INTERVIEW

平岡祐太

比べるよりも真似できないものを。
『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』


記者:鴇田 崇

写真:鴇田 崇

掲載:21年04月26日

読了時間:約6分

 俳優の平岡祐太が、全国順次公開中の映画『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』に出演した。本作は、日本の「食」を支える農業や漁業といった第一次産業を応援するためにスタートした映画『種まく旅人』シリーズの第4作目で、今回は石川県金沢市の伝統野菜である加賀れんこんにスポットを当てる。農業で活躍する女性たちや後継者不在に悩む農業の現実などをリアルに映し出す。

 平岡演じるキャラクターは、実家のれんこん畑の後継者問題に直面する銀行マン・山田良一。「人が決断する時、覚悟を決めることは本当に難しいことだなと思いました。それは何かを始める覚悟というよりは、そのために何かを辞める覚悟のこと」と、良一を演じて感じたことを語る平岡。人はみな、「いろいろな決断をして、その場所にいると思うと、いろいろ自分も覚悟を持って人生を考えていかなければいけないなと思いました」と学びを得たという彼に、作品のこと、俳優業のこと、さまざまな話を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】

『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』より

『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』より

覚悟を決める姿に感動

――農業や食だけでなく、そこにまつわる人のドラマも丁寧に描かれていましたが、ご覧になっていかがでしたか?

 最初に観た時は自分が出ている作品なのに感動してしまって(笑)。純粋にグッときました。先日二回目を観た時に細かいところが観えるようになり、撮影隊も監督も土地の空気感を大切にして撮影をしていたことに気がつきましたね。

――感動ポイントはどこでしたか?

 自分の役で言うと、ひとりの青年が自分の道に覚悟を決める姿ですね。そういう姿で最初から最後まで、ちゃんとできていたような気がしました。良一が畑を耕すという決断をするのですが、それが自分の中にもストンときたのでよかったなと思いました。

――このシリーズのテーマについては、何か思うことはありますか?

 そこにいる人々と自然は、なかなか描きにくい題材だとプロデューサも話されていて、それが印象的でした。地方発信の映画は増えるといいですよね。先日も愛知発信の作品に出たのですが、そこから全国に発信する熱い気持ちが素敵です。今後多くなっていくかもしれないです。

特に今回、自分でも地方の生活を発信することを誠実にやった感じがありますね。農業のパートでも伝えたいことが入っていたし、前半の都会のパートでも都会代表の彼女がいて、地方と都会、そういう温度感も誠実に表現していたような気がします。

――演じられた良一は、世の中にたくさんいそうな人の象徴のようでした。

 それはうれしいです(笑)。こういう人、いそうだなっていうこともテーマだったので、うれしいですね。東京に行って現実と違うと感じて戻る人は、きっといますよね。後継者不足の問題もある。見た目的にはヘアスタイルもガチガチに決めず、ちょっと野暮ったい感じが残るビジュアルの雰囲気にするなど、いろいろと工夫はしました。

――この映画は、彼の人生の物語でもありますからね。

 農業映画ではあるのですが、前半の彼は銀行員でヒューマンドラマの要素もあるんですよね。なので、どうすれば池井戸作品みたいな雰囲気になるだろうとか考えていました(笑)。地域発のものですが、そういう要素もあればヒューマンドラマになるだろうと。どうすれば池井戸風になるか、僕なりにちょっとだけ考えていました(笑)。

――前半でフリが効いていれば、後半の農業パートの意味がより強調されますよね。

 そうですね。都会の中で暮らし、融資の問題などで心が疲弊した男の子で始まって、後半は農業のパートになります。なので畑の中に入った瞬間、畑は臭いがありましたが、空が青くて気持ちよかったりして、そのシーンの僕は笑っているんですよ。あの時、意図したかどうかは覚えていないのが、結果的に意図したものになっているなと思いましたね。

――面白いですね。素のリアクションかもしれない。

 これぞドラマがあるなと、映画を観ながら思いましたね。畑に入って初めて笑うって、人間性を取り戻したみたいな。そういう演出はなかったのですが、僕は勝手に思いました。

『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』より

『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』より

人と出会うことが鍛錬に

――彼からもらったものは何かありますか?

 人が決断する時、覚悟を決めることは本当に難しいことだなと思いました。それは何かを始める覚悟というよりは、そのために何かを辞める覚悟のことで、それはすごく勇気が要ることだなと。この作品だけでなく、普段の日常でも感じることではありますよね。

 なのでみな、いろいろな決断をして、その場所にいると思うと、いろいろ自分も覚悟を持って人生を考えていかなければいけないなと思いました。

――確かに始めることは意外と簡単で、辞めることは難しいかもしれないですね。それまでのことが無駄になるように感じてしまうようで。

 難しいと思います。ただ、転職のほうがハードルは低いのですかね?それは言葉の錯覚かもしれませんが、それがやりたいことかどうかにもよりますよね。唯一思うことは、彼が畑で感じる生きがいみたいなものを、もっと見せていければよかったのかなと、今思ったりもします。その後はまだわからないので、あの後、彼が畑と人生をともにする生きがいを見つけてくれていればいいなと思います。

――彼には幸せになってもらいたいですよね(笑)。

 もしかしたらこの作品は、その後こそリアリティーある局面がたくさん出てきそうです。毎日のこと、毎日蓮を作ること、そのリアリティーはすさまじいものだと思います。

――農業へ転身はともかく、大なり小なり彼の年齢では、身の振り方を考える人もいそうです。

 僕は18歳で芸能界に入ってしまったので僕の場合は、この仕事をすると決断をするというよりは、物心ついた時からすでにいるみたいな感じなんです。なので彼の気持ちになったことはないのですが、彼みたいな状況になる人はたくさんいそう。それこそ結婚も大きな決断で。

――そういうメッセージを届ける仕事は大変そうだなと思いますが、ご自身ではどう受け止めているのですか?

 最近思うことは、ひとりではあまり広がらないなということです。いろいろな現場で初めましての人たち、変わった人たち、面白い人たちと出会うことによって、今度は違う自分もでてきたりする。そいうことなのかと、最近思っています。

――化学反応的なことですか?

 自分ひとりの能力を上げる作業は、もう地道にやる以外にないわけです。時代劇で殺陣がありますと言われたら、淡々と殺陣を練習するしかない。でも人と交わってようやく価値が生まれ、そこで触発されて殺陣もまた違うものに変化する。根本的には人と出会うことが、役者として鍛錬されていくのかなと思う。

 たとえば個性という意味でも、個性は好きと嫌いでできているような気がして、役者としては好きなものを集めて、嫌いなものを排除する。そういうことをしていると、役者としての個性が磨かれていくような気がするんですよね

 人と出会い、いろいろな価値観を知り、混ざって、よくないものは捨てる。これがポイントかなと思いますね。

――それを踏まえて、俳優としての目指す先はどこでしょうか?

 自分の得意なこと、ほかの誰にも真似できないことは何だろうと、思いますね。お芝居のゾーンてどこだろうとか、まわりにすごい俳優さんがたくさんいますが、絶対それにはなれないってわかる。同じ人にはなれないから、だったら比べるよりも、自分の中に誰も真似できないところを見つけられたら、もっと楽しいなと思うんです。

『種まく旅人~華蓮のかがやき~』
公開中

配給:ニチホランド
(C) 2020 KSCエンターテイメント

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鴇田 崇
『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』より
『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』より

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