今はより研ぎ澄まされて来ている

寺井尚子(撮影=冨田味我)

――今回ベスト盤『寺井尚子ベスト』も同時リリースとなります。寺井さんの中でベスト盤というものはどう感じていますか。

 今回はEMIに移籍してからの2002年以降の選曲による初めてのベスト盤になります。毎年レコーディングして今表現したいことをテーマにやってきていたので、ベスト盤を出すタイミングもなかなかなかったので、今年はアニバーサリーイヤーということもあってリリースする流れが出来ました。

――これもまた沢山の曲数がありますが、選曲はどのように?

 大体の構想は浮かんでいました。なので、目ぼしはついていたので、それも踏まえて過去作を聴いて決めて行きました。それだけで16曲はすぐ埋まってしまいましたから。

――過去のご自身の演奏を聴いて変化、もしくは何か気づいたことはありましたか。

 基本的にはあまり変わってないと思うんですけど、今はより様々なことが研ぎ澄まされて来ている方向に向かっていると思います。

――その感覚があった場合、15年前の演奏ですと再録したいと思いませんでしたか?

 その時にベストを尽くしているので、基本的にそれはないですね。それはライブで更新できている感覚もありますから。今回のベストはミックスダウンを今の技術で同じエンジニアさんにおこなってもらっているので、音の変化は感じられると思います。16年間追求してきたものをトータリティで表現したいという熱意は素晴らしいと思います。過去のアルバムを持っている人は聴き比べてみても面白いと思いますよ。音に興味がある方はさらにハイレゾなどで聴いてもらって。

――ジャズみたいな空間がより顕著な音楽はハイレゾの恩恵も大きいですからね。ちなみに、寺井さんは普段音楽を聴くときはどのような環境で聴かれているのでしょうか。

 もう、いたって普通のシステムですよ。

――そうなんですか。ハイエンドなオーディオで聴かれているのかなと思っていました。

 普通のシステムで良い音が鳴るように、音源を制作しているので問題ないんです。良いシステムで聴けばもちろん良いのは当たり前じゃないですか?

――エンドユーザーにも届かなければ意味が薄れてしまいますからね。改めて収録曲の中で思い入れのある楽曲は?

 やっぱり「ワルツ・フォー・デビー」です。この曲でジャズの世界に入ったということもありますから。思い出の一曲ですね。

――ターニングポイントの一曲ですよね。他にもそういった楽曲はありますか。

 ターニングポイントという意味では、楽曲というよりも人や事の方が大きいです。例えば95年のケニー・バロン(有名な米ジャズ・ピアニスト)とのNYレコーディングや、98年に『シンキング・オブ・ユー』でCDデビュー出来た事です。

――この30年間の中で個人的に気になったのが衣装は黒いものが多いという事なのですが、黒を選んだのにはどのような理由があるのでしょうか。

 単純に黒が好きだと言うことと、凛としていて身が引き締まるイメージがあります。

――幼い頃から黒がお好きで?

 そんなことはなかったです。プロデビューしてからも様々な色の衣装を着たこともありました。その中で黒がやっぱりしっくりくるなと感じ、表現したい音楽とも合っていると思ったので。ジャズはシャープでクールなイメージがありますから。

――先日テレビ番組で何人かのヴォイオリニストが集まって衣装についても話していたのですが、音の関係上やっぱり極力生地が薄い方が良いのでしょうか。

 クラシックの方だと生音なので、その方が良いかも知れませんね。私の場合はマイクで音を拾っているので、衣装を選ぶときは動きやすいものというのが重要です。それもあって私はノースリーブの衣装が多いんです。

――機能性重視なのですね。さて、プロデビュー30年を迎えて現在どのようなことを感じていますか。

 今思うことは1回1回のステージに来てくださるお客様の存在というのが、大きかったなと思います。そのおかげで30年歩いて来ることが出来たという感謝の気持ちと、素晴らしいミュージャンたちとの出会いが背中を押してくれました。

――やはり人なんですね。

 そうですね。人が演奏しているわけですし、人との関わりというのが全てだと思います。信頼関係というのは持とうと思ってもそう簡単には持てません。やっぱり相手があってのことなので。

――では、最後に今後の展望はどのような感じでしょうか。

 この30年間と変わらず一歩一歩、歩いて行くだけです。その時に表現したいことを、その時に形にしていきたいですね。この節目にベスト盤とニューアルバムが出せたということをすごく嬉しく思いますし、このアルバムを聴いてからコンサートにも来ていただければ、音源との違いも楽しめると思うので、是非気軽にお越しください。

(おわり)

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