INTERVIEW

坂下雄一郎監督

窪田正孝は「すごい」 映画『決戦は日曜日』制作秘話


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:22年01月07日

読了時間:約5分

 窪田正孝が主演を務める映画『決戦は日曜日』が1月7日に公開となった。父が病に倒れ出馬することになった令嬢・川島有美(宮沢りえ)を支える議員秘書・谷村勉(窪田正孝)らの奮闘をコミカルに描きつつ、政治の裏側を切り込む。表舞台に立つ政治家ではなく陰の存在でもある議員秘書を描こうと思ったのか。脚本も手掛けた坂下雄一郎監督に聞く。【取材・撮影=木村武雄】

議員秘書を主人公にしたわけ

――議員秘書を題材にした理由は?

 約5年前にクロックワークスさんと一緒にやりましょうという話になり、そこからどんなジャンルの映画がいいかを考え、How Toものといいますか、あまり知られていない世界で働く人の話がいいと思い、選挙を題材にしました。それで、議員が主役ではなく、スタッフでもある秘書側を主人公にしたら面白いものができるんじゃないかと思いました。

――議員秘書に着目したのは、構想を練っていく段階ですか? それとも最初から?

 最初からです。候補者が主人公で、他の議員に意地悪されながら最後は街宣車で熱い演説をして聴衆から拍手を浴び当選する、という流れのものとは違う内容を作りたいと思い、スタッフ側を主人公にしたら想定したものができると思いました。

――実際に秘書の方にお話を聞かれたそうですね。

 秘書の方を中心に話を伺いました。人によって様々な考え方があるので、あるルールに対して、「もともと決まりですから」という方もいれば「誰も守っていないですよ」という方もいて。結構グレーな部分も多いですし、議員秘書という仕事も実際は自分が思っているより複雑なんだと思いました。ただ、お会いした方はとても丁寧に対応して下さって。もしかしたら秘書の方の印象が良くないと、ついている政治家の方の印象が悪くなることがあるからなのかなと思いました。

――当初描いたものから変わっていった点はありますか。

 最初はそのお仕事の日常的な要素を多く入れていました。秘書のルーティンのような、このお仕事の日常はこういう感じです、という説明的なセットアップを有美(宮沢)が事務所にやってくる前までの序盤で多く入れていました。でもお仕事を紹介するものとしては良いかもしれませんが、面白さが足りないかなと思い、日常的な要素をカットして、実際にあった出来事をパロディで入れ始めるという方向に、シフトチェンジしていきました。

――シフトチェンジするのはなかなか勇気の入ることだと思います。

 それは描こうとしているのが、説明的な仕事ぶりではないというのがあると思います。説明的な要素を見せるのではなく、始まった瞬間から物語はすでに始まっているというか、いきなり本題に入るような印象にしました。説明しすぎだなと思ったんです。そこまで丁寧にしなくても見てる方は付いてきてくれるだろうと考えを改めました。

――本編でそれが伺えるのは、冒頭の体育館での講演会のシーンですね。ぬかるんでいる道を歩かせると靴が汚れてしまうと、秘書である勉が候補者を背負う姿が象徴的です。

 一番最初のシーンで、議員と秘書の関係性を映像的に見せられたらいいと思い、実際にあった、政治家が被災地を視察した際に、政府職員におんぶされて水たまりを渡っていた出来事をヒントに、ああいうシーンにしました。

(C)2021「決戦は日曜日」製作委員会

窪田正孝と宮沢りえの印象

――現場での窪田さんの印象はいかがでしたか。

 窪田さんが演じる勉を見て面白くて手ごたえを感じました。セリフ回しも全く心配していませんでしたし、どちらかというと後半で、主人公のキャラクターが変化していくニュアンスがうまく表現できるか、ということが気になっていました。というのも、シナリオの段階でその変化が分かりづらいのではという声があったからなんです。撮っていくなかでいけるとは思っていましたが、セリフにない部分でもありましたし、やってみないと分からないというところもあって。でも撮影が終わり編集の段階で周りの意見も分かりづらいと言う声もなく、良かったです。

――窪田さんから聞かれることは?

 あまりなかったですね。

――逆に監督から伝えたことは?

 このシーンはこういう意図で作っていますという説明はしましたが、表情などの演出は細かくは言っていないです。

――それまで守っていたものがどんどん崩れていく、そういう気持ちの変化は見てとれました。でも監督の意図を察して表現できるのはやっぱり窪田さんはすごいですね。

 すごいです。

――宮沢さんの印象はいかがでしたか。

 気さくな方です。宮沢さんは、私はコメディーはできないから真面目にこの役をやっておかしさが出たらいい、嫌われるようなキャラクターにならないように気を付けたいと言っていました。字面で見るとひどいことを言っているんですけど、宮沢さんが言うと上品さが出て、作品に良い影響を与えていただけました。

(C)2021「決戦は日曜日」製作委員会

蜘蛛の巣の上に

――さて監督が作る上で特に大事にされていることは?

 この作品に関しては、映画として面白いかどうかです。こういう題材になると思いや主張みたいなものとのバランスが難しいかと思いますが、あまりそういうのが出過ぎると観ている方も引いてしまうと思いますし、でも薄いのも良くないですし。そこのさじ加減みたいなのは気を付けながら取り組んでいました。

――今のご時世に思うことは?

 いろいろと思うことはあります。まず思うのが映画を作るということは多少なりとも自分の考えが反映されているということなので、投票することくらいが行動することの自分にとって、映画を作れる環境にいるということは関わる範囲が増えている感覚があります。映画を制作する際は今起きていることに少なからず影響は受けていると思っているので。

――終盤で勉が有美に「行動できますかじゃなくて、やるんだ」と言葉を投げかけていますが、監督の思いでもある?

 物語は、いろんなことの積み重ねだと思っているので、その過程を踏んだ結果です。物語が終わる時にこういう言葉を積み重ねればうまく閉じれるんじゃないかという感覚です。

――何かの役割があるから人物を登場させるわけで、そのしまい方も考えているのですか?

 映画はすごく複雑で、キャラクターだけではなく、いろいろな要素が含まれていると思っています。登場させた人物をどう扱うかということも大事ですが、それだけではないと考えています。

――エキストラも数えたら結構なキャストがいるわけで、その一人一人が影響し合っているという。

 主役が中心にいて、蜘蛛の巣上にキャラクターが配置されているイメージですね。

――本作で言えば、有美が勉ら秘書に影響を与えて、その逆もあり、更に後援会や社会へと波及していく。それぞれがどう影響しあっていくかも見どころですね。

 そうですね。

(おわり)

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