INTERVIEW

和田 庵

経験で泣いたら負け。尾野真千子から学んだこと
『茜色に焼かれる』で親子役


記者:鴇田 崇

写真:鴇田 崇

掲載:21年05月29日

読了時間:約5分

 石井裕也監督の最新作、映画『茜色に焼かれる』が全国公開中だ。本作はコロナ禍の今の世界を舞台に、凄まじく生きにくい世の中を真正面から生き抜こうとする一組の母子の姿を描くヒューマンドラマだ。主演に尾野真千子を迎え、和田庵、片山友希、永瀬正敏、オダギリジョーなど豪華キャストが集い、厳しくも澄みきった人間賛歌をスクリーンで謳い上げる。

 この注目作で、尾野演じる多難の時代に逆風を受けながらも前向きに歩もうとする母親・田中良子の13歳の息子・純平を、和田庵が演じる。2020年の夏までカナダ留学をしていたが、コロナ禍で帰国。映画『茜色に焼かれる』のオーディションに参加し、最初のあいさつで石井監督の目に留まったという期待の新生だ。尾野との共演で演技について学びが多かったという和田に話を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】

(C)2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ

本当の親子のように

――今を映した作品であり、主人公はすべてを奪われていく悲劇的な展開ではあるものの、どこか希望に満ちたパワフルな作品だと思いました。

 この『茜色に焼かれる』を試写会で観た時、どこか自分のことのような気がしました。あの親子に降りかかる理不尽さなどが、実際に経験したことのように感じました。自分が演じたので、すべてのシーンに思い入れがあるということもあるかもしれませんが、考えさせられる内容だなと思いました。R15+ということで内容的には大人の話だと思うのですが、映画の中には僕が出ていない観たことがないシーンもたくさんあったので、そこも含めて改めて良い作品だなと思いました。

――何を一番、考えましたか?

 純平と良子の考え方には食い違っているところもたくさんあったと思うのですが、基本的には親子の話だったと思いました。良子は純平の知らないところで辛い思いをいっぱいしていて、その一方で良子が知らないところで純平もいろいろと苦労していて、深いドラマがあるなと思いました。

 尾野さんと一緒に過ごす時間が一番長かったと思うのですが、本当の親子のように観えて、表情も最後のほうは似ているようにも観えました。撮影中、尾野さんが本当の親子のように接してくれたということもあったのかもしれません。

――ラストシーンで同じことを思いました。

 茜色の夕焼けをバックに画を撮るシーンがありましたが、気持ちの持っていきかたがわからず、ラストパートなので上げなくちゃいけないのにどうしても落ち着いてしまいましたが、尾野さんはすでに夕焼けが見えているお芝居をされていて、僕もそれにつられるようになんとか気持ちを持っていけました。その場の空気を変えてしまうような方だなと思いました。

――尾野真千子さんと親子役ということで、とても学びが多そうな共演だと思うのですが、その点はいかがでしょうか?

 尾野さんも僕も何回か涙を流すシーンがあるのですが、僕は感情移入して役になりきって泣くことができなかったんです。ある時、移動のロケバスで一緒になった時、たまたまふたりだったのですが、いつもどうやって泣いているか気になって、泣き方みたいなものを教えてもらおうと思ったら、尾野さんはその役が泣いている理由以外のことで泣くことが好きじゃないとおっしゃいました。完全にその役になりきって泣かないと負けた気がするとおっしゃっていて、自分の経験を思い浮かべて泣くことは負けだと。本当にすごい方だなと思いました。自分自身、すごく参考になると思いました。

――石井監督は演出面で厳しそうなイメージがありますが、撮影中はどういう感じだったのですか?

 僕はカナダに留学していて、この作品が帰国後の最初の仕事でした。約1年半ぶりで現場の感覚も忘れていたのですが、それを理解してくださっていました。なので優しく教えていただきました。泣けるか不安という話をしたら、「実際に泣く必要はない」と。「心が泣いてさえいれば、涙が流れる必要はない」とおっしゃっていただいて、少し安心しました。

鴇田 崇

和田庵

憧れは仲野太賀

――俳優にはなぜなろうと思ったのですか?

 8歳か9歳の頃、僕はテレビっ子でした。ずっと観るのも好きでしたが、出てみたいと昔から思っていて、両親がオーディションに送ってくれて。それがきっかけでこの業界に入りました。

――カナダ留学はお芝居のため?

 コミュニケーション能力を学びたいという目的もありましたが、英語の語学留学がメインでした。1年半滞在してコロナで帰国しましたが、元々は3年間行く予定でした。

――それはまた道半ばで。

 ただ、この時期に帰ってきて決まった作品だったので、援助してくれた両親には申し訳なかったのですが、逆に言えばいい機会だったと思います。両親も喜んでくれています。

――現在15歳ということで、お休みの日は何をしているのですか?

 一人カラオケにはよく行っていました。久保田利伸さんの「Missing」をよく歌います。親の世代の影響で、古い音楽を調べることが好きです。沢田研二さんの「時の過ぎゆくままに」など、そういう曲ばかり選びますね。

――昔の曲のどこに惹かれるのでしょう?

 いいと言うか、逆に最近の曲がよくわからないで、そっちに走ってるみたいなところはありますね(笑)。洋楽も古い曲をよく聞くんですよ。ビリー・ジョエルの「オネスティ」とかよく歌いますね。

――俳優で憧れの人はいますか?

 仲野太賀さんがすごく好きです。ドラマの「ゆとりですがなにか」の仲野さんのお芝居がすごく好きで、当時はメインキャストではなかったと思いますが、すごく憎たらしい役で、すごい存在感でした。実際にいるような感じで演じられるじゃないですか。すごく演技派の俳優さんだなと思って観ていました。

――今回の作品を経て、俳優の仕事に対しての思いは増しましたか?

 今回の映画で得た経験は、次の仕事に活かしたいですね。これからいろいろな作品と出会うこともあると思いますが、自分なりに何かを身につけて吸収して、どんどん次の仕事に活かせるといいなと思ってます。

鴇田 崇

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