。ステージに立った時にスイッチが入る部分があったので、その照れ臭さみたいなものを全部取りはらえる能力が自分にはあると思っていたので、それを音とは違う芝居というフィールドでそのスイッチを押せるようになったら、ミュージシャン、シンガー、フロントマンとして表現が広がる良いきっかけにもなるし、こんなありがたい話は人生においてそうない、飛び込むしかないと思いました。

――もしかしたらミュージカルも観られるかもしれませんね。

HIROSHI 僕が凄い尊敬しているシンガーでパニック!アット・ザ・ ディスコのブレンドン・ユーリーがいるんですけど、彼自身も2、3年前にブロードウェイに出ていたんです。『キンキーブーツ』で主役をやられていて、その経験が次のアルバムに活かされていたり。ミュージカルは、歌もお芝居もするし、生ものという意味ではエンターテインメントを凝縮した最終形態でもあるなと思っていて。なので、トライしてみたいという気持ちはあります。

――役者としての経験に日本語の歌詞と、新たなチャレンジがありますね。SHUNさんはいかがでしょうか。

SHUN 今回チャレンジした曲だらけなんです。特に思い出深い曲は「Breathin’」です。タイアップが決まっていてそれに向かって作るという経験がみんななかった状態の中、クライアントさんの意見も聞きながら自分達の音楽をどう表現するかが難しかったです。レコーディング中にアレンジを変えたりもしました。そのままエンジニアさんはトラックダウンしてくれて、自分達も一旦帰って朝までにシンセベースを入れ直したり、ほぼ徹夜状態でみんなやっていました。凄くチャレンジングな経験をさせてもらいました。

――「Breathin’」のイントロはオルタナティブロックのテイストもあって、ニルヴァーナっぽさも感じたりしました。

HIROSHI 出だしはめちゃくちゃオルタナティブなんですけど、ビート感はトラップの要素が入っています。僕達の系譜で言うと『By Your Side』からずっと培ってきたビッグなブラックなビートなんですけど、それをバンドでやることによってロックとのハイブリッド感、黒っぽさとロックバンドのせめぎ合いにずっとトライしています。今回ついに僕達にしかできないバランス感、やっと融合できたという感じがあります。マシン・ガン・ケリーにインスパイアされたりして、パンクのリバイバルやリブートもできたんじゃないかなと思っています。あと、この曲のアコギのサンプリングは実はガレージでみんなで喋っている中、スマホで録った音なんです。雑音が入っているけどその汚れ感もまたその時の思い出としていいなと。

――HAYATOさんの新たなチャレンジとしては?

HAYATO 「Moment」という壮大なバラードです。今回はみんなが「ちゃんと聴かせる、しっかりしたバラードを作ろう」というなかで、この「Moment」が出来上がりました。このBPMのビート感も今までアプローチしたことがないものでした。実はもともと8ビートでレコーディングをしていたんですけど、HIROSHIに「HAYATO! 16ビートで!」と言われて、「この曲で16ビートでどう表現するの?」と(笑)。

――全然違うビートじゃないですか(笑)。

HAYATO そうしたら「叩かないでいいから16ビートで!」みたいな。“鳴っていないゴーストノート”のようなものは、このアルバムで鍛えられたなと思いますし、挑戦できたことが僕は嬉しかったし、いい曲が出来たと思っています。

HIROSHI このアルバムを制作する中で「曲が転がるかどうか」みたいな話はよくしてました。

――転がるというのは?

HIROSHI 何かが転がる道中って石があったりデコボコしていたりして、予測不能に跳ねていくと思うんです その不規則なリズム感、常にバウンドしながら転がっていく、どの曲も転がっていくようにというのは意識しました。音楽的な知識がない人でも本能的に感じてもらえると思うんです。

――WATARUさんはいかがでしょうか。

WATARU 実際に弾いたり鳴らしたものをもう一回取り込んで、いじってまた違う音に変えたりしています。いわゆるサンプリングという手法なんですけど、ギターをギターじゃないようにするということもたくさんしました。「Summertime」だったら夏の曲なので蝉の声を実際にボイスメモで録ってサンプリングして、ドラムのスネアの音色に入れ込んだりしています。

――これは気づかないですね!

WATARU もう原型をとどめていないので(笑)。あと「Breathin’」はMINTIAの「カラッ」という音を録って全然違う音にしていたり。人が弾いているものや、生き物などサンプリングして、一手間加えているので「ONE MORE DRIP」の精神がここにも出ています。

――今年どんな1年にしていきたいかという意気込みをお伺いします。

HIROSHI 2020年は当たり前だったことがどんどん壊れていった大変な時期でした。僕達はアルバムを作る中で一番感じたことは、この4人で音楽を作れている、音楽を鳴らすことができていることが凄く幸せなことだと思いました。それが音として凝縮されているし、でも決して「ハッピーだったよ!」みたいなことで終わらせているわけではなくて、色んな感情に寄り添えるアルバムになっていると思います。自分が音楽を通して、みんなから貰った満ち足りた気持ちを、ツアーで届けられたらと思っています。少しでもみんなで感じ取れる何かを一つでも担えたらいいなと思います。

(おわり)

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