INTERVIEW

今千秋監督

大事にしている「テンポ感」
『極主夫道』アニメ化の舞台裏


記者:木村武雄

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掲載:21年04月15日

読了時間:約5分

 テレビドラマ化もされた、おおのこうすけ氏による大ヒット漫画『極主夫道』が、Netflixオリジナルアニメシリーズとしてアニメ化された。強面な見た目とは裏腹に家事を完璧にこなす元極道の専業主夫・龍(声・津田健次郎)の姿をコミカルに描く。監督を務めるのは、TVアニメ『のだめカンタービレ』シリーズや劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』など数々の話題作を手掛ける今千秋さん。本作ではアニメーションに“動かない演出”を凝らした。その狙いとは。【取材=木村武雄】

(C)おおのこうすけ/新潮社

漫画を活かした「動かない」演出

――アニメ化するにあたって意識された点を教えて下さい。

 漫画の良さを出すというのが最初にテーマとしてあり、『Back Street Girls -ゴクドルズ-』と同じような形式でやりたいというお話しでしたので、「それは楽しそう!」という気持ちで始めました。

――その『Back Street Girls -ゴクドルズ-』では、初めは楽しそうという気持ちでやってみたものの制作は大変だったと明かしていますが、今回はどうでしたか。

 いや、レベルが違います(笑)。比にならないぐらい難しい作品でした。もちろん『Back Street Girls -ゴクドルズ-』も大変でしたが、今回は漫画のコマを活かして漫画のようなアニメを作るということでしたので。

 どんな作品でも最低限、歩いたり走ったりする動きはあります。それは『Back Street Girls -ゴクドルズ-』もそうです。でもそれが基本、禁じ手になったので『これ…大丈夫か…』という不安を抱えてのスタートでした(笑)。

 ただ、手応えを感じたタイミングが違っていて、『Back Street Girls -ゴクドルズ-』はアフレコが始まる前まで不安な気持ちがずっとありましたが、いざ始まったらゲラゲラ笑っていました。SE効果や音楽が入ることでより盛り上がってめちゃくちゃ面白いものになると思いました。

 『極主夫道』については、アフレコ前の編集段階から、つい笑ってしまう不思議な感覚でした。自分でもよく分からないけど「これ、面白いぞ!」って(笑)。

 でも大変だったのは、漫画を活かしながら画面を飽きさせないで埋めていくことでした。1カットの尺は通常の半分。1秒で終わるカットもありますし、12秒のセリフもあります。それをどう埋めていくか。尺をカット内で動かずに進めていくものが難しいと思いました。

(C)おおのこうすけ/新潮社

――編集段階で笑えたというのは、そういうカット割も含めて全てがハマった感覚ということですか。

 自分でセリフを読みながら編集をするのですが、つい読んでいて笑っちゃうところが何回もありました。担当編集さんに「動いていないけど面白いです」と伝えるほどでした。

 エピソード1(第1話)で、龍がリサイクルボックスにペットボトルを入れるシーンがありますが、おおの先生の“主夫力”すごいなって思いました(笑)。あのシーンは絵としてはほとんど動いてなくて、「ガシャガコ」という音と文字で表現していて、次のコマでも袋に手を入れたまま止まっていて、音と文字だけで「ガシャガコ」と。よく分からないけど、それが面白くて。

 「ガシャガシャガコガコ」している龍は後ろ姿だけが映っていて、雅(声・興津和幸)に真面目なことを一生懸命に言っている、その温度差が面白いなと。漫画を読むテンポと、アニメでの「ガシャガシャガコガコ」は笑いのツボが変ってくると思います。

――そのなかで、絵を固定したままフレーミングする「パン」という手法が多く見られました。効果的に使われているようにも感じましたが。

 おおの先生のコマは縦長が多いんです。アニメのフレームは、テレビのビスタビジョン(横長の画面サイズ)みたいな感じですので、そのなかにおおの先生の画を入れるとなるとパンしないと収まらない。画を止めるとは言え、フィックス(固定画面)だとつらいのでパンは必須でした。

今千秋監督

今千秋監督

アニメ化で大事にしている「テンポ感」

――その一方で声優の力も重要だったと。

 どの作品でも声優さんの力は重要ですが、今回は特にそれを感じました。声優さんのお芝居、そしてSE効果がもたらす力は本当に大きいと感じます。自分が編集で読んでいた時よりも、津田さんの声が入り、美久(声・伊藤静)、雅、虎二郎(声・細谷佳正)が入ってきたら盛り上がる!盛り上がる!やっぱり声優さんは素晴らしいです。

――さて、今監督は『聖闘士星矢』や『美少女戦士セーラームーン』が好きでそのエッセンスが感じられる作品もありますが、漫画をアニメ化するときに意識していることは何でしょうか。

 漫画はそれぞれ読者のテンポで読んでいると思うんですが、アニメは読者を待たないで画がどんどんと流れていきます。その流れていく時間の中で、テンポ感や画の意味を、見ている人を置いてけぼりにしないように意識しています。更に、そのテンポ感が原作の先生が求めているものと合っているかも大事だと思っています。

――テンポ感を作るという点で大事にされていることは?

 原作を読んで想像したキャラクターの喋り方を表現したいと思っています。それは間も含めて。なので、セリフを役者さんがテストで喋ったものに対して「そっちではなく、もう少しこういう言い方で」というお願いはします。

――そうなると今監督は原作が持っている時間軸を作り出す立場でもあるんですね。時間の支配者というか(笑)。

 ハハハ! そうかもしれないですね…(笑)。

今千秋監督

(おわり)

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