INTERVIEW

小野莉奈

正しい大人の世界に導いてあげたい。
主演『POP!』で等身大少女


記者:鴇田 崇

写真:鴇田 崇

掲載:21年04月12日

読了時間:約6分

 映画『アルプススタンドのはしの方』や、ドラマ「コントが始まる」(日テレ・4月17日放送開始)など、今もっとも注目を集める新人女優の一人である小野莉奈。その彼女が主演を務めた映画『POP!』が、現在開催中の「MOOSIC LAB [JOINT]2020-2021」のコンペティション部門でグランプリを受賞、同時に小野自身も最優秀女優賞を獲得した。主演最新作の映画『POP!』で演じている柏倉リン(19)は、子どもと大人の狭間で周りに対する違和感に気付いていく少女の物語で、脚本化の段階で小野自身を投影しているキャラクターだという。小野は「わたし自身も前に進めるきっかけとなった大切な作品です」と語る。

 小野は、2017年のドラマ「セシルボーイズ」(CX)で女優デビューを果たした。小学生の頃、演じることへの魅力にとりつかれた小野は、やがて芸能界に飛び込み、2019年に舞台「アルプススタンドのはしの方」で初舞台。前述の同舞台の映画化でも主演を務め、第12回TAMA映画賞特別賞を受賞するなど確かな実力が評価され、着実にキャリアを重ねているが、映画『POP!』の主人公柏倉リン同様、大人の世界という壁に直面して葛藤することもあったと話す。キャリア4年目を迎えた小野に、現在の心境を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】

『POP!』

投影したキャラクター

――とあるチャリティー番組のオフィシャルチャリティーサポーター・柏倉リン(19)が、子どもと大人の狭間で周りに対する違和感に気付いていく物語ですが、最初に脚本を読まれた時の感想はいかがでしたか?

 いくつかのシーンで最初はよくわからず、大丈夫かなと不安に思ったこともあったのですが、脚本も書かれた監督の小村さんと話をしていくうちに、ひとつひとつのシーンに込められた思いが伝わりました。監督が世の中に対して抱いている疑問などを、リンちゃんの目線で描いている映画なのだと理解できました。

――なんでも主人公の柏倉リンは、小野さんを当て書きされたキャラクターだそうですね。

 当て書きしてくださったと言うこともあり、自分自身と似ているところはあると思いました。リンちゃんは変わっている扱いにくい子だと思われているのですが、その一生懸命に生きている姿が大人の世界では良いほうに理解されないことが多くて、チャリティーサポーターの仕事をしていて生きづらさを感じてしまう。そういうところは似ているなと思いました。

――小野さんもリンちゃん同様、生きにくいと思う瞬間があるのですか?

 わたしの場合は、たとえば事務所の人たちなど、言動や性格を面白がってくれる人たちがいるので、リンちゃんとは違ってありがたい環境にいると思っています(笑)。そういうことが理由で、今回のこの映画も生まれていますので。でも生きていると、生きにくいと思うことはあります。そういう意味でリンちゃんの気持ちがわかりますね。

『POP!』より

『POP!』より

「お芝居は楽しい」原体験

――それこそ芸能界も、ある意味一般社会より厳しい世界だと思いますが、そもそも芸能活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

 小学6年生の時にお遊戯会があり、そこで『ライオン・キング』をやることになりました。とても本格的で、役をオーディションで決めていました。自分がやりたい役を演じて、みんなの投票で決めたんです。「絶対にこの役を獲りたい!」と思い、そこで自分の負けず嫌いな性格が出ました。初めてのお芝居だったので自分なりにたくさん練習して、試行錯誤して、オーディションに出ました。

――何の役でしたか?

 主人公のシンバを演じたかったのですが、決まった時、初めて自分が認められたような気がしたんです。頑張った分だけちゃんと結果が出る、お芝居は楽しいなって。わたしは特に勉強や運動ができなかったのですが、その時に自分はお芝居ならできるかもしれないという自信がついたというか、それが自分の自信になった出来事で、お芝居をしている感覚が忘れられなかった。その楽しい感覚をもう1回、味わいたいと思って。

 それで高校二年生の時に事務所のオーディションを受けて、今に至る感じです。小6まで人前に出るタイプではなかった。端のほうでちょこまかしている感じだったのが、その時に人の前で表現することがすごく楽しい、目立つって楽しいと思ったんですね。

――今でも楽しいと感じますか?

 ようやく、最近ですかね。現場で言う「ばみり」「ぬすむ」が苦手というか、忘れがちなんです。現場でお芝居をする時、最初の頃はそういうことに慣れず、忘れて怒られていたのですが。そういうやりにくさを感じつつ経験をちょっとずつ積み、言葉やルールに慣れてきて、今は楽しいなって思うようになりました。わかるようになったんです。

――それがリンちゃんのように大人の世界に染まることのひとつの事柄ですよね。

 そうですね。そう思います。「ばみり」をちゃんと理解しないと、そもそも作品として成立しないことになるので、そういうところも受け入れてお芝居をしないといけないですよね。大人にならないといけない部分が、どうしても発生してくると思います。

――本当は自由に演じたい?

 ただ、決められたなかでお芝居をすることも楽しいかもしれないって、最近は思うようになりました。たとえば決められたなかで表現がなかなかできなくても、そこのギリギリまで自由にお芝居ができたら、それはそれで楽しいかもしれないですよね。

小野莉奈

楽しい大人の人になりたい

――ところで、もしも時間がたくさんあれば何をしたいですか?

 旅行に行きたいですね。カナダ、自然や動物がたくさんあるところに行きたいです。日本しか世界を知らないことは狭いなって思います。日本に住み、日本だけのルールを見ているけれど、違う大人の世界があるかもしれないと思うんです。今生きていて頭が凝り固まったいるような気がするので、生きづらさも感じているのかもしれない。世界に出て思い切り深呼吸をしたいです。

――その生きにくさは、どうすればなくなると思いますか?

 人間関係などではなく、自分がまだ大人になりきれていないので、そこに対する悔しさみたいなことだと思うんです。自分の能力が足りていないことに対して、「なんでだろう?」と思うような感じです。自分に対する悔しさが一番大きいかなと思っています。わかっていない部分もたくさんあるのですが、自分をちょっとずつ客観的に見られるようになってからは、足りないところを見つけられるようになりました。

 今は足りない部分を補うために生きていますが、もしかして自分が成長したら生きやすくなるかもしれないという希望を持って生きています!

――近い将来、どういう女性になりたいですか?

 今は自分ひとりで抱えきれないものがたくさんあり、いろいろなことに助けてもらいながら仕事ができているのですが、わたしもいつか人を助けられる立場になれたらいいなと思います。迷っている子を導いたり、映画『POP!』の世界観で言うと、子どもの世界から大人の世界に行けていない時期の子がいたら、正しい大人の世界に導いてあげたい。その人の歩幅に合ったように寄り添いながら、楽しい大人の人になりたいですね。

――期待しています。最後にメッセージをお願いいたします。

 映画は観ていただくだけですごくありがたいものなのですが、インタビューでわたしが話している言葉もひろっていただいて、観てくださった方なりの解釈で監督が込めた想いなどを理解してもらえたら、よりうれしいなと思います。ひとりひとりの人に受け止めてもらえたらうれしいです。映画『POP!』、よろしくお願いします!

映画『POP!』上映スケジュール

4月12日(月)19時〜@新宿K’s cinema/
4月17日(土)18時30分〜@UPLINK渋谷

小野莉奈

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鴇田 崇
『POP!』より

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