ロックバンドのHUSKING BEE(ハスキング・ビー)が6月6日に、9枚目のフルアルバムとなる『Lacrima』をリリースする。前作『Suolo』から1年半ぶりとなった今作。磯部正文(G&Vo)は「原点回帰とまではいかないが、それを感じさせる作品」になっているのだと語る。長いキャリアを持つ、彼らがこの新作に込めた想いとは一体なんなのだろうか。そして、若い世代のバンドが台頭してくるなかで、1児の父でもある磯部は自らの現在の立ち位置をどう考えているのだろうか。記者の幅広い質問に磯部はありのままに答えてくれた。【取材・撮影=小池直也】

進化とこれまでが繋がっているものを

――『Lacrima』は1年半ぶり、9枚目のアルバムになりますね。

 2016年に『Suolo』というフルアルバムを出しました。ファーストアルバム『GRIP』(1996年)の写真がとある男の子が自転車を乗って、グリップを握っているものなんです。コンセプトも心をギュッと「グリップする」という感じでしたが、もう20年が経ちました。その時14歳だった写真の男の子が大人になって仕事先なども知っていたんですよ。彼も34歳になり、僕と同じように娘もいる。だから『Suolo』のアートワークはファーストのそれから20年後のイメージ。HUSKING BEEの進化とこれまでが繋がっているものを目指して作ったんです。

 でも20年後の『GRIP』をイメージしていた皆さんの期待とは、良くも悪くも違うところがあったかなと。なので次回作では全体のコンセプトというよりも、それを回収したいというのが頭にありました。長年やっていると原点回帰みたいな言葉が活動の節々に出てきがちですが(笑)。そこまではいかないにせよ、当時の様な早いビートの曲とか、それを感じるものになっていると思います。

――今作の曲作りはどの様に?

 収録曲はこのアルバムの為に去年の夏から制作したものです。普段から思いついたものはギターを弾きながら、なんとなく携帯のボイスメモに録ってあるんですけど。それを発展させて家の簡易プロトゥールス(録音ソフト)で作っていきました。1曲、また1曲と作っていったら、意外と10曲くらい貯まっていて。そこから熱さまし的に寝かしておいていたんです。あとで「レンジでチンすればよいや」みたいな感じで(笑)。

 最初にできたのは「#1」で。それから「Gonna Sing You My Love Song」、「Hold Me Back」という感じで出来ていきましたね。さらに昨年末にセッションで仕上げていったのが「Wake You Up」や「Enjoy」、「夜と霧のなかで」といった曲たちでした。最近はデモを作って、スタジオでやってみて、それからレコーディングという流れが多かったんですよ。でもやっぱり最初からセッションで作った方がスタジオでセッションしながら作った方がやっぱり勢いが出るんだな、と改めて感じました。

――英詞と日本語詞の曲と両方ありますが、差別化しているところはあるんでしょうか。

 最初から日本語にするか英語にするか決めて作っています。「Hold Me Back」も英語だろうなと思って作っていたんですけど、意外と日本語の方が合いましたね。今回はアルバムの8、9割は英語にしようと思っていました。

 逆にアルバム1枚まるまる日本語にしようとしたら結構大変ですよ。一時期は日本語詞ばかり歌っていて、その時期は「もう言葉がない」という感じもありました。造語も作ったりして。メロディにきれいにはまって、語感も良い言葉というのは決まってきてしまうんです。「ここぞというサビにはこれ」みたいに同じ言葉ばかり使ってしまうなというジレンマもかなりありましたし。結果的に今回は日本語と英語のバランスがうまくとれたんじゃないかなと思います。

 また前作からメロディと英詞は日高央(THE STARBEMS)さんにアドバイスをもらいながら作っているんですよ。日本語を英詞に変換したり、それをさらに歌に合うように整えてもらったり。これを自分だけでやると2、3倍の時間と労力がかかりますから。日本語で作る時はそういうストレスなくできるので楽ですね。

――「Enjoy」ではホーン隊がフィーチャーされています。

 僕らは元々色々なジャンルのバンドと共演してきました。もちろん管楽器が入っているバンドも。スカコアも好きですし、大所帯のバンドとか見ると羨ましい気持ちもあります(笑)。そういうバンドでホーンを担当している人って高校時代に吹奏楽部に入っていたりする事が多いんですよね。僕は軽音部だったので。ちゃんと音符が読めないから、おこがましいというか、そういう気持ちが今までありました。でもストリングスは、ヴァイオリンの方にも世話になっていて。カルテットと一緒にやったりもしてきました。でもなぜかホーンはなかったんです。

 「Enjoy」は最初から市川くん(LOW IQ 01)にコーラスとして参加してもらおうと考えて作りました。リフを考えてから、展開していったんですけど頭の中で「何か聴こえるな」と思ったんです。その時「ホーンが入ったら良いんじゃないか」というイメージが沸いたんです。もうレコーディング中の歌録り前だったんですけどね(笑)。皆に「思いついたけど、どうしよう?」と相談したら「頼んでみれば?」と言って貰えたので、とんとん拍子でお願いして、録音してもらったという流れでした。

――となると、ホーン隊を入れた編成でのライブも期待して良いのでしょうか?

 市川くんのライブに遊びに行く時は、僕が参加した曲にいつも飛び入りしたりしていました。今回のレコーディングから、そういう事もできたらなとは思っているんですよ。アナウンスせずに現れたらお客さんも嬉しいでしょうし。ホーンのTGMXさん(トランペット・FRONTIER BACKYARD/SCAFULL KING)、NARIさん(サックス・HEAVENLY BOYS/SCAFULL KING)も近い人たちなので、その機会があれば良いですね。

――「Living Life」では下村亮介(the chef cooks me)さんがキーボードで参加していましたが。

 どの作品でも何かには必ずキーボードを入れてもらいたいと思っているんです。この曲は当初、最初からバンドサウンドだったんですけど。テッキン(工藤哲也・ベース)が「最初の方はアコギ1本で良いんじゃない?」と提案してくれて、こういうアレンジになりました。

 そんな中で「この曲に鍵盤が合うんじゃないか」という感じになり、シモリョー(下村)にお願いしたんです。本当は他にも何曲か入ってもらいたい曲があるかなと思ったんですけど、ホーンにも参加してもらいましたし、結局この曲だけになりましたね。