INTERVIEW

蒔田彩珠

蒔田彩珠、女優は「天職」 大事にしている「楽しむこと」
アニメ声優初挑戦『神在月のこども』


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年10月08日

読了時間:約6分

 蒔田彩珠(19)が、アニメ映画『神在月のこども』(8日公開)で主人公・カンナ役の声を担当した。“島国の根”と書く神話の地「島根・出雲」を目指して駆ける12歳の少女の成長を描く。蒔田は、『万引き家族』など多くの是枝監督作品に出演。『朝が来る』で河瀬直美監督作品に抜擢され目覚ましい活躍を見せ、現在はNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』で主人公の妹・永浦未知役を好演中。本作は自身初のアニメ声優となる。「俳優は天職」とも語る彼女は、どういう思いで本作に挑んだのか。【取材・撮影=木村武雄】

声優初挑戦、カンナに助けられた

――声優初挑戦となります。出演が決まった時の心境は。

 いつかはやってみたいと思っていましたが、はじめてが主人公というのは、嬉しさを感じつつも、どうしようという気持ちが強かったです。でも、カンナの一度は諦めていたことにまた挑戦するという強い姿を見て、私も強い決心で臨めました。

――声優をやるにあたって、準備されたことは。

 カンナは12歳なので、自分が普段話す声よりも高くすることは意識しました。普段のお芝居ではあまり作り込むことはしないのですが、今回は家で映像を観ながら合わせる練習をしました。実際のアフレコ時には、皆さんの声が既に入っていて「やっぱりプロの声優さんはすごいな、頑張らなきゃ」と思いました。

――純朴な感じが蒔田さんらしいです。声の演出で監督に言われたことは?

 自分が思っている以上に、感情が出ていないと指摘されました。自分では大きく表現しているつもりでも、実際に聞いたらそんなに変わっていなくて。そういうことが何度かありました。

――役を掴めた瞬間は。

 何日か分けて録りましたが、最初は緊張していたこともあって、なかなか上手く出来ませんでした。でも回数を重ねるごとに、少しずつコツみたいなのを掴んでいけて、カンナの声になっていけたと思います。

――今回のように声で表現するのは難しかったですか?

 すごく難しかったです。普段のお芝居では、相手の方が目の前にいることも多いので、その時の気持ちのキャッチボールみたいものがあります。今回は一人で録ったということもあるのですが、声優のお仕事は、実際に絵も出来ていて、キャラクターの表情も感情も決まっているので、その顔にあわせて声で感情を表現していくことが難しかったです。

――それでも最後の方の感情を爆発させるシーンは印象的でした。

 何回も何回もやりました。最初は全編のアフレコを一日で録る予定でしたが難しく、4日くらいに分けて録りました。途中で苦戦してくじけそうになりましたが、ちょうどカンナが立ち直るシーンだったので「私も頑張らなきゃ」ってカンナに勇気をもらいながらやりました。

 それと、声を張り上げるシーンは、ただ声を張り上げるだけではなく、そこに感情をうまく乗せなきゃいけなかったので、難しかったです。あと、走るシーンも難しくて。ほぼ難しかったです(笑)。

――今回の経験はご自身にとってどういうものになりそうですか。

 以前、はじめて舞台に出演させて頂いたことがありました。出演させて頂く前までは舞台に対して不安な気持ちが大きかったでのすが、実際にやったらすごく楽しくて。今回も主人公ということもあって不安もありましたけど、普段は経験出来ないような事や、声のお仕事だから楽しめる事もあったので、またやってみたいと思いました。

蒔田彩珠

10歳でドラマ出演、考えのベースに

――カンナは、母を亡くし、大好きだった“走ること”と向き合えなくなった少女ですが、一羽の兎(シロ)と一人の少年(夜叉)との出会いをきっかけに出雲に旅を出て、その道中で成長していきます。共感できるところは?

 カンナは負けず嫌いなところがあります。私には兄が2人いて、私も負けず嫌いなので、夜叉とやり合うシーンは共感できて、演じやすかったです。自が出ていますね(笑)。印象に残っているシーンは、走る意味がないとカンナが諦めるところです。母が亡くしてからずっと一人で溜め込み抱えていたものを全部出す、カンナにとって大事なシーンでした。自分も大切にしたと思っていたシーンだったので印象深いです。カンナがつまずいても立ち直る姿、物語の中で成長していく姿をみて勇気をもらえると思います。

――柴咲コウさんが母親役ですが、声を聞いて何か感じましたか。

 奥深い何かを感じました。旅の途中で偽物のお母さんが登場しますが、その違いも繊細に表現されていてすごいなと思いました。

――ところで12歳の時の蒔田さんはどんな少女でしたか。

 幼稚園の頃はすごく大人しかったのですが、10歳の時にドラマに出てから、何か壁みたいなものが無くなって明るくなったと思います。それからの12歳でしたので明るい天真爛漫な子でした(笑)。私にとって10歳の時に、ドラマに出演したことが大きな転機になって、そこからいろいろと変わりました。

――カンナは、母が目の前で倒れてしまった事がずっとトラウマになって、それにどう向き合い乗り越えていくかが描かれています。ご自身は壁をどう乗り越えていますか。

 運がいい事に、今まで壁に当たったことが無いと思っていて、あまりつらい思いをしたことが無いです。『朝が来る』の撮影の時はつらい時もありましたが、でもなんとか乗り越えました。撮影中、特にしんどかったのは、あまり家に帰れなくて飼っている犬に会えなかったことですかね。でも、もしこれから大変なことがあっても、それを乗り越えようという意識ではなくて、どうにかなるだろうという気持ちでいたいです。

――ポジティブ思考ですね。それは昔からですか。

 初めてのドラマが、みんなそういう考えを持ったキャストさんやスタッフさんでしたので、それが考え方のベースになっていると思います。その経験があったから今も楽しく出来ているんだと思います。

――それでも作品に入る前まではプレッシャーはありますよね。

 始まる直前は緊張します。でも始まってしまえば、その場にいるプロの人に任せて、自分の出来ることを精一杯やろうという気持ちに切り替わります。わりと現場に溶け込むのは早い方だと思います。

蒔田彩珠

天職・俳優、大事にしていること

――挑戦したい役はありますか?

 もっと深い役を演じてみたいと思います。現実的な問題を抱えている役が今までは多かったのですが、もっと深い何かを抱えてみたいです。

――出演した作品で後に「蒔田彩珠さんが演じていたんだ」と思われたいと。役よりも自分が目立つのは避けたいという趣旨を話されていましたが、それは目標でもある?

 演じた役では無く「蒔田彩珠だな」って思われるのが嫌で、どの作品を観ても全く違う人物、【女優】じゃなく、その映画の中の登場人物でありたいと思っています。

――そのために何かしていることはありますか。

 作品を一番理解しているのは、脚本家や監督だと思っているので、自分だけで想像して役作りをしていくよりも、現場で求められることを、自分なりに工夫してやっていくのが、一番その作品の雰囲気に合うと思いますし、自分が考えた設定だけで行くと、どの作品も蒔田彩珠になってしまうと思います。その作品に溶け込むのが大事だなと思います。

――近づけるための作業ってどんなことをされていますか。

 作品にもよりますが、何もしないのが一番だと思っていて、覚えるだけというのが大事だと思います。

――キャリアは長いのにピュアさが消えないのはすごい。大切にされている事はありますか。

 楽しむことです。楽しまないと、仕事っていう意識になるし、自分のやりたい事をやりたいようにやるのが一番大事だと思います。

――ご自身の今の現在地はどういうふうに思いますか。

 10歳の頃になりたかった自分になれていると思います。ずっと楽しいまま、続けてこられているので良かったです。私にとってこのお仕事は天職です。

蒔田彩珠

(おわり)

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