aiko「“伝えられなかったこと”を歌にしてる」コロナ禍で気づいた音楽愛
INTERVIEW

aiko

「“伝えられなかったこと”を歌にしてる」コロナ禍で気づいた音楽愛


記者:編集部

撮影:

掲載:21年03月02日

読了時間:約6分

 前作『湿った夏の始まり』から約2年9カ月。aikoからニューアルバム『どうしたって伝えられないから』が届けられた。通算14作目となる本作には、シングル「青空」「ハニーメモリー」を含む全13曲を収録。「曲が出揃ったときに、“伝えられなかったことを歌にしてるんだな”と思った」という本作について、彼女自身に語ってもらった。

音楽が大好きかを改めて確認する時間だった

『どうしたって伝えられないから』初回盤ジャケ写

――ニューアルバム「どうしたって伝えられないから」、めちゃくちゃ素晴らしかったです!

 やったー! え、ホントですか?! うれしい! ありがとうございます!

――(笑)去年はコロナの影響でライブができない、人と会えない時期もあったと思いますが、アルバムを制作するにあたって、いつもとは違う意識などもありましたか?

 たぶんあったと思います。コロナの自粛中は、大体やさぐれてたというか(笑)。よくテレビとかでも言ってたじゃないですか。「自粛中に努力をして力を蓄えるタイプと、何もできずにダメになるタイプに分かれる」って。私はなかなかやる気が出なくて……というか、それどころじゃなかったんですよね。家にずっといて、生きていくために洗濯と掃除と炊事したら終わるやん! と思って。まずはそこに順応しないと、その先のことはできないなって。

――まずはしっかり生活して。

 そうですね。最初は「ツアーもできないし、どうなるんだろうな」と思ってたんだけど、曲作りをして、出来上がっていくうちに、「歌うのが好きだな」とか、自分がどれだけ音楽が大好きかを改めて確認する時間だったなって。

――aikoさんの音楽愛、アルバム全体にたっぷり注がれていると思います。「どうしたって伝えられないから」というタイトルについては?

 タイトルは最後に決めました。曲が全部出来て、「何がいいだろう?」と考えて。アルバムのタイトルってめちゃくちゃ難しいんですよ。全部をまとめて一つの言葉にするのって、やればやるほどプレッシャーがあるんですけど、今回は曲が揃ったときに「私は“伝えられなかったこと”を歌にしてるな」と思ったんです。歌詞のなかのひと言も候補にしてたんですけど、やっぱりピンと来なくて。スタッフにも「ええやん!」って言ってもらったので、「どうしたって伝えれないから」に決めました。

――伝えられないことって多いですよね、ホントに。

 そうなんです。自分の気持ちが相手に100%伝わることはないし、相手の気持ちを100%共有したり、痛みをぜんぶわかってあげられることは絶対になくて。それが歯痒いなと思うときもあれば、「わからないから、この人のこと好きになったんだな。もっと知りたいな」ということもあって。そういういろんなこの感情が、このアルバムにつながっているんだなと思います。

――伝わらないからこそ、曲を書くのかも。

 そうだと思います。いまだに「ムカつくと歌詞を書くんだな」って思ったりするし、酔っぱらって泣きながら書くこともあるので(笑)。

いろんなところに思い出が残ってる

『どうしたって伝えられないから』通常盤ジャケ写

――収録曲について、いくつか聞かせてください。まず1曲目の「ばいばーーい」。タイトル通り、恋人との別れをテーマにした歌詞ですが、これが本当にすごい曲で。

 ありがとうございます! 「ばいばーーい」が出来たとき、これを1曲目にしたいと思って。サビからではなくて、頭から書いていったんですよ。

――いきなり「ねえ 合鍵も返さないで何してるの?」ですからね。ドキッとしますよね。

 そうですよね(笑)。この曲、去年(2020年)1月のライブで披露したんですよ。誰も聴いたことがない新曲をライブでやることはあまりないんですけど、そのときはやってみようと思って。ファンの方からのアンケートで「大丈夫ですか?」「どうしたんですか? なんかすごかったです」というメッセージをいただきました(笑)。

――「No.7」は「あなたにあたしがいるって誇りに思いたい」というフレーズが響くポップチューン。

 こういうポップな曲って、定期的に歌いたくなるんですよね。「No.7」はもともと、布団から出て、戻ったらまだ温かかったことがあって、幸せを感じたのがきっかけなんです。「こういう感覚っていいな」って思ったところから浮かんだ曲ですね。

――生活のふとした瞬間が歌につながるというか。「一人暮らし」には、「こんがらがったあなたのロンTあたしの体と固結び」というフレーズがありますね。

 ロンTをネットに入れないで洗濯しちゃうと、めっちゃ絡むんですよ。でも毎日のことだから、きちんとネットに入れたり、色分けするのは大変じゃないですか(笑)。いま言ってくれた歌詞については、絡んでるロンTを見て「気持ちと一緒だな」と思ったんです。「好きだから、一生離れない」というキレイなちょうちょ結びではなくて、がんじがらめになってるというか。洗濯カゴのなかにある小さい靴下もそうですけど、いろんなところに思い出が残ってるな、とも思うし。

――アルバムの最後に収められている「いつもいる」の「思い出をあといくつ作れるか 愛してるって何度も言ってね」という歌詞も印象的でした。まさに今、聴きたい言葉だなと。

「いつもいる」を書いたのは去年の夏くらいですね。たぶん、そのときに感じていたことが歌詞に出ているんだと思います。ミディアムバラードで、けっこう長めの曲だし、家で一人で作ってると、これがいいのかどうかわからなくなってきて。スタッフのみんなに聴いてもらって、「いい曲だね」って言ってもらえて、しっかり形に出来て嬉しかったです。

いつかは終わりが来るから、やりたいことをやっていきたい

aiko

――アルバムの初回限定仕様盤のDVD/Blu-rayには、昨年行われた初のオンラインライブ「Love Like Rock vol.9〜別枠ちゃん〜」を収録。昨年は2度のオンラインライブを開催しましたが、手ごたえはどうでした?

 1回目のときは、「えっ?」って思うほど客席が静かで。お客さんがいることでどれだけ助けてもらえてたんだろうって、全員が痛感したし、「どうなるんだろう?」って思ってましたね。場数を踏んでいるバンドメンバーも不安だったみたいで……。そもそも最初の配信ライブは、「会場を押さえているけど、ライブができない」という状態のなかで、ギリギリのタイミングで「無観客でやろう」って決めたんです。そういう鬼気迫る感じだったり、緊張感みたいなものがステージに出てたと思いますね。2回目のときは倉庫を借りて、セットを組んでいただいて。バンドメンバーやスタッフに会うこと自体が久しぶりで、「嬉しい!」と思って、必死でやってるうちに終わってました(笑)。
 
――いろんなやり方があると思いますけど、オンラインライブならではの楽しさが見つかるといいですよね。

そうなんですよね。でも、生のお客さんが目の前にいてくれて、7時とか6時半から始まるいつものライブのドキドキ感は、(オンラインライブでは)出来ない気がしていて。やっぱり生のライブがやりたいし、今の時点では、配信ライブに意識が向いてない感じがします。

――お客さんと目を合わせて、おしゃべりして、一緒に歌って。aikoさんの活動において、ライブは欠かせないですからね。

 でも、いまはまだ不安じゃないですか。やっている方もいらっしゃるけど、いろんな選択を強いられているんだろうなと思うし。いろいろ考えなくちゃいけないけど、やっぱりライブはやりたいですね。いつかは終わりが来るから、やりたいことをやっていきたいです。

(おわり)

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