シンガーソングライターの角松敏生が29日と30日、東京・中野サンプラザで全国ツアー『TOSHIKI KADOMATSU Performance 2018 “BREATH from THE SEASON” 』のファイナルをおこなった。4月にリリースされたアルバム『Breath From The Season 2018~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~』を引っさげて、全国11公演をおこなうというもの。ドラムやベースなど通常編成なブラスセクション13人を加えたビッグバンド形態で、アルバムの世界観をライブでも再現。昭和歌謡のカバーなど全20曲を披露した29日公演のもようを以下にレポートする。【取材=村上順一】

ビッグバンド編成による圧巻のサウンド

『TOSHIKI KADOMATSU Performance 2018 “BREATH from THE SEASON” 』をおこなった角松敏生

 ホールは暗転し、SEが流れると幕が上がる。そこには13人のブラスセクションを従え、白のタキシードで身を包んだ角松敏生が登場。ゴージャスなブラスサウンドで彩られたインストナンバー「Lady Ocean」でライブの幕は開けた。そこに乗る角松敏生の伸びやかなギターサウンド、ブラスソロの時に見せるソリッドなカッティングと“ギタリスト角松敏生”を堪能。丁寧に作り込まれた自身のシグネチャーモデルによるトーンは絶品。

 前作『SEA IS A LADY 2017』から使用をするようになったレスポールギターに持ち替え、爽やかな風を運んで来た「I’LL CALL YOU」。ドラマチックに歌声を響かせ、吉沢梨絵、浦壁多恵、コアラモード .のあんにゅによるコーラス隊がその角松の歌声を後押し。ギターからパーカッションにチェンジし、多彩な才能を見せた「ANKLET」。ナイトクルージングをしているかのような優雅な時間が流れる感覚。

 今作のアルバムのテーマを丁寧に説明する角松、過去にアロージャズオーケストラとやって手応えを感じた楽曲だという「RAIN MAN」を披露。セクシーなブラスの音色に導かれるかのように、ハンドマイクで歌い紡ぐ角松。青い照明は雨をイメージさせ、その中を歌い歩くようなシーンはまさに“RAIN MAN”だ。

 代表曲の「You're My Only Shinin' Star」では、角松の歌の隙間を縫うようにブラスの音色はサビでは優しく包み込むよう。抑揚をつけた歌はしっとりと体に染み込んでくる感覚。そして、85年リリースのアルバム『T's BALLAD』からのナンバー「RAMP IN」では、ボーカルを引き継ぐかのように鈴木正則(Tp)のトランペットソロが叙情的に響く。そして、87年リリースのシングル「JUNE BRIDE」では中川英二郎(Tb)のトロンボーンの低音が心地良く響いたソロを挟み、個々の管楽器の音をフィーチャーしながら展開するビッグバンドならではの魅せ方で盛り上げた。

 ドラムに28歳の若手ドラマー荒山諒、ベースに山内薫、ギターに梶原順、ピアノに小林信吾というフォー・リズム。本田雅人(Sax)や中川英二郎(Tb)、鈴木正則(Tp)が率いる13人のブラスセクションで構成。ここから、ビッグバンドで昭和歌謡のカバー平野愛子の「港が見える丘」を披露。ピンク色で染まるステージ。雰囲気のある空間の中で歌い上げる角松。ソロではサックスの本田雅人の艶やかな音色が存在感を放っていた。

 続いては鼻歌で歌っていると曲が混ざってしまうという現象、「曲想の類似」という話から「ルパン三世のテーマ」と「宇宙戦艦ヤマト」の2曲をミックスさせた「Lupin The YAMATO」を披露。角松はメロディーをスキャットでリズミックに歌いあげ、コーラス隊も参加しビッグバンドの醍醐味を堪能。

 中川のトロンボーンをフィーチャーした88年のナンバー「Can’t You See」。言葉を置きに行くかのようなエモーショナルな歌で観客の耳に癒しを与えるレイドバックした空間。続いて、吉沢梨絵を招きエナジー漲るパフォーマンスを見せた「Nica’s Dream」では、都会の街並みのシルエットをバックに互いの歌が引っ張り合うような共鳴を見せ、ブラス隊を楽器ごとにフィーチャーしたスペシャル感満載に届けた。

角松とあんにゅのハーモニー

角松敏生のステージ

 角松は「この一期一会をお楽しみください」と投げかけ、うねるリズムが最高の高揚感を連れてきた「Have some fax」、そして、観客もスタンディングし手拍子し一体感を高めた「Gazer」では躍動感あるグルーヴでサンプラザを支配。体を動かさずにはいられないといった様子。角松もレスポールの甘いサウンドで存分に楽しませ、軽快なピアノがアーバンな空気感を作り出していた「AIRPORT LADY」と立て続けに披露。サビでは紙飛行機が客席から無数に飛び交う光景も。本編ラストは「SHIBUYA」をスイングしたビートでコンテンポラリーに届け、華やかな都会を音で表現するなか本編を終了した。

 アンコールを求める手拍子。荒山のドラムからスタート。コーラスで参加していたあんにゅをステージに呼び込み「A Night in New York 」をデュエット。観客とも<A Night in New York ♪>とコール&レスポンスでコミュニケーション。角松とあんにゅのハーモニーで魅了した。

 「TAKE YOU TO THE SKY HIGH」では、あんにゅとコーラスで初参加の浦壁多恵は初体験となる紙飛行機投げ。ステージに向かって放たれた観客からの紙飛行機を小林らが集め、荒山に浴びせるパフォーマンスなど盛りだくさんな内容で楽しませた。モアアンコールに応え再びステージに角松が登場。40周年に向けた意気込みをユーモアを交え語り、ラストは小林、鈴木正則の3人で「Morning After Lady」をこのライブのエピローグかのようにしっとりと届け、映画を一本見終えたかのような余韻のなか、角松は「良い夏を!」と投げかけ『TOSHIKI KADOMATSU Performance 2018 “BREATH from THE SEASON” 』東京公演初日の幕は閉じた。