INTERVIEW

大泉 洋

やっぱり僕は人を笑わせたい。
大泉洋の原動力
『ザ・マスクド・シンガー』でMC


記者:木村武雄

写真:提供

掲載:21年09月15日

読了時間:約7分

 大泉洋が、Amazon Prime Videoで独占配信中のAmazon Original番組『ザ・マスクド・シンガー』でMCを務めている。芸能界やスポーツ界、文化界など各界の著名12人が正体を伏せた状態で歌唱力を競う。それを推理するパネリストにはMIYAVI 、Perfume、水原希子、バカリズムらが名を揃える。俳優としても唯一無二の存在感を放つ大泉は近年、司会者としての才も振っている。「俳優だから司会者の色が濃くなってもね…」と頭をかくが、「俳優だけやっていればいいけど、どうしてもバラエティもやりたくなってしまう」と根にある「人を喜ばせたい」という思いがマイクを握らせるのだという。多彩な活躍をみせる大泉洋、この番組にはどのような思いで臨んだのか。【取材=木村武雄】

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大泉洋ならでは、危うさも含めた面白さ

 俳優のみならず、NHK『SONGS』や、昨年大晦日には『第71回NHK紅白歌合戦』で白組司会を務めるなど、司会者としても活躍する。司会をする上で心掛けているのは「楽しませる」ことだという。

 「僕に求められているのは、綺麗な進行ではなく、ある程度ガチャガチャした危うさを含めた楽しさだと思うんですよ。だから、まずは笑ってもらうというところですかね。あとは、誰一人と嫌な気持ちにさせないようにしたいというのはあります。観て下さる人も含めてみんなハッピーな気持ちになってくれたら、というのはどの番組に出ても思っています。とは言え、失礼なことを言わざるを得ないというか、そういう笑いの取り方しか僕にはできないから、そこが難しい。嫌にならない、可愛い悪態をつきながら、みんなで楽しい番組にしたいと思っています」

 ただ、今回は一人で司会進行すること不安もあったという。配信開始に先駆けて行われたイベントでも一度は断ったものの「奥さん」に背中を押され引き受けたと明かしている。

 「不安はありました。一人か…って(笑)。しっかり進行をやってくれる方がいたから、横でヤーヤーやっていればいいから少しは気が楽だけど、一人だとカロリーが高いから、一度は断って。そもそも司会者になりたいわけでもないですからね。このところは司会の仕事が続いていたからね、紅白、そして今回と。どんどん司会者としての色が濃くなるから、それもどうなのかなって思って。でも、Amazonという土俵への期待もあって。引き受けた理由の一つになっています」

 『ザ・マスクド・シンガー』は、全世界で大ブームを巻き起こした人気音楽番組『THE MASKED SINGER』の日本版。当初感じた不安はステージに立ち消えた。

 「収録の一発目は緊張もしましたが、何よりもこの収録自体が楽しかったですね。番組の楽しさにどんどんと乗っていったというか。あとはパネリストの皆さんもとてもいい人でね、MIYAVIさん、Perfumeさん、水原希子さん、バカリズムさんら芸人さんが『一緒に楽しもうよ!』と番組を必死に盛り上げてくれたから、やりとりもすごく楽しかったですし、マスクドシンガーの方も相当個性的で。正直、仕切るのは大変でしたけど『面白かった』というのが一番かな。一人で司会する難しさはありましたけど、マスクドシンガーのパフォーマンスはすごいし、正体は僕も分からないですから。一緒になって当てていく楽しみは毎回ありました」

 オリジナルを忠実に再現しているところも見どころだが、本場のテンション感もそのまま引き継いでいる。日本の特性からして、フルスロットルのテンションをはじめから持たせるのは難しい面もある。

 「そうね、みんな最初は探り探りだったんじゃないかなって思う(笑)。でもみんな番組を真剣に作っているし、アメリカの熱意も、Amazonの熱意もすごくて。それぞれがそれぞれに真剣に向き合っているから、割と一発目から熱量がウワーッと集まった感じでしたね。パネリストの存在も大きかったと思います。MIYAVIさんは世界で活躍なさっているからノリも外国なわけで、Perfumeさんもめちゃくちゃ明るい。水原さんも世界で活躍なさっているし、みんなノリがいい。でも芸人さんは入れ替えだったから、あのテンション感に戸惑っていましたね、『馴染まないな』って(笑)。でも『イエーイ!』って盛り上げてくれました。それと観客の皆さんの熱量もすごかった。ディレクターさんから散々言われているから(笑)。だから僕は収録のたびに頭を下げて『大変だったでしょ、朝から晩までね、有難うございました』って感謝の言葉を伝えていました」

 この番組の見どころは、マスクを被ったマスクドシンガーの圧倒的なパフォーマンスと、その正体を推理することだ。

 「最初に聞いた時は、『とは言え、分かるんじゃないの?』と思ったけど、やっぱり分からなかったですね(笑)。でもパフォーマンス力はやっぱりすごいなと思いました。みなさん、優勝するつもりで参加しているから、何曲も練習していて。1曲1曲にダンスがあったり、お芝居もあったり、気合を入れて挑んでいらっしゃる。どのパフォーマンスも面白いですし、みんな歌がうまい。それと正体がわかった時の驚きね。『この人か』って。『失礼なこと言わなかったかな』って焦っちゃって(笑)。なかには声で早く正体が分かる人もいます。逆にすごいなって(笑)。それはそれですごいなって思いました(笑)」

大泉洋

笑わせたいタイプ、生まれ変わるならアーティスト

 TEAM NACSでは歌も披露している大泉だが、『SONGS』や紅白歌合戦、そして今回の『ザ・マスクド・シンガー』など音楽番組での司会を通じて改めて感じるのは「歌の力」。

 「月並みですが、音楽の力はすごいと思います。僕らがやっている舞台や演技もそうですが、短い時間でものすごいエネルギーを与えてくれる。昨今はコロナもそうですが、雨など自然災害も多い。そういう時に一番早く人々に力や明るい希望を持たしてくれるのは歌かなって思います。どうしても人から語られると説教くさかったり、素直に聞き入れられないこともありますが、歌に届けられると聞ける。歌の歌詞にハッとさせられることはありますし。歌はすごいなと思う。生まれ変わったらアーティストになりたいですね。だから親父とおふくろには生まれ変わったら落語のテープを聞かすのは止めてくれと言いたいですね、音楽を聞かせてくれって(笑)。生まれ変わったらアーティストになるからママ、落語のテープは聞かせないでねって(笑)」

 そう笑いながら話すが、「いまは感謝してます。落語のテープを聞かせてもらえたおかげで今があるから」としみじみ。過去に出演した番組では、落語のテープを暗記するほど聞きこんだり、小学生の頃から話し上手でクラスの人気者だったことが明かされている。名司会の片鱗はこの頃から見られ、そして、培われたともいえる。それではこの先の展望はどのようなものなのか。

 「バランスは考えざるを得ないと思います。本来であれば、役者は役者の仕事だけやっていればいいはずなんです。先日、お亡くなりになられた田村正和さんは私生活を見せないからどの役も役として見れる。役者以外の仕事をすればするだけ素が見えてきますから、損なわけです。でも僕は他の事をしたいからね。どうしてもバラエティをやりたい。なので、役者をやったときの見た目や存在感はギリギリのところで大事にしたいです。そうなるとバラエティの出過ぎは良くないので、そのバランスはスタッフとともに考えるところです。あまりにも司会者としての色が濃くなってしまうのもどうかと思いますし。なら『水曜どうでしょう』をやめろという感じなんですけどね(笑)。バラエティもやめたくないから難しい。俳優だけやっても、司会やバラエティだけやってもきっと飽きちゃうと思う。やっぱり僕は人を笑わせたいタイプですね」

 俳優だけでなく、司会業にも突き動かされるのは、もともと備わっている「人を楽しませたい」というサービス精神と言えそうだ。それを象徴するエピソードがある。大泉は笑いながら明かした。

 「役者をやっているから、本来は人を笑わす必要はないんだけどね。『アイアムアヒーロー』という映画があって、『ポルト国際映画祭』(第36回ポルト国際映画祭コンペティション部門上映)で現地に行って挨拶したんですけど、日本から俳優で映画祭に行っているのでキチンとすればいいけど、どうしてもポルトガルの人達を笑わせたくて。通訳さんに『ポルトガル語で、こんにちはCロナウドです、ってどういうの?』って聞いて。でもそう言うと思っただけで、その挨拶の直前まで『スベったらどうしよう、観客に怒られたらどうしよう』と緊張するの(笑)。でもどうしても笑わせたくて(笑)」

 そのサービス精神は舞台挨拶や会見でも発揮され、観客だけでなく報道陣も笑顔にしている。そして、その姿から元気をもらっている人も多いだろう。それと同じように、歌を通して得られるのは「力」。

 「この番組もそうですが、歌には力があるなと改めて思いました。歌番組の多くは新曲を歌いますが、この番組では名曲や大ヒット曲ばかり。それを正体は隠していますが一流の有名人が歌う。誰が歌っているのかを当てるという楽しみもありますし、僕とパネリストのトークも面白い。良くできた番組だなと思います。それと、海外のフォーマットをそのまま日本でやっている違和感も楽しめると思います。ぜひ観てください」

(おわり)

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