35年でようやく知った天命、浜田麻里 ロック歌手としての誇り
INTERVIEW

35年でようやく知った天命、浜田麻里 ロック歌手としての誇り


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年08月02日

読了時間:約15分

世界の最高峰が奏でる超絶系サウンド

浜田麻里

──今作にはマイケル・ランドゥ(G)やグレッグ・ビソネット(Dr)、リーランド・スカラー(B)など、世界的にテクニシャンと名高いミュージシャンが多数参加。これだけのメンバーが集まったのは、浜田さんだからこそですね。

 楽曲ができていく中で今作は、前作や前々作よりも、よりスピードチューンが多かったり、より変拍子のプログレッシブ系の曲があったりとかしたので、それを生で演奏できるミュージシャンを世界的な視野で選ばせていただきました。35年に渡って、じかに世界のミュージシャンと接して活動してきた、自分にしかできないコラボレーションだと自負しています。

──絶対参加して欲しいと、特に熱望した方はいましたか?

 全員ですけど、ドラムとベースがやはりベーシックになりますので、そこでリード曲「Black Rain」に参加してくれている、マルコ・ミネマン(Dr)とフィリップ・バイノー(B)の名前が挙がり、コンタクトしたところOKをいただいて、それによってアルバム完成へのメドと言いますか、先が見えた感じです。特にマルコは、今作ではすごくキーになっていますね。

 先ほどお話しした通り、今作はスピードチューンやプログレッシブ系で、超絶テクニックを持った方でなければまっとうできない曲が多かったので、これを演奏できるのは彼ら以外にはいないと思っていました。ここまでテクニックを必要とする楽曲は、世界的に見てもそうないと思いますので、それもこのアルバムの一つの聴きどころにもなっていると思います。

──日本人ミュージシャンも多数参加されていて、分かりやすく有名なところでは高崎晃(G)さんですね。

 高崎さんとはもう35年前から親しくさせていただいていて、ここ数作続けて参加していただいているので、今作でもぜひにとお願いいたしました。今作で日本人ミュージシャンは、高崎さんをはじめ、増崎孝司さん(G)、増田隆宜さん(Key)、中尾昌史さん(Key)にご参加いただいていますが、彼らに関しても、世界的な視野でその楽曲に誰が必要かを考えた結果です。

──高崎さんは、出会ったのが1982年だそうで。

 私のデビュー作『Lunatic Doll〜暗殺警告』は、LOUDNESSのドラマーだった故・樋口宗孝さんがプロデュースしてくださっていました。高崎さんは、そのLOUDNESSのメンバーでもあるので、ファミリーの一員的な感じのお付き合いですね。なので、LOUDNESSがアメリカに進出したときも、ステージをよく観させていただきましたし、スタッフも重なっていましたので、当時からとても近いところにいさせていただいています。

──高崎さんの参加曲は、アッパーなものではなくて。

 メロウめの曲ですね。前作では変拍子系の曲を弾いていただいたので、今作ではどっしりめのバラードを弾いていただくのが、面白いんじゃないかと思いました。ご本人もそういう風におっしゃっていたので。

──その高崎さんが参加している楽曲で、「Zero」は、非常にインパクトがありました。メロディがとても日本的で、言い方が難しいのですが、演歌っぽいメロディだなと。それがこういう壮大なサウンドと融合しているのが、すごく格好いいです。

 そう、聴き方によってはとても演歌的なんですよね(笑)。共作している岸井将さんのコード進行がもともとそんな感じで、メロディを作る際も、あえて曲のオリジナリティーを出したいと考えて、私なりに構築しました。そういう日本的要素があることでとても面白くなりそうと感じたからです。そこに高崎さんの重めのギターを合わせて、全体にシンフォニックなアレンジを加え、しかしドラムは超絶系の叩きまくりで、普通ではない世界観を目指す。そういう風に仕上げていくのが、自分っぽいんじゃないかと思いました。演歌っぽさを単に狙ったわけではないんですけど、音楽的にすごく面白い曲になったと自分でも思います。

──ハードロック版「天城越え」のような感じで、日本人のDNAが爆発しているかのようでした。

 それは、良い意味で持っていたい部分ですし、外国人とコラボレーションしている中で、日本人としての個性を強調した仕上げをすることにも意義を感じます。もともとこういうマイナーコードでウェットな感じの曲が得意なので、自分の一つの個性にもつながっていると思います。これまでもこういったテイストを持った曲はありましたけど、こういうスケールの大きな形で作ったのは、初めてかもしれないです。

──「Zero」は、歌詞も日本語を意識して書かれていますね。

 この曲に関しては、基本的に全部日本語です。こういうメロディでしたので、日本語が乗りやすかったのもあったと思います。ベーシックなイメージとしては、乾いた虚無の世界を歌いつつ、ゼロのスタート地点に戻れみたいなことも含んでいます。

──最後の浜田さんのハイトーンが超絶です。他にもラストに収録している「Mangata」という曲のアウトロで、ギターと絡むような形で延々とフェイクが続いていて。どっちがギターで、どっちが歌声か分からなくなるくらいの感じで、浜田麻里という楽器が奏でられているような感覚でした。

 よくギターっぽい歌声だねって言われますし(笑)、私は声を楽器のように使うことがよくあります。気持ちが入ってしまうと、歌っているうちに音域の幅もどんどん広くなって、低音から一気に2オクターブ上がってしまったりとかするんです。普通のシンガーなら1オクターブで歌うところですけど、「Mangata」のときは急に思いついて勢いでやってしまった感じです。

 こういった歌唱は、まずはアドリブで思い浮かんだもので構築していくんです。ギターのアドリブの盛り上がりを、楽器のアレンジとしての見せ場に置き、そのギターフレーズのおいしいところに呼応する形でフェイクのメロディラインも考えていきました。

──また、「Disruptor」という曲は、プログレッシブロックなアレンジが秀逸な楽曲です。タイトルの「Disruptor」は、どういった意味でしょうか?

 既存のビジネスモデルを根底から覆すような、例えば“AI”によってあらゆるものが便利になった、そういう破壊的なイノベーションのことを“デジタル・ディスラプター”と呼びます。そういう進歩を享受している自分たちがいながら、極端にその方向に走ってしまうことに危惧を感じている。そういうことをテーマに書きました。

──プログレッシブでテクニカルな演奏という部分も相まって、音楽においてデジタルと肉体的な演奏力とが、せめぎ合っているものも感じさせますね。

 匂いとしては、そういうものがベースにあって生み出された曲です。演奏するのは非常に大変なアレンジでしたけど、参加ミュージシャンの技術があればこそ表現できた曲ですね。10月からツアーも予定しているのですが、これからを担う新世代の有能な日本人ミュージシャンにも期待しています。

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