カラオケ世界大会「KWC」で2016年に男性部門、翌年にはデュエット部門で2連覇を達成したシンガーの海蔵亮太が6月27日、シングル「愛のカタチ」でメジャーデビュー。毎週家族でカラオケに行くほど歌は身近にあり、歌手も夢を見ていた。大学を卒業後一度は就職、社会人として生活を送っていた。そんな彼がこの世界に入るきっかけを作ったのは父親の言葉だったという。「愛のカタチ」は、シンガーソングライター・中村つよしの楽曲で、KWCでも歌唱。いわば彼の歌手への道を作ったターニングポイントの1曲とも言える。この曲との出会いからKWCでのエピソード、メジャーデビューへの思いを聞いた。【取材=村上順一】

父親の言葉がきっかけで歌の世界に

——歌うことに目覚めたきっかけはあったのでしょうか。

 幼稚園の頃から歌うことは好きでした。両親が特に歌が好きで、毎週カラオケに家族で行っていました。気づいたら、暇さえあれば歌っていました。兄や姉が槇原敬之さんや広瀬香美さんが好きで、影響された感じです。

——カラオケではどのような曲を歌うんですか?

 その場の空気に合わせる感じですね。今日は落ち着いてるな、と思ったらゆったりした曲を歌うし、アゲアゲな人がいたらそういう曲を歌って盛り上げたり。様子見ながら選曲します。

——ライブみたいですね。おそらく、ちゃんと聴いてもらいたいと思っていられるのでしょうね。

 確かにそうですね。みんなと行く場合は特にそうかもしれません。1人で行くときもありますけど。

——そんな中、2016年にKWC(Karaoke World Championships)の世界大会で優勝されるわけですが。出場したのも、やはりカラオケで何かを成し遂げたいと思ったからですか?

 いや、この大会に出場したのは偶然です。それまで大学卒業して、社会人として働いていて。まだ仕事にも慣れていなかったので、とりあえず歌のことは横に置いておいたんです。たまたま、その時に父親と二人で飲む機会があって。「歌やらないの?」と聞かれました。そこでは「仕事楽しいし、今はいいかな」と答えたんですが、その後、心のどこかで父親の言葉が引っかかっていて。

 自分には心のどこかで歌いたい気持ちがあって、仕事にかこつけて押さえていた部分はあったんだと今は思います。仕事に慣れて、時間ができたら何かやろうかなと思っていた時にKWCの存在を知って。カラオケで歌うだけで、すごく気軽にエントリーできる感じだったので、初めはこのくらい敷居の低いものでいいかなと思って。

——でも、それだけ敷居が低いと応募する人も大勢いると思うので、優勝するというのは凄いことですよね。

 自分も後で知りました。「え!? 5000人もいたの?」って(笑)。

——優勝した時はどんな気持ちでしたか。

 日本代表を決める時は、正直恐かったです。気軽な感じで応募したので、こんな僕で本当にいいのかなという気持ちでした。世界大会の時は本当にビックリしました。「え? 本当!」という感じで(笑)。他の国の人がガッツポーズとかするなか、僕は本当に1人ポカンとしていました。人間驚くと本当に何もできないです(笑)。

——優勝して、歌手としてプロになろうと?

 日本代表になってから、世界大会までは1カ月くらい期間があって、その間にいろいろ考えました。もし優勝したら、歌手としてやっていこうかなと。ダメだったらいい経験だったと思ってまた仕事に戻ろうと思っていました。サービス業でしたが、仕事は好きだったので、上司に説明する時はつらかったです。

——そして、2017年に齋藤伶奈さんとC&Kの「Y」を歌唱されてデュエット部門の世界チャンピオンになっていますよね。自分はあの曲が好きで、お二人の歌唱を聴いたときに感動しました。

 そう言って頂けると嬉しいです。あの曲はキーが高いので一緒に歌う人がなかなかいなくて…。もう歌えただけでも幸せで。

——確かに「Y」のキー高いですよね。さて、デビューシングルは「愛のカタチ」ですが、シンガーソングライター・中村つよしさんのカバーで、KWCでもこの曲を歌われたんですよね。

 はい。自分の人生のターニングポイントで必ず歌っていた曲です。ある意味、この曲に助けられたというか、この曲で僕のことをいろんな人に知って頂けた経緯もあったので。デビュー曲はこの曲で「よろしくお願いします」という意味を込めて、歌いたい曲を歌うべきかなと思いました。

——この曲との出会いは?

 出会いはカラオケの世界大会に出場する時に、選曲で悩んでいて周りの方々に聞いたら「こんな曲があるよ」と教えてもらいまして。それで歌ってみたら、良い曲だなと思ったのがきっかけです。

——海蔵さんは「愛のカタチ」の歌詞はどういう所に注目されていますか。

 「愛のカタチ」は主人公が認知症の話なんです。自分の祖父も現在、認知症で施設に入っているのですが、そういう自分の状況とリンクして、より身近に歌詞の内容を感じました。ぱっと見て、歌詞は難しいんですけど、自分の中ではスッと入ってきたんです。これから日本も高齢社会で、医学が発達して長寿になったとは言え、こういう問題と付き合っていく人も増えると思うので歌っていきたいなと思って。

——デビュー曲は、これからずっと節々で歌っていく曲になりますしね。歌詞は調べたりして深掘りするタイプですか?

 しますね。妄想は嫌いじゃないので。歌詞を読んで「こういうことなのかな?」と想像したりします。そういうのが楽しいです。

——タイトルにもある「愛」は海蔵さんの中で一番強いのはどの愛でしょうか?

 昔は異性であったり、恋人について考えることが多かったのですが、最近は身内に対しての愛が強いです。姉に子どもがいて、姪っ子が半年くらい前に生まれたのですが、めちゃくちゃ可愛いんです。何でもしてあげたいなと思えて、これが無償の愛かと(笑)。僕の家族は昔からよその家族に比べて仲が良いんです。なので、僕が今考えるのは“家族愛”です。

——そのご家族はメジャーデビューで喜んでくれたんじゃないですか。

 僕があんまりはやし立てられるのが苦手なんで、家族も気を使ってさらっと「おめでとう」と言ってくれました。内心はもっとはしゃいでるんじゃないかと思いますが(笑)。

——謙虚なんですね。

 ちょっと、小っ恥ずかしいところがあって。そうですね、謙虚なんです(笑)。

——さて、カップリングにはジューンブライドということで、シンガーソングライターの蘭華さん作詞作曲の「ウェディングソング」もカップリングとして収録されています。

 蘭華さんとは以前から交流もあって、素敵な方なので今回お願いしました。今回お会いして、蘭華さんの思うように書いて頂きました。この曲は男性目線の歌詞なので割とサラっと聴いてもらえると嬉しいなと思います。「愛のカタチ」があるので、壮大なバラードみたいな感じではなく、デビューシングルとしては歌い分けた方がいいのかなと思って。