自分本位の音楽はやめた、ZYUN. 場所として機能する多面的な音
INTERVIEW

自分本位の音楽はやめた、ZYUN. 場所として機能する多面的な音


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年10月20日

読了時間:約14分

 シンガーソングライターのZYUN.が9月12日、ニューシングル「雨の日に逢いたくなるのはいつも君だけ。」を発売した。この作品は彼にとって、レーベル移籍第2弾のシングル。リード曲のミュージックビデオは、TBS系ドラマ『SPEC』やテレビ朝日系『TRICK』でおなじみの堤幸彦氏が監督を務め、SKE48の高柳明音も出演した。2016年にメジャーデビューを果たし、ミステリアスな作風で未だネット上でも様々な憶測を呼ぶ彼に、新作についての想いなどを聞いた。「自分を作り手としても、歌い手としても変えた」と語った、彼のターニングポイントの音楽的話題から、服飾デザイナーとしての一面も持つ彼の感性の根源まで彼の素顔に迫った。【取材=小池直也/撮影=村上順一】

3回歌詞を作り直したリード曲

ZYUN.(撮影=村上順一)

――「雨の日に逢いたくなるのはいつも君だけ。」が発売されて少し経ちますが、今改めてこの新作のでき映えなど教えてください。

 最近ちょうど雨も多いですね。ざっくり言うと、一度でも何かを失ったことのある人たちに向けて作りました。心を救うとまではいかなくても、ちょっとでも手を添えて支えられたらいいなと思う楽曲です。前作の「最初を見逃した映画みたいなこの世界で 〜Emotion Rain〜」は移籍第1弾のシングルなんですけど、それでまた違うステップに行けたなと感じることができたんです。それを踏まえて、今回の新作は両足揃って次の段、ステップに上がれたなと。

 リリースイベントもやらせて頂いて、『DAM CHANNEL』(カラオケ大手第一興商のカラオケ総合情報サイト)にも出させて頂きました。反響がすごいです。それもあって、最近ライブに男の子が多くなってきて。今までは9対1くらいで女性の方が多かったんですけど、今は7対3とか、場所によっては6対4くらいまでになっています。その男の子の半分がカラオケ店員の人だったり、歌手を目指している人が多いみたいですね。

 今回のシングルは僕の楽曲のなかでも王道なポップス。MVも堤幸彦監督に撮って頂いたり、SKEの高柳明音さんに出演して頂いて、色々とキャッチーな要素が合わさった作品になったなと改めて思っています。

――男性に聴いてもらいたいという気持ちは強い?

 そもそもそんなに「どういう人に聴いてもらいたい」というカテゴリを決めているタイプではないんですよ。たくさんの人に聴いてもらいたいので。ただ初期は女性のファンが多いところから始まりましたから。男の子に僕の歌だったり、ファッションだったり、歌詞の世界観だったりで受け入れてもらえているのは、自分の楽曲がもっと色々な人に刺さるものになってきたのかなということかもしれません。ありがたいですね。

――普段、作曲の仕方はどの様にされるのでしょう。

 作曲はいつも詞と曲が同時に浮かんでくるんですよ。なのでアイディアが頭に降りてきた時にばっとマイクに吹き込んで、後から何を歌っていたかを紙に書き写してまとめていきます。だから自分の作業部屋にこもって、ヘッドフォンをつけて集中しないと浮かばないタイプ。

 普段から、いいなと思う言葉を貯めていたりしますけど、楽曲は自分のタイミングにちょうど合った時にできていく感じです。楽器で作る時はギターで作る時もあるし、ピアノで作るときもあります。最初に吹き込んだ時はアカペラだったりもします。僕にとっては、作曲とレコーディングとライブは同じ状態なんです。そんなに細かく覚えていないですし。

――リード曲「雨の日に逢いたくなるのはいつも君だけ。」の制作についても同様ですか。

 この曲はタイトルも含め、3回くらい歌詞を全部書き直しました。今までワンフレーズでも変えることがあるなら「これは違うな」と思ってボツにしていたんです。だから何を言われても変えてはこなかった。でも堤幸彦監督と打ち合わせをしているうちに、もう少し深い表現にしたいという気持ちになったんです。

 最初に作った時は「季節はずれのソラボリューション」というタイトルだったんです。自分でも謎なんですけど(笑)。その次は「泣けない君と泣かない僕が落ちた恋の話」という曲になってから「雨の日に逢いたくなるのはいつも君だけ。」に変わって。結果的に全然違う内容になりましたね。ただ一貫して「何かを失ったことがある」というテーマがありました。歌詞では「溶けかけのチョコレートみたいな僕」というフレーズがなぜか3回とも出てきているんです。その2点が共通項でした。

――MVではバイクのレーサーが着る、Supreme(米ファッションブランド)のプロテクターの様な衣装が気になりました。

 衣裳は作曲と同じで毎回最後に探しに行くんです。その時は、ぱっと見て「いいな、面白そうだな」という気持ちだけ。僕はスタイリストもやっているんですけど、MVやCDジャケットの衣装をプライベートで着ようとは思わないです。

 毎回そうなんですけど、基本的にジャケ写って「目に留まる」ということが全てですから。ZYUN.というアーティストの間口を広げていかないと、楽曲までたどり着かないじゃないですか。「こいつ何なの?」「黄色い髪のやつ」「Supremeの着方変じゃね?」でもなんでもいいんです(笑)。

 僕にとってはこのCDがとてつもなく重たくて。ファンと一緒につかんだものだと思っているんですよ。だから、それをただ出すだけではなくて、何らかな形で自分もそのCDを聴いてもらうきっかけでいなきゃいけない、と。だから衣裳はアイキャッチとして「いいな」と思うもので探しています。Supremeでなければいけなかったかというと、そうではなかったかもしれないですし。しかし、今回こういう作品ができたということはそうでなければいけなかったと感じています。

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