INTERVIEW

川栄李奈

「受け取る人に任している」等身大のままに。『サマーゴースト』出演


記者:鴇田 崇

写真:鴇田崇

掲載:21年11月25日

読了時間:約6分

 NHK朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」では上白石萌音・深津絵里とともにヒロイン役を務めるなど、女優として活躍する川栄李奈。声優としても定評があり、全国順次公開中の映画『サマーゴースト』では、花火をすることで現れるとされている女性の幽霊、通称サマーゴースト・佐藤絢音役を、声だけの表現で丁寧に演じ上げている。唯一無二の存在感でファンを魅了していると言っても過言ではないが、自分らしさの追求については「特に深くは考えていないです」と意外な答えも。本人は俳優や声優などを含め、今の仕事にどのような気持ちで向かい合っているのか。いずれ来たる30代に向けての想いも含め、本人に話を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】

『サマーゴースト』

『サマーゴースト』

――声優としてもチャレンジのある作品だと思いましたが、今回のオファーを受けた際、いかがでしたか?

 声優のお仕事はこれまでにも何回かやらせていただいているのですが、たくさん経験があるほうではないので、声のお仕事がいただけることはうれしいですし、ありがたいなと思いました。毎回本当に勉強になり、自分の中の学びはとてもあるのですが、収録はいつも緊張してしまいますし、「これで大丈夫なのかな?」と毎回思います。

――とても優しいストーリーの物語でしたが、台本の印象は?

 背中を押してもらえるようなお話ではあるのですが、でも「頑張れ!」という強い感じではなく、今の若い子たちに寄り添った、一歩ずつ、少しずつ自分を見つけていくような内容なんです。わたしも20代なので、共感できるところは多かったです。わたしが演じた“サマーゴースト”の佐藤絢音は主人公の男の子と一緒にいることが多いのですが、その中でも自分に問いかけるようなところがとても新鮮でした。幽霊というキャラクターを演じたことがなかったのですが、共感するところは多かったですね。

――あたかも自分のことのように受け止める方も多そうですよね。

 登場人物はみなそれぞれ悩みを抱えていて、その悩みが現代の若者も抱えているようなものですよね。いじめや大人の言うことをずっと聞きながら生きているみたいなこと。とても身近に感じられる悩みが、この作品ではけっこう出てくるのですが、それに対して今の若い子たちは「もういいや」と諦めて生きていることも多いと思うのですが、ちょっとしたことで変わると思うんです。仲間や出会いで人生が変わったりする。一歩踏み出す力みたいなものを、この作品で感じてもらえたらいいなと思います。

――ご自身も作品を通じて勇気をもらうようなことはありますか?

 はい。こういう作品の映画やドラマは、観ていると自然と勇気や力になると思いますし、わたしもこの主人公みたいに流されて生きているような感じもあったので共感したんです。自分の意思を伝えることも大切だけれど、すぐ変わることは無理だから、徐々に一個一個ゆっくり問題を解決して、よりよい環境で暮らしていけたらいいなと思いました。

――今回のような声のお仕事は、どういうところが面白いですか?

 普段のお芝居は自分の動作がメインなのですが、アニメーションは作品の主人公がすでにいて、そこに自分の声を当てていくので、普段の表現方法とはちょっと違いますよね。でも、お芝居をすることには変わりはなくて、その新鮮さはとても勉強になりますし、ほかの方の声を聞いて、その声の出し方、言い方も学べるので、とても勉強になります。

――その経験は俳優の技術にシンクロしていくものなのでしょうか?

 そうですね。でも、声優さんたちは声を張る、活舌など、普通のお芝居の時よりも強く意識していると思うので、そういう意味ではこういうお仕事をさせていただくと、自分でもより気にするようになったりはします。

川栄李奈

人間的な面でもきちんとしていたい

――今回のような声優の仕事も含めて、自分らしさを仕事で追求したりはしますか?

 それは特に深くは考えていないですね。人の受け取り方次第で評価が変わっていく仕事と言いますか、上手いと言ってくださる方もいれば、その反対の評価する人もいますよね。でもそれは受け取り方次第で、いろいろな考え方の人がいると思うので、らしさみたいなことは考えていないかも知れないですね。受け取る人に任しているところはあります。

――先ほどの自己分析、流れに身を任すタイプと関係ありそうな考え方?

 あまり積極的な意思はないかも知れないですね(笑)。作品に入れば監督に身を任せたいですし、「こうしたい」みたいな自分の強い意思はないんです。わたしが作品をひとりで作っているわけではなく、みんなで作っているので、そう思うのかも知れません。

――そうすると、今の仕事のモチベーションはどこにありますか?

 お仕事をいただけていることがモチベーションと言うか、また使ってもらえるようにと頑張っています。声優は本職の方がいるものなので、より一層頑張らなくちゃいけないなと思っています。

――自分を高めるために日頃していることはありますか?

 何にもしていないんですよ(笑)。わたしは仕事とプライベートをばっさりわける人間なので、仕事をプライベートに持ち込みたくないんです。なので役作りのために休日に何かをすることもないです。たとえばアクションをすることになったら、その練習は毎日しますが、プライベートの時間を費やして何かをする、ということはないです。

――あえて“何もしない”という予定を入れるみたいな?

 (笑)。お芝居にも自分の強い意志を持ち込まないので、反対に考えると、何でもできる気でいるというか、監督の要望に応えやすいとは思います。セリフや自分で思う雰囲気は、なんとなくまとって現場には行きますが、「違う」と言われたら、すぐ切り替えられるほうです。固めていくと、それが否定された時に自分でも慌てるので気をつけています。

――音楽はいかがですか?

 実は普段、あまり音楽を聴かないのですが、最近では「梨泰院クラス」を観て、今さらながらハマッてしまいました。朝起きて家事をする時とか、その主題歌をずっと聴いています(笑)。あとはランニングをする時とかも。テンポを上げながら作業しています。

――作品ありきで好きな曲が出てくるみたいな?

 そうかも知れないですね。作品を観てこの主題歌いいなと思ったほうがイメージをしやすいので、そういうことが多いかも知れないです。

――たとえば30代に入った時など、今後の目標はいかがですか?

 30代になったら、もっといろいろな役ができるのではと思っています。今は20代後半なのですが、難しい歳だなと感じていて、女子高生を演じるのであれば、もうちょっと若いほうがいいけれど、母親役にしてはまだ若いと自分では思うんです。難しい年齢だろうなと自分でも思うので、30代・40代になれば、本当に幅広い役を演じたいなと思います。

――最後にうかがいますが、理想の俳優の条件とは何でしょうか?

 お芝居の面では、みなさん本当に上手くて、技術がすごいので、それ以外のところでわたしが出会って素敵だなと思う人たちは、立ち居振る舞いが素晴らしい人が多いんですよね。そして謙虚な人、礼儀もきちんとできている人は、やっぱりいろいろな作品に出ているし、現場でも好かれているんです。なのでわたしもお芝居についてはもちろんですが、人間的な面でもきちんとしていたいなと思っています。

川栄李奈

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