リーガルリリー「当たり前じゃない奇跡」この1年で気づいたバンドの重要性
INTERVIEW

リーガルリリー

「当たり前じゃない奇跡」この1年で気づいたバンドの重要性


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年04月10日

読了時間:約13分

 東京都出身ガールズ・スリーピースバンドのリーガルリリーが4月7日、約1年ぶりの作品となる1stEP『the World』をリリース。『the World』はリーガルリリーの表現でこの世界を捉えた、「東京」「天国」「地獄」というコンセプチュアルな新曲3曲に加え、メンバーの敬愛するSEKAI NO OWARI「天使と悪魔」のカバーを含む全4曲を収録した作品。インタビューでは『the World』の制作背景を聞きながら、このコロナ禍で気づいたというバンド活動の大切さ、さらにヴィレッジヴァンガードで4月6日から展開されているメンバーのおすすめ書籍を紹介する「リーガルリリーのすゝめ」について、3人に話を聞いた。【取材=村上順一】

バンド活動の大切さに気づいた

リーガルリリー

――今作は皆さんにとってどんな1枚になりましたか。

たかはしほのか コロナ禍で発見したことが、自然と表現された1枚になったと感じています。

海 こういう時期だからこそ内にあったものを発散できた1枚になったと思います。ライブではなく音源でこんなにも外に意識が向かったのは初めてでした。

ゆきやま これまでで一番破壊力のある作品になったと思っています。スピード感を持って皆さんに届く作品じゃないかなと思います。

――この1年間は思ったように活動出来なかった部分もあると思うのですが、どんな事を考えていましたか。

海 コロナ禍になって半年ぐらいはバンドについてすごく考えました。自分とバンドの立ち位置だったり、バンドのありがたみを感じることが出来ました。生活のルーティンがあるんですけど、そこから抜け出すためのものがバンドだったんだなって。そこと向き合ったからこそ『the World』が出来たなと思っています。

たかはしほのか 高校2年生ぐらいからバンドに没頭していたので、それを客観視できた1年でした。バンドをやれていることが当たり前じゃないという奇跡に気付いたんです。コロナ禍では結果的に自分を救ってくれたのは音楽でバンドだったんです。ゲームとか色々やってみたんですけど、それでは満たされないということに気付きました。なんでもそうだと思うのですが、バンドも終わりがあるものなのでより大切にしたいと思いました。

ゆきやま バンド活動が出来なくなって、普段やれない事をやろうと思いました。色々やってみたんですけど、途中から負のループといいますか元気がなくなってしまって...。でも、夏頃からバンド活動ができるようになって気持ちも回復してきました。スタジオやライブは定期的にやらないとダメなんだなと気付きました。

たかはしほのか バンド活動は無意識に大切にしていたから、それが意識できるようになったんです。

――それぞれバンドの大切さに触れたんですね。その気持ちが今作にも表れていますが、リード曲の「東京」は、たかはしさんが山に登って見た東京の街からインスパイアされて出来たんですよね。

たかはしほのか はい。前から山に登ることは好きでした。山頂から自分が住んでいる場所を客観的に見ることができました。それもあって曲のテーマは都心ではない、空が広い東京をイメージしています。

――一般的な東京のイメージではないところをフォーカスして。

たかはしほのか みんな東京を難しい感じで語ることが多いんですけど、実際に住んでいる私にとっては少し違和感があって。でもそれもわかるんです。きっと自分も違う土地に行ったらそういう感覚になってしまうと思うので。

――よく東京の人は冷たいと言いますよね。

海 干渉しない優しさが東京の人にはあると思うんです。

たかはしほのか 干渉されると自信をなくすこともあるんですよね。物理的に人との距離が近いというのもあると思っていて。

――歌詞にある<闇に撃ち放つ太陽の照明弾>という言葉が印象的なのですが、この言葉はどのようなきっかけから出てきたんですか。

たかはしほのか 生活していく中で、最近当たり前のことが当たり前じゃなくなって、それに気づく、それは<照明弾>だなと思ったんです。

――たかはしさんの歌詞の特徴として、大きなところから身近なところに落とし込むセンスが面白いと思っていて、<ナイジェリアの風がライターの火を吹き飛ばす>はどういうところから生まれたのでしょうか。

たかはしほのか 私の場合、自分がその時に感じた素直な気持ちを落とし込んでいくんです。私はバタフライエフェクトと呼ばれる現象、小さい事が大きな事に変わっていくのに興味があったり、それがこの部分に出ているんじゃないかなと思います。ナイジェリアの風は東京に繋がるし、<ホタルイカの素干し>も大海原に繋がって、その大海原は日本を囲んでいる。そういった繋がりが自然に生まれてきます。

――連想ゲームなんですね。

たかはしほのか 連想ゲームは常にしている感じがあります。こういったインタビューでもずっと連想していて、最終的に自分が何を言いたいのかわからなくなったり(笑)。本当は言いたいことはなくて、言いたいことは曲にしているんだろうとか。

海 たまに話が脱線するよね(笑)。

たかはしほのか うん(笑)。本当に伝えたいことなんて実はないのかもしれないんです。音楽は人に伝えたいからやっているわけではなくて、自分が発散したいからというのが大きいかもしれないです。

ゆきやま バンド活動やライブをやることは生理現象なんですよ。

――自然なことで生活に結びついているんですね。

たかはしほのか 最近、生活するのが楽しくなってきました。一人暮らしを始めたんですけど、実家にいたときにお母さんが怒っていた理由もだんだんわかってきて(笑)。

――はは(笑)。そういえば、ホタルイカの素干し、最近食べてましたよね。

たかはしほのか ゆきやまが買ってきてくれて、食べ過ぎて体調が悪くなりました...。なんでも食べ過ぎは良くないなと思いました。

海 確か7個ぐらい食べてたよね。

たかはしほのか 実際に体験してみないとわからないので。今度から沢山食べようとしている人がいたら教えてあげます(笑)。

――身体を張ってますね。さて、「東京」でそれぞれこだわったところはどこですか。

たかはしほのか 私はギターです。今回ギターは同じ指の形でフレット上を移動していくだけのシンプルなものなんですけど、そういった曲がすごく好きで難しく考えているものは発散にはならないなと思っていて。例えばマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの「オンリー・シャロウ」はすごくシンプルで実は意外とギターは簡単なんです。そういう曲がなんかいいなと思って。

海 歌詞に<東京パズル>とか<東京凸凹>とか組み合わさるという感覚が頭にありました。バンドでも3人が別々の形をしているのに、パズルのようにハマるイメージがAメロにあります。2番でちょっとポップになるんですけど、それは客観的に見た時に素直に楽しめたらいいなと思って。音圧がありながらもスリーピースでしか出来ない音の交わり方が出来たかなと思います。

ゆきやま 自分が好きなバンドの雰囲気を散りばめることが出来たので、すごくお気に入りなんです。中にはスネアの雰囲気が好きとかそういったところもあるんですけど、セクションごとに意識していることが違うので、是非みなさん探してみて下さい。

感動と興奮はお金に勝つ

――「地獄」と「天国」はセットのようなタイトルですけど、これはもともとコンセプトがあって?

たかはしほのか 「地獄」はタイトルもない状態であった曲なんです。私の中で地獄というのは負のループみたいなイメージで、そこから抜け出せると天国に行けるイメージでした。それで「天国」という曲ができて、天国を知らなければ地獄を見ることはできないと思って、それで「地獄」というタイトルに辿りつきました。

ゆきやま ちょうど「地獄」を作っている時、私は負のループに入っていて地獄状態でした(笑)。

――イントロとアウトロのコード感は、まさに負のループというのが伝わってきます。

たかはしほのか 同じコード進行なんですけど、負のループを表現したかったんです。アウトロはテンポが下がって、落ちていきながらもまた頭に戻っていくみたいな(笑)

海 「地獄」はクリックを使わずに3人でがむしゃらな感じを出しました。基本的に突っ走っていくんですけど、最後はため息を吐くように終わるんです。

――突っ走ると言えば「天国」のイントロのリズムはレッドツェッペリンの「ロックン・ロール」を彷彿とさせますよね。

ゆきやま 私、レッド・ツェッペリン好きなので、そういったところにも出ちゃってます(笑)。

――そして、SEKAI NO OWARI(セカオワ)のカバーで「天使と悪魔」が収録されていますが、たかはしさんの思い出の一曲なんですよね。

リーガルリリー

たかはしほのか そうなんです。自分のお金で初めて買ったアルバム『ENTERTAINMENT』に入っていた曲です。当時、中学3年生でバイトも出来なかったので、お小遣いの中から買った1枚なんです。アルバムの金額は中学生が買うのには値段が高くてなかなか大変なんですけど、『ENTERTAINMENT』はお金のことなんか気にせずに買えた、心が動かされたアルバムでした。私は感動と興奮はお金に勝つと思っていて、それを実感した作品でもあるんです。

――そんな思い入れがある曲だと、カバーに取り組む姿勢も違ったのでは?

たかはしほのか 高校の軽音部に入って、セカオワのカバーをしたいと思ったんですけど、その時は演奏の技術がなくてできなかったんです。やっと今回、満を辞してカバーすることが出来ました。

海 今回カバーするにあたってよく話していたのが、もしセカオワが私たちと同じようなバンド編成だったらどんな「天使と悪魔」になっていたんだろう?、それを私たちでできたら面白いね、と。結果、変に捻ることなく素直にカバーすることが出来たなと思っています。

――ドラムとかオリジナルと定位が逆なのは敢えて?

たかはしほのか それはライブの時の配置を意識しました。

ゆきやま エンジニアさんがライブ感を意識される方なんです。

「リーガルリリーのすゝめ」に迫る

「リーガルリリーのすゝめ」

――ヴィレッジヴァンガードで「リーガルリリーのすゝめ」というコーナーが展開され、皆さんのおすすめの小説やコミック10作品が紹介されるとのことなのですが、それらの作品を選んだ理由は?(以下、メンバー選出作品)

たかはしほのか
・「ぶらんこ乗り」(いしいしんじ)
・「銀河鉄道の夜」(宮沢賢治)
・「すべて真夜中の恋人たち」(川上未映子)

ゆきやま
・「白河夜船」(吉本ばなな)
・「虫と歌」(市川春子)
・「Dr.STONE」(稲垣理一郎・Boichi)


・「惑いの森」(中村文則)
・「血の轍」(押見修造)
・「滅びの前のシャングリラ」(凪良ゆう)
・「SKETCHY」(マキヒロチ)

たかはしほのか 私の思春期は「自分とは何者なんだ?」と考えだした時で、その時に読んでいたものが、自分を変えた作品なんです。今回選ばせていただいた「ぶらんこ乗り」「銀河鉄道の夜」「すべて真夜中の恋人たち」の3冊がそれにあたります。自分がどういう存在かというのに気付かせてくれた作品なんです。思春期が訪れたのが高校2年生でその時にバンドも始めて、お母さんも人間なんだと気付いたり。

――それまでお母さんは人間じゃなかった?

たかはしほのか お母さんはお母さんという認識でした(笑)。

――面白いですね。ゆきやまさんは?

ゆきやま もともと私はマンガや小説を読むのが苦手でした。それは現実世界とは違うので、想像を膨らませてしまうと自分の中でギャップが生まれてしまって、怖くてあまり読めなかったんです。でも最近読めるようになってきて、今回はおすすめと自分がこれから読んでみたい作品を3つ選ばせていただきました。

 「白河夜船」がこれから読んでみたい作品で、レコーディングエンジニアの釆原(史明)さんが勧めてくれたんです。「虫と歌」は絵とストーリーとセリフがすごく繊細なんです。奇抜な発想のストーリーなんですけど余白も沢山あって、そこに自分の想像を詰め込めるんです。漫画「Dr.STONE」は科学のお話なんですけど、大学で私は理系を専攻していたこともあり読んでいてすごく楽しくてハマりました。科学をすごくカッコよく描いてあっておすすめに入れさせていただきました。主人公の石神千空がめちゃくちゃかっこいいんです。

――海さんは?

「リーガルリリーのすゝめ」

海 まずは「惑いの森」です。この作品は物語に入り込むというより、作者の気持ちに入り込む感じがありました。短編小説なんですけどすごく好きな作品です。「血の轍」は私たちが主題歌を担当させていただいた映画『惡の華』で押見(修造)作品のすごさを知り、読み始めた作品です。絵と表現が緻密で、子どもから見た大人のグロテスクさ、怖くないのに怖い、というものに惹き込まれてしまいました。あと、表紙を外すと背表紙の部分に眼が配置されるように描かれているのも衝撃でした。

 「滅びの前のシャングリラ」は1カ月後に小惑星が衝突し地球が消滅するというストーリーで、その1ヶ月間をどう過ごすか、というお話なんですけど、それがいまの状況、現実とリンクしていて興味深い作品でした。

 最後は漫画「SKETCHY」です。この作品を読んで自分とは接点がなかったストリートカルチャーが気になりました。それで私はスケボーにハマってしまって。いま練習しているんですけど、けっこう転んじゃってアザだらけなんです(笑)。

――今回、10作品という制限があったとのことで、他にも入れたい作品はありましたか。

たかはしほのか panpanyaさんの「蟹に誘われて」という漫画です。「蟹に誘われて」はこれで笑っていいんだと肯定してくれた作品で一コマ一コマずっと笑えるんです。

――「これで笑っていい」とは?

たかはしほのか 私はサウナによく行くんですけど、そこにテレビがあって何気なく観ていると、みんな笑っているんです。でも、私は何が面白いのかわからなくて...。ポイントがみんなと違うだけなんですけど、それでテレビとか見る時は気張ってしまうんです。

――それ、映画館とかでもよくありますよね。ゆきやまさんは?

ゆきやま パウロ・コエーリョの「アルケミスト-夢を旅した少年」という作品です。これは今作「東京」にも関係しているんじゃないかと思える作品です。ナイジェリアの風と歌詞にあるんですけど、この「アルケミスト-夢を旅した少年」も遠い世界の風がここに繋がっている、というのがあって。

たかはしほのか 私も「アルケミスト-夢を旅した少年」はステイホームの時に読んでいたんですけど、知らず知らずのうちに影響を受けてたんだ!

ゆきやま そうそう。自分の運命、使命とかを教えてくれる作品なんです。すごく生きたい、と思わせてくれました。最近読んだ中でも良かった作品です。

――無意識に影響を受けていたんですね。海さんは?

海 私は写真集なんですけど、荒木経惟さんの「センチメンタルな旅」がすごく好きで、これを見ると感極まって涙が溢れそうになるんです。奥さんと新婚旅行に行って写真を撮っていくんですけど、その奥さんがどんどん綺麗になっていくんです。その奥さんも亡くなってしまうんですけど、棺の中の奥さんも写真家として撮影しています。荒木さんは写真家として生きていて、私も音楽家としてその情熱に感化されました。

――それぞれ作品から良い影響を受けているようですね。さて、4月23日から約2年ぶりとなる全国9カ所を回る有観客ワンマンツアー『the World Tour』が始まります。

リーガルリリー

海 ステージで無意識に演奏出来るようにするためにも沢山練習をしていきます。でも皆さんは肩の力を抜いて、何も考えずに音を浴びに来てください。

たかはしほのか 皆さんは身体をしっかり休めて、ライブで会いましょう!

(おわり)

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