INTERVIEW

恒松あゆみ×川田紳司

セルシとイカリスはなぜ惹かれあったのか、『エターナルズ』への思い


記者:木村武雄

写真:提供

掲載:21年11月18日

読了時間:約6分

 恒松あゆみと川田紳司が、マーベル・スタジオの最新作『エターナルズ』(公開中、クロエ・ジャオ監督)で日本版声優を務めた。「アベンジャーズ」に次ぐ新たなヒーローチーム エターナルズの戦いが描かれる。そのエターナルズの一員、セルシを恒松、同じくイカリスを川田が日本版声優を担当した。どのような思いで臨んだのか。【取材=木村武雄】

(C)Marvel Studios 2021

厳粛な雰囲気

 先日都内で行われた公開記念イベント。エターナルズの声を担当した10人の声優陣が一堂に会し、東京タワーに10色の灯りを点灯させた。公開を直前に控え喜ぶ興奮にも似た熱さの一方で、厳粛さもあった。恒松「勢ぞろいしたのはあのイベントが初めてでした」

 川田「あの日は試写を見させていただいてからイベントに臨みましたので、見終わった後の『とんでもないものを見てしまった』という気持ちと『それを共有できる仲間たちがいる』という感覚がありました。でもその仲間たちと『やったね!』『イエーイ!』という感じで対面するというのではなく、少し落ち着いた感じで『どうも、あの役をやっていましたよね。僕もイカリス役でした』という手放しでは騒げない厳粛な緊張感がありました。でもそのなかでやっと出会えたという特別な感情もありました」

恒松「場所がホテルというのもありますが、普段は別録り作品で録り終えた後は『お疲れ様! やっと出会えたね!』という感じですが、そういうものではなくて『お疲れさまでした、セルシ役の恒松です』と落ち着いた感じでした」

 「それだけ作品の大きさ、新しいシリーズの重圧を感じていたのかもしれないですね」という川田。公開された以降も「その重圧は消えない」と恒松と口を揃える。それだけの覚悟が求められた作品でもあった。そしてその覚悟は、劇中のエターナルズにもある。

どう向き合ったのか

 約7000年という期間に渡り人間の姿を装って地球にひっそりと暮らし、人智を超えた能力で人類を見守ってきた10人の守護者、エターナルズ。新たな脅威によって地球滅亡までのタイムリミットが残り7日間となったときに、離れ離れの場所にいる状況の中再び結集し、人類を守るために戦う。

 セルシは、物質を操作できる人類に親和性のある共感的なエターナルズの一人。

 恒松「声を演じる上では、音響監督と細かく微妙な表情やセリフの熱量は確認しながら収録しました。大柄にならないようにセルシのもともとのものを生かせるように、声が馴染むように意識して。私個人として最初から気を付けていたのは声がトゲトゲしないで穏やかになだらかになること、それを日本語としてのキャラクターとして出せたらいいなと思いました。抑揚をつけすぎない。静かな印象になるように気を付けました」

 イカリスは、空を飛ぶ能力を持ち、目から宇宙エネルギービームを投射することもでき、エターナルズでは群を抜く強さとリーダー的な役割もある。

 川田「普段も心掛けていることですが、今回は特に先入観を持たず、このセリフはこういう言い回しでとは決め込まないことを意識しました。その瞬間に出る音とか。音響監督と何度も見直して声にずれがないかとかを何度も確認しますが、それはもちろんのこととして、声を出すときにも力まず自然と出るように、それを貫くところを意識して。今までもそういう演技をしたことはありましたが、今回は特にその繊細さと集中力は求められたと思います」

 それではお互いの印象はどうか。

 川田「試写でほかのキャストの声を聞くことができて、特にセルシとのシーンに注目していましたが、最初に出た時から違和感ゼロ。がっちり恒松さんの声が愛と優しさ、包容力に溢れ、柔らかい声で感動しました。素晴らしい」

 恒松「思っている川田さん像とちょっと違って、試写室で観た時にドキッとしました。自分に話しかけられているみたいで。演じた私がセルシとして聞いていました」

恒松あゆみ×川田紳司

なぜ惹かれあったのか

 セルシは何世紀にもわたってイカリスに恋をしており、かつては恋仲だった。なぜ2人は惹かれたのか。そして互いをどう見ているのか。2人の解釈を聞いた。

 川田「イカリスは自分たちで責務を果たす強さを持っていますが、セルシの場合は愛や情を守る強さが強大なものがある。柔らかさを持っていながら実は強大な力がある。イカリスは会った瞬間にセルシの愛の深い存在、見た目も含めてだったと思いますが、その存在が自分にとって必要、愛すべき存在だと感じたと思います。一目ぼれに近いような、それは見た目だけでなく精神的なものとしてもそう感じたんだと思います」

恒松「セルシを曲線的で表すならイカリスは直線的。まっすぐでエターナルズとして自分が信じる正義があってそのなかでセルシを思う気持ちがあって、見ていて素敵だと思いました。でも試写したときに実はイカリスは不器用なキャラクターではないかと思いました。真っすぐすぎるがゆえに不器用。融通が利かないタイプ(笑)そこが強いヒーローの弱さだったりして魅力的に感じました」

 そのセルシは、イカリスの肉体的強さ、精神的脆さも含めて包容力で包んでいるようにも見える。

恒松「包むというより、セルシとしては自然に寄り添う、そばにいてくれるような感じだと思います。例えばセルシが人間と触れ合っている印象的なシーンがあって、セルシは自然と相対する人に寄り添うことができる、同じ目線で一緒にいることができる。彼女自身はそれをすごいことだと思っていなくて、とても素敵な部分。それはイカリスに対してもそうで、『あなたはそういう人だからそうよね』と言える。それがセルシの凄いところだと思います。包むよりも一緒にいる。でも結果的に周りから観たら包んでいるように見えているのかもしれないです」

 本作は地球が舞台。セルシのその優しさに「母なる大地、地球」が重なる。

(C)Marvel Studios 2021

大事にしている価値基準

 エターナルズはそれぞれの正義、価値観で進んでいく。それを自身に顧みた時に普段声優をする上で大事にしている価値判断は何か。

恒松「自分の直感、物事に相対したときに自分が感じたことを大切にしようと思っています。でもそれをどこまでも押し通すのではなく人の話を聞く柔軟さも忘れてはいけないと思っています。そのバランスは難しいですが、自分の感覚を大事にしながらも周りの意見も大事にしよう、その考えは心の中に置いています」

川田「あえて現場に入ったら先入観を取っ払って出てくるその瞬間に呼び出されるものを大事にしています。事前にこう演じるんだと作って関わっていく作品もあります、例えばアニメとかはあえてデフォルメを強くすることもあります。今回は先入観をいかに取り払って、その瞬間に出す表現はどういうものなのかということを意識しました。それは自分を信じないとできなくて、それまでの声優としてのキャリア、更にその前の役者としてのキャリア、その経験値を含めて生み出されるものが、原音に寄り添えるか。自分も信じるし、一緒に録っている音響ディレクターなどスタッフも信じて。疑いをはさむと迷ってしまうので自分も周りも信じ切ることが大切だと思います」

 イカリスを演じたリチャード・マッデンの声は約10年前に放送された『ゲーム・オブ・スローンズ』や2019年公開の映画『1917 命をかけた伝令』『ロケットマン』、18年の『DJにフォーリンラブ』でも担当したことがある。

川田「過去に演じたとしても、リチャードの動きや声の響きに集中して響き合えるようにしました。若い頃にこういう芝居をして、それから年月を重ねて、今回はこうだからこういう声をやろう、こういうアプローチをしようというのは一切取り払おうと思いました」

 まさに一心同体。観察力、洞察力、瞬時に感じ取る第六感的なものが声優には求められる、エターナルズ同様、どの能力の高さにも改めて感服した。

(おわり)

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