INTERVIEW

瀧内公美

誰か一人のために届く作品と出会いたい。
『裏アカ』にも惹かれた作品力


記者:木村武雄

写真:冨田味我

掲載:21年04月14日

読了時間:約5分

 女優・瀧内公美が映画『裏アカ』(加藤卓哉監督)で主演を務めた。思い描いていたものと違う毎日に行き場のない気持ちを抱える主人公が、ふとしたきっかけで始めたSNSの裏アカウントにやがて翻弄されていく姿を描く。リベンジポルノや承認欲求など様々な問題を抱えるSNS社会に「本当の自分とは何か」を問う。社会的な問題をテーマにした作品にやり甲斐を感じるという瀧内は本作にどう挑んだのか。そして、彼女の「自分らしさ」、原動力は何か。【取材=木村武雄/撮影=冨田味我】

役割を強くした女性の言葉

 『第93回キネマ旬報』主演女優賞受賞、『第41回ヨコハマ映画祭』最優秀新人賞を受賞した映画『火口のふたり』で一躍脚光を浴びた実力派女優。昨年は映画『アンダードッグ』で自身初の母親役を演じ、演技の幅の広さを見せた。そんな彼女には共通して惹かれるテーマがある。社会の映し鏡のような作品だ。

 「『彼女の人生は間違いじゃない』も『アンダードッグ』も役柄的にはそうですね。その人物の育った環境や、置かれている状況に惹かれるものがありました。毎回悩みながらですがやり甲斐を感じています」

 東日本大震災発生から約5年後の福島県いわき市が舞台となった『彼女の人生は間違いじゃない』では、週末だけ東京に出て風俗嬢として働く女性を演じた。震災7年目を迎えた秋田県が舞台の『火口のふたり』では男女の極限の愛を表現した。絶望、希望、憎悪、人間の性、それらが描かれた作品で見せるのは彼女の圧倒的な存在感だ。

 「こうしたやり甲斐のある、自分が好きだなと思える作品に出会えた時の喜び、そしてまたそういった作品に出会うために頑張ろうと思えることが私の原動力になっています」

 もともと映画が好きでこの世界に入ったが、そう強く求めるようになったきっかけがある。『彼女の人生は間違いじゃない』が上映された頃に出会った、ある若い女性の言葉だ。

 「その頃、青山の交差点で女の子が声をかけて下さったんです。前日にその作品を見てくれて、『私は福島出身でこういうことが映画化されるのは嫌だったんですけど、この映画は自分にとって必要でした。ありがとうございます』と。その言葉が忘れられなくて。みんなで作ったものが届くことの喜び、そして、一人に届くことがどれだけ大切なのかということを感じました。コロナ禍でエンターテインメントは不要不急と言われたこともありますが、誰かの心に響く瞬間はあるだろうし、心を豊かにしてくれるものでもあるって信じています。誰かひとりのために届くような作品に出会いたいですし、出会うためにも一つ一つ丁寧にやっていきたいです」

 その中に、本作の『裏アカ』がある。奇しくも、『彼女の人生は間違いじゃない』での演技を高く評価した加藤卓哉監督が「この作品をご一緒したい」とオファーした。

 「この作品も誰かにとって必要とされるものになってくれたら嬉しいですよね」

瀧内公美

瀧内公美

魅力を感じる「人の多面性」

 青山のアパレルショップで店長を務める伊藤真知子を演じる。自分の意見は採用されず、年下のカリスマ店員に仕事を取られ、ストレスが溜まる日々。そんな折にふとしたきっかけでSNSの裏アカウントを作り、際どい写真を投稿する。「リアルで会いたい」「もっと自分を解放して」そんな言葉に誘われ、フォロワーの1人と会うことになった。その相手は、“ゆーと”という年下の男(演・神尾楓珠)。彼がもつ表と裏の顔に振り回され、そして2人は「裏アカ」に惑わされていく。

 社会的問題になっているSNSをテーマに描いた。私生活ではSNSをやっていない瀧内は「SNS社会を知りたいと思いました。何かをまなび、感じとるものがあるのではないか」という好奇心もあり、オファーを受けた。

 「大概の方が経験されたことがあるであろうSNS。なぜ人はSNSをやるのか、そして何を求めているのか、そのなかで何を言おうとしているのかということに興味がありました。この作品はSNSを通して自分を探していくということもテーマになっていますので『自分とは何なのか』ということも含めて、SNS社会全盛に生きている我々の実態めいたものを探れたらいいなぁって。それはSNSの発信ひとつで、社会が間違った方向に動いていくこともある怖さを私が感じていた時期だったからでもあります」

 瀧内は劇中で、本音と建て前、ネットとリアルを行き来する真知子を生々しく演じている。翻弄される女性だが、瀧内が演じる真知子はどこか人間的な魅力も感じる。完全なものより不完全なものに惹かれることを心理学では「ツァイガルニック効果」というが、瀧内が演じる役はどれもそれが当てはまっているように思える。瀧内自身はどういう所に人間的な魅力を感じるのか。

 「いろんな姿を持っているのが人間であるということだと思います。これは荒井晴彦監督(『火口のふたり』)の言葉ですが、『朝もあれば昼もある、昼もあれば夜もある』。ありのまま正直に生きることへの憧れはありますが、大方そうならないし、抑圧されたものがきっと誰にもあると思います。でも物語の中では、葛藤しながらも素直にはき出せる瞬間があることは素敵だと思いますし、自分自身もそれによって解き離れていく瞬間があります」

 まさに本作が描かれるのは、片方に寄らない多面的な部分だ。

 そして、瀧内は日頃から意識していることがある。それは「嘘はつかない」こと。

 「嘘をつくとすぐにバレちゃうんですよ(笑)。でもお芝居は嘘をつく仕事でもある。普段から自分を取り繕ってばかりいるとお芝居での嘘がより陳腐なものになりそうっていう怖さがあります。素直にしっかり生きるというのは大切にしていますし、その上でお芝居はみんなが作り上げていくものなので、相手の方の芝居や声をちゃんと聞くようにしています」

 社会問題になっているSNSの中で生き学びたいと撮影に臨んだ瀧内。撮り終えて今何を思うのか。

 「承認欲求や自分の価値を探すことに対してあまり年齢は関係なくて、SNS全盛の時代に生きている人であれば、真知子の気持ちを理解できる部分もあると思います。でも、SNSの関わり方は難しいなと思いました。いろんな情報が流れていますし、そこで選択しようとする間に違う情報が流れてくる。且つそこできちんと自分の考えは自分で見出さないといけない。みんながいいと云うものを疑うことがあっていいだろうし、ややこしい世の中だけれどシンプルに生きられるように、自分のココロは守っていかねばならないとは思いますね」

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(おわり)

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