心に刺さる歌詞で魅了するシンガーソングライターの高橋 優。耳に残るメロディも印象的でこれまでに数々の名曲を残してきている彼だが、デビュー前は映画館でアルバイトしていたことも。その働きが認められ正社員昇格の話もあり一時は音楽の夢も揺らいだという。結果的に今の道に進んだ彼は「そのときに感じた不安は凄い恐怖でした」といい「夢は行動しなければ無と一緒」とその体験が今の礎になっているという5月30日に発売したシングル「プライド」には、表題曲「プライド」と「僕の幸せ」を含むカップリング曲3曲収録されている。彼が考えるプライドとは、幸せとは何か。歌詞に込めた思いや制作秘話などを含め話を聞いた。【取材=村上順一】

“刺さる”も“届く”も“耳障り”も表裏一体

「プライド」期間生産限定盤

――昨年から続いたツアー『ROAD MOVIE』はいかがでしたか。

 全部で38本あったんですけど、禁酒したりとか。その期間中は酒をやめてジョギングをしたりして自分を律していました。ツアーが終わったら羽根を伸ばしてベロベロになるかなと思ったんですけど、張りつめていた感じが心地良くて凄い楽しかったし、その感じも悪くないなと思っていて。お酒は解禁しましたけど、ツアーが終わって改めて次に向かって緊張の糸を引っ張っていこうかなという状態です。

――今作「プライド」はツアー中に制作されたのでしょうか。

 そうです。曲を書き出したのは今年に入ってからなんですけど、レコーディングが全部終わるまでは2カ月ちょっと掛かりました。

――ツアー中に作るの大変ですよね。アニメ『メジャーセカンド』のストーリーなどを頭に入れたうえで?

 はい。その『メジャーセカンド』がめっちゃ面白くて、僕は野球をしていないんですけど、去年甲子園のテーマソングをやらせてもらってから、「野球をやっておいた方がいいんじゃないか?」と思うことがよくあるんです。『メジャーセカンド』の題材は野球だけど、そこから発生する気持ちみたいなものって野球に限ったことではなく、どのジャンルにも当てはまる気持ちが凄く表現されている漫画だなと思いました。漫画を楽しく読んで、その後は「これだ」というテーマはすぐ出ました。

――今作はメロディ、歌詞、どちらから出来ていったのでしょうか?

 同時です。例えばメジャーデビューシングル「素晴らしき日常」や2ndシングル「ほんとのきもち」は詞もメロディも同時に出てきて30分くらいで原型が出来ています。

――同時に出てくるときはスムーズなことが多そうですね。スムーズじゃない時もありますよね?

3カ月悩んで楽譜をビリって裂いた曲もあります。

――もったいないですね…。

 いやいや、たいしたことではないです。曲って思いが乗っかっていたりするので、例えば「(女性に)振られた、クソ!」と思って振られた気持ちを曲に書くじゃないですか? そのときの気持ちがその曲に乗っかっているんです。それを取っておいて5年後とかに歌おうと思っても、もう自分の中に振られた思いが残っていない。完全に客観視して歌えたらいいけど、自分の中のテンション感として、そのときの振られた気持ちというのはあまり引きずりたくないという場合があるんです。面白がってそれを取っておくときもあるんですけど、そういう曲は制作に何年掛かろうがスパーンと捨てます。

――自分がそのときの気持ちを歌えないと思ったら捨ててしまうんですね。それはシンガーソングライターならではだと思います。

 たまにですけどね。大抵の場合は僕も大目に見ているというか、「この曲はいつか歌えるかもしれない」と思ったらまずスタッフと共有しちゃうんです。そうしたら自分だけのものじゃなく、リスナーがいることになるので、一番近くのリスナーの人達が「この曲やろうよ!」ってなったら、「もうしょうがない」ということにしちゃう時もあります。

――今作のタイトルは「プライド」ですが、「これは捨てた方が良い」と思っているプライドはありますか?

 おおよそのプライドは捨てていいと思います。世間一般的に言う「勝ちへのこだわり」みたいなプライドは、僕はほぼ捨ててしまっても生きることはできると思っていて。「絶対に生き残る」「いつか必ず勝つ」みたいな、長い目で見たプライドみたいなものさえ捨てなければ、それ以外のものは、僕はけっこう捨てていると思いますし。もしくはズタボロのまま持っていたりとか(笑)。

――でも捨てるって勇気がいりますよね? 自分が長く続けてきたものとかはなかなか捨てられないかと。高橋さんは例えば歌や楽曲に対する“プライド”以外はけっこう捨てられてしまう?

 歌に関しては、10代の頃に、僕に「歌うな」「歌なんてロクなものじゃない」と言ってくれた先生や親がいっぱいいたので(笑)。だからプライドどころかそれ自体が自分の生き甲斐になったので、歌をやめるという選択肢が僕の中にないんですよね。なので「歌へのプライド」と今言われたのが凄く新鮮でした。そこは“生きる”ということとイコールみたいな感じなので。

――プライドではなく生き甲斐なんですね。さて、歌いだしの<君ではダメだと言われてしまったか?>というのがとても印象的です。歌詞の一行目にこういった刺さる言葉を選んでいる節はありますか?

 “刺さる”も“届く”も“耳障り”も、どれも表裏一体だと思うんですけど、日本語って面白くて、その面白さをふんだんに使った曲を書くのが僕のひとつの理想なんです。このフレーズは2回登場するんですけど、1回目と2回目で言葉の印象が少し変わっていたら面白いなと思って。

 1回目で「言われたことある。ダメだと思っている」と曲を聴き始めたとしてそのまま聴いてもらえたとして、最後の最後でその言葉を言われたときに「言われたけど、でも」と、ちょっと変わっていたら、曲の5分間というのは意味をなすというか、日本語の面白いからくりがあると思うんです。

――確かに時間経過によって変化はありますね。

 そのために最初にこの言葉をと思いました。けっこう僕、「ああ!?」って言われるのが面白いと思っていて。「フーン」って流れてしまう音楽ってどこにでもあるじゃないですか? でもその中で「今何て言った?」「聞き捨てならないぞ」みたいなのが曲のどこかに入っていることって日本語の音楽の凄く面白い部分だと思っていて。言葉を有する音楽は全部そうかもしれないけど。だからそれを冒頭に持ってくる場合もあればサビに持ってくる場合もあるという感じです。

――<誰にも期待されてないくらいが丁度いいのさ>と、これはそう思ったことがあったのですか?

 期待してくれている人がいるとしたら、ある意味では幸せなことです。僕が肌で感じている気持ちとしては、期待してくれている人がいるなって俯瞰(ふかん)している立ち位置なんです。「あの人の新譜早く出ないかな〜」とか、そういう気持ちの人達を僕はちょっと斜めから見ている。僕自身は「ね、凄いよね」って言っているくらいな感じ。でもその立ち位置を僕自身納得いってないんです。自分もやっぱり期待されるような、スポットライトを浴びるような人生になっていたいしという思いが凄く今でも強くて。

――充分スポットライトを浴びている気もしますが…。

 いやあ、全然です。

――それはどの段階で満たされるのですか?

 わからないです(笑)。ライブとかをやっていて一瞬満たされるときはあります。「ああ! 今幸せ!」という瞬間。僕の大好きな友達でflumpoolの山村隆太(Vo)がいるんですけど、去年のアミューズフェスで隆太が僕の楽曲の「BEAUTIFUL」をカバーしたいと言ってくれて2人で歌いました。あの「BEAUTIFUL」は2人の中でも「イェーイ!」という何かがありました。