INTERVIEW

いまおかしんじ×小槙まこ

なぜだか好かれる女性、主人公に投影
映画『葵ちゃんはやらせてくれない』


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年06月06日

読了時間:約7分

 女優・小槙まこが映画『葵ちゃんはやらせてくれない』(6月11日公開)で主演する。自ら命を絶った川下が、想いを寄せていた葵と一夜を共に過したいがために幽霊になって現世に蘇る物語。川下(演・森岡龍)の後輩で映画監督志望の信吾(演・松嵜翔平)はそれを叶えるために川下と学生時代にタイムスリップして奮闘する。葵を演じる小槙は本作が映画初主演。ラブシーンなど体当たりの演技にも挑戦した。どういう思いで臨んだのか。いまおか監督との対談で撮影を振り返る。【取材・撮影=木村武雄】

小槙まこ

理由は分からないけど好かれる人

――本作の着想はどういったものでしょうか。

いまおか監督 2個上の大学の先輩が実在して、その先輩は40歳ぐらいで亡くなって。いつか映画にしたいと思っていました。5、6年前に考えて1本撮ったんですけど、今度は映画研究部(映研)に戻る若者、という設定でできないかと。実体験をもとにしているので、もう30年以上前の昔ですが、記憶を掘り起こして。死者が蘇る設定自体がフィクションなので、そこにどう嘘を重ねても大丈夫というか。もうなんでもありでやろうと。タイムスリップにして、音楽も入れて、シンプルな話だけど楽しめる要素は沢山入れたいと思いました。

――台本を読んだ印象は?

小槙まこ オーディションの時に台本を読ませて頂きました。一夜を共にしたいがために蘇るという設定自体がぶっ飛んでいるなって思って(笑)。でもタイムスリップという設定だけでなく、みんなの想いがしっかりと描かれていて、物語が進むにつれ変化していく姿は面白いと思いました。

――監督から見た、小槙さんの印象は?

いまおか監督 オーディションの時は2、30分しか話せていないから深くまでは分からなかったんですが、この作品にすごく合っていると直感しました。裏表がないというか、笑ったり泣いたり小動物みたいに表情がくるくると変わる。表情が豊か。現場に入れば何か掴んでくれるだろうとは思っていました。

――そもそも葵に持たせようとしたキャラクター性は何でしょうか。

いまおか監督 抜けているところもあるし、めちゃくちゃ美しいという設定でもない。だけど皆から好かれる人というのは意識しました。どこが魅力かははっきりとは言えないけど、皆が好きになっちゃうような。

――実際にそういう方はいますよね。

いまおか監督 そうなんですよね。あれって何でしょうかね。葵に関して言えば、人を受け入れる柔らかさみたいなものを持たせたいと思いました。

――小槙さんもそういうところはありますよね。

いまおか監督 そうね。小槙さんモテたでしょう(笑)。

小槙まこ いや(笑)そんなこともないです(笑)。

――なかなか自分からは言えないですよね(笑)。小槙さんは葵をどう捉え、アプローチをされましたか。

小槙まこ 葵について色々と考えてから撮影に入りました。でも監督が求めていた部分もあったので、考えてきた裏設定を現場でがらりと変えて、芝居も、共演者やその場で受けるもの全てを大事にしていこうと切り替えました。それで、演じていくうちに、葵は、純粋さもそうですが、人の想いを大事にしている子だなと感じられて。私自身も人が好きなので、そういうところをリンクさせながら演じていきました。

――現場で受け取ったものを大事にされたとなると、共演者の存在は大きいですね。

小槙まこ 大きかったです。松嵜さんは独特の雰囲気があって、ミステリアスな印象もあって、それがそのまま役に表れていました。森岡さんは現場をまとめて下さって、「こうしていこうか」ということも積極的に話して下さって。この作品を皆で一緒に作っていくということを強く意識することが出来ました。

――監督に言われたことで一番印象に残っていることは何ですか。

小槙まこ カニ歩きです(笑)。川下さんとの会話で意味深いことを話した後に2人でカニ歩きするんです。最初やった時は、これ大丈夫かな?って不安だったんですけど、監督が「悲しい場面はおちゃらけた方が悲しみが倍増する」と話されて、そうかもしれないって安心しました(笑)。

いまおか監督

コメディで和らげる痛み

――本作には、人の欲求や性への解釈など様々なテーマ性が織り込まれていますが、なかでも監督が伝えたかったことは何ですか?

いまおか監督 見直したときに個人的な趣味で作ったなって(笑)。個人的な事になるけど、現場で川下さんが「信ちゃん」と呼ぶ。僕自身がそう呼ばれたいがためにそうしたんですよ。実在したモデルの先輩がずっと「信ちゃん」って僕のことを呼んでましたから。。で、その人との思い出みたいなものを持っていて、それは僕だけが持っていても嫌で、誰かに伝えたいなと。川下さんのことは誰も知らないけど、こういう変な人がいたんだよって、知ってもらいたかった。

――過去にタイムスリップした2人が、葵に、このあと東日本大震災で原発が大変な事になる、という趣旨のことを述べたときに、川下は「時代は変えられない」と言っていたのが印象的で、監督の話を聞くと「亡くなったらもう帰ってこない」という悲しみが浮かんできますね。

いまおか監督 うん、そうね。……3・11もそうですが、体験した人だけが分かるということではなくて、みんなそれぞれの距離感でそれを伝えて、認知していけば世の中はもう少し豊かになるような気がします。個人的なことも映すけど、そうした大事な事も伝えたいですね。

――だからこそコメディにされたんですよね?

いまおか監督 そうです。敷居は下げたいというか、深刻にやると観る方がつらいですから。誰かが言っていましたが、真実は直接目にすると太陽のように目が焼けちゃうと。それをユーモアで包んで出す、それがフィクションのいいところというか、だからこそ本当のことも言える。なるべく、くだらないことをやりたい。でもテーマは高尚に。それはずっと心掛けています。でも、なかなかうまくいきませんけどね(笑)。

小槙まこ

2人の決断、仕事への喜び

――当時の葵は死にたいという気持ちがありますが、いろんなことを体験したり出会うことで生きていく決断をします。それに絡めて、お二人が決意した出来事があったら教えて下さい。

いまおか監督 20代の頃、やりたいことが分からなくて。シナリオライターになりたいと思ったけど挫折して、ピンク映画のプロダクションに入って助監督になったけど、全然むいてなくてやめようと思って。でもなんとか5年続けて30歳のときにたまたま作品を1本作ったら嬉しくて。自分が思っていることが形になって、それを全く知らない人が褒めてくれたり、けなしてくれる。それが嬉しくて。これはやめたくないとそこで思いました。やめないようにするためにはどうすればいいかということでバイトはしないと決めて。今もギリギリなんとか生きている。あの時は決断しましたね。

――批判は平気ですか(笑)。

いまおか監督 平気です(笑)。へこむけど、見てくれたらいいと思っているから。見られなかったらゼロですからね。

――確かにそうですね。小槙さんはどうですか?

小槙まこ この仕事を目指し始めたのが小学校の時で、小学3、4年の時に養成所に通うようになったんです。中学校3年まで通っていたんですけど、部活と並行したり、受験もあって通えなくなった時に1回辞めて。でもなぜか諦めきれなくて、大分出身なんですけど、高校に入ってから福岡までオーディションに行ったり、東京まで行ったり。ずっとそれを繰り返して、20歳の時に今の事務所に入ることができたんです。地元の養成所のときも番組は出させて頂くことはあったんですけど、それまで役者としてしっかり番組に出させて頂くことがなくて。事務所に入って初めてお芝居したときに、難しさと大変さと緊張もあったんですけど楽しいって。自分がテレビに出ているということに感動して、もっとやりたいもっと出ていきたいと。そういうことから一生やっていきたい仕事だなと思えました。どんなにつらくてもやめたいと思ったことがないので、死ぬまでやっていきたいと思っています。この仕事に出会ったことが、自分の人生が変わった瞬間だったなと思います。

――小槙さんは透明感があって不思議な魅力がありますが、監督が言葉を送るなら?

いまおか監督 この作品でどうこうは分からないけど、役者って出ないと認知されないですからね。どういう作品に出られるかは運、出逢いみたいなところがあるけど、出たら、それを観た人がキャスティングしようとか思ってくれるかもしれない。自分で努力する事は重要だけどいろんな人と出会うことが大事だと思います。もちろん失敗するかもしれないけど、その運は制御できない。この仕事は運の部分が大きいけど、沢山の人に出会うことでひらかれると思います。この作品を出たことが誰かに影響を与える、ということになればいいですね。

――小槙さんはこの作品に出たことによってどういう変化がありましたか。

小槙まこ 映画で主演することが初めてですし、映像作品でここまで深くやらせて頂くのも初めて。ラブシーンも初めて、ギターも初めて、初めてが多くてそれが積み重ねって最初は不安もあったんですけど、やり遂げた達成感があって。もっとこうしたいという思いも強くなりました。これまで出来ないことへの挑戦はあまりやってこなかったですけど、いろんなことに挑戦してきたいという思いが増して。興味もいろんなところにいっています。性格も変わったような気がします。

――ある種殻を破ったような感じですね。これからが楽しみですね。

小槙まこ 殻を破りました! 私自身も楽しみです!

いまおかしんじ監督と小槙まこ

(おわり)

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木村武雄

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