振り返ることによって未来へ向けることがベストの真髄

Chage(撮影=冨田味我)

――時代を経て来た楽曲が揃ったこのベストアルバムはご自身にはどのように映っているのでしょうか。

 シンガーソングライターはその名の通り歌と詞を書く職業だと思っていて、それは「時代が――」とかは特に感じていないです。年代を見た時に「この時はこういう感情だったんだな」とか、世の中の景色が見えたりね。それがベストアルバムの良さかなと。

 曲単体で聴くとそこまで感じないんですけど、こうやって年代順に「終章(エピローグ) (MEMORIAL VERSION)」、新曲の「Viva! Happy Birthday!」があってこの20年間にも色々あったなと。それが振り返られるのがベストアルバムの真髄だと思います。ベスト盤は過去の楽曲なんですけど、それを振り返ることによって「未来へ向かっていける」ということを感じさせました。これから10年間どんな曲を作っていくんだろうという。

――期待感が高まります。今まではどのようなことをイメージしながら制作することが多かったのでしょうか。

 僕は普遍的な日常を切り取った風景を歌っているものが多いのです。写真が好きなので、写真から音が鳴るような音作りをしていきたいなと思っていて。カラーだろうがモノクロだろうが関係なく、それを切り取った曲を歌い続けることが僕の仕事だと思っています。

――その中で「TOKYO MOON」は2011年の3.11の光景から生まれた曲なんですよね?

 そうです。これはもう絶対忘れてはいけないことです。僕は電気が消えてあんなに暗い銀座の街をみたのは初めてでした。その中で月が綺麗に見えていたのが印象的でした。この2011年の5月に銀座でライブをする予定だったので、その下見に行きました。その時にこんな状況で「ライブが出来るのか?」と思うほどで…。結果ライブをおこなうことが出来たのですが、あの状況から2カ月でライブが出来るようになるまで復興するなんて凄いなと感動しました。それは忘れられない景色で。

――多くのアーティストやミュージシャンがライブを延期や中止したりしてましたから…。ちなみにChageさんはあの震災があった日はどこにいたのでしょうか。

 事務所にいました。そこでテレビを観て、東北の状況を知って。やっぱり音楽をやっていて良いのかということも一瞬よぎりましたよ。ライフラインが一番ですからね。でも、いつか音楽が必要な日が来ると感じて、この「TOKYO MOON」が書けたわけです。

 どの曲も記憶に残っているものばかりです。朗読と歌だけのイベントのテーマソングの「永い一日」とか、50、60と歳を重ねて来て、やっとChageが人生という言葉をタイトルに持ってこれた「たった一度の人生ならば」というのは自分の中で特に大きいです。30代、40代の時には全く自分のなかで人生なんてキーワードはなかったので。この曲の中には一度しかない人生をどのように生きて行くんだという哲学的な要素も入っているんですけど、そういったことを歌えるようになった自分がとにかく嬉しかった。

――人生とはもしかしたら死ぬ時に答えが出るものかも知れませんね。

 そうかもね。僕も当時は人生なんてキーワードは必要ないと思ってましたけど、昨年あたりから「使って良いんだ、使わなきゃいけない」という気持ちになって来ましたから。これは30代のChageには出来ないことです。ベストアルバムもこのソロ20周年というタイミングで良かったなと本当に思います。60歳という節目で自分にとっても記念の1枚になるのかなと感じています。CDジャケットも凄く気に入っていますし。

――綺麗な赤で目を惹きつけられます。これは、コンサートツアーのタイトルもそうなんですがクリムゾンという色合いで。

 まだ還暦の“赤”というのに馴染んでなくて(笑)。自分の楽曲にも「CRIMSON」とあるのでそれにちなんでですね。普通の赤ではなく同じ赤でもクリムゾンかなと。

――一緒に写っているギターも同色ですが、わざわざ塗られたのでしょうか。

 これはギブソンのDoveというアコースティックギターで元からこの色なんです。もう30年以上前から使っているギターで、もう手放せないギターのひとつですね。神田の楽器屋で購入したんですよ。このギターが製造されたのは1969年頃でもうビンテージですね。新しいギターだと同じ種類でもこの色にならないんです。もう何度もリペアに出してますけど、未だに良い音を出してくれてます。

――ジャケット背面の背中のショットも哀愁を感じさせます。

 これは、何枚も撮った写真の中の1枚ですね。後ろからのショットなんですけど、後ろを向いているわけではなくて、僕は前を向いて進んでいる気持ちで撮っています。背中を見せるというのは20代、30代では恥ずかしかったですね(笑)。でも、歳を重ねて来て背中で語るじゃないですけど、そういう時に来たのかなとも感じています。

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