INTERVIEW

永野芽郁

今も自分に満足していない。活躍支える向上心。『キネマの神様』人柄表れた若き日のヒロイン


記者:木村武雄

写真:冨田味我

掲載:21年08月17日

読了時間:約6分

 永野芽郁が映画『キネマの神様』(公開中、山田洋次監督)で、若き日のヒロインを好演中だ。“映画の神様”を信じ続けた男とその家族に起きる奇跡の物語。松竹映画100周年記念映画として製作。菅田将暉と沢田研二がW主演を務める。コロナ禍で完成自体も危ぶまれたが、困難を乗り越え封切した。菅田演じる若き日のゴウが恋する淑子を演じた永野はどのような思いで臨んだのか。【取材・木村武雄/撮影・富田味我】

若き日を演じた菅田将暉と永野芽郁(C)2021「キネマの神様」製作委員会

人柄が役に

 「彼女はとても可愛いですよね。それはとても重要なことです」

 初日を控えた前日、公開記念舞台挨拶の席上で巨匠・山田洋次監督は永野芽郁の人柄をそう称えた。

 今年3月の完成報告会。永野の姿もあった。初参加となった山田組の撮影現場は「毎日が緊張と勉強の連続でした」と語ったが、山田監督から「とても落ち着いていたような…」と言われ、「本当ですか? 緊張してました!」。あたりを見渡し「緊張してなかったみたいです!」と照れるように笑った。

 愛嬌はそのまま役に生きている。

永野芽郁

 物語の舞台は1950~60年代と現代。永野が演じる若き日の淑子は、映画撮影所の近くの食堂で働く看板娘。昭和ならではの純朴さ清楚さ、そして愛くるしさのある女性。にじみ出る永野の人柄が、周囲から慕われる若き淑子を作っていた。

 「永野さんのひまわりのような人柄がそのまま反映されているように感じました」という記者の感想に永野は「本当ですか!」と少女のように微笑んでこう続けた。

 「山田監督に、跳ねるような明るさでいて欲しいと言われましたので、どのシーンを通しても、心のリズムはずっと弾ける感じで言葉を発したり、お芝居ができたらいいなと思っていました」

 そして、現代の淑子を演じる宮本信子からも影響を受けた。

 「宮本さんの笑顔がすごく素敵なので、出来る限りあの優しい柔らかい温かい笑顔を真似ができたらいいなと思いました」

永野芽郁

 また、山田監督の雰囲気にも助けられた。

 「勝手に山田監督に怒られたらどうしようかと思っていましたが、すごく優しく、朝は必ず『おはよう、今日は元気? 体調はどうですか?』と聞いて下さって。監督とお話する時間が増えていく嬉しさが、確実に画面に出ていました(笑)。山田組は歴史のある組ですが現場の雰囲気は、緊張感があるだけではない穏やかさもあり、それは監督が持っていらっしゃるパワーだと思いました」

 歴史のある組、そして、日本を代表する名俳優たちが参加した本作。そのなかの一人として名を連ねる彼女も、NHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』でのヒロインや『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ)、『親バカ青春白書』(同局)、現在放送中の『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(同局)など、活躍目覚ましい。そんな彼女の原動力は何か。

 「自分の事を自分だけで満たせるようになってしまったら、きっと私はここには留まっていないと思います。いまもまだ自分自身に満足していませんし、常に『これで良かったの? 大丈夫?』と自問自答しています。それが原動力になっていると思います」

 ここからは一問一答。

撮影秘話

――様々な紆余曲折を経て公開にたどり着きました。

 素直に嬉しいです。完成したものを観た時に、ようやく皆さんの熱い思いがここに集まれたんだという気持ちになり、安心しました。

――この映画を通して映画に対する思いに変化は?

 ありました。山田監督がワンカットワンカットを丁寧に撮られて、本番までに時間を割いて何度も「こういうふうにしてみようか」と。それを的確に、私が分かるような言葉で説明して下さって。一つ一つにかける思いを目の当たりにして映画を一つ作るのにこれだけの熱量が必要なんだということを改めて思いました。もちろんどの映画も熱い思いで作っていますが、それとはまた違う体験でした。

――山田組に参加が決まった時の気持ちは?

 とても嬉しかったです。その反面、不安にも思いました。山田監督と「いつかご一緒したい」と思っている方はたくさんいらっしゃいますし、私の祖父も監督が大好きで、ずっと作品も観てきました。だからこそ「大丈夫かな」と。そのなかで少しでも自信をもって現場に入ろうと思いましたが、撮影期間中もずっと不安でした。

――現代の淑子は宮本信子さんが演じられました。共通性はどう意識されたのでしょう?

 宮本さんとは本読みの時にお会いし、お話しました。その様子を見ていた山田監督が「2人とも似ているね」とおっしゃって、嬉しかったです。演じる上では、宮本さんの表情や仕草を真似できたらいいなと思いました。本読みの時に宮本さんが手を擦っていらっしゃって。監督とプロデューサーが癖を強調させたいとおっしゃったので、その宮本さんの仕草を真似てみたら本編でやろうということになりました。

――若き日のゴウを演じた菅田将暉さんとテラシンを演じた野田洋次郎さんとの印象は?

 菅田さんとは3回目の共演で絶対的安心感がありましたし、毎回違う役でお会いしても菅田さん自身は変わらずに、役として全く違う菅田さんを見させて下さるので、すごく楽しみで、今回もゴウちゃんと現場で会った時すごく嬉しかったです。野田さんは初めての共演でしたが、どこか俯瞰で物を見てお話しされる姿がテラシンさんと通じるところがありました。声も透き通るような優しさで。現場でまた違う2人を観ながらこの3人って良い組み合わせだなって思ってました。

永野芽郁

――現代のゴウは沢田研二さんが演じられました。

 歳を重ねて「ゴウちゃんってこうなるんだな」と自然に頭の中でスライドできていました。なぜか私自身も自然に宮本さんにスライドしていて、自分達の未来を見ている気持ちになりました。沢田さんが演じていらっしゃるゴウちゃんもダメダメだけど、周りに「見捨てられない」と思わせるパワーがあって、ゴウちゃんって変わらないんだなって思いました。すごく愛おしかったです。自分達の成長した姿をお2人が演じてらっしゃる姿を見てなんて素敵なんだろうと思いました。

――北川景子演じる銀幕女優の桂園子の撮影シーンで、カチンコが鳴った瞬間に役に切り替わる表情が印象的でした。永野さんが役に入る瞬間は?

 監督の「よーい」という掛け声です。「本番行きます!」と言われ、直しなどをしている時間も集中力を高めようと思っていますが、本格的に「やるぞ」と思うのは、監督の「よーい」です。

――現場で必ずしていることは?

 現場に入ったらコーヒーを飲んでいます。現場にある大きなポットに入っているコーヒーってなぜか家で飲むのとは違う美味しさがあって、飲むとスカッとして「今日も一日仕事だ!」と思えます。大自然で飲むようなそれぐらいの差があるかもしれないです。

――映画への愛情が詰まっている作品です。永野さんが映画作りで楽しいと思う瞬間は?

 ドラマのようにスピード感ある現場とは違って、一日に撮る分量も少ないですし、その分一つ一つ時間をかけて撮っていくので、集中力がそれぞれ違うなと思います。一気に凝縮されたエネルギーが放出されるみたいなものは映画を作っていて思います。自分自身も映画を撮る側の一人としてですが、映画に救われたことはたくさんありました。誰かの心がふっと軽くなる映画が作れたらいいなという気持ちは常に持っています。

――最後に見どころを。

 ゴウちゃんと淑子の愛というのもありますが、言葉にしなくても伝わる優しさや愛情がいっぱいあるんだということを改めて気づかされます。最初から最後まで、なんて温かい映画なんだろうと思えますので、すごく気持ちいい時間を過ごせる作品になっていると思います。

永野芽郁

(おわり)

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冨田味我

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