INTERVIEW

萩原みのり

中途半端な気持ちで臨める役ではなかった。主演映画『成れの果て』


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年12月02日

読了時間:約3分

 萩原みのりが、映画『成れの果て』で3年ぶり主演を務める。8年前に起きた事件で心に深い傷を負った主人公・小夜の心の葛藤を描く。萩原が演じる小夜は、姉がその事件に関わった男性と婚約したことを知り、過激な言動と行動に出る。周囲も巻き込み乱れていく理性。そこで描かれるのは憎しみ、悲しみ、怒りと言った深い傷を背負った感情たちだ。主演したドラマ『RISKY』や映画『佐々木、イン、マイマイン』など圧倒的な存在感を放つ萩原。感情表現は彼女の真骨頂ともいえるが、果たしてどのように挑んだのか。【取材・撮影=木村武雄】

 劇作家・映像作家マキタカズオミが主宰する劇団、elePHANTMoonが2009年に上演した同名戯曲が原作。過去の事件で負った深い傷が癒えぬまま人生を歩む主人公・小夜に待ち受けていたのは、その傷を塩で塗られるような悲劇。こともあろうに肉親である姉が、その事件に関わった男性と婚約をする。悲しみを通り越して溢れる怒り。理性も失った彼女が出た行動…。

 萩原みのり「正直お受けする方がいいのかとても悩みました。台本を最初読んだ時に、物語が進むにつれ小夜が取る選択への理解が追い付かなくて、疑問がかなり強く残りました。そうした疑問を抱えたまま、中途半端な気持ちで挑めるような役、作品ではないと思いました」

萩原みのり

 その一方で、ある感情も芽生えた。「とにかく小夜を守りたくて、小夜を守らなきゃいけない気がして」

 萩原みのり「小夜の気持ちは想像では追いつかなくて、分かった気になってもいけないと思いました。分からないから少しでもいいから知りたいと思いました。小夜の気持ちは演じないと分からない、だからこそ見て知りたい、どれだけ辛かったらそういう行動に出るのか、小夜と一緒にいたいという思いで臨んでみようと思いました」

 萩原はこれまでも多くの作品で圧倒的な存在感、感情が吐き出される芝居を見せてきた。例えば、ドラマ『RISKY』では姉の人生を狂わせた人物たちに復讐心する女性を好演。劇中で見せた表と裏の顔、そのふり幅は当時話題を集めた。ただ今回の小夜はそれとも異なる。萩原は「演じ終わった後、想像していたよりも、きつくて、苦しくて、つらかったです」と振り返る。

 そんな彼女が本作で見せる様々な感情。特に終盤のあるシーンは、怒り、悲しみ、許し、拒絶、苦しみなど複雑な感情が入り乱れ、やがてそれが重なり言葉にはない感情を表現し切っている。彼女だからこそ表現できたシーンともいえる。役、フィクションを超越した瞬間でもあった。

 萩原みのり「一番苦しかった瞬間でした。苦しさを肌で感じました」

 感情を打ち消すために想像もつかない行動に出る小夜。しかし、萩原は「普通の女の子なんです」とかばう。

 萩原みのり「普通の子なんです。人によっては普通じゃないと思われますが、私にとっては普通の女の子ですし、そういようと意識しました。彼女自身、みんなに気を使われたり、あの事件をなかったことのようにされることに敏感になりながら、そして傷つき自分を守りながら生きたと思います」

萩原みのり

 そんな小夜を演じるにあたっては撮影現場ではむしろ冷静にいることを意識したという。「冷静にいることで、心の奥にある沸々としているものがやがて爆発する、それを取っておくのに冷静さは必要だと思いました」

 見事な怪演ぶりを見せた萩原が常々口にしているのは「ただ目の前の事を必死に取り組むだけです」。それは今も変わらず。演じることへの楽しさ、ありがたみも変わらず。

 「感情を吐き出す場所がある、良いことも悪いことも吐き出す場所があるのはこのお仕事の特権だと思います。この作品だからというわけではなく、嫌なことや楽しいことなどその時の気持ちをちゃんととって置けばそれを出せる瞬間がある。嫌なことがあって、どうしようもなく感情の行き場が見当たらずモヤモヤしたとしても、心の中にぎゅっとできた塊を吐き出す場所がある。私はそれでバランスを取っている部分はあって、役者の仕事をしていて良かったと思います」

 コロナ禍で演じられることが当たり前ではないということを痛感したとも過去には語った。そうした経験や作品を通して益々魅力が増す彼女、感情を吐き出しながらも地に足を付けた芝居でこれからも魅了する。

ヘアメイク:石川奈緒記
スタイリスト:清水奈緒美

(おわり)

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